良く調べられている OH/IR 星で、距離が分かっている星の IRAS 観測を示す。 輻射補正を F12/F25 の関数として定め、輻射等級を求めた。電波で周期の助け を借りて、平均光度を決めた。 AGB 上の光度関数を作り、主系列星の分布と 寿命とからの予測と比較した。 | 長波長放射からマスロス率、ダストシェルの光学的深さ、ガス/ダスト比を 導いた。電波で選んだこのサンプルに対する結果はもっと大きい IRAS 天体 に拡張可能である。 |
位相遅れ距離 Dwingeloo モニター観測と VLA 観測から 16 OH/IR 星の位相遅れ距離 ROH が求まっている。 距離精度は 10 - 20 % である。 |
LOH - R2 関係距離 その 16 OH/IR 星の LOH と ROH の関係はタイト であった。そこで、位相遅れしか分かっていない星については、この LOH - R2 関係 (Herman, Habing 1985b Phys.Rep. 124, 255 - 314) から 40 % 精度で距離が決定可能である。 |
表1i.Baud et al.1979 のフラックスリミッテッドサンプルからの 45 星。 ![]() サンプル主要部は Herman, Habing (1985a) で扱った Dwingeloo データである。それらは、 (i) Baud et al 1979 の サーベイ SOH > 4 Jy サーベイからの 45 天体。 14/45 星は VLA から 幾何学的距離が知れている。10/45 星は LOH - R2 距離が分かる。このグループの平均距離は 4.3 kpc である。弱くて近距離 (< 1 kpc) から非常に明るいが遠距離 (> 10 -12 kpc) まで幅が広い。 (ii) GC 天体 3天体。距離を 9.2 kpc とする。 (iii) ミラ型星 9星。近傍 (< 1 kpc) にあり、まあまあのマスロスで弱いメーザー。 R Aql と WX Psc は幾何学距離、5/9 星は LOH - R2 距離。ミラシェルの半径は OH/IR 星の一桁小さいので、位相遅れ半径、敷い ては距離の精度は悪い。 (iv) 超巨星 1612 MHz メーザーを出す 3 星。距離は文献から得た。 |
表1ii = GC付近, iii = ミラ型星, iv = 超巨星. ![]() 表1v.接線方向天体 ![]() (v) 接点天体 Baud et al 1985 の、 SOH > 1 Jy で視線速度が大きい OH/IR 星。接点付近にいると看做される。平均距離は 8 kpc. |
![]() 図1b.WX Ser の地上近赤外、IRAS 測光、分光結果。 図1=赤外スペクトル 図1a の OH26.5+0.6 は典型的な OH/IR 星、 OH17.7-2.0 は珍しいタイプ の非変光 OH/IR 星の例である。図1b の WX Ser は可視ミラ型星である。 図1c の VY CMa はグループ (iv) の超巨星の一つである。 フラックスの信頼度 QI = 3 で信頼できる IRAS フラックスのみを扱うので、 OH 45.5+0.1 のよう に AFGL カタログに載っていても混入の危険がある天体は外される。一方 GC 3 天体は同定が怪しいが距離は正確であろう。 F25, F60 しか Q = 3 でない OH 11.5+0.1, OH18.5+1.4, OH 77.9+0.2 は F25, F60 しか使えない。それらは OH 31.0-0.2 (Q2=3 だけ)と並び、OH17.7-0.2 と似ている。SED と LRS は似ていて、 どもうも全て非変光らしい。 位置が不確かな 5 OH/IR 星 OH 12.8+0.9, OH 27.3+0.2, OH 31.0+0.0, OH 36.9+1.3, OH 53.6-0.2 の 位置は精度が低いため、赤外同定が怪しく IRAS フラックスが得られない。 |
![]() 図1a.OH 26.5+0.6 と OH 17.7+2.0 の地上近赤外、IRAS 測光、分光結果。 ![]() 図1c.VY CMa の地上近赤外、IRAS 測光、分光結果。 |
VLA 位置と IRAS 位置との比較 45 天体では VLA 観測が行われ、正確な位置が分かった。ただ、 OH 17.4-0.3, OH 18.8+0.4, OH 27.0-0.4, OH 36.4+0.3, OH 45.5+0.1 は HIIR と近いために位置が決まらない。VLA 位置と IRAS 位置との差の ヒストグラムを図2に示す。一致は良い。 RS Vir は固有運動が大きいために ズレが大きい。 |
![]() 図2.VLA 位置と IRAS 位置との差。 |
