Southern HIIRs: An Extensive Study of Radio Recombination Line Emission


Caswell, Haynes
1987 AA 171, 261 - 276

 アブストラクト

 パークス 64m 鏡により 316 HIIRs の H109α, H110α を 観測した。その多くは可視では見えない。それらは l = [210, 360] での 銀河系の研究に適している。 銀河中心付近の視線速度は非常に大きい。その他 では銀河回転を表現していると考え、運動距離の計算に使う。二つの渦状腕の 軌跡が改善され、太陽円の外側に多数の HIIRs が新しく距離を決められて、 カリーナ腕の延長を指し示す。  電子温度 Te を電波の連続波とライン波のスペクトルから決めた。銀河中心 距離と共に Te の増加が見られ、以前の結果を確認した。Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 採用。


表1.南天 HIIRs の水素再結合線観測データ  














 5.HIIRs の一般的な議論 


図1.電子温度 Te と銀河中心距離 RG の関係。

図2.再結合線線巾のヒストグラム。

 5.1.可視天体 

 表1の第16列に可視かどうかの情報が載っている。可視 HIIRs の標準 カタログは、北天 Sharpless 1959, 南天 Rodgers et al 1960 をまとめた Marsalkova 1974 のマスターカタログである。

 5.2.電子温度 

 5.3.再結合線の速度巾 


 6.HIIRs の銀河面分布と渦状構造の証拠 

 HIIRs が渦状腕の良い追跡子であることは Georgelin, Georgelin (1976) により示された。このモデルは10年近く不変であった。しかし、最近の 観測、CO Robinson et al (1983), Cohen et al (1985), HI Henderson et al (1982), Kulkarni et al (1982) から HIIRs の観測もさらに精密化してそれらとの対応を検討する必要が 生じてきた。  図3は我々が得た HIIRs の l-v 図である。このデータを銀河面上の 位置に直すには回転曲線が必要である。

図3.HIIRs の l-v 図。Schmidt 曲線は Schmidt 1965 より。 破線= Robinson et al 1983 の4本腕軌跡。破線の線と間隔は 0.5 kpc を 表している。同じ 0.5 kpc でも近距離側では長く伸びて表される。  

図4.バツ=近距離。三角=遠距離と接点。黒丸=不明。二本の 渦状腕の位置を巾 1 kpc を仮定して示す。下側にはペルセウス腕 の延長を示す。 R,sub>G > 15 kpc には HIIRs は殆ど 存在しない。太陽からの距離 d > 20 kpc の境界も実線で示す。  


 6.1.回転曲線  

 図3には l = [270, 340] のシュミット回転曲線の外包曲線を示す。 最近の回転曲線への修正は銀河中心近傍 2 kpc を除いては小さい。 太陽円外側は一定速度とする。Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s を採用する。 もし、 Ro = 8.5 kpc, Vo = 220 km/s とすると、太陽円内部では 全ての距離が単に 0.85 倍になるだけである。 太陽運動は、20 km/s, (RA, Dec) = (18h, +30°) とした。しかし、 6.3.、6.4.ではこれに訂正を加えた値を用いる。

 6.2.l-v 図上の渦状腕 

 腕の Vr(l) 

 図3には CO 観測にフィットさせて、Robinson et al 1983 が提案した 対数渦状腕の軌跡を示す。R<Ro の円環 R 上の物質の視線速度 V は Vr = V(R)(Ro/R)sinl である。図4上に R = 3, 4, 6.5 kpc の軌跡を描く。 銀河系では、北から見て円盤が時計回り、腕は距離と共に反時計回りに 伸びて行く。その動きは l-v 図上やはり反時計回りの軌跡となる。 腕の Vr = O は l = 0, 180, R = Ro となる点である。

 近腕と遠腕の見え方 

 腕の接点付近は見かけ上多くの天体が重なるので明るく見える。 視線の遠腕側では距離効果で暗くなるが、長くなるので数は増える、一方 近腕側では一つ一つは明るくなるが、空間密度は下がる。

