ナンシー電波望遠鏡 (Nancay Radio Telescope = NRT) を用いて、 1612 MHz で数十個の OH/IR 星をモニターしている。データとしては Hartebeesthoek 電波望遠鏡(SA) における銀河中心 OH/IR 天体のモニターを加えた。メーザー 変光を中心星の変光を示すと考える。初期の成果から、既に示したように、幾 つかの星は 7 年にまで達する周期での変光を示す。他の星は小さな振幅の変光、 または無変光であった。 | 変光におけるこの二分は AGB 期と post-AGB 期の境界を定めるものと考え られている。現在の観測プログラムで、このような遷移天体を発見し、その変光 特性を調べたい。我々は脈動の低下消失がその表れと考える。その有力候補は 銀河円盤中の小振幅変光星 OH 138.0+7.2, OH 51.8-0.2 である。銀河中心付近 における「非変光」OH/IR 星の出現頻度は円盤と同じくらいである。 |
噴水星 AGB - post-AGB の遷移の間に星は脈動を停止する。脈動振幅が大きい AGB 星を L-AGB と名付け、post-AGB 開始時期の小振幅 S-pAGB または「非変光」 OH/IR 星と区別する。後者では星は未だ深くダスト層の奥深く埋もれていて、 H2O, OH メーザーが放射される。最近では特に、「噴水(water fountains)」と 呼ばれる、高速 H2O メーザーで追跡されるジェットが特徴の post-AGB 星が 注目されている。しかし、そのようなジェットが存在するのは post-AGB星の ほんの一部であり、post-AGB 期初期の短い時期にのみ現れる現象なのではないか。 サンプル 偏りのより少ないサンプルを求め、我々はフラックス下限 4 Jy の OH/IR 星 を Baud et al 1979 から採った。このサンプルでは L-AGB と S-pAGB 星の割合 はほぼ同数 ( Herman, Habing (1985) ) である。両者の光度を同じと考えると、これは dM/dt > 10-5 Mo/yr の高質量放出期の長さが初期 post-AGB 期の長さと同じくらい Engels (2002) であることを意味する。現在遷移期にある星が知られていないことからこの期 間の長さは 2000 年以下と考えられる。遷移天体を探すために我々は OH 1612 MHz メーザーサーベイを 2013 年から NRT で開始した。類似のサーベイが 1985 - 1996 Hartebeesthoek において Gaylard, West 1986 により行われた。 |
変光例 図1に OH メーザー変光曲線の例を示す。それらは、古典的な大振幅変光 AGB 星 OH 127.8+0.0 (P=3.8 年), 変光を示すが振幅が小さい OH 138.0+7.2 (P=3.9 年) を含む。一方 OH 51.8+0.2 の変光型は不明である。OH 1.2+1.3 は GC 領域にある S-pAGB 星である。OH 138.0+7.2 と OH 51.8-0.2 は大振幅と 無変光との間の遷移期天体(S p-AGB)の可能性がある。OH 1.2+1.3 は GC 領域 に非変光 OH/IR 星が存在することを示す。 非変光 OH/IR の割合は 27 % Wood et al (1998) から赤外で非変光の OH/IR 星と非検出 OH/IR 星を足し合わせると、銀河中心方向の「非変光」OH/IR 星の割合は 27 % になる。この数値は円盤星で見出された値と同じくらいである。 一気かじわじわか これまでのところ、 Blocker (1995) が述べているような短周期、小振幅の遷移星は見つかっていない。まだ Vassiliadis, Wood (1993) が述べたような一気に脈動が停止するシナリオを排除することはできないが、 我々は振幅が次第に縮小する遷移がありそうと考えている。 |