低メタル大質量星の星風の意義 大質量星の進化を理解するため、化学組成の異なる局所群銀河内で大質量星の 探査を行っている。低メタル不規則銀河 IC 1613 に焦点を当て、低メタル大 質量星の解析を行った。青い大質量星からの星風にメタル量がどう影響するかを 調べ、局所群の低メタル大質量星の星風を調べて、早期宇宙の星のモデルとして 使うことが目的である。 OB アソシエーションカタログ IC1613 の OB アソシエーションカタログは, 大質量星を探す基礎になるばかりか、 IC 1613 の最近の星形成史を理解する役に立つ。赤化相殺 Q 指数は若い種族の解析 に有効である。なぜなら、OB 型星に対しては B-V より縮退度が低いからである。 Q - V 図を用いて IC 1613 の OB-アソシエイションの解析を行い、それらの年齢、 質量を定め、若い大質量星集団を確認した。 |
アソシエイションの分布と星形成史 その結果、 M ≥ 50 Mo の星 10 個以上を確認した。それらの幾つかに対し 得られたスペクトル分類はそれらが大質量星であることを再確認した。集団中の 最大質量と集団質量とには相関があるが、集団密度との相関は見られない。 アソシエイションの平均直径は 40 pc で、歴史的に考えられてきた値の半分である。 アソシエイションの分布は HI, HII の分布と強い相関がある。H I が豊富な バブル領域ではアソシエイション年齢の広がりが最も大きい。これは、そこでの 星形成が銀河の他領域より長期間にわたって継続してきたことを意味する。 最も若いアソシエイション 最も若いアソシエイションはバブル領域から離れた銀河の西に見つかった。そこは 伝統的には星形成が起きている唯一の場所と考えられていた。 Q は役に立つ 測光と分光から導かれた星の性質を比較した結果、Q 指数は測光データしか 存在しない場合に OB-星の性質を調べるのに大変有効であることが判った。 |
宇宙論での重要性 過去10年、メタル量が初期宇宙と類似する低メタル近傍銀河中にある 青い大質量星の研究が盛んになった。宇宙初期の第1次低メタル星は質量が非常に 大きく、宇宙の再電離を起こしたと考えられている。もう少し赤方偏移が小さい銀河 では、大質量星からの光が星形成銀河からの光を支配している。 近傍銀河の大質量星 近傍銀河では星が個々に分解できるので、その大質量星を調べることは早期 宇宙の理解にとって重要である。既に多体分光器と8−10m望遠鏡の組み合わせ で多くの研究がなされている。しかし、星を等級とカラーで選別するだけでなく、 星団の星を選べば、質量と年齢の情報も加えられる。 OB アソシエイションの大質量星 若い大質量星は通常 OB アソシエイションと呼ばれる重力的に拘束されていない ほぼ同一年齢の集団中に見出される。その研究からは最も最近の星形成活動が 明らかにされる。 |
OB アソシエイションの概念が変わった また OB アソシエイションは大質量星の進化を研究するにも 最適の場所である。以前 OB アソシエイションは独立の天体として考えられて いたが、最近 (Elmegreen, Efremov 1998) の研究では、はっきりした長さスケール を持たない階層的構造を持つとされている。 低メタル環境での星形成 我々は IC 1613 の大質量星種族の総合的研究に乗り出した。その星種族は 中心 9′ × 9′ 領域に集中している。この銀河が興味深い のはそのメタル量が 0.04 - 0.2 Mo と低いからである。この銀河の OB アソシエイションは低メタル環境での星形成を調べるには絶好の場所である。 アソシエイションのカタログ 研究の第1ステップとして、 Garcia et al. 2009 では IC 1613 中の OB アソシエイションのカタログを作った。観測は V = 25 に達する非常に深い測光で、 34′ × 34′ の 広さに及んでいる。 色等級図、二色図をモデル等時線と比較 この論文では、色等級図、二色図をモデル等時線と比較して、 アソシエイションの物理的性質を明らかにする。 |
2.1.Q 指数:若い星種族研究の強力な武器Q - Vo 図を使用するこの研究のには Q - Vo 図を使用する。ここに、 Q = (U-B) - 0.72 (B-V) である。(B-V) - V 図を使わない理由は、 (i)Q は減光則が合っていれば減光の影響がない。 (ii)OB 星スペクトル型に対し、Q の変化が大きい。 (iii) Q - Vo 図では等時線がよく広がる。 一方、欠陥もある。 (i)Q を作るのに3バンドデータが必要で、エラーが大きくなる。 (ii)減光則の変化に対し、Q の反応が大きい。 Q - スペクトル型関係 図1は Q - スペクトル型関係を示す。Q とスペクトル型の間に強い関係が 存在することがわかる。Q ≤ -0.4 の星の大部分は OB 星である。 B 型からさらに早期に行くと Q ≤ -0.9 で勾配は緩くなる。 Q ≤ -0.9 では 3/26 B-超巨星を除いては、全て O-, Be-星、それに一つの WO 星 である。 |
