SMC/LMC の post-AGBs のスペクトルを解析して、AGB 期の間に 星の表面組成に起きる変 化を研究する。マゼラン雲中の双峰性 SED を輻射モデルで解析して、星の光度 とダスト成分を調べる。さらに、進化モデルと観測との比較から母星質量、メ タル量を導く。 | 13 サンプル中 8/13 は炭素星で母星は 1 - 2.5 Moであった。5/13 星は < 1 Mo 星から生じた。それら 5 星はシリケイトダストに覆われている。 ダスト光学的深さと星の光度との間には相関がある。現在 post-AGB 星を 覆っているダストが放出されたのは Teff = 3500 - 4000 K の時期である。 |
2.1.AGB, post-AGB モデル星の進化は Ventura et al 1998 の ATON を用いて計算した。 O-リッチ星のマスロスは Wachter et al. 2002, 2008 から採った。 Blocker (1995) から、C-リッチ星のマスロスは Wachter et al 2002, 2008 の ベルリングループの方法を適用する。2.2.星風内でのダスト形成モデルダスト形成はハイデルブルググループ Ferrarotti, Gail 2006 に従い、 定常星風内で自己無矛盾的に計算された。(運動方程式1間違えてる。 ) τ10 = π∫ndQ10 a3 dr は 10 μ 光学的厚みである。 |
2.3.SED フィッティングDUSTY を用いて SED フィットを行った。恒星からの輻射には Castelli, Kurcz 2003 の大気モデルを使用した。ダスト成分は τ10 と ダストシェル内側境界温度 Td で規定した。ダストは 100 % シリケイト の場合と、純粋な炭素の場合を考えた。シリケイトの光学定数は Ossenkopf et al. (1992) から、炭素は Zubko et al. (1996) から採った。 |
Kamath et al 2014、 2015 はマゼラン雲内の post-AGBs, YSOs 候補星の 測光データを集めて SED を作った。我々はその中から, シェルタイプの post-AGB 13 星を調べる。 | それらの有効温度とメタル量を中心星に適用し、 観測 SED をDUSTY でフィットする。 |
4.1.炭素星![]() 図5.J051848.84 の [C/Fe], [O/Fe] 観測 De Smedt et al. 2015. モデル Z = 0.002, 1.25 Mo の AGB 期の変化。 4.1.1.J053250.69(図4)と J004114.10 : 低質量低メタル炭素星図3を見ると、炭素ダストに覆われた低メタル星中で最も高度の低い星は J053250.69 と J004114.10 と分かる。進化経路との対応からそれらの母星 質量は 1 - 1.1 Mo である。J053250.69 の大気組成は Aarle13 の分光観測 から C-リッチと分かっていて、その結果と一致する。C/H と [C/Fe] はモデル と一致する値であることは図4から分かる。J004114.10 の分光観測はないので 大気組成は不明である。RGB マスロスを 0.1 - 0.2 Mo と仮定すると、 主系列質量は 1.2 - 1.3 Mo で年齢は 3 Gyr であろう。(先に述べた 1 - 1.2 Mo に RGB マスロスを加えるということは、図3の進化経路の質量は RGB マスロス=0 と仮定しての数字か?) 4.1.2.J051848.84(図5)この天体は L = 6700 Lo である。図3から Mi = 1.25 Mo である。(RGB マスロスの補正は? ) 図5に示されるように大気化学組成もモデル進化の結果と一致する。 |
![]() 図6.J004441.03 の [C/Fe], [O/Fe] 観測 De Smedt et al. 2015. モデル Z = 0.002, 2 Mo (点線), 2.5 Mo(実線)の AGB 期の変化。 4.1.3.J004441.03(図6)L = 8500 Lo はサンプル中で最も明るいグループに属する。 大気が C-リッチであることは 図6の De Smedt15 の結果から明らかである。図3を見ると Mi = 2 Moである。 この天体はヘリウムフラッシュを経験せず、直接ヘリウム核燃焼に移行した サンプル中最初の例である。年齢は 1 Gyr.4.1.4.J005803.08この星が最も明るい。L =12000 Mo である。Mi = 2.5 Mo となる。 年齢は最も若く 0.5 Gyr 程度であろう。 |
4.1.5.J050632.10(図7)と J003643.94図1のSEDから、sub-solar chemical composition を持つ、これらの星は C-ダストで覆われていると分かる。 図3から、L = 6000 - 6500 Lo で Mi は 1 Mo を少し超えるくらいである。 van Aarle13 の分光測定によると、J050632.10 は C-リッチで [C/Fe] は 1 を少し超える値である。図7に示すように、これは 1.25 Mo の [C/Fe] の振る舞いとほぼ一致する。つまり、 L からと [C/Fe] からとの二つの 方法で出した Mi が一致した。残念なことに [O/Fe] に関してはモデル予想 は van Aarle13 の分光測定より低い。J003643.94 は J050632.10 より少し明るい。図3の右枠を見よ。 Mi は少し大きく 1.5 Mo であろう。図7に Mi = 1.5 Mo の [C/Fe], [O/Fe] 予想変化を示す。 ( 1.5 と 1.25 は逆? ) 4.1.6.J052220.98 : 暗すぎる炭素星。LTP?図3を見ると、J052220.98 は 0.8 Mo 星から生まれたことになる。しかし、Z = 0.004 星が炭素星になるには Mi > 0.9 Mo で、かつ炭素星の最低光度 は 5000 Lo であり、 J052220.98 より明るい。 図3右枠には 0.9 Mo 星が LTP を起こした時の軌跡が緑の線で示されている。J052220.98 は LTP を起こした 0.9 Mo 以上の質量星である可能性がある。 |
