ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。 | 若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。 |
論文の目的 銀河構造観測の 第1段 大規模測光分光観測=SADSS, RAVE, APOGEE, LAMOST, GALAH 第2段 Gaia その結果これまでに、 円盤の安定性 Gaia Collaboration 2018, Antoja18 マージャー史 Helmi18, Belokurov18 新散開星団による銀河構造 Cantat-Gaudin18、Castro-Ginard19 Gaia による新しい MW 像は Brown21 を見よ。この論文は DR3 で新たに加わっ た新情報に焦点を当てる。 腕 Reid19 は対数腕モデルを提案した。主要な腕は Norma-Outer, Perseus, Sagittarius-Carina, Scutum-Centaurus である。Local Arm は副腕と見做さ れてきた。Poggio21 は OB 星、Cepheids, 若い散開星団を使って、ペルセウ ス、局所、Sag-Car 腕のマップを作った。Hou21 はOB 星で同様のマップを 作った。これらのマップは腕を、メーザーが存在しない第3、第4象限へと伸 ばした。 バー Drimmel et al. (2000), Churchwell et al. (2009) は腕がバーから伸びているらしい証拠を見出したが、MW が密度波的構造を持 つことを運動学から確証するのは難しい。 |
運動空間内の構造 ガイアにより、Vφ -R 空間内に弧や稜線が見つかった Antoja18, Ramos18, Fragkoudi19, Khanna19a ことは速度空間に豊かな構造が存在することを示す。 それらをバーとの共鳴により解きほぐす作業 Trick19,21, Fragkoudi19, Monari19, Laporte20, Hunt19, Khanna19, Khoperskov22 が進行中である。 運動学情報が太陽から数 kpc 内に限られていることが最大の阻害要因である。 シミュレイション シミュレイションも重要である。 速度場 Williams13 は RAVE データから大規模星流の存在と円盤の上と下とで 異なる運動の存在を明らかにした。Widrow12 は SDSS データを用いて、 密度と集団速度の双方に波動的な粗密構造を発見した。Carlin13 も LAMOST データから同様の特徴を見出した。Bovy15、Khanna19 はレッドクランプの 視線速度と距離から大規模速度場のマップを作った。彼らの結果によれば、 2.5 kpc より大きな星流構造が見られる。しかし、解析はデータの範囲で 制限されている。Gaia Collaboration21a は Gaia EDR3 により以前見出さ れた速度空間の稜線が R = 14 kpc まで伸びることを見出した。また銀河面 の下側が上側より回転速度が速いことも分かった。 |
この論文は Gaia DR3 の性能を示すことが目的なので、DR3 で得られる新し
い上方のみを使う。DR3 の特徴は星の物理量が得られることである。そこで、
星団、古典セファイド(DCEPs)、OB 星、赤色巨星を使って円盤の密度と運動
のマップ化を試みる。 若い星は星形成活動の生産物であり、可視光で支配的で渦構造を示す。一方、 古い星は密度分布を示す。Katz23 は視線速度ありの星を集め、6次元位相空 間の分布を与えた。 2.1.星団リスト星団のリストは次のようである。 Cantat-Gaudin20 DR2 データからの 2017 星団。 年齢は DR2 + artificial neural network から。 EDR3 距離が 3σ以上の星を撥ねた。 Castro-Ginard22 EDR3 による 628 星団の追加。 Tarricq22 389 近距離星団の外層星の追加。 988 星団は 100 Ma より若い。 視差と固有運動 表1にメンバー星の中間値として星団の視差と固有運動を示す。個々星の 視差には Lindgren21 の処方で補正を施した。統計的精度が高いので、星団距 離は単に視差の逆数として得られる。 |
