Time Variation and Shell Sizes of OH Masers in Late-Type Stars


Herman, Habing
1985 AAS 59, 523 - 555




 アブストラクト 

 OH メーザーの変化=周期と振幅を測るための観測結果を報告する。可視周期 400 日の通常のミラ型変光星は同じ電波周期を示した。しかし、可視非同定の OH/IR 星の大部分は 2000 日を超える  OH/IR 星のかなり 25 % は小振幅か、全く変光を示さない。位相差から OH シェルの大きさが導かれる。それはミラ型星の場合 8 1015 cm, OH/IR 星では 5 1016 cm 程度である。


 1.イントロダクション 

 OH 源が超周期変光星であることを確認するため、 Dwingeloo 25 m 電波望 遠鏡を使った長期モニターが 1978 年に始まった。ここでは5年間の観測結果 をまとめる。  位相差からシェルサイズが分かることは Schultz et al. 1978 が予想し、 Jewell et al. 1980 が IRC+10011 で実証した。ここでは、より多数の星で その観測を行った。


 2.観測 

 2.1.サンプルの選択 

 9個のミラ型星と3個の超巨星 VY CMa, PZ Cas, NML Cyg, さらに明るい (SLSH)1/2 > 4 Jy の OH/IR 星を加え 総計 60 個を 4 - 6 年間観測した。

 2.2.観測 

 観測は 25 m Dwingeloo 電波望遠鏡で行った。表1にコンフュージョンの 問題がある星を載せた。





表1.コンフュージョンのある星

 3.光度曲線 




図6.プロファイル例: OH30.1-0.7。

 3.1.ラインプロファイルの形 

 図6=メーザープロファイル 

 図6にメーザープロファイルの典型例を示す。メーザー放射のモデルは Reid et al. 1977 に従う。このモデルでは、最も強いメーザー放射は シェルの最前面と最背面から出る。

 特徴 

 δv = OH 放射の範囲(ゼロになる点の間隔)Δv = ピーク間隔。

 3.2.膨張速度 

 δv を使った ve 導出 

 図7をフィットすると、

   ve = (δv - 2.55)/2 km/s   (4)

図7a.δv = OH 放射の範囲(ゼロになる点の間隔)Δv = ピーク間隔。  

図7b.δv/2 と vp = 最外側ピーク速度。  


 3.3.周期と振幅 

 観測フラックスの時系列にサイン関数をフィットして周期と振幅を定めた。 結果は表2に示す。


図8a.平均周期で規格化した様々なピークの周期の分布。

 3.4.電波光度曲線の非対称性 

 f = Pm-M/P = (極小から極大までの期間)/周期する。 OH放射の ミラ型星は f が小さい。つまり急な上昇と緩い下降が特徴である (Bowen, Kerr 1977)。


図8b.様々なピークの図9a と同じやり方で規格化した。


 4.位相差と距離 



 表2.OH 観測のまとめ 

 表2.1.同定された星 





 表2.2.OH/IR 星(同定失敗?) 







 表3.OH 変光曲線の特徴 


 fR = 増光期/周期。m1 = サイン波近似の振幅。













 5.結果 

 5.1.周期と振幅 


図9.振幅分布。

図10.変光 OH/IR 星の周期分布。斜線=OHを出すミラ型星。矢印=ミラ型 星の平均周期 Wood, Cahn (1977)
 非変光 OH/IR 星 

 表2b、図9を見ると、変光星と非変光星の二つに分かれる。中でも 次の6つは殆ど変光が認められない:
   OH 15.7+0.8   (Δmr = 0.13 mag)
   OH 31.0-0.2   (Δmr = 0.13 mag)
   OH 37.1-0.8   (Δmr = 0.13 mag)
   OH 51.8-0.2   (Δmr = 0.16 mag)
   OH 53.6-0.2   (Δmr = 0.12 mag)
   OH 77.9+0.2   (Δmr = 0.19 mag)

他の6個は多分周期的な小さい振幅を示す。ただ、それらではコンフュージョン の影響のため、周期的かどうかの確定が出来なかった。それらは、

   OH 11.5+0.1   (Δmr = 0.23 mag)
   OH 17.7-2.0   (Δmr = 0.16 mag)
   OH 18.3+0.4   (Δmr = 0.27 mag)
   OH 18.5+1.4   (Δmr = 0.19 mag)
   OH 25.1-0.3   (Δmr = 0.21 mag)
   OH 31.0+0.0   (Δmr = 0.13 mag)

OH 11.5+0.1 の L 成分は無変光で、 H 成分ははっきりした変光を示す。ただ、 これは近くの OH 11.3+0.0 の影響かも知れない。OH 25.1-0.3 は OH 24.7-0.1 と強く混ざっている。OH 31.0+0.0 は、位置としては W43 の近くであるが、 速度が合わないので、多分不規則変更する前主系列星であろう。
 OH/IR 星を電波変光で分類する 