カラー補正 PSC では νF(ν) = 一定を仮定して補正したフラックスを載せている。 Explanatory Supplement VI C6 にはパワー則 SED に対する補正値が載 っている。そこで、各バンドでの SED 勾配を求めれば補正値が求まる。 ただし、F12 は 10μ シリケイトバンドの影響がある。8 - 15 μm の 平均勾配を使えばmエラーは精々 7 % に押さえられる。IRAS 4 バンドでの 補正値は、ミラ型星で 5, 10m 15, 10 %, OH/IR 星で 5, 10, 15, 10 % である。 星間減光 25 μm でも減光補正はファクター 2 に達する場合がある。減光量は 簡単なモデル de Jong 1983, Herman et al 1984 から求めた。60, 100 μ では減光より星間放射が影響するが、考慮しない。 距離 表2には個々天体の距離を最終列の参考文献と共に示す。第4−7列には 表1のフラックスに施すべき補正ファクターを示す。以降ではフラックス は補正後の値を意味するとする。 |
![]() 表2.OH/IR 星のカラー、減光補正と距離。 |
![]() 図3.上:地上観測 [2, 20] μm から計算した C12 カラーの分布。 下; IRAS 観測による C12 カラーの分布。 斜枠=ミラ型星。白枠= OH/IR 星。地上観測には観測しやすい青天体に バイアスが掛かる。 図4のフィット線は I(0) = 0.147 C122 - 0.487 C12 + 0.419 I(1) = 0.052 C122 + 0.276 C12 - 0.146 と表される。 |
![]() 図4.I(0) と I(1) の C12 による変化。 I(0) =log[∫2μm12μmSνdν /(ν&12S&12)] I(1) =log[∫12μm100μmSνdν /(ν&12S&12)] OH/IR 星の赤外フラックスは F12 と F25 を知れば、 F: = ν&12S&12[10**I(0) + 10**I(1)] で求まる。ミラ型星では星の < 2 μm 放射が多いので不正確となる。 |
![]() 図5.少なくとも4点の観測がある 17 OH/IR 星の輻射等級変光曲線。 変光周期とゼロ点は Dwigeloo モニターによる。 OH20.7+0.1 の第1点、 OH39.7+1.5 の φ 0.48 点でのみズレが大きい。 ![]() 表3.17 OH/IR 星の輻射等級。 |
![]() 図6.(a): OH26.5+0.6 の 輻射等級と OH 等級の変光の比較。 (b): OH 32.8-0.3 での比較。 近似変光曲線 f = 増光期間の割合、とすると、変光曲線は二つに分けた式で良く表現される。 0 < φ < (1-f) では Mbol = 〈Mbol〉 + ΔMbol cos[2π(1-φ)/2f] (1-f) < φ < 1 では Mbol = 〈Mbol〉 + ΔMbol cos[2πφ)/2(1-f)] 輻射等級と OH 等級の比較 図6にあるように、両者の変化は良く合っている。 |
![]() 表4.4グループの星の平均輻射等級と周期。 Feast 1984 は LMC (DM=18.53) 非炭素星ミラに対し、 Mbol = 1.03 - 2.242 log P Mbol = -2.5 log(L*/Lo) + 4.7 という関係を見出した。周期が非常に長い我々のサンプルもその関係 に従うことが図7から分かる。グループ1、2,3の平均値は LMC ミラの延長 とよく合う。グループ4は運動距離グループだが、 2.5 mag 落ちる。 ( 個々の星をプロットすべきだ。) |
![]() 図7.4グループの星に対する平均輻射等級と周期の関係。 グループ1= OH メーザーありのミラ型星。グループ2=幾何学距離 のある OH/IR 星。グループ3=LOH - R2 距離 のある OH/IR 星。グループ4=運動距離のある OH/IR 星。 破線= Feast 1984 の LMC ミラ。 |
![]() 図8.距離と輻射等級。実線= OH 検出限界と LOH - L* 関係とからの限界線。 N(Mbol) = OH/IR 星の光度関数 図8はサンプル(i)= Baud et al.1979 のフラックスリミッテッドサンプル からの 45 星の光度分布を示す。実線= OH 検出限界フラックス 4 Jy に 対応する。サーベイは銀河面の両側 4° 以内に限定された。Herman, Habing 1985b Phys.Rep. で求めたスケール高を採用し、更に図8下のサンプル領域の 変化を補正して、観測された光度分布を光度関数 N(Mbol) へと変換した。 図9に得られた光度関数 N(Mbol) を示す。 |
