LMC Clusters: Age Calibration and Age Distribution Revisited


Elson, Fall
1988 AJ 96, 1383 - 1388




 アブストラクト 

  Rebecca, Elson, Fall (1985) による、ターンオフ法による LMC 星団の年齢決定を再調査した。サンプルは 57 星団で、内 24 個は 1985 年以降に CMD が得られたものである。  新しい年齢分布は、前回得られたものとそう変わらない。他の研究での年齢 分布と比較した。


 1.イントロダクション 

 前回は様々な年齢決定法 

 前回は Searle, Wilkinson, Bagnuolo (1980) の分類にヒントを得て、uvgr の代わりに UBV 測光を用い、年齢指数 s を導入した。 s の年齢較正には、主系列ターンオフ、積分スペクトル、AGB星の測光などを使った。 しかし、様々な手法の年齢を合わせたので、系統誤差を生む虞があった。高齢星団 の年齢は主に積分スペクトルで決め、 2 - 5 Gyr では AGB 星に頼ったが、それは 議論の絶えない主系列後の進化によるからである。
 新しい CMD 観測 

 この数年、LMC 星団の CMD が多数発表された。そこで、主系列ターンオフ のみを使った年齢較正を行うことにした。



表1.主系列測光のある LMC 星団

 2.サンプル星団 

 表1=年齢 

 表1には主系列ターンオフに基づき、UBV 測光と年齢評価が得られた星団を 示す。これは Hodge 1983 の文献サーベイの改訂版と考えてよい。この表には 1987 年までに発表された 58 星団が含まれる。

 表1の項目の説明 

(1) 星団名。頭文字の意味は本文参照。

(2) 原論文が与えた年齢(Gyr)。

(3) 原論文が使用した距離指数。

(4) 原論文。意味は本文参照。

(5) 原論文で採用した年齢決定法。数字の意味は本文参照。星団の 2/3 で、Hodge 1983 の較正を用いて年齢が評価されている。1/4 では VandenBerg の等時線が用いられている。 1=Hodge の年齢較正。2=VandenBerg (1985)の等時線.

(6) 測光年齢指数 s。 Elson, Fall (1985) の表1に s が載っている星団ではそれを採用した。

(7) DM = 18.6 と VandenBerg の等時線を用いて決めた年齢。原論文で違う DM が使用されていた場合、補正値は下のように与える。

   Δlog(τ/yr) = 0.36 Δ(m-M)

 これは図1からの結果である。 我々が DM = 18.6 を採用したのは、多くの仕事がその値でなされていたからである。 ただし、現在 18.2 の方が適切であるという証拠が増えつつある。等時線をそろえる 際には、次の変換を行った。

   log(τVdB/yr) = log(τHodge/yr) + 0.2



図1.ターンオフ等級と年齢の関係。短破線= Hodge 1983. 実線=VandenBerg 1985 の等時線。長破線= Chiosi et al 1986 の対流オーバーシューティングを 入れたモデル。


図2.表1から作った s と年齢の関係。全ての年齢は DM = 18.6, VandenBerg 等時線で揃えてある。破線=  Rebecca, Elson, Fall (1985) のフィット線。実線=今回。

 3.年齢較正 

 年齢指数 s  

 図2は年齢指数 s と年齢の関係を示す。 Rebecca, Elson, Fall (1985) で求めた関係式は、

   log(τ/yr) = 0.087 s + 5.77

であった。新しい関係式は、

   log(τ/yr) = 0.079 s + 6.05

となった。個々の測定値 log τ/yr) のこのフィット線に対する標準偏差は 0.3 である。CMD から年齢を決める際にいくつかの例では年齢エラーがこの程 度の場合もあるが、よく決まる場合と比べると 3 倍大きい。したがって s から 決める年齢は CMD フィットには及ばない。全体の傾向を見るには適している。

 UBV 図のフック部の問題 

 図2の散らばりは、 s ≥ 42 で急増する。これは、主に UBV 図のフック部 で s が曖昧になるためである。年齢 1 Gyr 以上ではメタル量によりカラーが 大きく影響する。したがって、同年齢でメタル量に分散があると、年齢のエラー につながる。
 問題になる星団 

