The Progenitor Masses of Wolf-Rayet Stars and Luminous Blue Variables Determined from Cluster Turnoffs I. Results from Nineteen OB Associations in the Magellanic Clouds


Massey, Waterhouse, and DeGiola-Eastwood
2000 AJ 119, 2214 - 2241




 アブストラクト

 19 OB アソシエイション内の新種天体の発見 
 自分たちと文献データを合わせて、ウォルフ・ライエ星と他の進化した大質量星 を含むマゼラン雲の 19 OB アソシエイションを調べた。分光から多数の天体、 例えば O-型超巨星、SMC 中の大質量連星、LMC の新しく確認された LBV (LBV R 86)、 新しく発見されたウォルフ・ライエ星 (Sk-69°194)、新発見の Be 星 LH 85-10 などを同定した。

 HR 図の決定 
 これ等のデータから赤化の決定、物理的 HR 図の作成を行った。約半数のアソシ エイションは共時的(coeval) で、大質量星の年齢差 Δτ < 1 Myr で あった。未進化系列の星の最大質量から、進化した星の母星質量を決めた。また、 未進化系列の最大質量星の総輻射光度から、進化した星の輻射補正 BC を決めた。 これらの星の複雑な大気をモデル化する際に BC の制約は大変有用であった。

 成果のまとめ 
 こうして我々は以下を見出した。

 (1)SMC の WR 星は > 70 Mo 
(1)SMC の WR 星は最大質量 (> 70 Mo) から来た。これは、低メタル環境では 最も質量の大きい星のみが十分なマスロスが出来、従って W-R 星に成れるという シナリオに合致する結果である。

(2)LMC では M > 30 Mo 星は WNE 期を経る 
(2) LMC では早期型 WN (WNE) 星がターンオフ質量 30 - 100 Mo またはもっと大 のアソシエイションで見られる。これは、 LMC メタル量の場合、M > 30 Mo の 星は全て WNE 期を経ることを意味する
 (3)SMC ただ一つの WC 星は 70 Mo  
(3)SMC でただ一つ見つかった WC 星はターンオフ質量 70 Mo のアソシエイションに 属する。このターンオフ質量は SMC WN 星の場合に等しい。LMC では WC 星が見つかる のはターンオフ質量 45 Mo かそれ以上のアソシエイションである。これは WN 星 と同じ区間である。つまり、 WC 星は基本的には WN 星と同じ質量区間の星から 生まれる。それがしばしば同じ星団中で両者が見つかる理由であろう。これは 局所群銀河内での WC/WN 比を解釈する際に重要な意味がある。

 LBV は最も大質量 M > 85 Mo  
(4)我々のサンプルでは LBV は最も大質量 M > 85 Mo のグループから 出てくる。最近 Ofpe/WN9 星の一つが LBV 的な燃え上がりを示した。これから Ofpe/WN9 星は LBV の一種ではないかという議論があった。しかし、今回の サンプル中に合った二つの Ofpe/WN9 星, BE 381 と Br 18 はターンオフ質量 が 25 - 30 Mo のアソシエイションに属していた。したがって、Ofpe/WN7 星は LBV とは関係がなく、LBV 的に見える変光の全てが同じ原因ではないことに 注意すべきである。

 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5
(5)WN, WC 星の輻射補正 BC は極端な大きさで、例えば平均 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5 である。これらの値は最も高温の O-型星と比べてさえ、絶対値 でずっと大きい。しかし、WNE 星に Hillier の「標準モデル」を適用した結果 では類似の BC を得ている。BC(Ofpe/WN9) = -2 to -9 でより穏やかである。 これらの値を銀河星団に適用すれば異なるメタル量での大質量星進化を理解 するのに役立つだろう。


 1.イントロ 

 コンティシナリオ 

 コンティ 1976 は W-R 星は大質量星の正常な進化状態の一つであるという説を 提唱した。その現代版(Maeder,Conti 1994)では、大質量星主系列期に強い星風 が水素外層を剥いで行き、まず CNO サイクル水素燃焼による He と N が 現れて WN 星となる。この時期が水素核燃焼期の末期か、ヘリウム核燃焼が 開始した後かは、星の光度とメタル量に依存する。さらに質量放出が進み、 トリプル α 反応による C, O が現れ WC 星となる。

 質量による進化の差 

 主系列で初期質量のどのくらいを失うかは光度(質量)に依るから、低質量 では W-R 星になれずヘリウム燃焼期を赤色超巨星として送り、もう少し大きい と WN 星まで、十分に大きくて初めて WC にまで到達すると予想される。 星風は電離したメタル原子に働く輻射圧が原因なので、質量放出はメタル量 に依存する。したがってメタル量の変化に伴い、 WN や WC になる最低質量は 銀河間で、また同一銀河内でも場所により変化する。

 混合年齢種族 

 局所群銀河の混合年齢種族からコンティシナリオの予言の幾つかが確かめられた。 例えば、MC/WN 比はメタル量に強く依る。高メタルになるほど WC の割合が増える。 これは、 WC に成れる最低質量が高メタルになると下がり、 WC 可能質量範囲が 広がるためと考えられる。同様に、 W-R 星と RSG との比にもメタル量と相関がある。 高メタルになると明るい RSG が消失する。これは、高メタルでは RSG の代わりに W-R 星に成るためと解釈される。

しかし、まだ基本的な疑問が残されている。

(1)LBV の位置は? 