![]() 図7.J050632.10 の [C/Fe], [O/Fe] 観測 van Aarle et al. 2013. モデル Z = 0.004, 1.5 Mo (点線), 1.25 Mo(実線)の AGB 期の変化。 ( 1.5 と 1.25 は逆? ) |
炭素星の下限光度 図3中の 5/13 青三角はシリケイトダストに囲まれている。HBB は 3 Mo 以 上を必要とし、その場合 20,000 Lo の明るさに達するから、今回はパス。 それらの星は炭素星の下限光度: L = 4700 Lo (Z=0.002), 5200 Lo (Z=0.004) に達しなかったのであろう。 J051906.86 と J050221.17 図3から、これらの星は AGB 開始期に 0.7 Mo, 0.8 Mo である。RGB マスロス として 0.1 - 0.2 Mo を想定すると、これらの星の年齢は 8 - 10 Gyr となる。 この年齢はサンプル中で最も古い。 |
他の三つの星 他の三つの星、 J052740.74, J045119.94, J052241.52 は先に二つより明るい。 Z = 0.004 を仮定すると母星質量は 0.85 Mo となり、年齢は 6 - 8 Gyr である。 それらの星でも TDU は起きているだろうから C や s-元素の増加はあるはず。 この3つの C/H 変化がグラフに なっていると面白かったんだが。モデル計算の元データを取って来れるか? |
TAGB でのダスト供給が最重要 HBB では最大マスロスがHBB期に起こるので M < 3 Mo の星とはマスロス 史が異なる。しかし、この論文で扱っている星は全て < 3 Mo である。 そのような星では質量の大部分が失われるのは最後のインターパルス期である。 したがって、TAGB = AGB 先端期でのダスト形成が単独星からのダスト供給量 を見積もるのに最重要である。 銀河のダスト供給と赤外カラー 実際、いくつかの銀河ではダスト形成の総量は AGB 最末期にある星で決め られている。Dell’Agli et al 2016, 2018,2019. さらに、TAGB 星は大きな 赤外超過を持つのでこれら銀河の赤外カラーにも支配的な影響を持つ。 Marini et al 2021, Dell’Agli et al 2021. 図8=マスロス強度 図8には モデルが与えるTAGB 期のマスロス強度 (dM/dt)TAGB と AGB 開始時の星質量 M との関係を示す。 (主系列質量ではない点に注意。 ) M-型から C-型への切替わり点でマスロス強度が急増することに注意せよ。 post-AGB でダスト形成ナシ 後で示すが、観測された全ての星で Teff > 4000 K ではダスト形成が 認められなかった。従って、post-AGB 期にはダスト形成はないと考える。 (マスロスなしとは言っていない点に 注意。 ) 光学的深さ Dell’Agli 2012 より炭素ダストもシリケイトダストも R = 10 Rs で形成 されたと考える。従って、 post-AGB 期のダストシェル内側半径 = Rin とす ると、 τ10now=τ10onset (10Rs/Rin) |
![]() 図8.AGB 先端におけるモデルマスロス率。マゼンタ: Z=0.002. 緑: Z = 004. |
![]() 図10.2.5 Mo の post-AGB 期における有効温度の時間変化。 黒実線=Wachter et al. 2002, 2008 マスロス進化を使用。他は (dM/dt) ∝ Teff-α を仮定。緑:α=2, 青:α=3, 赤:α=4. 橙破線=J005803.08 のTeff. 図9=τ10 と L, Rin の関係 図9 には τ10 と L, Rin の関係を示す。図を見ると、低 メタル炭素星=赤四角 では (a) L と τ が相関し、 (b) L と Rin は逆相関する。 (時間の影響無視? ) メタル量の効果もある。高メタル炭素星=赤空四角 は同じ L の低メタル炭素 星に比べ τ が小さい。 O-リッチ星 O-リッチ星は L が近く、τ も近い。 |