![]() 図9.AGB光度関数。破線= Miller, Scalo 1979 の主系列光度関数から導いた予測。 モデルから求める OH/IR 光度関数 Baud, Habing 1983 はシェル膨張速度 Ve が主系列質量と相関することを示した。その速度区間 11 - >20 km/s は Mms = 1.5 - 10 Mo に相当する。 Miller, Scalo 1979 は主系列星の質量関数と光度関数を与えた。彼らの光度関数と、我々の AGB 光度 関数の比較から、平均すると AGB 光度は主系列の 2.5 mag 明るいことが判る。 N(Mbol) = 単位銀河面当たりの OH/IR 星光度関数(星数/mag/kpc2)、 φ(Mbol) = 太陽近傍主系列星光度関数(星数/mag/kpc3)、 tms(Mbol) = ZAMS 寿命、H(Mbol) = スケール高、tOH = OH 期寿命、fOH = OH メーザーを持つ星の割合とおくと、 N(Mbol) = 2H(mbol)φ(Mbol)tOHfOH/tms(Mbol) (5) ここに、φ(Mbol) = φ(Mv-2.5) (何を云おうとしているのか? 上式の 2.5 が前に 述べられた主系列と AGB の等級差だろう。 φ(Mbol) は (Mbol+2.5) mag における 主系列星光度関数のつもりで使っている。輻射補正がカラーに依らず一定としてだが。 それなら、φ(Mbol+2.5) と書くべきと思う。) |
![]() 図10.ポンプ光度 Lp = (L35+L53) と LOH の関係。破線= ポンプ効率 25 %. (L35, L53 の単位が本文にもない。 Elitzer 1980 は 1612 MHz OH メーザーの励起が 35 μm と 53 μm 赤外光に依ることを示した。図10は IRAS WSDB と同じ時期の メーザーモニター 観測値と Lp (内挿値?)の関係を示す。ミラ型星の変換効率が約ファクター2低い。 これは、 Bujarrabal et al 1980 により予言されていたことである。OH/IR 星に対してフィットすると、 log LOH = log Lp - 9.76 |
![]() 図11.ポンプ光度 Lp の総光度中比率 Lp/L* と 赤外カラー C12 = 2.5 log(F25/F12) との関係。 図11には IRAS 赤外カラーが赤くなるほど、ポンプ周波数でのフォトン比率 が高くなることを示した。フィット式は、 2.5log(L*/Lp) = 1/(0.19C122+0.81C12+0.22) (7) 後の使用のため、 X = 1/[2.5 log(L*/Lp]で C12 を表す。 C12 = -0.125 X2 + 1.17 X - 0.23 (7)' |
![]() 図12a.10μm シリケイト帯の深さ A10と C12 の関係。 A10 正は吸収。 A10 = -2.5 log(F10/Fcont) ![]() 図12b.20μm シリケイト帯の深さ A20と C12 の関係。 可視ミラは 10, 20 μm の両方で放射帯を示す。OH/IR 星は、ほぼ確実に 10 μm 吸収と、非常に厚いシェルの場合は 20 μm 帯も吸収を示す。 A10 = -2.5 log(F10/Fcont) で、Fcont は λ 8 μm と 12 μm の内挿値である。A20 も同様に定義される。 A10, A20 を決める地上赤外観測は IRAS と違う時期で、観測波長分解能が 10 程度で低いので、バンド強度は 0.32 程度過小評価で、またすこしずれている。 図11a をフィットすると、 A10(mag) = 2.57 C12 - 0.16 (8) と表せる。A20 の方は分散が大きく、はっきりした式が出ない。 |
![]() 図13.OH 26.5+0.6 における、10 μm 帯深さ A10 と カラー C12 の変光 位相 φ による変化。実線= L* と LOH の差から予想された 変化。 φ = 0 が極大。 以前に、総フラックスと OH フラックスの変光振幅が異なることが判り、 それは天体カラーが変光により変わるためと解釈された。 OH 26.5+0.6 は L* と LOH の変化が全位相に亘って観測されている唯一の星で ある。この星に対して、カラー C12 とシリケイト吸収強度 A10 の変化が 予言できる。 観測から、L* と LOH は位相 φ の関数として表される。 そこで、式 (6), (7)' から C12 が出て、式 (8) を使うと A10 が出る。 つまり、変光位相により LOH/L* が変化することを、赤外 SED =カラーの変化と看做し、そのカラー変化を吸収深度に変換するという訳で ある。 (図の実線を見ると、極大時に青くなり、 浅くなる。しかしこの予想曲線は観測点からは支持されない。観測点を見ると、 カラー変化に吸収深度が連動していない。うーむ。) |
この後の話は少しわずらわしいので略する。 |
![]() 図14.rd = ダスト半径と ROH の関係。 |