![]() 図1.DR3 視線速度データアリの星団星の数と距離との関係 視線速度 DR3 視線速度データのある 2162 星団に関しては中間値を表1に与えた。 若い星団 698/988 には視線速度データがある。 |
2.2.古典セファイド (DCEPs)リストvari_cepheid 3286 DCEPs = 1995 F + 1097 1O + 194 MULTI SOS = Specific Objects Study が形成。. Pietrukowicz21 564 追加。27 個は Inno21 と重複。連星を除き 480 DCEPs Inno21 43 追加。重複を除くと 13 DCEPs 合計は 3286 + 480 + 13 = 3785 DCEPs. 2.2.1.距離と掃除Wesenheit 等級 Ripepi19 は観測的に w = 見かけ Wesenheit 等級を w = G - 1.90(GBP-GRP) とした。W = 絶対 Wesenheit 等級に対して Ripepi は P-W-[Fe/H] 関係 W = -5.988 - 3.176(log P - 1.0) - 0.520[Fe/H] を導いた。 平均等級 SOS パイプラインはフラックス平均の平均等級を使い、文献 499 セファイド は等級平均である。しかし、Ripepi22 によるとその差は 0.01 mag 程度で 無視できる程度である。 |
![]() 図2.DCEPS の G 分布 [Fe/H] astrophysical_parameters 949 星 RVS = Radial Velocity Spectrometer 解析 文献 27 星 メタル勾配 残りの DCEPs 全部。 [Fe/H]=-0.0527R+0.511 (Ripepi22) 距離 距離の算出は次の式で容易に行われる。 w - W = -5 + 5 log d 暗く遠い DCEPS 距離は誤差が大きく、信頼性が低い。特に問題になるのは GBP の精度である。そこで、 30 kpc 以下で距離誤差が 10 % 以下にサンプルを制限する。230 星が弾かれ 3306 星となった。 |
2.2.2.視線速度二つの視線速度774 星には RVS による視線速度の時系列が得られている。それらに対しては SOS Cep&RRL パイプラインが速度曲線へのフィットから平均速度を出し、 vari_cepheid テーブルに載せた。残りの DCEPs に対しては、分光パイプライン が平均視線速度を計算し、メイン gaia_source テーブルに載せてある。この 二つの視線速度を較べると 0.6 km/s の差しかないことが判った。そこで、 DCEPs 全体に対し gaia_source カタログの値を使うことにした。DR3 から 2059, 文献から 67 の視線速度が得られた。 2.2.3.年齢周期年齢関係Bono05, Anderson16 は DCEPs の周期年齢関係を見出した。De Somma21 は より精密な周期-年齢-メタル量(PWZ)関係を導いた。 |
DCEP PWZ 関係から正確
な距離が導かれるので、円盤のどこでも DCEP が存在すれば年齢が決まる。
それは、 log t = 8.423 - 0.642 log P - 0.067 [Fe/H] である。 この関係は F-モード脈動星に有効で、オーバーシューティングを含 む進化計算から得られた。1O-モード星にはこの関係が使えないので、 Feast, Catchpole 1997 の変換式、 P 若い DCEPs 我々は、DCEPS を使って銀河系の腕を追跡したいので 200 Ma より若い DCEPs 2808 星のみを選択する。1948/2808 星は視線速度の測定が存在する。表2に それらのまとめを示す。 |
