Rebecca, Elson, Fall (1985) による、ターンオフ法による LMC 星団の年齢決定を再調査した。サンプルは 57 星団で、内 24 個は 1985 年以降に CMD が得られたものである。 | 新しい年齢分布は、前回得られたものとそう変わらない。他の研究での年齢 分布と比較した。 |
前回は様々な年齢決定法 前回は Searle, Wilkinson, Bagnuolo (1980) の分類にヒントを得て、uvgr の代わりに UBV 測光を用い、年齢指数 s を導入した。 s の年齢較正には、主系列ターンオフ、積分スペクトル、AGB星の測光などを使った。 しかし、様々な手法の年齢を合わせたので、系統誤差を生む虞があった。高齢星団 の年齢は主に積分スペクトルで決め、 2 - 5 Gyr では AGB 星に頼ったが、それは 議論の絶えない主系列後の進化によるからである。 |
新しい CMD 観測 この数年、LMC 星団の CMD が多数発表された。そこで、主系列ターンオフ のみを使った年齢較正を行うことにした。 |
表1=年齢 表1には主系列ターンオフに基づき、UBV 測光と年齢評価が得られた星団を 示す。これは Hodge 1983 の文献サーベイの改訂版と考えてよい。この表には 1987 年までに発表された 58 星団が含まれる。 表1の項目の説明 (1) 星団名。頭文字の意味は本文参照。 (2) 原論文が与えた年齢(Gyr)。 (3) 原論文が使用した距離指数。 (4) 原論文。意味は本文参照。 |
(5) 原論文で採用した年齢決定法。数字の意味は本文参照。星団の 2/3 で、Hodge 1983
の較正を用いて年齢が評価されている。1/4 では VandenBerg の等時線が用いられている。
1=Hodge の年齢較正。2=VandenBerg (1985)の等時線.
(6) 測光年齢指数 s。 Elson, Fall (1985) の表1に s が載っている星団ではそれを採用した。 (7) DM = 18.6 と VandenBerg の等時線を用いて決めた年齢。原論文で違う DM が使用されていた場合、補正値は下のように与える。 Δlog(τ/yr) = 0.36 Δ(m-M) これは図1からの結果である。 我々が DM = 18.6 を採用したのは、多くの仕事がその値でなされていたからである。 ただし、現在 18.2 の方が適切であるという証拠が増えつつある。等時線をそろえる 際には、次の変換を行った。 log(τVdB/yr) = log(τHodge/yr) + 0.2 |
年齢指数 s 図2は年齢指数 s と年齢の関係を示す。 Rebecca, Elson, Fall (1985) で求めた関係式は、 log(τ/yr) = 0.087 s + 5.77 であった。新しい関係式は、 log(τ/yr) = 0.079 s + 6.05 となった。個々の測定値 log τ/yr) のこのフィット線に対する標準偏差は 0.3 である。CMD から年齢を決める際にいくつかの例では年齢エラーがこの程 度の場合もあるが、よく決まる場合と比べると 3 倍大きい。したがって s から 決める年齢は CMD フィットには及ばない。全体の傾向を見るには適している。 UBV 図のフック部の問題 図2の散らばりは、 s ≥ 42 で急増する。これは、主に UBV 図のフック部 で s が曖昧になるためである。年齢 1 Gyr 以上ではメタル量によりカラーが 大きく影響する。したがって、同年齢でメタル量に分散があると、年齢のエラー につながる。 |
問題になる星団 (i) NGC 1841: 運動が他の星団と違う。カラーは銀河系高メタル球状星団に近い。 しかし、[Fe/H] = -2.2 という結果がある。 (ii) NGC 1978: 年齢推定がばらばら。 (iii) NGC 2121 : 年齢推定がばらばら。 対流オーバーシューティング Chiosi et al 1986 の対流オーバーシューティングを入れたモデルは表1の 第7列の年齢に対して log(τ/yr) = [7, 9] では Δlogτ = 0.5 大きい値を与える。 log τ ≥ 9 では、 VandenBerg 1985 モデルと年齢が収れんする。その 表式は、 log(τ/yr) = 0.071 s + 6.43 で少し寝る。 ターンオフ年齢を使い AGB マスロスの研究 今回は 1 Gyr より古い星団が 20 ある。前回はたった3つだった。したがっ て、古い星団サンプルの数が大幅に増えたのである。それでも標識は殆ど変わっ ていない。以前に使用した AGB 光度から年齢を決める方法の不定性が大きいことを 見ると、そこは問題設定をひっくり返し、 Aaronson, Mould (1985) がやったように、年齢をターンオフから決めて、その年齢を AGB 星のマスロス を調べるのに使う方が建設的であろう。 |
図4の実線は、 Elson, Fall (1985) が定めた LMC 中心から 6° 以内の星団年齢の分布である。「消失線」より 明るい星団を選んだ。消失線は質量一定で星の進化に伴い年齢と共に変わる光度 の軌跡である。暗い時期の観測漏れを防ぐため、「消失線」は、 IMF x = 2.2, 総質量 104 Mo に対して引いた。新しい年齢較正からの年齢分布を 導くために、 Elson, Fall (1985) で用いた、各区分での年齢中間値 τm を図2の破線と実線の 差分だけ調整した。新しい年齢分布を図4に示す。 前に議論したように、フック領域での s 値の不定性の補正として、適当に 2 - 4 Gyr 区間の星団を 0.5 - 2 Gyr 区間に移した。それが白丸である。 (大事な部分なんですけど。) 年齢分布の他の研究 図4の点線= Chiosi et al 1988 の対流オーバーシューティングモデルで 論文I の星団年齢を決めた。IMF x=1.35 を使用したが、彼らのモデルでは 「消失線」は古典モデルと x=2.2 の組み合わせと同じくらいになる。彼らの 年齢分布は我々のと似ている。 破線= Hodge 1988 の 473 星団の年齢評価である。年齢評価には星団中で最も 明るい青い星の等級が用いられた。その年齢較正は 29 LMC 星団の CCD 撮像が 使われた。彼のサンプルは乾板に移った星団全てなので、厳密な意味で質量制限 サンプルかどうかが明らかでない。彼の年齢分布は古い方では我々と似た形である が、 0.2 Gyr より若い方では数が少ない。 |
Mateo 1988 は LMC 外辺部にある V = 14 mag より明るい 31 星団の年齢を CMD
と UBV 測光から求めて、その分布を示した。その結果は τ = [0.3, 3] Gyr
では我々と似ているが、τ > 3 Gyr では数が少ない。恐らく、等級制限
サンプルでは古く暗い星団が落ちるからであろう。
爆発的星団形成の証拠はない 我々の年齢分布も、Chiosi et al. も Hodge の結果も滑らかな星団形成史 に反する結果ではなかった。したがって、 LMC 全体での爆発的星団形成のような 出来事を支持する証拠は得られなかった。 ただし、フック部の星団が s 値から予想されるより若いということになったら、 この結論は変わるかも知れない。 星団破壊? あまり現実的でない、星団が壊れることはないという仮定を採用すると、 星団形成率は、過去 1 Gyr で LMC では一桁、MW では二桁上がったことになる。 一方、星形成率は各銀河で過去一定であったと考えると、図4は定性的には 星団が順次壊れていく過程を表している。その場合、 LMC と MW で曲線が異なるのは破壊効率の差に帰せられる。 |