![]() 図1.Q - スペクトル型関係。データは Bresolin et al 2007 から。シンボルと色の意味は図中の説明を見よ。シンボルの大きさは 光度クラスを示す:最小=V、最大=I. WO、Be 星の X 軸は意味ない。 Q ≤ -0.4 の星は OB, Be, W-R 星である。 |
Q - Vo 図ではグループ分けされる 図2には Q - Vo 図を示す。O-型、B-型、 Be-型、W0 という異なるグループの星が別々の区域に集まっている。 WO と Be は非常に青い。Be 星の典型的な Q-値は -1 である。そこから Q を上げていくと O-星の領域に 3 つの B-超巨星が侵入しているところに 差し掛かる。しかし、より高分解能のスペクトルを調べると、それらが O9 型という可能性が強い。したがって、最も青い Q は O-型星で、最も若い 等時線に合うと考える。 Te - スペクトル型図で 最後に、Te を等時線とのフィットで定め、その Te をスペクトル型と 比較した。図3を見ると、「進化的」Te は予想通り早期型に向かって 上昇するが、O-型星で平坦化する。 ![]() 図2. Bresolin et al 2007 が分類した星の Q - Vo 図。シンボルの意味は図1と同じ。O-型、B-型、 Be-型、W0 という異なるグループの星が別々の区域に集まっている。 |
B0-2 型付近では大きな温度分散が
目立つ。それは、前に述べた高分解能スペクトルによる再編で一部は
修正された。図3には Trundle et al 2007, Mokiem et al 2007, Massey
et al 2009 による SMC の結果も合わせて載せた。この図は Q - Vo 図
からスペクトルサブタイプと Te を決められる証拠と考えてはいけない。
この図はむしろ、等時線解析からの結果はスペクトル型と無矛盾である
ことを示していると考えるべきである。
個々の天体には分光が必要 こういう訳で、測光に基づいて第1次的、統計的には満足のいく結果が 得られそうである。しかし、個々の天体に対する結果は注意が要る。 ![]() 図3.有効温度 Te - スペクトル型図。Te は等時線にスペクトル型を合わせて 決めた。シンボルの意味は図1と同じだが、マゼンダは Mokiem et al 2007 と Massey et al 2009 の SMC サンプルである。WO と Be 星の X 位置は任意。 点線= Garcia et al 2010 によるスペクトル型修正のライン。IC 1613 の Te-スペクトル型関係は概して SMC と似ている。 |
CDM と等時線の比較 CDM と等時線の比較が研究の基本である。使用したのは、 Lejeune, Schaerer 2001 の Z = 0.004 等時線である。 回転の影響 回転効果の系統的な研究は進んでいないので考慮しない。主系列後期 には回転モデルは非回転モデルより明るくなり、水素核燃焼末期には 0.5 mag に達すると Maeder, Myenet 2003 は述べている。従って、 非回転モデルでは、この時期の星の質量を過大に見積もっているかも 知れない。 |
Q - Vo 関係と、Q - カラー関係を用いた。論文12.1.節での解析では これから計算すると、Vo に 0.3 mag の誤差が生じる。 ( Q-Vo 関係の誤差か、Q-カラー 関係から E(B-V), Av を導き、Vo = V - Av を出した誤差か、不明。) 関係は Massey et al 2000 の、 (B-V)o = -0.005 + 0.317 Q である。 等時線間隔 等時線は 0.3 dex 間隔で引いた。この間隔は、色等級図上での星位置の 不定性を考慮して決めた。 |
#134 の (B-V) - V 図 図4a にアソシエイションの (B-V) - V 図を示す。等時線は DM = 24.27 ずらした。前景減光 E(B-V) = 0.02 を加えた。星の OB 星と 非 OB 星の区別は論文Iの表3、4に従った。簡単に言えば、 Q ≤ -0.4 を OB 星候補(青丸)、 Q > -0.4 を非 OB 星(赤丸) とした。薄青の小さい点は他の IC 1613 星である。 OB 星 図4a は若い、青い星の系列が見える。二つの OB 星が大きな (B-V) を 示している。一つはブレンド星だがもう一つは孤立星であった。これら 二つは年齢決定には用いない。非 OB 星が6個ある。