![]() 図3.赤=選択巨星、青=OB 星、の G 等級分布。黒=視線速度アリの巨星。 灰色=視線速度アリの OB 星。マゼンタ= Teff > 7000 K のテンプレート で視線速度を評価した OB 星。 3.3.OB-星二種類の Teff上部主系列星の選択には DR3 の Teff > 10,000 K を用いる。DR3 は 高温度星に対して2種類の Teff を与える。一つは GSP-Phot Andrae et al. (2023) である。これはガイアの BP/RP スペクトル、視差、G 等級から恒星物理量を 導くもので、その際に使用する恒星ライブラリーに応じて異なる物理量セット が得られる。そして個々の星毎にその内で最も良い量をベスト物理量とする。 これらは main Gaia source table から取って来られる。 もう一つは高温度星用に作られたモジュール ESP-HS Greevey et al. (2023) が提供する物理量である。 これは BP/RP スペクトルと RVS スペクトルを一緒にして解析し、位置情報は 使わない。こちらは astrophysical_parameters テーブルに入っている。 Teff > 10,000 K 天体の約半分が二つの Teff を持つ。 Teff の選択 GSP-Phot 温度しかない星の場合、Gaia BP/RP スペクトルがあれば、ESP-HS で決めたスペクトル型を使う。ESP-HS 温度しかない星の場合、Teff = 10,000 - 50,000 K という制限を加える。というのは 50,000 K 以上の Teff は信頼 性が低いからである。 白色矮星を切る 対象星が上部主系列星であるので、それより暗い星は落とす必要がある。 そこで、 G + 5 log(ω/100) < 2 + 1.8(GBP-GRP) を選択条件に加える。上の 1.8 は赤化ベクトルの傾きである。 |
![]() 図4.ω/σω の分布。青=OB 星。 橙=視線速度アリの OB 星。赤線は ω/σω =5. 遠方天体 視差負の遠方星を捕まえるるため、先の基準を以下のように書き直す。 (ω/100)5 < 10(2-G+1.8(GBP-GRP)) この基準に 923,700 星がかかった。ただ、そこには多数の LMC, SMC, 球状星団 が含まれている。そこで、銀河面からの高さが 300 pc を超す星は落とす。これで 621,609 星となった。最後に、fa = astrometric fidelity indicator (Rybizki et al 2022) を用い、fa > 0.5 を課す。これで 7 % が 落ちる。こうして 579,577 星が残った。内 91,836 星は視線速度がある。ただ、 注意すると、これらのある割合は非常に異なる温度の RVS テンプレートスペクトル から視線速度が決まっていて、不正確な可能英が高い。そこで、 rv_template_Temp < 7000 K の星は落とした。こうして 77,659 星が妥当な サンプルとなった。図3にそれらの G 分布を示す。 距離 ガイア星の 40 % は σω/ω > 0.20 と不定 性が大きい。図4に ω/σω 分布を示す。 吾々のサンプルの 43 % はESP-HS からの温度しか持たず、 GSP-Phot からの 距離がない。そこで我々は Bailor-Jones21 の方法で Fouesneau23 のように 距離を求めた。これらは Gaia Archive の eternal_gaiadr3_distance から 取って来られる。 別の高信頼度 OB 星サンプル 別の高信頼度 OB 星サンプルが Greevey et al. (2023) から得られる。このサンプルから得られる若い B-型星を用いて MW 回転曲線が モデル化された。 |
![]() 図5.視差アリ RGBs のキール図。 フル RGB サンプル RGBs の選択に GSP-Phot から Teff = 3000 - 5500, log g < 3.0 とい う基準 Andrae et al. (2023) を設けた。App A に query の例が載っている。図5にその キール図を示す。 それらは 11,576,957 星から成り、フル RGB サンプルと呼ばれる。図3には その G 等級分布を示す。 距離 RGB サンプルの視差エラーの分布は OB-星と似て、 ω/σω < 5 の星が 39.5 % を占める。 巨星サンプルは全て GSP-Phot パラメタ―を有しているので、一つの選択肢 は Gaia DR3 で与えられる距離 Andrae et al. (2023) を用いることである。もう一つはBailor-Jones21 の Geo and photogeo distances である。どの距離決定が適切かを見るために、APOGEE DR17 からの RCs カタログ Abbdurro'uf22 と我々の RGBs サンプルをクロスマッチさせた。 その結果共通サンプルとして 18,322 星が得られた。 |