 44 OH/IR 星 (OH 30.1+0.0 は前主系列星として省く)中、

   14 %   全く変光しない
   11 %   小振幅変光
   75 %   変光

注意すると、可視同定 OH 源では小振幅天体は Δv 大の超巨星であるが、 ここの小振幅星は全 Δv 星に亘っている。

 OH/IR 星の周期 

 OH/IR 星の周期は可視ミラ型星よりずっと長い。多くのサンプル星にとって 我々の観測期間は短すぎる。その結果、

   OH 21.5+0.5
   OH 30.1-0.7
   OH 127.9+0.0
   OH 138.0+7.2

の極大はまだ得られていない。

OH 75.3-1.8 と OH 104.9+2.4 では極小の観測が無い。OH 17.4-0.3 は 1983 年 に突然 3 倍明るくなった。


 5.2.個々星 

 5.2.1.R Aql と U Ori 

 R Aql 

 126年間の可視観測から、 tn = n-サイクル極大日と Pn = n-サイクル周期は、

 tn(max) = 2422301.8+312.35n-0.2330n2+0.00045n3  Pn = 312.35-0.4660n+0.00135n2

 表には n = 73 の値=電波観測の中間時期、を載せた。Pn 式の少し怪しい2次項 を抜くと、最近 Rudnitskij が赤外で得た 280 d と近くなる。Engels et al. 1983 も参照。R Aql は -6.16 と -3.72 km/s に弱いライン(表3)を持つ。

 U Ori 

 この星は 1974 年に 1612 ラインでフレアを起こし、その後図11に示す ような減少を続けている。1981 年以降は極大期にのみ観測可能となった。

 5.2.2.超巨星 

 VY VMa は長期変動が見られない。PZ Cas と NML Cyg では数年の静謐期の 後に(半)規則変光が続くという変動が見られる。しかしこの3天体は日 スケールでは大きな OH フラックス変動 PZ Cas > 3 σ, VY CMa, NML Cyg > 5 σ を示す。これは > 50 % のフラックスが非常に 小さい未飽和のスポットから発生していることを示す。

図11.U Ori 1612 MHz OH フラックスの時間変化。1974 年のフレア前には 主ラインでしか検出されなかった。





図12.VY CMa の OH フラックスの変化。平均すると一定だが、数日スケール で大きな変化がある。

 5.3.モデルに依存しない観測量 =表3の説明 

 5.4.モデルに依存する観測量 

 シェル半径 

 一様に膨張するシェル 

 一様に膨張するシェルのモデルは、k-番ピークの速度 vk と 位相差 Δφk の間に次の関係を予想する。

   Rp = cPΔφk[1+vk/v e]  (12)

この関係を確認するには Δφk を [1+vk/v e] に対してプロットしてみればよい。その結果は後の付録 B に示す。
(この議論はよく分からない。 様々なピークに対応するシェルは異なる速度で同じ期間膨張したガスからなる ということらしい。しかし、なぜある期間とんだガスだけが OH メーザー源 となるのか?二つのシェルの間にある異なる速度と年齢のガスはパスされ、 ある年齢のガスだけが選ばれるのはどうしてか? )
式12 に最少二乗近似して Rp を求めることが出来る。

 OHミラ 

 WX Ser を例外として、 OH ミラ型星は全て、 Δφk と vk との間に正の相関を示す。これは 単純シェルモデルが適当であることを意味する。半径の平均は 0.78 1016 cm = 6 日位相差である。

 超巨星 

 VY CMa と NML Cyg は小振幅長周期変光の星だが、日スケールで大きな フラックス変化を示す。Δφk と vk の 間に幾分かの相関があるが、 OH ミラと逆の相関である。これは超巨星の 幾何学構造が大きく異なるか、又は大きなランダム速度場があるためであろう。

 大振幅の OH/IR 星 

 Δmr > 0.6 mag の大振幅 OH/IR 星は全て膨張シェル モデルに従う。平均半径は 5.46 1016 cm で OH ミラよりかなり 大きい。これは OH 光度でおそらく 300 倍程度の差を意味する。

 小振幅 OH/IR 星 

 振幅が小さくなると、Δφk と vk の 逆相関サンプルの割合が高くなる。例えば、0.3 < Δmr < 0.6 では 5/12 だが、Δmr < 0.3 では 3/6 となる。 小振幅星の半径は 3.75 1016 cm である。

図13.一様に膨張する OH シェルのピーク速度と変光の関係。  



図14.各ピークの総フラックスの変化で決めた位相遅れからの半径と 各ピーク高さ変化で決めた位相遅れからの半径の比較。実線=モデルから の予想。δ = 10, 0.1 km/s の二本。

図15.全変光サンプルの半径ヒストグラム。括弧内には決められなかった星数 を記した。


 6.結論 

 変光 

 2000 d にまで達する長周期であるので、今回の 3 - 5 年モニターでは短す ぎる。電波 OH/IR 星の振幅は OH ミラとそう変わらない。多数の OH/IR 星が 小振幅で不規則な変光を示した。それは超巨星と似た特性であるが Δv がずっと小さい。
 位相遅れ 

 位相遅れからは OH/IR 星シェルの大きさが 5 1016 cm 程度で あることが分かる。OH ミラはもっと小さい 8 1015 cm の平均 半径を持つ。この位相差を出すには 6 日一度程度の観測が必要となる。  単純モデルからのズレはシェル厚み=1016 cm と合致する。


 OH/IR 星の特性 

 表4.1 ミラ型星と超巨星 



 表4.2. 大振幅 OH/IR 星 



 表4.3. 中振幅 OH/IR 星 





 表4.4. 小振幅 OH/IR 星 

 表4.5. 変光非検出 OH/IR 星 







 付録A OH メーザーの変光 













 付録B OH メーザーの位相遅れと視線速度 

 B.1.ミラ型星と超巨星 





 付録B.2. 大振幅 OH/IR 星 







 付録B.3. 中振幅 OH/IR 星 







 付録B.4. 小振幅 OH/IR 星