Gaia Data Release 3 : Mapping the Asymmetric Disc of the MW


Drimmel et al
2023 AA 674,




 アブストラクト 

 ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。  若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。


 1.イントロ 

 論文の目的 

銀河構造観測の
第1段 大規模測光分光観測=SADSS, RAVE, APOGEE, LAMOST, GALAH
第2段 Gaia
その結果これまでに、
円盤の安定性 Gaia Collaboration 2018, Antoja18
マージャー史 Helmi18, Belokurov18
新散開星団による銀河構造 Cantat-Gaudin18、Castro-Ginard19 Gaia による新しい MW 像は Brown21 を見よ。この論文は DR3 で新たに加わっ た新情報に焦点を当てる。

 腕 

 Reid19 は対数腕モデルを提案した。主要な腕は Norma-Outer, Perseus, Sagittarius-Carina, Scutum-Centaurus である。Local Arm は副腕と見做さ れてきた。Poggio21 は OB 星、Cepheids, 若い散開星団を使って、ペルセウ ス、局所、Sag-Car 腕のマップを作った。Hou21 はOB 星で同様のマップを 作った。これらのマップは腕を、メーザーが存在しない第3、第4象限へと伸 ばした。

 バー 

  Drimmel et al. (2000), Churchwell et al. (2009) は腕がバーから伸びているらしい証拠を見出したが、MW が密度波的構造を持 つことを運動学から確証するのは難しい。
 運動空間内の構造 

 ガイアにより、Vφ -R 空間内に弧や稜線が見つかった Antoja18, Ramos18, Fragkoudi19, Khanna19a ことは速度空間に豊かな構造が存在することを示す。 それらをバーとの共鳴により解きほぐす作業 Trick19,21, Fragkoudi19, Monari19, Laporte20, Hunt19, Khanna19, Khoperskov22 が進行中である。 運動学情報が太陽から数 kpc 内に限られていることが最大の阻害要因である。

 シミュレイション 

 シミュレイションも重要である。

 速度場 

 Williams13 は RAVE データから大規模星流の存在と円盤の上と下とで 異なる運動の存在を明らかにした。Widrow12 は SDSS データを用いて、 密度と集団速度の双方に波動的な粗密構造を発見した。Carlin13 も LAMOST データから同様の特徴を見出した。Bovy15、Khanna19 はレッドクランプの 視線速度と距離から大規模速度場のマップを作った。彼らの結果によれば、 2.5 kpc より大きな星流構造が見られる。しかし、解析はデータの範囲で 制限されている。Gaia Collaboration21a は Gaia EDR3 により以前見出さ れた速度空間の稜線が R = 14 kpc まで伸びることを見出した。また銀河面 の下側が上側より回転速度が速いことも分かった。





表1.星団物理量の例。

 2.選択 

 この論文は Gaia DR3 の性能を示すことが目的なので、DR3 で得られる新し い上方のみを使う。DR3 の特徴は星の物理量が得られることである。そこで、 星団、古典セファイド(DCEPs)、OB 星、赤色巨星を使って円盤の密度と運動 のマップ化を試みる。

 若い星は星形成活動の生産物であり、可視光で支配的で渦構造を示す。一方、 古い星は密度分布を示す。Katz23 は視線速度ありの星を集め、6次元位相空 間の分布を与えた。

 2.1.星団 

 リスト 

 星団のリストは次のようである。
Cantat-Gaudin20   DR2 データからの 2017 星団。
           年齢は DR2 + artificial neural network から。
           EDR3 距離が 3σ以上の星を撥ねた。
Castro-Ginard22   EDR3 による 628 星団の追加。
Tarricq22      389 近距離星団の外層星の追加。  988 星団は 100 Ma より若い。

 視差と固有運動 

 表1にメンバー星の中間値として星団の視差と固有運動を示す。個々星の 視差には Lindgren21 の処方で補正を施した。統計的精度が高いので、星団距 離は単に視差の逆数として得られる。

図1.DR3 視線速度データアリの星団星の数と距離との関係

 視線速度 

 DR3 視線速度データのある 2162 星団に関しては中間値を表1に与えた。 若い星団 698/988 には視線速度データがある。


 2.2.古典セファイド (DCEPs) 

 リスト 

vari_cepheid  3286 DCEPs = 1995 F + 1097 1O + 194 MULTI
        SOS = Specific Objects Study が形成。.
Pietrukowicz21 564 追加。27 個は Inno21 と重複。連星を除き 480 DCEPs
Inno21     43 追加。重複を除くと 13 DCEPs
合計は 3286 + 480 + 13 = 3785 DCEPs.