 LBV は非常に明るい高温度星で、質量放出の急増を伴う燃え上がりを起こす。 これは水素核燃焼の末期にある大質量星全てに起こる進化の一状態なのだろうか? 最近の研究では LBV の幾つかは連星である。LBV の典型天体である η Car は 大きな離心率を持つ連星である。しかし、燃え上がりが連星現象かどうかは未確認 である。SMC の W-R 星 HD 5980 は LBV 的な燃え上がりを示すが、この星も連星で ある。しかしその性質は未だ不明である。
 最近、Ofpe/WN9 型 W-R 星と高光度 B[e] 星が LBV 現象と関係するのではない かと言われている。前者のスペクトルは Of 星と WN 星の中間型で、その典型星 R 127 は 1982 年に燃え上がりを起こした。B[e] 星の幾つかも LBV 的な燃え上がり を示す。M 33 の有名な LBV Var C のスペクトルは B[e] 星と区別がつかない。B[e] の全てが LBV となるのだろうか?この点に関し、コンティ 1997 のレビューが参考 になる。

 2.WN と WC の関係 

 WC に成れるのは最高質量星のみで、より低質量だと WN 止まりと考えている。 WC, WN になる質量範囲がメタル量によって変化するのが WC/WN 比変動の主原因 と考えているが、 WN, WC 期間の寿命もメタル量に影響される。したがって、年齢 混合種族の WC/WN 比の解釈は入り組んでいる。

 副分類 

 粗い分類では、早期型 WNE, WCE と晩期型 WNE, WCE に分ける。これは スペクトル中で、高励起イオンと低励起イオンのどちらが支配的かによる。 Crowther 2000 のモデルは WNE と WNL の違いは温度ではなく、メタル組成の差 によることを示唆している。Massey, Johnson 1998 は WC が見出される場所から 同じことを示唆している。

 LBV と W-R は難しい! 

 恒星進化モデルによると、ヘリウム核燃焼期の進化はそれ以前の放出量に 大きく影響される。したがって、 LBV 現象で放出される総質量は W-R 星の 母星質量を決めるのに決定的である。しかし、それは大きな量であるが、短期 で偶発的なので進化モデルに組み込むのは難しい。その上、まず LBV や W-R が HR 図のどこに位置するかの決定が困難である。 LBV は大きな UV 超過を示し、 "擬光球"現象を示す。 W-R 星の方は有効温度も輻射補正も確立していない。

 最近のモデルは有望 

 最近 Hillier 1990 らが提唱した "標準 W-R モデル" を使って、Crowther 等は WN 星の有効温度、光度、化学組成、質量放出率を求めた。本論文ではそれらに 相補的な試みとして、この問題に観測面から接近する。それは、 W-R 母星質量、 輻射補正を与えて、W-R 大気モデルにに制限をかけるだろう。


 1.1.星団ターンオフの利用 

 大質量星形成は共時性が強い 

 Hillenbrand et al 1993 は NGC 6611 で大質量星の形成時期が最大 1 My の 時間巾に収まることを発見した。これに反し、中小質量星の形成時間巾は数 Myr に渡る。つまり、「最高質量の星は全てある火曜日の晩に生まれた」のである。 R 136 星団の大質量星の年齢幅も 1 Myr 以内であることが、多数の O3 V が 存在し、かつその生存期間が短いことから分かる。

 星形成からの裏付け 

 Elmergreen 1997, 2000 は星形成時間は横断時間の 1 - 2 倍くらいであることを 示した。大きな OB-アソシエイションで 100 pc もあるとその横断時間は 10 Myr になる。しかし、その副構造ではそれが 3 Myr 程度に落ちる。

 主系列星の最大質量が進化星の質量 

 大質量星では質量-光度関係は平坦になって行き、 M = 30 mo で L ≈ M2.4, M = 120 mo で L ≈ M1.5, その結果、 主系列寿命は質量が大きくなってもそれほど短くならない。120 Mo で 2.6 Myr, 60 Mo で 3.5 Myr, 25 Mo で 6.4 Myr である。そこで、星団の進化した 星に対してその最少質量を決めることが出来る。もし WC 星を含む星団の 主系列星の最大質量が 60 Mo だったら、その WC 星の母星質量は 60 Mo と 推定してもよいだろう。

 輻射補正の決定 

 星団ターンオフは輻射補正の決定にも使える。大質量星は光度一定で進化する。 そこで、 W-R 星の光度=主系列先端星の光度と仮定する。進化モデルから さらに光度進化の効果を入れた補正も可能である。
 主系列法の歴史 

 Schild, Maeder 1984 は銀河星団にこの種の解析を行い、 WN 星が 18 Mo 以上の 星から生まれ、一方 WC 星は 35 Mo が必要と結論した。Humphreys, Nichols, Massey 1985 は同じく銀河星団の文献データからもっと大きな最低質量を見出した。 かれらは、この方法を使って W-R 星の輻射補正を導いた最初のグループである。 その結果は BC(WNE) < -5.5, BC(WNL) < -3.5, BC(WC) < -5 である。これらの 値は以前より絶対値でずっと大きい。Smith, Meynet, Mermilliod 1994 は同じデータ を再解析して、 BC(WNE) = -6 から BC(WNL) = -4, BC(WC) = -4.5 を得た。