![]() 図11.2.5 Mo 星 post-AGB 光学的深さ τ10 の AGB 先端 τ10onset から始まる変化と Teff との関係。 黒実線=Wachter et al. 2002, 2008 マスロス進化を使用。他は (dM/dt) ∝ Teff-α を仮定。緑:α=2, 青:α=3, 赤:α=4. 橙破線=J005803.08 のTeff. 点線は τnow を示す。これは現在 Teff = 6500 K で観測され る赤外超過を産み出すダストを特性付ける。その際の仮説はダスト放出は ... ( τnow ? ) 6.1.明るい炭素ダスト post-AGBsJ005803.08(図10、11)J005803.08 は L = 12,000 Lo で M = 2.5 Mo に対応する。この質量は HBB 開始に近い値である。これらの星の進化は Dell'Agli et al. 2015a, Marini et al. (2021) で調べられた。図10には J005803.08 のような低メタル量 2.5 Mo 星の Teff 進化が 最終 AGB 期から先について示されている。黒線=標準モデルでは J005803.08 の現在の温度 6500 K に至るまで 5600 年掛かる。図11には Teff と τ の関係を示す。しかし、AGB 末期でマスロスが停止したとする と、モデルと観測が合わない。というのは、SED フィットから決まる Rin = 120,000 Ro に Teff = 6500 K になるまでの時間 5600 年で到達させるには 星風速度を 0.5 km/s という超低速にしなくてはいけないのである。 そこで、Teff に応じてマスロスが変化するモデルで合わせた。 dM/dt = (dM/dt)TAGB(Teff/TeffTAGB)-α 結果を図10、11に示す。 (図11の τnow が全然分からないので中断! ) |
6.2.低質量炭素星J052220.98J052220.98 はサンプル中最も低光度の星である。4.1.1.節の議論 でこの星は AGB 開始時の質量が 1 Mo 程度で炭素星になる下限に近いと 考えた。図4には J052220.98 と同じメタル量の 1 Mo 星進化, C/O と [C/Fe] 変化、を示す。最後の 2 TPs の間に炭素星に変わることが判る。AGB 先端での マスロス率は 10-5 Mo/yr である。この星の研究から、 炭素星種族の低光度端を調べることが可能となる。 図12= 図12には Wachter et al 2002, 2008 のマスロスを使った場合 と、dM/dt = (dM/dt)TAGB(Teff/TeffTAGB) -2 の場合との τ10onset 変化 を示す。 J005803.08 との違い J005803.08 と比べると、τ10onset が一桁低い。 もう一つの違いは星風速度が小さい事である。これらの結果は観測事実と 合わず、より大きなマスロス率とより大きな風速が必要である。 |
![]() 図12.実線=Wachter et al 2002, 2008 のマスロスを使った場合 と、点線=dM/dt = (dM/dt)TAGB(Teff/TeffTAGB) -2 の場合との τ10onset 変化 |
6.3.sub-solar chemistry の炭素星J050632.10 と J003643.94二つとも subsolar メタル量で L = 6000 Lo である。4.1.5節で これらの星は 1 - 1.5 Mo 星から来ていると議論した。二つは図9で赤白四角 で示されているが、他の星の系列と較べ τ10 が 1/2 程度 低く外れている。これは中心星が高温で post-AGB 進化が進んでいることと 関連するだろう。 (その通りで、時間変化があるのだから そもそも L と τ10 の系列を探す考え自体が間違っている。) |
6.4.暗くダストに覆われた炭素星J052220.98図9を見ると、低光度であるが τ10 は大きい。 4.1.6.節でこの星は LTP を経験していると考えた。 その場合、これまで述べた通常の post-AGB モデルは適用できない。 |
6.5.O-リッチで暗い post-AGB 星J050221.17この星は AGB 開始期質量が 0.8 Mo 程度でその 0.3 Mo 外層が失われるま でに 4 - 5 回の TP を経験している。このため、最後の表面組成は AGB 開始 期と殆ど変わらない。 (これはガッカリ。) 6.6.概要明るい星ほど厚い光学的深さ図9に見られる、明るい星ほど光学的深さが大きいという傾向は、 明るい星は質量が大きく、 post-AGB 進化が速いので Rin が小さいため、 シェルの光学的深さが大きいと解釈される。それに質量が大きいと形成された 炭素量が多いということも関連するだろう。 O-リッチ post-AGB 星 O-リッチ post-AGB 星は小質量でかつ質量範囲が小さいので、光度との 関連は認められない。一般にダスト量は少なく、風速も小さい。 図13=意味不明 |
![]() 図13.1 Mo 星の SEG 先端から post-AGB 期に掛けての τ10 − Teff 変化。 |
サンプル サンプルは 0.7 - 2.5 Mo の母星質量範囲に渡り、年齢は 0.5 - 8 Gyr である。 LTP 大部分の星では進化モデルとの一致が良い。しかし例外的に 4500 Lo という 低光度の星も含まれている。その星を我々は LTP 星と解釈した。 post-AGB マスロス 一般的な結論として、post-AGB 星で現在観測されるダストは post-AGB 収縮が開始され、Teff が 4000 K まで」上がった後に放出された ものである。 |
炭素星 炭素星では高光度星ほど赤外超過が大きい。これは高質量星の進化が速く、 シェル内側半径が小さいためと解釈される。高質量星のモデルフィットはよい。 低質量炭素星 post-AGB ではモデルが予想するより数倍大きいマスロスが 必要である。 O-リッチ星 O-リッチ星は低質量星と考えられる。シェル内側半径は炭素星より小さい。 これは星風速度が小さいためではないか? 銀河系 post-AGB 星 第2弾として DR3 を使った MW post-AGBs を計画している。 |