 2.2.1.距離と掃除 



 Wesenheit 等級 

 Ripepi19 は観測的に w = 見かけ Wesenheit 等級を
    w = G - 1.90(GBP-GRP)
とした。W = 絶対 Wesenheit 等級に対して Ripepi は P-W-[Fe/H] 関係
    W = -5.988 - 3.176(log P - 1.0) - 0.520[Fe/H]
を導いた。

 平均等級 

 SOS パイプラインはフラックス平均の平均等級を使い、文献 499 セファイド は等級平均である。しかし、Ripepi22 によるとその差は 0.01 mag 程度で 無視できる程度である。

図2.DCEPS の G 分布

 [Fe/H] 

astrophysical_parameters  949 星
             RVS = Radial Velocity Spectrometer 解析
文献             27 星
メタル勾配          残りの DCEPs 全部。
             [Fe/H]=-0.0527R+0.511 (Ripepi22)

 距離 

 距離の算出は次の式で容易に行われる。
    w - W = -5 + 5 log d
暗く遠い DCEPS 距離は誤差が大きく、信頼性が低い。特に問題になるのは GBP の精度である。そこで、 30 kpc 以下で距離誤差が 10 % 以下にサンプルを制限する。230 星が弾かれ 3306 星となった。





表2.選択された DCEPs のリスト例

 2.2.2.視線速度 

 二つの視線速度 

 774 星には RVS による視線速度の時系列が得られている。それらに対しては SOS Cep&RRL パイプラインが速度曲線へのフィットから平均速度を出し、 vari_cepheid テーブルに載せた。残りの DCEPs に対しては、分光パイプライン が平均視線速度を計算し、メイン gaia_source テーブルに載せてある。この 二つの視線速度を較べると 0.6 km/s の差しかないことが判った。そこで、 DCEPs 全体に対し gaia_source カタログの値を使うことにした。DR3 から 2059, 文献から 67 の視線速度が得られた。

 2.2.3.年齢 

 周期年齢関係 

 Bono05, Anderson16 は DCEPs の周期年齢関係を見出した。De Somma21 は より精密な周期-年齢-メタル量(PWZ)関係を導いた。
DCEP PWZ 関係から正確 な距離が導かれるので、円盤のどこでも DCEP が存在すれば年齢が決まる。 それは、

    log t = 8.423 - 0.642 log P - 0.067 [Fe/H]

である。 この関係は F-モード脈動星に有効で、オーバーシューティングを含 む進化計算から得られた。1O-モード星にはこの関係が使えないので、 Feast, Catchpole 1997 の変換式、

    PF = PIO/(0.716-0.027log PIO)


 若い DCEPs 

 我々は、DCEPS を使って銀河系の腕を追跡したいので 200 Ma より若い DCEPs 2808 星のみを選択する。1948/2808 星は視線速度の測定が存在する。表2に それらのまとめを示す。 





図3.赤=選択巨星、青=OB 星、の G 等級分布。黒=視線速度アリの巨星。 灰色=視線速度アリの OB 星。マゼンタ= Teff > 7000 K のテンプレート で視線速度を評価した OB 星。

 3.3.OB-星 

 二種類の Teff 

 上部主系列星の選択には DR3 の Teff > 10,000 K を用いる。DR3 は 高温度星に対して2種類の Teff を与える。一つは GSP-Phot Andrae et al. (2023) である。これはガイアの BP/RP スペクトル、視差、G 等級から恒星物理量を 導くもので、その際に使用する恒星ライブラリーに応じて異なる物理量セット が得られる。そして個々の星毎にその内で最も良い量をベスト物理量とする。 これらは main Gaia source table から取って来られる。 もう一つは高温度星用に作られたモジュール ESP-HS Greevey et al. (2023) が提供する物理量である。 これは BP/RP スペクトルと RVS スペクトルを一緒にして解析し、位置情報は 使わない。こちらは astrophysical_parameters テーブルに入っている。 Teff > 10,000 K 天体の約半分が二つの Teff を持つ。