初期成果の問題点 

 しかし、これらの研究には問題があった。最大の問題は主系列星スペクトル型 の信頼度である。これまで多くの銀河星団や OB-アソシエイションを調べてきたが、 多くの場合で見過ごされた大質量星に遭遇した。関係する問題として、ある文献では O7 型より早期のスペクトル型分類の方法が時代遅れになっていた。この誤りの 結果、輻射補正、光度、質量に誤差が生じている。加えて、現在の恒星進化論は 改善が進んで、質量を付与する仕事が正確にでき、観測エラーも指摘できるほど になっている。このほか、赤化補正、測光精度、星団が銀河系に限られていること など多くの問題があった。

 新しい観測 

 これ等の問題を克服するため、 W-R 星その他の進化した大質量星を含む OB-アソシエイションの観測を局所群銀河で行った。本論文はその第1論文で あり、マゼラン雲中の 19 アソシエイションで LBV, W-R 星の母星質量を決めた。 マゼラン雲は低メタルなので、今回の結果は次論文で銀河系 OB-アソシエイション の結果と比較する。第3論文では HST データと地上大望遠鏡データを合わせて、 もっと遠方の局所群銀河の研究を行う。この論文では、DM(SMC) = 18.9, DM(LMC) = 18.5 を採用した。


 2.サンプル選択と観測戦略 

 SMC の W-R 星 

 既知の W-R, LBV 星の位置を OB-アソシエイションの位置と比べる。 両者が偶然一致する可能性は低い。 SMC には W-R 星が 9 つ知られている。 4つは OB-アソシエイション 3 つの中にある。それらは表 1A に示す。 W-R 星 HD 5980 は LBV 的な燃え上がりを 1994 に起こした。この星は NGC 346 に属する。LBV 的とされた、他の3つの SMC 星は R 40 で、これは 孤立星である。R 4 は、Hodge 12 内の B[e] だがここでは表に 含まれていない。 LBV 的燃え上がりがある。AV 154 = S 18 は Hodge 35 のすぐ外側にあり。LBV 的な変動が報告されている。他の明るい B[e] 星 R 50 =S 65 = Sk 193 は Zickgraf et al 1986 のリストにあるが、 OB アソシエイションの外にある。

LMC の W-R 星 

 LMC では Breysacher 1981 が 100 個の W-R 星をカタログにした。その後 の観測から現在 134 W-R 星が既知である。それらの位置を Lucke-Hodge OB- アソシエイションカタログ 1970 と対応させた。表 1B には W-R 星を含む 16 アソシエイションを掲げた。
 LMC の LBV 

 LMC には 6 個の LBV が知られている:S Dor, R 71, R 127, HD 269582, R 110, R 143。ここに我々はスペクトルから R 85 を加える。これら7個のうち、 S Dor と R 85 は LH 41 に属する。R 143 は LH 100 に属するがここには加えていない。

 主系列質量 

 観測方法は以前 LMC の IMF を研究した時と同じである。主系列にある O-, B-型星 の質量はその HR 図 (log Te, Mbol) 上の位置を最新の進化モデルと比較して決まる。

ターンオフ質量 

 ターンオフ質量を決めるためには主系列上の未進化の星の中で最も 質量の大きな星のスペクトルを得ればよい。共時性で赤化が均一な種族では これは可視で最も明るい星のスペクトル型を決めることに等しい。しかし、 測光エラー、僅かにある非共時性、微分赤化が存在するため各アソシエイション で 6 - 7 個の可視で明るい星のスペクトルを撮った。




表1A.本研究で使用した SMC アソシエイション




表1b.本研究で使用した LMC アソシエイション

 3.新しいデータ 

 3.1.データ解析 

 3.1.1.分光 

スペクトル分類は Walborn, Fitzpatrick 1990 に従う 

 スペクトル分類は Walborn, Fitzpatrick 1990 の O-, B-型星スペクトルアトラスに従った。分類の確度は1サブタイプと1クラス と予想している。

 スペクトル型にはメタル量依存がない 

 スペクトル型はメタル量に依存しない。と言うのは、分類に同じ元素の異なる 電離度イオンの強度比が用いられているからである。例えば、 O-型星には He I 対 He II, 早期 B 型星では Si IV 対 Si III が使われる。

 光度クラス 

 しかし、我々の経験では、O-型星でさえも光度クラスの指標にはメタル依存性 があるようだ。O-型星の光度指標は星風強度の第1指標である。例えば He II 輝線対 He II 吸収線。また、B-型での光度指標はある種のメタル線強度 がヘリウムに対して相対的にどうかで決める。これもやはりメタル量依存性がある。 従って、常に MK 光度クラスを絶対等級から期待される光度クラスと比べなければ いけない。

 R 85  

 LH 41 中の R 85 は LBV であるとここで提案したい。測光から van Genderen et al 1998 はこの星を ”疑いなく LBV である”と述べた。図1には、最近の スペクトルの変化を示す。Feast, Thackeray, Wesselink 1960 はこの星を B5 Iae と分類し、 Hβ が輝線で、Hγ, Hδ が吸収線であること を注意した。我々の 1996 年スペクトルを見ると、 Mg II λ4481 が存在 するが、He I λ4771 を欠いている。 B 5 星では He I λ4771 が 強いはずなので。彼らの記述とは少し合わない。 1999 年には CTIO 4m でこの星の S/N のよいスペクトルを撮り、 1996 と大きく異なったスペクトルに驚いた。新しい スペクトルは He I/ Mg II 比で見る限り温度が高くなり、ラインも強くなっていた。 B.Bohannan が 1985 年に撮ったスペクトルは 1996 年とよく似ている。分光 モニタリングをさらに行うと面白いだろう。

