銀河系星種族の分布とそれらに観測されたマスロス率を用いて、星間物質内に 放出される固体ダストの量を推定した。M-型星と LROH/IR 星はシリケイト ダストの大部分を生み出している。炭素と炭化ケイ素ダストの大部分は炭素星 から生じている。WR-星、新星、超新星は特異な組成のダストを放出する。 |
炭化水素グレイン
の放出源に関しては観測的証拠が殆どない。恒星からのダストの注入と星形成
と超新星による消滅を比較して、銀河系ダストの生態学を研究すると、ダスト
グレインは分子雲中での降着により恒星からの放出に比べ 1 - 5 倍の割合で
形成されていることが示唆される。
(何だ?暗黒雲に降参? ) |
星間媒質中のダストは次の3通りの道で形成される。 (1).進化した星からの星風 (2).新星や超新星からの放出 (3).暗黒雲内での降着 | 星からの放出率と星種族の銀河系内分布を用いて星間媒質への注入率を評価 した。銀河系円盤のみを考えている。 |
2.1.星種族からのダストの注入A = 2.2 kpc = 円盤スケール長、 B = 円盤スケール高とする。R = 8.7 kpc = GC 距離。 Ni = i-種星の太陽近傍数密度。(dM/dt)i = i-種星の平均質量放 出率。F = ダスト/ガス 質量比。(dM/dt)dust,i = i-星種族 からのダスト注入率。(dM/dt)dust,i = 4πA2B eR/A Ni(dM/dt)iF |
2.2.星風内のダスト成分表1には星風内ダストの成分についてまとめた。PAH や HAC のような炭化 水素系ダストが星風内で量的にどのくらい存在するかを示す証拠はない。 新星や超新星放出物内で凝結した微粒子には、隕石インクルージョン中に見出 される化学的異常と類似の物質が含まれることを示唆する間接的証拠がある。 |
表2=ダストの形成と消滅源天体 第2列=銀河系内の全星数。第3列=星風内のガス/ダスト比。第4列=i-種族 からの質量全放出率。第5列=i-種族からのダスト質量全放出率。 M-型星 M-型星 M0 - M9 の数密度は Garwood, Jones 1987 から、平均質量放出率は Gerhrz, Woolf 1971 と de Jager et al 1988 から得た。全 M-型星からの質量放出率は 1.3 - 2.1 Mo/yr と見積もられる。そのダストが大部分シリケイトで、星風 中の Si 原子が全てダストに取り込まれると仮定すると、ガス/ダスト比は、 250 - 300 である。Jura 1987a はダーティシリケイトができるならこの比は 100 になると指摘した。したがって M-型星は 0.004 - 0.20 Mo のシリケイト を毎年星間空間に注入している。 RLOH/IR 星 Herman, Habing (1985) は銀河系内に約 60,000 の Radio Luminous Hydroxyl Maser Infrared (RLOH/IR) 星が存在し、それぞれが平均 5.1 10-5 Mo/yr の質量を放出しているとした。その総計は 3 Mo/yr に上る。 炭素星 ここでは炭素星という範疇に C, R, N. S 型星、それに AFGL 赤外探査で 見つかったダストシェルに覆われた炭素リッチ天体の全てを含める。Gehrz, Hackwell 1976 は AFGL サンプルに基づき、最後の赤外炭素星は星間空間への 質量注入の主要源であると述べた。Jura 1986a, 1986b は IRAS サーベイを 用いてこの仮説を支持し、炭素星は星間物質の約半分を説明するとした。 Jura 1988 は S-星のマスロスは 6 10-8 Mo/yr で全銀河系で 10,sup>-3 Mo/yr とした。 Claussen et al 1987 は CIT TMSS サーベイ 炭素星のマスロス率は 2 10-7 Mo/yr の低さであるが、このサー ベイで発見された星には AFGL, IRAS で見つかるような深く厚いシェルの星は 含まれていないと注意した。 全く異なる見解が Thronson et al. (1987) , Thronson et al. 1988, Zuckermann 1987 から提案されている。 Thronson et al. (1987) は銀河系炭素星の総数を 28000(R/15kpc)2 とした。R = 15 - 25 kpc は銀河円盤の半径である。この式では N = 28,000 - 78,000 炭素星になる。 もし M-星に対してと同じスケール長 A = 2.2 kpc, スケール高 B = 2 kpc の 指数関数円盤モデルを採用すると、 (円盤が厚すぎないか?) N = 63,000 となる。従って、炭素星全体からの還流は 0.34 - 0.96 Mo/yr で ある。 ダスト/ガス比=100 とすると、0.003 - 0.01 Mo/yr のダスト還流になる。 超新星 観測から決まった超新星発生率 1 SN/(30-50)yr と一回当たりの放出量 5-10 Mo から、還流率 0.1 - 0.4 Mo/yr である。普通の ガス/ダスト比を考えると これはダスト量に直して 0.001 - 0.007 Mo/yr となる。 |