 Teff の選択 

 GSP-Phot 温度しかない星の場合、Gaia BP/RP スペクトルがあれば、ESP-HS で決めたスペクトル型を使う。ESP-HS 温度しかない星の場合、Teff = 10,000 - 50,000 K という制限を加える。というのは 50,000 K 以上の Teff は信頼 性が低いからである。

 白色矮星を切る 

 対象星が上部主系列星であるので、それより暗い星は落とす必要がある。 そこで、
    G + 5 log(ω/100) < 2 + 1.8(GBP-GRP)
を選択条件に加える。上の 1.8 は赤化ベクトルの傾きである。

図4.ω/σω の分布。青=OB 星。 橙=視線速度アリの OB 星。赤線は ω/σω =5.

 遠方天体 

 視差負の遠方星を捕まえるるため、先の基準を以下のように書き直す。
    (ω/100)5 < 10(2-G+1.8(GBP-GRP))
この基準に 923,700 星がかかった。ただ、そこには多数の LMC, SMC, 球状星団 が含まれている。そこで、銀河面からの高さが 300 pc を超す星は落とす。これで 621,609 星となった。最後に、fa = astrometric fidelity indicator (Rybizki et al 2022) を用い、fa > 0.5 を課す。これで 7 % が 落ちる。こうして 579,577 星が残った。内 91,836 星は視線速度がある。ただ、 注意すると、これらのある割合は非常に異なる温度の RVS テンプレートスペクトル から視線速度が決まっていて、不正確な可能英が高い。そこで、 rv_template_Temp < 7000 K の星は落とした。こうして 77,659 星が妥当な サンプルとなった。図3にそれらの G 分布を示す。

 距離 

 ガイア星の 40 % は σω/ω > 0.20 と不定 性が大きい。図4に ω/σω 分布を示す。 吾々のサンプルの 43 % はESP-HS からの温度しか持たず、 GSP-Phot からの 距離がない。そこで我々は Bailor-Jones21 の方法で Fouesneau23 のように 距離を求めた。これらは Gaia Archive の eternal_gaiadr3_distance から 取って来られる。

 別の高信頼度 OB 星サンプル 

 別の高信頼度 OB 星サンプルが Greevey et al. (2023) から得られる。このサンプルから得られる若い B-型星を用いて MW 回転曲線が モデル化された。

 2.4.巨星 


図6.APOGEE RC 距離と3つの方法での距離との差の分布。


図5.視差アリ RGBs のキール図。

 フル RGB サンプル 

 RGBs の選択に GSP-Phot から Teff = 3000 - 5500, log g < 3.0 とい う基準 Andrae et al. (2023) を設けた。App A に query の例が載っている。図5にその キール図を示す。 それらは 11,576,957 星から成り、フル RGB サンプルと呼ばれる。図3には その G 等級分布を示す。

 距離 

 RGB サンプルの視差エラーの分布は OB-星と似て、 ω/σω < 5 の星が 39.5 % を占める。 巨星サンプルは全て GSP-Phot パラメタ―を有しているので、一つの選択肢 は Gaia DR3 で与えられる距離 Andrae et al. (2023) を用いることである。もう一つはBailor-Jones21 の Geo and photogeo distances である。どの距離決定が適切かを見るために、APOGEE DR17 からの RCs カタログ Abbdurro'uf22 と我々の RGBs サンプルをクロスマッチさせた。 その結果共通サンプルとして 18,322 星が得られた。

表3.様々な追跡子

 photogeo 距離を採用 

APOGEE の測光距離と上 に述べた3種類の距離測定法距離との差を較べた結果を図6に示す。図から Bailor-Jones21 の photogeo distances が良いと分かる。Babusiaux23 が示 すように、大きな視差の誤差と、用いられた prior の結果、GSP-Phot 距離 は太陽の周り 2 kpc にリング状の密度超過を作り出す。GSP-Phot 距離は内側 円盤の構造を研究するには不適当である。こうして、 OB-星と同様に photogeo 距離が採用されることになった。 

  fa > 0.5 星 

 OB 星と同様、RGBs でも信頼指数 fa > 0.5 の星を選ぶ。 これは 14 % を切ることになり、残った星は 9.959.807 星となった。 内 6,586,329 は視線速度を持つ。