図1.LBV ではないかと言われている R 85 の3つの時期のスペクトル。Feast et al 1960 は B5 Iae とされ、それは 1999 Jan に撮ったスペクトルと整合する。 それ以前のスペクトルはベイル越しのようで、隣の Mg I λ4481 と比べ、 He I λ4771 を欠くことからスペクトル型はより低温である。


表2.分光と測光のカタログ
 




新たに見つかった O3 型超巨星と巨星 

 研究の仮定でこれまで知られていなかった O3 型星をいくつか見つけた。 それらはスペクトル系列では最高の温度を示す星である。図2と3にそれらの 例を示す。まず、 O3 超巨星 (O3 If*)と巨星 (O3 IIIf*)について述べよう。これらの星は進化してもなお O3 の温度領域にいる。従ってこれらの星は極端に大質量であるに違いない。 Walborn et al 1999 は HST 分光観測から LH 90β-13 を O4If+ と分類 した。しかし、我々のより S/N の高い観測では N V λλ4603,4619 吸収線が見つかり、これと He I ラインがないことを合わせると図2のこの星は O3 型である。ST 5-31 (LH 101) は Testor, Niemela 1998 により O3 If* と分類された。我々のスペクトルはそれと良く合う。 LH 64 中の W 16-8 は N IV λ4058 輝線が非常に強く、 N V λλ4603,4619 も非常に強いに拘わらず、 He II λ4686 が弱いので O3 III(f*) とした。それらは 普通光度が高いことの証拠である。次節で導く絶対等級は Mv = -5.4 でこの 分類と合致する。


図2.O3 If*星 LH 90 β-13 と ST 5-31 (LH 101) の スペクトル、および、O3 III(f*)星 W 16-8 (LH 64)
 新たに見つかった O3 型矮星 

 図3の O3 矮星には ST 2-22 (LH 90) を加えた。この星は、以前は O3 巨星とされていた。しかし、He II λ4686 が見えず、 N IV λ4058 が弱いことはこの星の光度クラスはもっと低いことを示唆する。 LH 81 の W 28-23 は O3 V((f)) とした。LH 101 の ST 5-27 は Testor, Niemela 1998 では O4 V とされた。この星のスペクトルは周囲の星雲輝線が著しく 混入している。とりあえず、 3 V((f)) としたが、O4 V((f)) としても矛盾はない。 もう一つの星 W 28-5 (LH 81) は O3((f)) と O4 V((f)) の中間にあるようである。 He I 4471/He II 4542 は O3 より少し晩期であることを示唆するが、 N V λλ4603,4619 が存在することは O3 的である。
 He I λ4471 の存在は図3では容易に見て取れる。 O3 が Walborn 1971 により導入されたのは He I λ4471 が Car Neb の星に検出されたからで あった。W28-23, St 2-22 の等値巾はそれらより大分小さい。




図3.O3 V(f*)星 ST 2-22 (LH 90) と W 28-23 (LH 81) および、 O3 V - O4 V 星 W 28-5 (LH 81) のスペクトル。


 他の O-型星: ST 5-52 

N V λλ4603,4619 吸収線は明るい O3 星の指標であるという お約束には例外がある。図4 LH 101 中の ST 5-52 は Testor, Niemela 1998 によると "O3 V" である。しかし、He I が弱いことはこの星が O5.5 型よりかなり晩期であることを示唆する。だが、 Testor, Niemela 1998 分類の基礎 となった N IV λ4058 輝線も N V λλ4603,4619 吸収線 も確かに我々のスペクトルにはっきりと見えるのである。この混乱を解く一つの 可能性は O3 III(f*) + 晩期 O-型の分光連星である。しかし、 我々の解釈は、この星が N 増強星で、"ON5.5 V((f))" であるというものである。 この解釈の方がよいと考える理由は、この研究と直接関係はないが LMC で He I /He II 比は O5 型であるのに N IV 輝線と N V 吸収線を示す星があるからである。


図4.O 型矮星のスペクトル
 他の O-型星: LH 58-496 

 LH 58-496 は Garmany, Massey, Parker 1994 では O3-4 V と分類された。 図4の高 S/N スペクトルを見ると、もう少し晩期で O5 V((f)) のようである。 図4には他の O5 V((f)) 星と O4 V((f)) 星スペクトルを参考に示した。

 新発見の明るい O-型超巨星   図5には、新発見の明るい O-型超巨星をいくつか表示した。そこには O4 から O8 に至る超巨星が示されている。





図5.O 型超巨星のスペクトル


 LH 90 中の Br 58 は W-R 星か? 