![]() 表3.様々な追跡子 photogeo 距離を採用 APOGEE の測光距離と上 に述べた3種類の距離測定法距離との差を較べた結果を図6に示す。図から Bailor-Jones21 の photogeo distances が良いと分かる。Babusiaux23 が示 すように、大きな視差の誤差と、用いられた prior の結果、GSP-Phot 距離 は太陽の周り 2 kpc にリング状の密度超過を作り出す。GSP-Phot 距離は内側 円盤の構造を研究するには不適当である。こうして、 OB-星と同様に photogeo 距離が採用されることになった。 fa > 0.5 星 OB 星と同様、RGBs でも信頼指数 fa > 0.5 の星を選ぶ。 これは 14 % を切ることになり、残った星は 9.959.807 星となった。 内 6,586,329 は視線速度を持つ。 LMC, SMC, 球状星団の除去 以上のサンプルには LMC, SMC, 球状星団の星が多数含まれる。円盤研究の ため |Z| < 1 kpc という制限を付けた。その中に Sgr dph gal が含まれ ていないかを調べた。固有運動マップにはその痕跡は見つからなかった。 矮小銀河内の RCs は 17 - 18 mag の筈(Antoja20) で、それだと、サンプル の暗い端になるので、あったとしても、無視できる程度であろう。 最終 RGBs サンプルは 8,727,344 星で内視線速度があるのは 5,730,578 星で ある。 表3=まとめ 表3には、追跡子の総数をまとめた。それらは全て 5D = 方向、距離、固有 運動を備えており、副サンプルの方は視線速度が追加される。 |
3.1.実空間へのマッピング良い距離決定法前節で天体の種類に応じて最良の距離決定法が選ばれた。 星団 視差中間値の逆数 DCEPs 測光距離 OBs, RHBs photogeo 距離(Bailer-Jones21) DCEP が存在する星団 図7には、DCEP が存在する星団 Anderson13 の OC 距離を DCEPS 25 星の photogeo 距離と較べた。一致は非常に良い。 (x, y, z) と (X, Y, Z) 太陽中心座標 (, y, z) と銀河系中心座標 (X, Y, Z) を以下のように定義する。 x は GC 方向が正である。 ![]() ![]() 銀河系中心距離は、 Sgr A*S2 連星を用いた値、 Ro = 8277±9(stat)±30(sys) pc Gravity Collaboration 2022 を採用する。Leung22 は独立に星の運動から Ro = 8.23±9.12 kpc を 出した。今や、BH は銀河中心にはなく、力学摩擦で銀河中心に落下していく Gualandri08 と考えられている。 b = 0 と Z = 0 銀河座標 Gum60, Blaauw60 が提案された当時、b = 0 面と Z = 0 面は平行 であると仮定されていたが、太陽位置が Z = 0 面の上にあることから、残差 効果は生じそうである。当時既に、電波水素線観測から決めた Zo と星の運動 から決めた Zo が一致しないことは注意されていた。ガイア前のまとめ Bland-Hawthorn16 は太陽高度を 20 - 30 pc としている。 |
![]() 図7.DCEPs の距離と OCs の比較。 しかし、最近の値 Yao17, Widmark19, Anderson19, Reid19 はもっと小さい。ただ、銀河円盤が 振動 Bennett19, 非平衡 Antoja18 という証拠があり、太陽近傍の円盤中間面 が恒星垂直分布の全体平均平面として定義される Z = 0 と一致しないかも知れ ない。ガス、星形成追跡子は異なる垂直振動m−度があるかも知れないし、星 の種族ごとにさえ別々のモードが存在する可能性もある。 例えば、Gaia Collaboration 2021b は若い所属から古い種族に掛けて Zo が -4 pc から 15 pc に変わることを見出した。SgrA* が b = 0 から負方向に ずれているのも b = 0 平面と Z = 0 面との間に 0.1° 程度の傾きの ずれがあることを示す。 ここでは Z = z しかし、銀河面上の大規模非軸対称構造を考える際には、このずれは重要で ないので、 Zo = 0, Z = z と仮定する。 |