内3つは赤色超巨星 の領域にある。 色等級図からは等時線が混んでおり、年齢は決まらない。 Q - Vo 図では等時線が広がる 4b、Q - Vo 図では等時線が広がる。等時線は縦軸方向に DM 補正したが、 前景減光の補正はしていない。星の Vo は前景+局所減光は個々に計算した。 Vo = V + ΔV で ΔV は 2.2.節で述べた E(B-V)から求める。 Q - Vo 図から決める年齢 Q - Vo 図上で、大部分の OB 星は log t = 6.8 - 7.1 区間に散らばる。 しかし、広がりは log t = 5.9 - 7.4 に及ぶ。最も明るい星は log t = 6.8 付近に、赤色巨星候補は log t = 7.1 - 7.4 に分布し、他の赤い星は log t = 7.7 - 8.0 に位置する。しかし、それらの星には赤化補正が加えら れていない。したがって、固有光度はもっと明るい可能性がある。 |
非常に青い星は様々な進化段階を代表している Q ∼ -1 で非常に青い星の系列は年齢、質量決定に使われなかった。それら の幾つかはブレンドの結果や、広がった天体であり、棄てられた。残りの星 は 2.4. 節で論ずる。それらは様々な進化段階を代表している。 (U-B) - Q 関係 図4cは (U-B) - Q 関係を示す。全ての等時線が重なり合う。星のカラーに は赤化補正を行っていない。星位置が等時線と少しずれているのはその効果 かも知れない。 Q - スペクトル型の多価性 図4d (B-V) - (U-B) 関係で異常赤化を示す星は自動的に棄てている 訳ではない。例えば 60362 号の星は B-V ∼ 0.3, U-B ∼ -0.7 で通常ならば、偶々紛れ込んだ外部星見なされる。この星の Q は青いの だがカラーは赤いからである。大抵はブレンドか銀河である。他のケースは 62813 号で、 B-V ∼ 0.5 で Q ∼ -0.4 である。これは Q ≤ -0.4 という選択条件の限界で、Q - スペクトル型が多価性を持つように なることと測光エラーによる分散が結合した結果であろう。 |
現在、原因は不明だが異常に青い星が存在する。
ブレンド 等時線より Q が青い星が幾つか見られる。明らかにブレンドの効果と 思われる星もある。 ( Q の大きな星が重なって、Q が 小さくなり得るのか?) しかし、孤立星と見えるのに青い Q を持つ星も多数ある。 星雲ライン 異常に青い星の中には星雲の中に見つかる。輝線が混入して青く見えるの ではないか?そこで、IC 1613 # 13 HII 領域の輝線を Hodge et al 1990 から採って、輝線の効果を計算した。表2にその結果を載せた。観測される 青さを説明するには ΔQ < -0.3 が必要だが、表2の値はそれより 大きい。 メタル量? メタル量は進化経路に影響する。低メタルが異常な青さの原因ではないか? しかし、 IC 1613 のメタル量では |ΔQ| <: 0.1 で説明には 不十分であった。非常に青い天体は高温度惑星状星雲かも知れないが、 今のところ、 IC 1613 には二つしか見つかっていない。 |
![]() 表2.ΔQ = Qneb+* - Q* の計算値。 進化した星? 異常に青い星はある進化段階を代表しているのではないだろうか? Be 星は Q ≤ -1 になる。 IC 1613 の W-R 星は Q = -1.35 である。これらは周星 星雲光の混入による結果である。 |
3.1.サイズ星形成の典型サイズ過去には星形成には一般的なサイズがあり、それは 80 pc (Ivanov 1991) くらいで、それがより大きな、0.2 kpc (aggregate), 0.6 kpc(complex), 1.2 kpc(supercomplex) の中に埋まっていると考えられていた。 新しい階層構造 最近の考えでは、星形成は階層構造をなす過程で、ある階層のグループは 上の階層の一員であると看做される。そこで、アソシエイションのサイズは 定義に依存する。 IC 1613 は伝統的なアソシエイションサイズか? 与えられたアソシエイションを包み込む円の半径をサイズと考えよう。 発見されたグループは半径 6″ 以下であり、平均は 6.1″ で あった。標準偏差=4.5″ である。DM = 24.27 を採用すると、平均 直径= 42.7 pc となる。この値は伝統的に提案されてきた 80 pc の半分で ある。 |
5個以上の OB 星をアソシエイションの最低基準にすれば、平均サイズ
80 pc の規格に達する。しかし、銀河系内の典型的アソシエイションを
IC 1613 距離に持っていくと、3,4個以上の OB 星は期待できない。