 LH 90 中の Br 58 は長い間 WN W-R 星とされていた。以前は "WN5-6" と されていたが Testor et al 1993 はこの星を "WN6-7" に分類した。図6に この星のスペクトルを示す。 N V λλ4603,4619 吸収線が 見える。この特徴と、吸収線強度が大きいことから我々は、この星は  O3 If* ではないか、つまり、O3 If*/WN6 ではないかと考えた。この種の星は若く、水素燃焼の高温度星で、その高い 光度の結果強い星風が生まれて W-R 星のような輝線の特徴が見られる。

 Sk -69°194 : 新発見 W-R 星 

 LH 81 の Sk -69°194 は新発見 W-R 星で、 B0I+WN 型である。LMC 内 で新しい W-R 星が見つかるのは驚くべきことではない。特にこの星の 輝線が弱いことを考えればなおさらである。 He II λ4686 の等値巾 = - 2 A である。一方、非常にライン強度の弱い WN 星での典型的な値は -30 A である。おそらくこれは、連星の B0 I 成分の連続光が強いためであろう。



図6.LH 90 中の Br 58 は以前 WR 5-6 または WR 6-7 型の W-R 星と 呼ばれていた。我々はここで H-リッチの遷移天体 O3 If* 星で、あまりに明るいためその星風が W-R 星のように見えているのだと 提案する。 LH 81 中の B0 I + WN 星 W 28-10 は新しく発見された。


 3.1.2.測光 

 測光の理由 

 測光が必要なのは

(1)スペクトルを得た星の正確な Mv を決める。

(2)大質量の未進化星の全てのスペクトルを得たかをチェックする。

ためである。(1)を実行するために、V, B-V データが各アソシエイション 毎に 5 - 6 個の星の測光が要る。(2)で使う赤化フリーパラメタ―のため には、(U-B) も必要である。
 測光法 

 測光には DAOPHOT の PSF フィットを用いた。データは 1985 RCA CCD と 1996 CCD との間で HL 41 は双方に含まれていた。このアソシエイションが 測光チェックに使われた。測光値の一致は満足すべきレベルであった。


 3.2.カタログ 

 3.2.1.個々のアソシエイションの記述 

 面白そうだが割愛。  
 明るい星のリスト 

 表2には14アソシエイションの夫々で、我々が新しく測光を行った 最も明るい星のリストを示した。
( なぜ5つの星しか載っていないのか 不思議だが、Massey et al 1998 を見よということか?)
表には V = 15 より明るい星を全て含めた。いくつかの星団では最低数を10星 にするためもっと暗い星まで含めた。

 星の名前 

 星の名前にはできるだけ以前に公表された名前を付けた。LMC では Lucke 1972 のファインディングチャートの名前に従った。


 4.H-R 図の作成:共時性と最も重い星の決定 

 最も重い星を決定するために、我々は「物理的な」 H-R 図、すなわち、 (log Te, Mbol) 図を作り、理論的進化経路と比べた。まず、我々は赤化補正 を行い、次にスペクトル型と等級を有効温度と絶対輻射等級に変える必要がある。 最後に H-R 図を作成し、最も重い星がどれかを決める。

 4.1.赤化補正と赤化フリー指数 Q のテスト 

 赤化補正 

 まず、アソシエイション毎に赤化量を決める必要がある。 星のスペクトル型と固有カラーの関係は FitzGerald 1970 から採った。スペクトル型が分かっている星に対して、直接 E(B-V) を求めた。 時には、他のメンバーと赤化が大幅に違っている星があった。そこで、大部分の 星からそのアソシエイションで採用する赤化の範囲を決めた。表3には平均の 赤化量と、採用した個々星の赤化範囲を示した。

 Q の利用 

 幾つかの星では測光値だけでスペクトル型が不明であった。それらの星の赤化 補正には、アソシエイションの平均赤化を用いる代わりに、十分高温の星に 対しては、Q と (B-V)o の関係を利用して (B-V)o を求め、それから E(B-V) を 決めた。Q < -0.2 の星では, (B-V)o ≈ (B-V) - ⟨E(B-V)⟩ = -0.06 であった。これより (B-V)o が大きい星では平均赤化を用いた。

 大気モデルから決めた Q と (B-V)o の関係 

 Massey 1989b, 1995b 以来、スペクトル型、有効温度、固有カラーの関係が よく分かっていない、特に 早期 B 型超巨星では、ことが明らかになってきた。 そこで、Kurucz 1992 の ATLAS9 モデルを使い、Z = 0.8 Zo (LMC, SMC, MW の妥協値)に対して、光度クラスに依らず、

     (B-V)o = -0.005 + 0.317 Q

を得た。

 一般には上式の適用は妥当 

 スペクトル型が分かっている星の Q を求めると、測光精度に対する独立の チェックになる。観測 Q とスペクトル型から予想される Q の一致は良いだ ろうか?我々は各アソシエイションで、スペクトル型が決まった星全体に対し、 Q のシフトが統計的に有意にあるかどうかを求めた。一般的には1σ の範囲でシフトは 0.0 であった。

 観測 Q に補正が必要なケース 

例外は LH 43 に ΔQ = -0.13 を、 LH 64 に ΔQ = -0.15、つまり双方のケースでは、

     (B-V)o = -0.005 + 0.31 (QOBS+ΔQ)

を適用したことである。  

表3.使用された赤化量


二つの領域は 1996 年に数分の間隔で同じ晩に撮影 された。天候は孤立雲があるだけであった。面白いことに赤化量は通常の値 であり、U のみが影響を受けた可能性がある。観測ログを見ると、 LH 43 の U 観測は LH 64 の U 観測と続けて行われていた。
 Walborn et al 1999 による LH 9 の WFPC2 による測光も ΔQ = -0.07 ±0.01 を要求する。これは彼らの データ整約の問題であろう。