 6.3.南天 HIIRs でなぞられる渦状腕 

 議論を3領域に分けて行う。

 R < 4 kpc 

  3 kpc 腕のように非円運動を示す構造がある。Listz, Burton 1980, Caswell, Haynes 1982 はバーまたは楕円形の構造があるのではないか と述べていた。Lockman 1980, 1981 は 3 kpc 腕には HIIR がなく、 6個の HIIR が R = 3.2 kpc のところに傾いた弧状の配列をなし、その 内側には、中心近傍を除いて、電離水素は殆どないと主張した。 しかし、我々は R < 4 kpc 領域に 3 つの HIIRs を発見した。それらは バーをなぞっているように見える。また図3には多数の HIIR が 3 kpc 腕上にあることが示されている。Lockman の意見は単純化のしすぎでないか。
 R = [4, 6.5] kpc 

 多数の HIIRs が存在し、目立った非円運動の証拠はない。 Robinson et al (1983), は CO データを二本の渦状腕 (Nos.1, 4) で解釈した。これに対し、 Georgelin, Georgelin (1976) は HIIRs 配置を Robinson et al. の中間に引いた一本腕 (No.1'.) で 解釈した。しかし、個々の HIIR に対する遠近選択が確実にならない 限り、不確実性は解消しない。将来、 HI 吸収の観測が多数の HIIRs に行われるとこの縮退が解けるだろう。

R > 6 kpc  

 ここには2本の明らかな腕片と多分遠くに疎らな第3の成分がある。しかし、 HIIRs の位置は CO ループには上手く乗らない。しかし、CO 腕は解析的な 対数渦で表現されていて、局所的なずれは予期されていた。

腕に幅を付ける 

 これ等の腕を改善するため、図4では距離の問題がない天体を選り分けた。 そこに眼視で一番合うと思える曲線を乗せた。中央線のまわりに巾 ± 0.5 kpc の帯を作ると、観測天体がほぼ含まれる。速度についてもやってみ たが ±5 km/s のランダム運動は腕の巾より効果が小さい。

 内側腕 No.2  

 カリーナ腕= Robinson et al (1983) の腕 No.3. = Georgelin, Georgelin (1976) の腕 No.1. は接点部で良く決められ、また太陽円の外側でもそうである。 太陽円内では l = [316, 322] (V = [-30, -40] km/s)ではよく決まっている。 しかし、当然のことだが、近い側の腕は銀経では非常に広がっている。 この領域の内側腕は、 Robinson et al (1983) でも Georgelin, Georgelin (1976) でも No.2. と名付けられ、Crux または Centaurus 更には、北半球の 腕片と繋がると仮定して Scutum とさえ呼ばれる。近距離側ではこの腕は 接点までよく定義される。この腕は l = [306, 322] で 遠距離 側 HIIRs の群れを通過し、もしかすると G334.714-0.665 までつながるか も知れない。 その先、RG > 20 kpc で HIIR を見つける ことが出来ないのは単に感度限界の問題である。

 最外側腕 

 図4にはペルセウス腕の延長予想も描いてある。これは Kulkarni et al. (1982) の腕の内側である。


 図5.HIIRs で決めた渦状腕。 


 表示した HIIRs は遠近距離が確実な天体のみ。HIIRs から決めた 腕は 1 kpc の巾を付けている。実線= Georgelin, Georgelin (1976) に Downes et al 1980 が修正を加えた腕。破線=この論文で示唆する ペルセウス腕の延長。


 6.4.銀河系渦状腕を初期の HIIRs マップと比べる 

 新しい HIIR 渦状腕の提示 

 図5には、HIIRs が太陽円外側の腕をなぞっている様子が示されている。 距離不定性のある天体は省いた。これまで論じてきた腕を 1 kpc の巾を付けて 表示したが、今回別の回転曲線を採用して HIIRs 距離を決めたに拘わらず、 Georgelin, Georgelin (1976) 構造と良く合っている。彼らが提案した他の腕も、 Downes et al. (1980) の北銀河 l < 180° の改訂を考慮して、図5に描いた。破線はペルセ ウス腕の外挿である。これが現在 HIIRs から描かれる渦状腕の全体像である。