副集団を見ている? 我々の使った「友達の輪」アルゴリズムは古典的アソシエイションの中心 コアを検出している可能性がある。以前の視察による研究で既に 200 pc 以上 のアソシエイションは幾つかの副集団に分けられることが報告されている。 我々の検出法では 200 pc 以上のアソシエイションは #151 だけである。その 視察では確かに高密度の副集団に分裂して見える。140 pc まで許すと、 #127, #137, #147 という泡領域のアソシエイションが現れる。全てが 内部の構造を示す。 別説明 なぜサイズが小さいかの別説明として、U 測光に高い精度が要求される 事がある。そのため、集団中の少し U が暗い星は測光精度で落とされ、 集団の成員数が減少し、結果として集団サイズを減少させているのではないか? |
成員数の分布 アソシエイションに属する星の数は大体 10 以下である。アソシエイション の 44 % は成員数=3で、21 % が4, 34 % が 5星を持つ。10星以上 を有するのは 10 % である。 成員数とアソシエイションサイズとの関係 成員数とアソシエイションサイズとの関係は図7に示されている。 関係をフィットすると NOB = 0.04 + 0.32 R + 0.05 R2 であった。大きなずれは見られない。 |
![]() 図7.OB アソシエイションの成員数とサイズの関係。実線=二次式フィット。 |
大きなアソシエイションの Mup は大きい 表1には各アソシエイションの最大質量星が載せてある。この数字は Q - Vo 関係から導かれた。図8には最大質量 Mup と成員数の関係をプロット した。当然のことだが、大きなアソシエイションの Mup は大きい。 小さいアソシエイションに大きな Mup 小さいアソシエイションに大きな Mup を持つものがある。簡単な説明は 暗くて検出から漏れた OB 星を加えると、実はそれらは大きなアソシエイション だったというものだ。他の可能性として、それら明るい星は複数の星の系で あるというものだ。色々な説明が可能だ。 ![]() 図8.成員数 NOB と最大星質量 Mup の関係。赤線菱形=同じ 成員数アソシエイションでの Mup 平均値。赤エラーバー=標準偏差。 NOB = 3 - 5 の小さなアソシエイションに大きな Mup が 出現している例に注意。右端は # 151. |
最大のアソシエイション #151 最大のアソシエイションは #151, NOB=69 である。この星団は 図8の近似式に従わない。反対に、その色等級図上端は4つの青い大質量星 で占められている。さらに等時線の左にはみ出る星が多数存在する。 この領域には W-R 星と Be 星が存在している可能性がある。さらに #151 には IC 1613 で知られている唯一の SNR がある。 Mup とアソシエイションの OB 星面 密度との関係 図9には、Mup とアソシエイションの OB 星面密度との関係を示す。 図8と9とを合わせて考えると、成員総数が Mup を決めているらしい。 ![]() 図9.Mup とアソシエイションの OB 星面密度との関係。 |
サルピータ IMF で計算した サルピータ IMF dN ∝ M-2.35dM, dM ∝ M-1.35dM を使い質量を計算した。質量の 上限に Mup を、下限に各アソシエイションの最低質量を採用した。 |
計算結果 M = 1.1 × 102 - 5.1 × 103 を得た。 |
図10には IC 1613 アソシエイションのカラーで示した年齢の 空間分布を示した。全体として若いアソシエイションが NE 側に 集まる銀河全体に渡る年齢勾配が見られる。 (本当? ) |
![]() 表3.アソシエイションの年齢と質量の比較 |
4.1.アソシエイションと中性水素図11には中性水素とアソシエイションの相互位置を示す。図を見ると次の 5つの特徴が分かる。(1)HI かたまりにあるアソシエイション Garcia et al. 2009 カタログ上の最大アソシエイションは、 #127, #137 が水素塊 1 に、#147, #151 が水素塊 2 にある。そこは銀河の NE 側にある活発な星形成域である。大量の水素 はここでは長期に渡り星形成が継続していることを説明する。 (2)HI ボイドの中のアソシエイション HI キャビティの南西縁には HI がない。そこは多数のアソシエイションに 占められている。水素は全て電離されているに違いない。実際、 Valdez-Gutierrez et al 2001 の HIIR, R14, R15, R16, R17 はアソシエイションに重なっている。 WLM でも似た状況が起きていて、中性水素は星形成の結果、電離されている。 HI キャビティの起源は不明である。Silich et al 2006 は複合超新星爆発が原因 ではないと結論した。