全学自由研究ゼミナール「観測天文学最前線」


場所 駒場13号館1321号室  時間 木曜日16:20-17:50 時間割番号 99027
10月11日 「進化する天体と宇宙像」 土居 守教官
最先端の天体観測により、膨張宇宙において様々なスケールの天体が生まれ、進化している様子がわかってきつつある。ここでは星、ガス雲、銀河、銀河団など様々な種類・スケールの天体が、膨張宇宙の進化の過程でどのような位置づけにあるのかを大まかに紹介する。ゼミナール全体のイントロダクションも兼ねている。

10月18日 「天体の身体測定」 土居 守教官
天体からの電波や光は、どのようにして出るのか?天体までの距離はどうやって測るのか?遠く離れた天体から地球に届いた電磁波の情報から、どのようにして天体の性質を知るのか?距離、質量、温度、大きさといった天体の基本量を求めるための原理を例をあげながら簡単に紹介する。

10月25日 「赤外線で見る星の誕生」  田中 培生教官
星の誕生は宇宙の様々な現象の中でも、極めてドラマティックな現象である。そして、その前半は電波で、後半は赤外線で観測できる。いったい何がどのように起こっているのか、電波観測も含め、主に赤外線観測が明らかにしてきたことを解説する。

11月 1日 「赤外線で見る星間現象」  田中 培生教官
銀河系内の星間空間には、星のみでなくガスや個体微粒子が多量に存在している。これらは星形成、銀河の構造などに主要な役割を果たしているが、これは、電波および赤外観測で調べられる。星間物質の観測について、簡単に解説する。

11月 8日 「遠赤外線で探る銀河の形成進化」 川良 公明教官
大きなガス雲が収縮して銀河が形成されるとき、無数の星が誕生したはずである。このような形成中の銀河は大量の放射エネルギーを紫外線可視光に放出するので、可視光で明るく見えるはずなのに未だ発見されていない。一方、スペースからの遠赤外線観測によって、紫外線可視光で暗いのに、遠赤外線で明るい赤外線銀河が多数存在することが明らかにされた。そして、赤外線銀河のなかでは無数の星が誕生していることが明らかになっている。赤外線銀河と銀河の形成進化との関係を考える。

11月15日 「バブリーな星たち」 中田 好一教官
恒星進化の最後の時期多くの星は膨れ上がり、盛大にガスを放出します。そして、外層部にもう吐き出すガスがなくなり放出が不可能になると、急に縮まり始めます。講義ではこれらの天体現象を前に、今天文学者が何を問題としているかを話します。

11月29日 「太陽の最後」  中田 好一教官
太陽は50億年ほど後には、中心部の水素がヘリウムに変わる結果、赤色巨星となることはよく知られています。しかし、その先太陽がどうなるかは実はまだはっきりしていません。また、地球がその際どのような影響を受けるかもはっきりしていません。今回は現在のデータをもとに何が期待されるかを考えてみます。

12月 6日 「銀河と銀河系」 祖父江 義明教官
銀河系は直径10万光年の大円盤である。太陽系は銀河系中心から2.5万光年のところを秒速200km、2億年の周期で公転している。銀河系の全質量はおよそ2000億太陽質量、そのおよそ半分が電磁波も何も出さないダークマターである。宇宙には銀河系と同じような銀河がさらに数千億もあって群をなしている。講義では、これら銀河系や銀河の諸量がどのような観測によって求められたのかを概観し、また、ダークマターなどについて最新の成果に触れる。

12月13日 「宇宙からの電波」 河野 孝太郎教官
テレビやラジオ、携帯電話など、今や我々の生活と切っても切れない関係にある。「電波」は、実は、さまざまな天体からも地上に降り注ぎ、未知なる宇宙の情報を我々に伝えている。宇宙背景放射、パルサー、ブラックホール、星間分子、またSETI(地球外生命探査)などに着目しつつ、宇宙から到来するさまざまな電波とその意味について概観する。

12月20日 「巨大ブラックホールに迫る」 河野 孝太郎教官
わたしたちの太陽系がある「天の川銀河」を含め、この宇宙に存在する数多くの銀河の中心には、その質量が太陽の100万倍にも達するという「巨大ブラックホール」が存在していると考えられている。巨大ブラックホールが実在していると考えられる観測的証拠と、これら巨大ブラックホールが巻き起こすと考えられている華々しい物理現象の数々を、特に最新の電波観測の結果を交えつつ紹介する。

1月10日 「すばるが見た原始宇宙」 本原 顕太郎教官
すばる望遠鏡が動き始めて3年、それを使った研究で一体何がわかってきたのか? これまですばるの赤外カメラで行ってきた観測のデータを中心として、宇宙の過去がどの程度明らかになってきたのかを概観する。

1月17日 「宇宙の塵(ちり)をすばるで眺める」 宮田 隆志教官
宇宙空間は全くの真空ではありません。そこには気体のガスの他に、小さな個体物質=塵が大量に漂っていることが知られています。この塵を良く調べると地球の石に似たものやスス、複雑な有機物なども含まれていることが分かって来ました。この様な塵はどこからきたのでしょうか? 本講義ではすばる望遠鏡の観測などで明らかになって来た宇宙の塵の正体に迫ります。

1月24日 「膨張宇宙の測定」 土居 守教官
宇宙が膨張していることは1920年代より知られている。ここでは、すばる望遠鏡を用いて発見した遠方の超新星を用いた膨張宇宙の測定の様子などを紹介する他、宇宙背景放射を用いた測定方法などについても触れ、宇宙はこのまま膨張を続けるのか、それとも やがて収縮するのか、という疑問などについて、現代天文学の答えを紹介する。

担当教官は全員大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターの教官である。合否判定は、各回の講義で理解したことおよび感想などを講義ごとにまとめたレポートを最後に提出してもらい、その結果で判定する。


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