![]() 図8. Bailer-Jones21 からの視線速度付きの 赤=RGBs と青=OBs 距離の分布。 3.2.速度空間のマップ速度付き OB 星は近場のみ視線速度、固有運動、距離、方向から太陽中心空間速度が決まる。 図8は視線速度付きの 77,659 OB 星と 5,730,578 RGB 星の G 距離分布を 示す。視線速度付き OB 星の限界等級が明るいため、その空間範囲は小さい。 ![]() 図9. 視線速度付きの RGBs の相対距離誤差の分布。青線=メディアン。 3.3.誤差伝播 |
![]() 図10. 視線速度付きの RGBs の相対距離誤差の分布。青線=メディアン。 |
![]() 図13.OB 星密度超過。黒丸= 63 Ma より若い星団。丸面積は no に比例する。十字=太陽。 図12左=OB 星分布 図12左は OB 星の分布を示す。濃い部分は腕の切片で、左から ペルセウス腕、局所(オリオン)腕、サジタリウス-カリーナ腕と (多分)スキュータム腕に相当する。 (スキュータムは何処?右の塊りを 上下に分けてその下側をそうだとしてるのか? ) OB-星の分布が特に 3 kpc 以内で、これほど詳細に見えたのは初めてである。 3 kpc より遠方は前景減光による放射模様が支配的となる。 図12右= RGBs 分布 図12右は視線速度付きの 5.7 M RGBs の分布を示す。OB 星と同様に前景減 光による放射状の陰がはっきり見える。腕の模様は見えないが、x = 6 に密度 の高まりがある。おそらくバーによるものである。もっとはっきりした 密度超過が X =2−3 にある。これは (1) 等級限界による減少と (2) GC 方向への密度の高まり、の二つが競合してできた丘である。 密度超過 Poggio21 は次の式で密度超過を定義した。 ![]() |
![]() 図14.63 Ma より若い星団の分布。灰色帯=Reid19 が定めた渦状腕。 薄橙破線= Levine06 によるペルセウス腕。エラーバー=1σ 不定性。 ここに表面密度 Σ(X,Y) は 0.3 kpc、 その平均 〈Σ(X,Y)〉 は 2 kpc の Epanechnikov カーネルで評価されている。結果を図13に示す。 図13は図12左と同じ特徴を示す。図13には若い星団の分布も重ねた。OB-星 と若い星団が同じ分布を示すことが判る。 図14=若い星団 図14には 63 Ma より若い星団の分布を示す。若い星団の分布は確かに幾つ かの細長い集合を成すが、それだけで腕を追うことは難しい。その例は ペルセウス腕が 2 kpc に渡って星団では途切れていることである。 腕のこの不連続は以前から、星団 CantonGaudin20, CO 雲 Peek22 で指摘され ていた。 ペルセウス腕はどっち? 一方、Levine06 のモデルは上部主系列星によるペルセウス腕の方向を非常に よく辿っている。Poggia21 参照。それはまた、散開星団の分布ともかなり良く 合う。図14の淡橙破線がそれである。このモデルでは、Reid19 がつないで 低いピッチ角のペルセウス腕とした第3象限と第4象限の二つの星団群は、そう ではなく、それぞれが別の腕に帰属する。 |
図15=セファイド分布 最後に図15では 200 Ma より若いセファイドの分布をウェイブレット変換 を用いて表示する。図15左枠は個々星の配置とウェイブレット係数を比較 する。右枠では文献のモデル腕と比較する。実線は Taylor93 の4本腕モデル である。x < 5 kpc でセファイドが多数存在する領域にはサジタリウス- カリーナ腕が y < 2.5 kpc でよく一致する。 |
不一致 (x, y) = (2.5, 5) でセファイドの密度超過は Taylor, Cordes 1993 モデル のサジタリウス-カリーナ腕から離れるように見える。外側円盤では、セファイ ドによるペルセウス腕の方向は Tayor93 や Reid19 よりも Levine06 のモデル により近い。HI 患側によるこの外側腕はセファイドで大変良く R = 16 kpc ま で追跡される。残念ながらセファイドは局所腕を追跡するには疎ら過ぎる。 |