星形成により HI ガスが消費されつくした可能性がある。 (3)HI シェルの壁上のアソシエイション 伝統的に星形成の場とされた領域から離れて、南側に #17, #83, #142 が、 西側には #3, #5, #6, #8, #12, #15, #18, それに #16-#19-#21-#32 複合体 が並ぶ。IC 1613 の中性水素は HI-ホールの先に伸びて、HI キャビティと 弧状構造を形成する。上のアソシエイションはその上に乗っている。 (4)HI シェル内部のアソシエイション 孤立アソシエイション #142 は HI ホール内の HI 塊17の中にある。 このアソシエイションは近隣のガスを消費尽くしたのか、吹き飛ばしたのか は不明である。泡領域には Lozinskaya et al 2003 の H シェル II, III があり、それらはアソシエイションに吹き飛ばされて形成されたものであろう。 (5) 我々のアルゴリズムは HI 塊 4 - 9, 13, 15 - 18 にアソシエイションを 発見しなかった。そこでの HI 密度は他よりも低い。それがアソシエイション がない原因だろう。 |
![]() 図11.中性水素とアソシエイションの相互位置。灰色=中性水素。 等高線カラー=アソシエイションの年齢。HI 集団の数字は Silich et al 2006 の付けたもの。HI キャビティは HI 1, 19, 11, 14 に囲まれている。 |
4.2.局所的に誘発された星形成OB アソシエイションと電離領域は高密度 HI 塊の縁に存在IC 1613 東北のへりを除き、OB アソシエイションと電離領域は大部分 高密度 HI 塊の縁に存在する。Hodge et al 1990 はこの電離水素対中性水素 の非対称位置関係は我々の銀河に見られる現象と類似していることを指摘 した。アソシエイションの年齢決定は重要である。 |
IC 1613 の最も明るい星と最も大きなアソシエイションは HII シェル の縁と異なる泡のぶつかり合う面に存在する。Lozinskaya et al 2002 は 膨張 H II シェルが中性ガスと衝突すると星形成が誘発されるかを調べた。 彼らは泡の縁が最も活発な星形成域であることを見出した。 でも真ん中にもある アソシエイションは H II 領域の縁にもあるが中央にもある。我々は 通説と違い、縁と中央とで年齢の差を見出せなかった。分光が必要。 |
5.1.最も重い星リスト表4には IC 1613 で最も重い星のリストを示す。M > 50 Mo の 星が 13 個、11 アソシエイションに別れて存在する。 #43, #120 以外 は全て東北複合体に属する。このリストはアソシエイションに属する星 のリストなので完全ではない。 星の性質 表4星の分光を計画 5.2.IC 1613 質量矛盾?進化質量と分光質量の差OB 星において、進化質量と分光質量の差は長い間問題(Herrero et al 1992)であった。表5にはこの研究で得られた進化質量を Bresolin et al 2007 からの 7 個の OB 超巨星の質量と比べた。質量の差は Massey et al 2009 のより大きい。差の原因としては Q に基づく減光補正が 考えられる。分光質量は下限を与えると注意があり、進化質量は少し 過大評価されているのかも知れない。 |
![]() 表4.IC 1613 で最も重い星のリスト |
アソシエイションの性質 「友達の輪」法で見つけた集団が物理的に意味のある集合体かどうか はっきりしないが、その性質を調べることは必要な第1歩である。 Q - Vo プロット Q - Vo プロットは解析に有用であることが判った。主な理由は等時線が 分離して、年齢を決めやすいからである。減光則が不正規な場合のエラー のような欠陥はあるが、若い種族の解析には役立つ方法である。 位置分布 アソシエイションは銀河東北部にある泡領域に集中していた。 年齢は log t = 5.9 - 7.7 で星形成が現在に至るまで進行中で あることを示す。これは H I ガスの集積とも合致する。若い アソシエイションは HI キャビティの南西縁にも見られる。そこでの 若いアソシエイションの年齢は log t = 6.8 で年齢幅は狭い。そこ には中性水素は見られない。 |
最大質量 最大質量星は大きなアソシエイションにも見られるが、小さな 方にもある。これはトラペジウムのように小さな星形成域に 大質量星が見つかることが例外でないことを支持する。 サイズ 平均サイズは 40 pc で、通説 80 pc の半分であった。 進化質量と分光質量の矛盾 我々の求めた進化質量は分光から決めた質量より系統的に大きい。 減光補正が原因かもしれないが、同じ E(B-V) を使った星の場合でも 差異が大きいので疑問が残る。 |