 スケールの問題 

 腕のかけ離れた部分が正しく繋がれているかは、尚検討すべき問題である。 腕全体のパターンは Georgelin, georgelin が述べているように作業仮説で あるが、以前幾つかの天体に誤って与えられた距離によって大きく影響される ことなく、丈夫な構造であることを立証してきた。まだ、幾つかの距離が不正 確であろうが、全体構造に大きな影響は及ぼしそうにない。全体像に関し、 銀河系中心距離 Ro の問題には注意が要る。 Ro = 10 kpc を採用しているが、 Ro = 8.5 kpc の方が光学的距離と良く合うという可能性はある。こういうわ けで、大規模構造の考察で、全体のスケールを考慮せずに、個々の運動距離を 修正された光学距離に置き換えるのは適当でない。

 6.5.CO, HI との比較 

 明るい CO 構造 = 暖かい巨大分子雲の l-v 図は HIIRs と良く対応している。 従って、巨大分子雲と HIIRs は銀河系内で良く似た分布を示すに違いない。 一方、Solomonn et al 1985 が研究した腕間低温 CO 雲は CO l-v 図上で目立た ない。 Cohen et al. (1985) はカリーナ腕の巨大 CO 雲の分布を調べた。それは HIIRs の分布とよく似て いる。接点の向こう側にあたるカリーナ腕は太陽円を超えているが、銀緯マイ ナス側に傾き、 Henderson et al 1982 が HI 円盤で発見したワープと一致 している。全体としてカリーナ腕は渦状構造の研究の出発点であり、HIIRs, CO, HI の分布を詳細に比較するには理想的である。


 7.フォルムアルデヒド 

 第1速度 

 Gardner, Whiteoak 1984 は HIIR に付随する H2CO 雲 サンプルで VHII-VH2CO の中間値がたった 0.4 km/s しかないことを発見した。それと同様に、我々のより大きな HIIRs サンプル でも、はっきりした H2CO 吸収線が水素再結合線から 5 km/s 以内 に見える。限られたサンプルであるが、 H2CO と CO の速度はよく 一致している。従って、母分子雲に対する HIIRs の速度は非常に小さい。

 検出率 

 我々のデータでは、Rg < Ro の場合、ほぼ確実に H2CO が検出 された。しかし、Rg > Ro ではかなりの天体で H2CO が検出さ れなかった。

 第2速度 

 しばしば HIIR 速度から離れた所に、H2CO 吸収線が存在する。 これは時々、遠近分離に使われた。 Downes et al. (1980). しかし、一般に多くの天体で連続光輝度温度は 2.7 K を下回るほどに低く、 吸収線が HIIR より近くで形成されたかどうかの判断が難しい。

 8.ラインなし電波源:新しい SNR ? 


表2.再結合線のない電波源

 再結合線が非検出であることは非熱的電波源の証拠となる。我々の非検出数 は少ないが、おもに既知の非熱的電波源を避けたためである。表2に新しい 非熱的電波源5個のリストを載せた。


 9.結論 

 今回の再結合線データは Haynes et al 1978 の連続光サーベイの結果と合 わせて、南天の川電波源の全体像を与えた。見かけは一つに見えた HIIRs の グループの幾つかは、実は異なる距離のグループが重なって見えたと分かった。  HIIRs は銀河の渦状腕を追跡する主要天体であり、天の川銀河においても HIIRs は渦状構造の研究に不可欠である。今回の研究では特にカリーナ腕の 外側延長を詳しく調べた。内側銀河系の渦状構造を調べるには HI 吸収線に よる運動距離が必要である。