 LMC, SMC, 球状星団の除去 

 以上のサンプルには LMC, SMC, 球状星団の星が多数含まれる。円盤研究の ため |Z| < 1 kpc という制限を付けた。その中に Sgr dph gal が含まれ ていないかを調べた。固有運動マップにはその痕跡は見つからなかった。 矮小銀河内の RCs は 17 - 18 mag の筈(Antoja20) で、それだと、サンプル の暗い端になるので、あったとしても、無視できる程度であろう。 最終 RGBs サンプルは 8,727,344 星で内視線速度があるのは 5,730,578 星で ある。

 表3=まとめ 

 表3には、追跡子の総数をまとめた。それらは全て 5D = 方向、距離、固有 運動を備えており、副サンプルの方は視線速度が追加される。


 3.観測から 6D 位相空間へ 

 3.1.実空間へのマッピング 

 良い距離決定法 

 前節で天体の種類に応じて最良の距離決定法が選ばれた。
星団      視差中間値の逆数
DCEPs     測光距離
OBs, RHBs   photogeo 距離(Bailer-Jones21)

 DCEP が存在する星団 

 図7には、DCEP が存在する星団 Anderson13 の OC 距離を DCEPS 25 星の photogeo 距離と較べた。一致は非常に良い。

 (x, y, z) と (X, Y, Z) 

 太陽中心座標 (, y, z) と銀河系中心座標 (X, Y, Z) を以下のように定義する。 x は GC 方向が正である。
 Ro 

銀河系中心距離は、 Sgr A*S2 連星を用いた値、 Ro = 8277±9(stat)±30(sys) pc Gravity Collaboration 2022 を採用する。Leung22 は独立に星の運動から Ro = 8.23±9.12 kpc を 出した。今や、BH は銀河中心にはなく、力学摩擦で銀河中心に落下していく  Gualandri08 と考えられている。

 b = 0 と Z = 0 

 銀河座標 Gum60, Blaauw60 が提案された当時、b = 0 面と Z = 0 面は平行 であると仮定されていたが、太陽位置が Z = 0 面の上にあることから、残差 効果は生じそうである。当時既に、電波水素線観測から決めた Zo と星の運動 から決めた Zo が一致しないことは注意されていた。ガイア前のまとめ Bland-Hawthorn16 は太陽高度を 20 - 30 pc としている。

図7.DCEPs の距離と OCs の比較。

 しかし、最近の値 Yao17, Widmark19, Anderson19, Reid19 はもっと小さい。ただ、銀河円盤が 振動 Bennett19, 非平衡 Antoja18 という証拠があり、太陽近傍の円盤中間面 が恒星垂直分布の全体平均平面として定義される Z = 0 と一致しないかも知れ ない。ガス、星形成追跡子は異なる垂直振動m−度があるかも知れないし、星 の種族ごとにさえ別々のモードが存在する可能性もある。
 例えば、Gaia Collaboration 2021b は若い所属から古い種族に掛けて Zo が -4 pc から 15 pc に変わることを見出した。SgrA* が b = 0 から負方向に ずれているのも b = 0 平面と Z = 0 面との間に 0.1° 程度の傾きの ずれがあることを示す。

 ここでは Z = z 

 しかし、銀河面上の大規模非軸対称構造を考える際には、このずれは重要で ないので、 Zo = 0, Z = z と仮定する。



図8. Bailer-Jones21 からの視線速度付きの 赤=RGBs と青=OBs 距離の分布。

 3.2.速度空間のマップ 

 速度付き OB 星は近場のみ 

 視線速度、固有運動、距離、方向から太陽中心空間速度が決まる。  図8は視線速度付きの 77,659 OB 星と 5,730,578 RGB 星の G 距離分布を 示す。視線速度付き OB 星の限界等級が明るいため、その空間範囲は小さい。


図9. 視線速度付きの RGBs の相対距離誤差の分布。青線=メディアン。

 3.3.誤差伝播 


図10. 視線速度付きの RGBs の相対距離誤差の分布。青線=メディアン。





図11.モックカタログで作った誤差


図12.視線速度のある 左=OB 星、右= RGB 星のY 分布。

 4.配置空間のマップ 


図13.OB 星密度超過。黒丸= 63 Ma より若い星団。丸面積は no に比例する。十字=太陽。

 図12左=OB 星分布 

 図12左は OB 星の分布を示す。濃い部分は腕の切片で、左から ペルセウス腕、局所(オリオン)腕、サジタリウス-カリーナ腕と (多分)スキュータム腕に相当する。
(スキュータムは何処?右の塊りを 上下に分けてその下側をそうだとしてるのか? )
OB-星の分布が特に 3 kpc 以内で、これほど詳細に見えたのは初めてである。 3 kpc より遠方は前景減光による放射模様が支配的となる。