表4.変換式のまとめ。

 4.2.log Te 対 Mbol 関係への変換 

 スペクトル型 - 有効温度 

 O 型星のスペクトル型 - 有効温度関係は、最新モデルに基づいて、 Vacca et al 1996 により与えられた。これは、古い Chlebowski, Garmany 1991 や Conti 1973 の値より幾分熱く、明るく、重い結果を与える。
 早期 B 型星には問題がある。 O9.5 型で Conti 1988 による現代的な有効温度 尺度が終わり、古い尺度の適用が開始されるところで不連続が生じるのである。 そこを滑らかに通過するため、我々は B0.5 - B1 矮星、巨星では Conti 1988 を用いた。B1.5 - B2 矮星と巨星では Kikian 1992 のスペクトル解析とモデル 大気の中間値を採った。 B-型超巨星には Conti 1988, McErleanm Lennon, Dufton 1998, FitzGerald 1970, Kurucz 1992 を参考にした。過去には Humphreys, McElroy 1984 の有効温度尺度を用いていたが、これは B1 I から B5 I にかけて、最近の結果と 0.1 dex の差を生じる。

 このように、O - B 型全体を通して一貫した有効温度尺度は、現在存在しない。 我々が採用した方法は単に穴ふさぎの方便にしか過ぎない。

 測光しかない星の有効温度 

 測光しかない星の有効温度は Kurucz モデルを使って作った Q - 有効温度 関係に頼る。この関係式は表4に与えられている。式の範囲は青い星、Q < -0.6 で (B-V)o < 0.00 か (U-B)o < -0.6、に限られる。もっと赤い星に関しても、 同様に Kurucz モデルからの Q - log Te 関係式が表4に与えられている。こちら の関係はそれほど高精度である必要はない。と言うのは、 BC - log Te 関係が緩やか になるからである。
BC - log Te 関係 

 輻射補正 BC は主に有効温度で決まり、それに log g による補正を加える。 Vacca et al 1996 の与えた式は、

     BC = 27.66 - 6.84 log Te  (log Te > 4.2)

 もっと低温の星では Humphreys, McElroy 1984 の BC - log Te と ATLAS9 モデル からの関係との間には矛盾がある。我々は Kurucz 1992 モデルからの結果を 採用し、表4に載せた。

 作った H-R 図の説明 

 図7にはこうして決めた H-R 図を各アソシエイション毎に載せた。黒丸 =スペクトル型が分かった星。 白丸=測光データしかない星。アステリスク=連星の片割れなどで、スペク トル型は既知だが、 H-R 図上の位置が不確かな星。プラス= H-R 図上位置が特に 不確かな星。その理由は、実際と異なるカラーのために過度に高温になったり、ZAMS の 左に行ったり、逆にカラーが赤すぎて赤化を決められなかったり、色々である。 実線=進化経路。破線= 2, 4, 6, 10 Myr 等時線も示した。 モデルは Z = 0.001 (Schaller et al 1992) を SMC アソシエイションに、 Z = 0.008 (Schaerer et al 1993 ) を LMC アソシエイションに用いた。 計算コードは Georges Meynet が貸与してくれた。


図7.19 OB アソシエイションの H-R 図。黒丸=スペクトル型が分かった星。 白丸=測光データしかない星。アステリスク=連星の片割れなどで、スペク トル型は既知だが、 H-R 図上の位置が不確かな星。プラス= H-R 図上位置が特に 不確かな星。実線=進化経路。破線= 2, 4, 6, 10 Myr 等時線。 モデルは Z = 0.001 (Schaller et al 1992) を SMC アソシエイションに、 Z = 0.008 (Schaerer et al 1993 ) を LMC アソシエイションに用いた。











 



表5.最高質量の未進化=水素燃焼星のパラメタ―

 4.3.最も重い星はどれか? 

 観測点は H-R 図の等時線上には並ばない。 

 表5には、アソシエイション毎に明るい星の (log Te, Mbol, Mass, Age) を 載せた。この表から、未進化=水素燃焼期にある星の中から最大質量星を 導いた。構成星が厳密に共時性を持つなら、星は一本の等時線上に分布するはず である。その場合には最大質量未進化星は「ターンオフ」質量を持つ。 図7を見ると、そのような簡単な解釈を許さない。H-R 図上で星の分布はある 幅の等時線にまたがっており、大質量星の形成がある時間巾を持つことを物語 っている。

 形成時間の巾は? 

 この年齢幅はどの程度本当だろうか? それに答えるため、図8(左)には、 スペクトル型で較正したデータを H-R 図上で示した。
( スペクトル型で決めた BC を使うと原則 天系列の範囲内に詰め込まれてしまうのか?)
超巨星点列の大きな 間隔は B5 I と B8 I との間で大きな温度差があることを示す。これは スペクトル分類での実際の不確定性である。絶対等級は各スペクトル型に対応 している。もちろん、実際に観測 Mv から計算された観測点は点列の上下に 散らばる。これ等の星が低温矮星になって行くさいに、 ZAMS からどのくらい 系統的にずれているかを見るのは面白い。log Te = 4.2 になるまでに、矮星の 位置は 終端年齢主系列(terminal age main sequence = TAMS) にほぼ一致 する。これは進化経路が少し逆戻りするところである。そこでは等時線が 詰まっていて、もし大質量の光度クラス V の星を低質量星と比較すると、 年齢に大きなエラーを引き起こす結果となる。このため、A 型超巨星のように 可視で明るい場合以外は、20 Mo 以下の星は含めない。