M-型超巨星 M-型超巨星のマスロス率は (1-10) 10-5 Mo/yr である。Garwood, Jones 1987 は銀河系に 5200 M-超巨星と見積もった。全体では 0.05 - 0.5 Mo/yr となる。その成分はシリケイトに富む。 WR-星 WC8 星 HD193793 にダストが見つかっている。WC9 星は厚いダストシェルに 包まれている。マスロスは WR 星一般にみられるが、ダストが形成されるのは 晩期型 WR 星に限られるようだ。Abott, Conti 1987 は WR 星からは平均して 2 10-5 Mo/yr のガスが放出され、その 15 % が WR8, 9 星である と述べている。WR-星の銀河系内分布を考慮すると全銀河系でガス 0.01 Mo/yr, ダスト 10,sup>-4 Mo/yr の質量を還流している。量としては少ないが、 その化学組成が特異で、12C, 14N, 16,17N, 22Ne に富んでいる。 PNe Cahn, Wyatt (1976) は銀河系内に 38,000 の PNe が存在するとした。Natta, Panagia 1981 はその ガス還流は 0.05 - 0.5 Mo/yr とした。そのガス/ダスト比は 2000 - 3000 と 高いのでダスト還流は 10-6 Mo/yr である。 新星 新星からは 0.0015 - 0.005 Mo/yr だが、22Ne, 26Mg に富むという特徴がある。 RV Tau 星 銀河系内の 600 - 1200 RV Taus は 10-5 Mo/yr の平均マスロス 率を示す。全体で 0.006 - 0.01 Mo/yr の還流になる。ただ、低メタル量で、 ガス/ダスト比は 2200 くらいである。 OB 星 OB 星の還流は 0.03 - 0.3 Mo/yr に上がる。Van Buren 1985. しかし、ダス トは殆ど含まれない。 他のダスト源 活動的 YSO の流出中にはダストが含まれる。Lada 1985. しかし、ダストが 新たに形成されたのか、分子雲ガスの残留ダストか分からない。Seab 1987 は 分子雲中で非揮発性物質のダストが暗黒雲中で形成されている証拠を示した。 分子雲中での速いダスト成長タイム 106 - 107 yr は 分子雲が星間ダストの供給源として重要であることを示唆する。Jenkins 1987 が述べている重元素の大きな欠損は星から吐き出された重元素が効率よくダスト に取り込まれることを示している。こうして、 WR 星、新星、超新星はそれらが 重金属元素に富んでいる限り、星間ダストの重要な寄与を成す。 |
マスロス星とダスト組成の関係M-星、RLOH/IR 星、M-型超巨星はシリケイトダストを産み、炭素星、 WR-星、 新星は炭素と SiC ダストを生む。WR-星と新星, 超新星は化学異常性の原因と なる同位体を担う。炭化水素物質の供給源は不明である。炭化水素と それらのグレインマントルのの形成が星間過程かも知れない。還流率表2によると、ガス還流= 2.9 - 8.4 Mo/yr, ダスト還流= 0.01 - 0.08 Mo/yr である。還流の評価法として、別に、WD 誕生率がある。 Miller, Scalo (1979) による現在の質量関数 N(M) ∝ M-4 (M = [0.8, 10] Mo) に MS 光度 L ∝ M3.3 を適用すると、寿命 M/L ∝ M-2.3 で、それから導く WD 誕生率は 7 10-3 WD kpc-2yr-1 となる。これから全銀河系では 9 Mo/yr が得られる。ガス/ダスト比= 50 - 100 からダストの還流は 0.09 - 0.18 Mo/yr である。これは表2の結果と良く合い、表2がほぼ完全 に円盤への質量注入を説明すると結論できる。 |
星形成による消費=マスロスMiller, Scalo (1979) の現在質量関数からは、星形成により星間ガスが 3 - 10 Mo/yr の速さで 消費されることが予想される。この値はマスロスの総量にほぼ等しい。 Jura 1987b は太陽近傍では星形成による星間ガス消費が激しいとしたが、 おそらく間違いである。SN ショックの破壊Seab 1987 は SN ショックで星間ダストは 1.7 - 5 108 yrs で破壊されるとした。彼は暗黒雲内でのダスト形成が重要とした。 銀河系ガス質量= 5 109 Mo、ガス/ダスト = 100 を仮定する。 ショックが 10 - 30 Mo/yr の星間ガス = 0.1 - 0.3 Mo/yr ダストを処理する。 私は星からのダスト還流は 0.01 - 0.08 Mo/yr とした。この量では星間ダスト を補充するのに足りない。評価の不定性を考えると、星の 1 - 5 倍のダスト を生み出す別のダスト生産源が欲しい。暗黒雲内でのダスト成長はもっとも 魅力的な候補である。(何だ?暗黒雲に降参? ) |