 図12右= RGBs 分布 

 図12右は視線速度付きの 5.7 M RGBs の分布を示す。OB 星と同様に前景減 光による放射状の陰がはっきり見える。腕の模様は見えないが、x = 6 に密度 の高まりがある。おそらくバーによるものである。もっとはっきりした 密度超過が X =2−3 にある。これは (1) 等級限界による減少と (2) GC 方向への密度の高まり、の二つが競合してできた丘である。 

 密度超過 

 Poggio21 は次の式で密度超過を定義した。

図14.63 Ma より若い星団の分布。灰色帯=Reid19 が定めた渦状腕。 薄橙破線= Levine06 によるペルセウス腕。エラーバー=1σ 不定性。

ここに表面密度 Σ(X,Y) は 0.3 kpc、 その平均 ⟨Σ(X,Y)⟩ は 2 kpc の Epanechnikov カーネルで評価されている。結果を図13に示す。 図13は図12左と同じ特徴を示す。図13には若い星団の分布も重ねた。OB-星 と若い星団が同じ分布を示すことが判る。

 図14=若い星団 

 図14には 63 Ma より若い星団の分布を示す。若い星団の分布は確かに幾つ かの細長い集合を成すが、それだけで腕を追うことは難しい。その例は ペルセウス腕が 2 kpc に渡って星団では途切れていることである。 腕のこの不連続は以前から、星団 CantonGaudin20, CO 雲 Peek22 で指摘され ていた。

 ペルセウス腕はどっち? 

 一方、Levine06 のモデルは上部主系列星によるペルセウス腕の方向を非常に よく辿っている。Poggia21 参照。それはまた、散開星団の分布ともかなり良く 合う。図14の淡橙破線がそれである。このモデルでは、Reid19 がつないで 低いピッチ角のペルセウス腕とした第3象限と第4象限の二つの星団群は、そう ではなく、それぞれが別の腕に帰属する。





図15.ウェイブレット変換による 200 Ma より若いセファイド分布。 左枠の黒点=個々のセファイド。右枠実線= Taylor93 の腕。破線= Levine06 の腕。

 図15=セファイド分布 

 最後に図15では 200 Ma より若いセファイドの分布をウェイブレット変換 を用いて表示する。図15左枠は個々星の配置とウェイブレット係数を比較 する。右枠では文献のモデル腕と比較する。実線は Taylor93 の4本腕モデル である。x < 5 kpc でセファイドが多数存在する領域にはサジタリウス- カリーナ腕が y < 2.5 kpc でよく一致する。
 不一致 

 (x, y) = (2.5, 5) でセファイドの密度超過は Taylor, Cordes 1993 モデル のサジタリウス-カリーナ腕から離れるように見える。外側円盤では、セファイ ドによるペルセウス腕の方向は Tayor93 や Reid19 よりも Levine06 のモデル により近い。HI 患側によるこの外側腕はセファイドで大変良く R = 16 kpc ま で追跡される。残念ながらセファイドは局所腕を追跡するには疎ら過ぎる。





図16.RGBs の速度マップ。左列=系統速度。右列=ランダム速度。 上段=動径方向。中段=回転方向。下段=垂直方向。黒丸=太陽。 十字=GC. 破線は R = 5, 10 koc.

 5.速度マップ 

 5.1.速度マップの作製 

 ピクセル分割 

 速度マップのピクセルサイズ= 100 pc x 100 pc でマップ全体で 341 341 ピクセルとした。ピクセル内には最低 20 星は含むこととし、不足ピクセルは マスクした。その結果有効ピクセル内には OB 星の場合, 中間値で 58 星、 最大 267 星を含み、 RGB 星では 152 星、2541 星である。