 ZAMS からのずれ 

 ZAMS からのずれは、我々が採用した、スペクトル型 - log Te 較正と可視光度 尺度に内在していることを注意する。カラーから有効温度への変換はしばしばその中間 ステップにスペクトル型を介在させていて、モデル大気のカラーからいきなり有効温度 へという途を採らない。そのような場合、ZAMS の右側に見かけ上存在する星は前主系 列星と誤解されるかも知れない。そのような発見には分光の追観測が不可欠であることを 強調したい。
( で、結局 ZAMS からのずれはどう考えれば いいんだろう?)
分類間違え 

 次に、スペクトル型と光度クラスの分類を間違えたことで生じる乱雑誤差 を考察しよう。これは例えば O9 I 型星を O8 III 星とした場合の誤差である。 これらの可視絶対等級は同じ値なので測光からは何の警告も発せられない。この 時 (B-V)o を少しマイナスに評価したために Mbol を 0.1 等明るく見積もって しまう。それは大きすぎる Av の評価につながる?もっと大事なのは、有効温度 を 0.05 dex 高く見積もり、その結果、BC を 0.4 mag 過大に評価し、結局ネット では 0.1 + 0.4 = 0.5 mag のエラーを生む。計算される年齢は正しい 5.25 Myr でなく 3.80 Myr となるだろう。このような分類間違いはありふれている。結果 としてのエラーは当然スペクトル型に依存する。図8(右)には1スペクトル型 and/or 1光度クラスの誤りが引き起こす誤差が示されている。

超巨星の割合 

 20 Mo を超える超巨星と 20 Mo 以下の超巨星の割合は実際のところ、 アソシエイションの年齢と合致するのだろうか?我々は分類間違いによる年齢の 上限と下限を個々の星に付いて計算した。もし星の中間年齢がこの巾の中に納まるなら 星は共時性を有すると判断する。我々はこの判断にはスペクトル分類がある星のみを 用いた。測光のみの星に対するエラーはもっとずっと大きいからである。表6には 共時性を有する星の割合を示した。

 共時性 

 次の質問は最大質量星年齢は、前節で求めた共時性年齢と一致するだろうか? 表6と図7を見ると共時性の強い 11 アソシエイションとそうでもない 4個と あることが分かる。残りの 5 アソシエイションは共時性がないと判断した。 これは、大質量星の形成が、おそらく異なる年齢の副集団の形で、長期に渡る ことの証拠である。



図8.星のスペクトル型を1ユニット間違えた時に年齢、つまり質量をどのくらい 狂って見積もるだろうか?進化経路と等時線は図7と同じで、 LMC メタル量につい て計算した。
(左): 一番上の点列は超巨星に対応し、O3, O4, O5, O5.5, O6, O6.5, O7, O7.5, O8, O8.5, O9, 9.5, B0, B0.2, B0.5, B1, B1.5, B2, B3, B5, B8, A0, A2, A%, A9, F2 である。真ん中の点列は巨星で、 B2 まで、下の点列は矮星で B3 まで伸びている。
(右): スペクトル型1サブユニット and/or 光度クラス1ユニット間違えた 時のエラーを代表点について示す。上点列はスペクトル型を間違えた場合で、 O3 I, O6 I, O8 I, B0 I, B1.5 I, B8 I, A 5 I である。真ん中の4点は、 O5.5 III, O7.5 III, O9.5 III, B1 III で、下の5点は矮星で O4 V, O6.5 V, O8.5 V, B0.2 V, B2 V である。これらが、左図の隣の点までより大きく広がって いるのはスペクトル型だけでなく、光度クラスも間違えているからである。 つまり、O7 III と分類された星が実は O8 V だった可能性である。





表6.共時性と星団年齢とターンオフ質量

 5.母星質量と輻射補正 

 5.1.母星質量 

 W-R 星 

 表7にこの研究の結果をまとめた。母星質量はいくつだろう?括弧が付いて いるのは、共時性が怪しいものである。まず、SMC W-R 星の母星質量は LMC より大きいことが判る。ただ、サンプル数が少なく、かなりの程度 AB 7 の母星質量に依っている。 Hodge 53 の最大質量3星は連星である。 LMC W-R 星に戻ると、WNE 星の母星範囲が 30 - 60 Mo と広いことが判る。

 Ofpe/WN9 星 

 Ofpe/WN9 星は両方とも非常に低い下限を持つアソシエイションから 出ている。第3の Ofpe/WN9 星は LH 101 にあり、これもやはり低質量の 進化した星を含む。ただし、大質量の進化した星も含まれる。Ofpe/WN9 星は 極度に大質量の星なんかでは全くないと結論される。

 B I+WN3 星 

 3つの B I+WN3 星が我々のサンプルに含まれる。この複合スペクトルの星は M 33 が 1500 A で撮像された時には最も明るい星の一つであった。この種の星に連星の 軌道運動の証拠はない。
 WC 星

 WC 星は大質量星である。しかし、WN よりうんと重い星からではない。単純に考えると 45 - 50 Mo 星の大部分は WN と WC 段階を経る。同様に SMC WC 星 AB 8 は > 70 Mo である。これは SMC の WN 星と大きくは違わない。