5.1.速度マップの作製ピクセル分割速度マップのピクセルサイズ= 100 pc x 100 pc でマップ全体で 341 341 ピクセルとした。ピクセル内には最低 20 星は含むこととし、不足ピクセルは マスクした。その結果有効ピクセル内には OB 星の場合, 中間値で 58 星、 最大 267 星を含み、 RGB 星では 152 星、2541 星である。 速度成分 速度成分は VR, Vφ, Vz とする。 図16に左= RGBs, 右 = OBs の速度成分マップを示す。 VR マップ VR マップは GC 方向に対し著しい反対称性を示す。この四重極性 はバーが生み出す y > 0 で内側方向平均速度 -40 km/s, y < 0 で外側 方向平均速度 45 km/s を示す。この四重極模様は Bovy19, Queiroz21 が数千 星から導いたものと同じである。彼らは視差と固有運動に Gaia DR2, EDR3 を 用い、視線速度に APOGEE を用いた。 中央付近の四重極運動に加え、もっと外側では星流運動が見られる。例えば、 R = 6.6 kpc (x = 1.5), |y| < 2 kpc では VR が大きい。 R = 10 kpc (x, y) = (-1.5, 1) では方位角 φ に対し VR の 符号が変わる。 Vφ マップ Vφ の分布はバー内部では細長くのびている。R < 5 kpc ではバーに沿っての星はバーと直交方向に存在するの星と較べ、回転速度が 遅い。σφ マップも四重極パターンを示すがその方向は 45° 傾いている。速度分散楕円はバー領域では等方でなく細長い。 |
![]() 表4.名前一覧 Vz マップ Vz はどこも正であり、バーに付随するようなパターンは見えな い。R = 7 kpc 付近、x = 1 - 4, t < -2 で Vz は最低となり、一方 y = 0 に関して反対側では正となる。これは星流の現れかも知れないが 系統誤差の可能性もある。反中心方向では距離の増大と共に Vz が大きくなる。 これは銀河面ワープの運動学的表現である。反対称パターンは見えない。 |
5.2.動径プロファイル![]() 図17.速度動径プロファイル。黒線= RGBs. 青線= OBs. 上段=回転曲線。斜線=不定性。下段=速度散布度。 実線= 、点線=Vz、 |
![]() 図18.サンプルによる回転曲線の違い。黒点=セファイド。赤点=OCs。 図17=速度動径プロファイル 動径距離を 200 pc 区間に分け、そこでの中間値を取ることで速度動径プロ ファイルを得る。図17は上段=回転曲線、下段=速度散布度を示す。 R = 6.5 - 10 kpc で、OB 星は RGBs に比べ約 17 km/s 回転速度が速い。 図18=回転速度の比較 図18は様々な天体の回転速度を較べている。 |
5.3.バーの運動学![]() 図19.VR, Vφ マップの反対称モデルの結果。 上:反対称性振幅 AR, Aφ。軸対称成分 VR^bar も示す。 下:太陽-GC 軸に対する摂動の位相角。破線領域=不定性。水平点線=バーの orientation 角。垂直破線=バー共回転の推定値。 モック銀河のシミュレイションで観測を定性的に理解する。 |
![]() 図20.バーのリンドブラッド共鳴。黒実線= RGB 回転角振動数。頃点線 = RGB 回転角振動数+エピサイクリック振動数。 青実線= OBs 回転角振動数。水平破線=バー回転角振動数。縦破線 = 共回転 (5.4 kpc) と OLR (9.7 kpc) 位置。 |
OBs と RGBs の運動学的な差 OB-星の運動は複雑なガス運動を反映しているようである。いっぽう、 RGBs は OBs よりずっと広い範囲での銀河の運動を示す。それはバーの運動学 的特徴を初めて明らかにした。バーに比べると腕に伴う星流運動の証拠は ずっとはっきりしない。 星団と ONBs のマップは局所腕の長さが少なくとも 8 kpc ある事を明らかに した。サジタリウス-カリーナうでやペルセウス腕ほど強くはないが、「局所」 という名前よりは最初(van de Hulst54) のオリオンという名前に戻るべきだろう。 |
この研究は DR3 の予備研究に過ぎない。 |