 速度成分 

 速度成分は VR, Vφ, Vz とする。 図16に左= RGBs, 右 = OBs の速度成分マップを示す。

 VR マップ 

 VR マップは GC 方向に対し著しい反対称性を示す。この四重極性 はバーが生み出す y > 0 で内側方向平均速度 -40 km/s, y < 0 で外側 方向平均速度 45 km/s を示す。この四重極模様は Bovy19, Queiroz21 が数千 星から導いたものと同じである。彼らは視差と固有運動に Gaia DR2, EDR3 を 用い、視線速度に APOGEE を用いた。
 中央付近の四重極運動に加え、もっと外側では星流運動が見られる。例えば、 R = 6.6 kpc (x = 1.5), |y| < 2 kpc では VR が大きい。 R = 10 kpc (x, y) = (-1.5, 1) では方位角 φ に対し VR の 符号が変わる。

 Vφ マップ 

 Vφ の分布はバー内部では細長くのびている。R < 5 kpc ではバーに沿っての星はバーと直交方向に存在するの星と較べ、回転速度が 遅い。σφ マップも四重極パターンを示すがその方向は 45° 傾いている。速度分散楕円はバー領域では等方でなく細長い。

表4.名前一覧

 V マップ 

 V はどこも正であり、バーに付随するようなパターンは見えな い。R = 7 kpc 付近、x = 1 - 4, t < -2 で Vz は最低となり、一方  y = 0 に関して反対側では正となる。これは星流の現れかも知れないが 系統誤差の可能性もある。反中心方向では距離の増大と共に Vz が大きくなる。 これは銀河面ワープの運動学的表現である。反対称パターンは見えない。






 5.2.動径プロファイル 


図17.速度動径プロファイル。黒線= RGBs. 青線= OBs. 上段=回転曲線。斜線=不定性。下段=速度散布度。 実線=

  

、点線=Vz

図18.サンプルによる回転曲線の違い。黒点=セファイド。赤点=OCs。

 図17=速度動径プロファイル 

 動径距離を 200 pc 区間に分け、そこでの中間値を取ることで速度動径プロ ファイルを得る。図17は上段=回転曲線、下段=速度散布度を示す。 R = 6.5 - 10 kpc で、OB 星は RGBs に比べ約 17 km/s 回転速度が速い。

 図18=回転速度の比較 

 図18は様々な天体の回転速度を較べている。




 5.3.バーの運動学 


図19.VR, Vφ マップの反対称モデルの結果。 上:反対称性振幅 AR, Aφ。軸対称成分 VR^bar も示す。 下:太陽-GC 軸に対する摂動の位相角。破線領域=不定性。水平点線=バーの orientation 角。垂直破線=バー共回転の推定値。

  

 モック銀河のシミュレイションで観測を定性的に理解する。

  

 

  

 

図20.バーのリンドブラッド共鳴。黒実線= RGB 回転角振動数。頃点線 = RGB 回転角振動数+エピサイクリック振動数。 青実線= OBs 回転角振動数。水平破線=バー回転角振動数。縦破線 = 共回転 (5.4 kpc) と OLR (9.7 kpc) 位置。

  

 

  

 

  

 





図21.OB 星の速度マップ。左:ピクセル表示。右:平滑化表示+OB-星密度超過 等高線。上段= VR, 中段=Vφ, 下段=Vz マップは |Z| < 0.3 kpc に限られる。


図22.RGB 星の速度マップ。左:VR。 右:Vφ-Vφ^bar, 黒実線=NIR 二本腕モデル Drimmel et al. (2000). 破線=腕間の最低密度線。 中段=, 下段=Vz マップは |Z| < 0.3 kpc に限られる。


図23.ΔVi = VZ>0-VZ<0 のマップ。黒点線=NIR 二本腕モデル Drimmel et al. (2000). カラー線は Reid19 のあか=ペルセウス、シアン=局所腕、

 7.結論 

 OBs と RGBs の運動学的な差 

 OB-星の運動は複雑なガス運動を反映しているようである。いっぽう、 RGBs は OBs よりずっと広い範囲での銀河の運動を示す。それはバーの運動学 的特徴を初めて明らかにした。バーに比べると腕に伴う星流運動の証拠は ずっとはっきりしない。

  

 星団と ONBs のマップは局所腕の長さが少なくとも 8 kpc ある事を明らかに した。サジタリウス-カリーナうでやペルセウス腕ほど強くはないが、「局所」 という名前よりは最初(van de Hulst54) のオリオンという名前に戻るべきだろう。
  

 この研究は DR3 の予備研究に過ぎない。