(i) NGC 1841:   運動が他の星団と違う。カラーは銀河系高メタル球状星団に近い。 しかし、[Fe/H] = -2.2 という結果がある。

(ii) NGC 1978:   年齢推定がばらばら。

(iii) NGC 2121 :   年齢推定がばらばら。

 対流オーバーシューティング 

 Chiosi et al 1986 の対流オーバーシューティングを入れたモデルは表1の 第7列の年齢に対して log(τ/yr) = [7, 9] では Δlogτ = 0.5 大きい値を与える。 log τ ≥ 9 では、 VandenBerg 1985 モデルと年齢が収れんする。その 表式は、

   log(τ/yr) = 0.071 s + 6.43

で少し寝る。

 ターンオフ年齢を使い AGB マスロスの研究 

 今回は 1 Gyr より古い星団が 20 ある。前回はたった3つだった。したがっ て、古い星団サンプルの数が大幅に増えたのである。それでも標識は殆ど変わっ ていない。以前に使用した AGB 光度から年齢を決める方法の不定性が大きいことを 見ると、そこは問題設定をひっくり返し、 Aaronson, Mould (1985) がやったように、年齢をターンオフから決めて、その年齢を AGB 星のマスロス を調べるのに使う方が建設的であろう。





図3. Aaronson, Mould (1982) が AGB 星測光から決めた年齢を表1のターンオフ年齢に対してプロット。 白丸は上限、黒丸は確定値。
(Aaronson82 はDM=18.7 を仮定。)





図4.実線= 前論文の LMC 星団年齢の分布。黒丸=新しい年齢較正の結果。 白丸=二色図フック部の年齢が系統的に過大評価されていた場合に補正した結果。 薄い点線= Chiosi et al 1988 の対流オーバーシューティングモデル。 破線= Hodge 1988 の 473 星団の年齢評価。バツ= LMC 外辺部 31 星団の 年齢 (Mateo 1988). 一点破線=銀河系散開星団 (Wielen 1971)

 4.年齢分布 

  

 図4の実線は、 Elson, Fall (1985) が定めた LMC 中心から 6° 以内の星団年齢の分布である。「消失線」より 明るい星団を選んだ。消失線は質量一定で星の進化に伴い年齢と共に変わる光度 の軌跡である。暗い時期の観測漏れを防ぐため、「消失線」は、 IMF x = 2.2, 総質量 104 Mo に対して引いた。新しい年齢較正からの年齢分布を 導くために、 Elson, Fall (1985) で用いた、各区分での年齢中間値 τm を図2の破線と実線の 差分だけ調整した。新しい年齢分布を図4に示す。 前に議論したように、フック領域での s 値の不定性の補正として、適当に 2 - 4 Gyr 区間の星団を 0.5 - 2 Gyr 区間に移した。それが白丸である。
(大事な部分なんですけど。)


 年齢分布の他の研究 

 図4の点線= Chiosi et al 1988 の対流オーバーシューティングモデルで 論文I の星団年齢を決めた。IMF x=1.35 を使用したが、彼らのモデルでは 「消失線」は古典モデルと x=2.2 の組み合わせと同じくらいになる。彼らの 年齢分布は我々のと似ている。

破線= Hodge 1988 の 473 星団の年齢評価である。年齢評価には星団中で最も 明るい青い星の等級が用いられた。その年齢較正は 29 LMC 星団の CCD 撮像が 使われた。彼のサンプルは乾板に移った星団全てなので、厳密な意味で質量制限 サンプルかどうかが明らかでない。彼の年齢分布は古い方では我々と似た形である が、 0.2 Gyr より若い方では数が少ない。

Mateo 1988 は LMC 外辺部にある V = 14 mag より明るい 31 星団の年齢を CMD と UBV 測光から求めて、その分布を示した。その結果は τ = [0.3, 3] Gyr では我々と似ているが、τ > 3 Gyr では数が少ない。恐らく、等級制限 サンプルでは古く暗い星団が落ちるからであろう。

 爆発的星団形成の証拠はない 

 我々の年齢分布も、Chiosi et al. も Hodge の結果も滑らかな星団形成史 に反する結果ではなかった。したがって、 LMC 全体での爆発的星団形成のような 出来事を支持する証拠は得られなかった。 ただし、フック部の星団が s 値から予想されるより若いということになったら、 この結論は変わるかも知れない。

 星団破壊? 

 あまり現実的でない、星団が壊れることはないという仮定を採用すると、 星団形成率は、過去 1 Gyr で LMC では一桁、MW では二桁上がったことになる。 一方、星形成率は各銀河で過去一定であったと考えると、図4は定性的には 星団が順次壊れていく過程を表している。その場合、 LMC と MW で曲線が異なるのは破壊効率の差に帰せられる。