 LBVs 

 LBVsの下限質量は極端に大きい。じっさい、それらは LMC/SMC 内の最大 質量星のグループを形作っている。これは以前から言われてきた、高い光度 に付随する不安定性が光球爆発や劇的なスペクトル変化の基であるという 考えと合致する。

 B[e] 星 

 サンプル中の二つの B[e] 星の質量は大きく異なっている。これは B[e] 星の光度がひろい範囲にわたっているという Gummersbach et al 1995 の指摘 に合致する。

 

 星団ターンオフは進化した星の母星質量に対して、下限を与えるだけであるが、 それら OB アソシエイションの質量関数は一般に星数が多い。従って、星団 ターンオフは母星質量に有力な手がかりを与える。


 5.2.輻射補正  

進化モデルの援用 

 観測した Mv と、星団ターンオフ光度を用いて、進化した星の BC を求めよう。 Humphreys et al 1985 の以前の研究は、進化の途中で光度は一定と言う仮定に 基づいていた。これは結局、コア質量があまり変化しないという事実に依っている。 進化モデルを援用すると、これに少し変更を加えられる。

 手続き 

(1)W-R 星の輻射等級はターンオフ時と同じ。 
(2)そこにモデルによる補正を加える。
問題はモデル経路はマスロス量に非常に影響されることである。さらに、 W-R 星で 見られる短期の爆発的質量放出はモデル化が難しい。ジュネーヴモデルでは最高質量 以外では W-R 星を作り出せなかった。標準の2倍に質量放出を増やす必要があった。 水素核燃焼期の最後から W-R 期の最後までに LMC メタル量では進化が -1.1 から +0.5 mag に渡る。SMC では +0.1 から +0.2 mag である。この量は  Mbol(H-燃焼末期)ー Mbol(W-R 末期)という意味である。表7には、H-燃焼 終了と ターンオフの双方の場合に対する計算値を載せた。
WNE に対する BC 

 WNE に対する BC は非常に負値大で、 -6 mag 程度である。これは Humphreys et al 1985 の銀河系星団の結果と一致する。これは最も早期の O-型星の BC が -5 であるのに比べてさらにマイナスである。表7に示した WNE 星の BC には大きな 巾がある。

 Ofpe/WN9 星 

 Ofpe/WN9 星の BC はもっと穏やかで、 -2 から -4 程度である。

 WC 星 

 WC 星の BC は -5.5 mag 程度である。



表7.母星質量と輻射補正

 6.結論、議論、まとめ 

 共時性のありなし 

 LMC/SMC 19アソシエイションの分光、測光観測から、約半分の領域では 大質量星が 1 Myr 以内の短期間に同時に形成されたことを示している。 他の領域ではもっと長期に渡っている。それは 15 - 20 Mo の進化した星 (10 Myr)と未進化の大質量星 60Mo (2 Myr 未満)が共存していることから 示唆される。視線方向が重なった、低質量星が紛れ込んだ等の可能性もある。 しかし、 LH 90 の β 副星団のケースでは数 Myr に渡り星形成が続いた 証拠がある。

 ターンオフ質量 

 共時性アソシエイションのターンオフ質量は大質量星進化に貴重な情報を 提供する。SMC では 70 Mo を越す星のみが W-R 星となる。数は少なく、さらに SMC W-R 星の大部分には吸収線があるという複雑な事情がある。これが弱い 星風の存在を意味するのか、連星現象なのか不明である。

 LMC W-R 星

 LMC では W-R 星になる質量限界は SMC よりずっと低く多分 30 Mo くらい である。30 - 60 Mo の星全て、それに多分それ以上の星も、は WNE 期を 通過するようだ。 LMC W-R 星の大多数は早期 WN 型である。これはもっと 高メタルな銀河系では異なる。そこでは WN3, WN4 星はかなり稀である。 Crowther 2000 の理論モデルでも低メタルでは WNE が多くなり、高メタル になると WNL が増えることが示されている。
LBVs 

 ターンオフ質量が非常に高い(≈85Mo)星団では LBV が見られる。この 質量は LBV η Car を含む Trumpler 14/16 中のターンオフ質量と非常に近い。 これは現在受け入れられている説、LBV は最も質量の大きい星の進化に置いて重要な 期間である、と合致する。King, Gallagher, Walterbos 2000 は M31 において、孤立 LBV 星が存在することから LBV が全て最高質量の星であるかを疑問視している。

 Ofpe/WN9 星 

 Ofpe/WN9 星はある種の燃え上がりを示すが、明るさの点では LBV ではあり得ない。 Ofpe/WN9 星の母星は 25 Mo で W-R 星の中では最も低質量である。同様に B[e] 星も LBV とは関係がない。

 WC/WN 比 

 局所群の中で WC/WN 比は激しく変化する。そのメタル量との相関は良い。 その解釈の一つは低メタル星では WC になるほどの質量を放出するのは 難しいというものである。しかし、我々は WC 星と WN 星の質量範囲が ほぼ同じであることを発見した。ただし SMC では LMC より高質量側に寄る。 これは、別の説明を要求する。WC, WN 寿命がメタル量に影響されるのかも 知れない。

 BCs 

 WNE の BC は -6 mag で大きい。これは弱い線の WNE モデルの結果と 合う。最も早期の WNE 星 WN2 型がサンプル中にある。この星の BC は -7.5 mag である。Ofpe/WN9 星では BC = -2 to -4, WC4 では BC = -5.5 である。