Infrared Two-Colour Diagrms for AGB Stars Ising AKARI, MSX. IRAS and NIR Data


Suh, Kwon
2011 MN 417, 3047 - 3060




 アブストラクト 

  Suh, Kwon (2009a) の AGB 星カタログを改訂した。新しいカタログでは各星に対し、AKARI, MSX, 2MASS の対応番号を付けた。  2色図上で C-リッチか O-リッチかで二色図上で占める位置が異なることを 見出した。シェルモデルによりその違いを説明した。



表1.O-リッチ AGB 星のサンプル




表2.C-リッチ AGB 星のサンプル


表3.O-リッチ炭素星のサンプル


表4.AGB 星の NIR 観測

 2.サンプル星 

  Suh, Kwon (2009a) は IRAS PSC にある AGB 星をカタログ化した。彼らのカタログには 2193 O- リッチ星, 1167 C-リッチ星、 287 S-星、36 シリケイト炭素星が載っていた。

 2.1.O-リッチ星 

(i) シリケイトバンド 
 10, 18 ミクロンバンドはシリケイト由来であり、O-リッチである。

(ii) OH メーザー
  Suh, Kwon (2009a) は 14文献から 1533 OH メーザー天体をリストした。その中から 14 天体は メタノールメーザーも検出されており、本論文ではそれらを AGB 星リストから 外した。

(iii) SiO メーザー
  Suh, Kwon (2009a) は SiO メーザー源を考慮していなかった。 17 文献から今回新たに 815 SiO メーザー源を O-リッチ AGB 星として加えた。

(iv) 分光等による同定
 655 星が、スペクトル型、分子放射等の方法で 10 文献から加えられた。

 表1には改訂版 O-リッチ 3003 AGB 星、内新しい星は 810 星、をリストした。

 2.2.C-リッチ星 

 基本的には、 Suh, Kwon (2009a) の C-リッチ星リストを踏襲する。新たに Loup et al 1993 から一つ加えた。 一方、IRAS 19075+3601 と 22306+5918 は近傍天体の混入効果として外した。 また、 IRAS 04395+3601, 05251-1244, 21282+5050, 21306+4422 は PNs とし て外した。表2に 1168 C-リッチ星をリストする。

 2.3. S-星とシリケイト炭素星 

 S-星は3文献から採った 362 で 75 増えた。シリケイト炭素星は  IRAS 04496-6958 は銀河系に属していないので外した以外は同じである。 それらを表3に示す。

 2.4 NIR 観測 

 IRAS 天体位置から 10" 以内の最近接という条件で 2MASS 対応天体を決めた。 その結果、2840 O-リッチ、1090 C-リッチ、 356 S-星、32 シリケイト炭素星 で 2MASS 対応天体を決定した。
(IRAS 位置は時に大きく狂う。2MASS 天体が見つからなかった星は IRAS 位置が狂っていたせいかも知れない。同定 したと決めた星には逆に違う星の誤認が混ざっている可能性がある。 )
データが大きいのでシステム変換は行っていない。



図1.AGB 星サンプルの IRAS PSC と AKARI PSC フラックスの比較




図2.AGB 星サンプルの IRAS LRS と AKARI PSC フラックスの比較

 3.AKARI と MSX データ 

 3.1.AKARI データ 

 同定 

 IRAS の位置情報を基に、 AKARI PSC に対しては 10", AKARI BSC に対しては 1' 以内の最近接対応天 体を求めた。AKARI PSC から 2356 = 78.5 % O-リッチ星、1012 = 86.6 % C-リッチ星、336 S-星、 31 シリケイト炭素星を同定した。AKARI BSC から は、1548 = 51.5 % O-リッチ星、675 = 57.8 % C-リッチ星、86 S-星、 18 シリケイト炭素星を同定した。 PSC データは 9, 18 μm, BSC データは 65, 90, 140, 160 μm である。

 図1= AKARI と IRAS のフラックス比較 

 図1には AKARI と IRAS のフラックスを比較した。相関は良い。図1左には 全体から離れた点がいくつかある。変光かまたは AGB でなく SED が離れている 為であろう。post-AGB 星には大きなマークを付けた。左側図の散らばりの方が 大きいのは SED の傾きの散らばりを表す。

 図2=AKARI と IRAS LRS のフラックス比較 

 図2では AKARI と IRAS LRS のフラックスを比較した。LRS は 3次 スプライン内挿により 9, 18 μm でのフラックスを決めた。暗い星では IRAS LRS フラックスが AKARI フラックスより大きい。これは Ishihara et al 2010 が述べるように、おそらく空間分解能の差が原因である。
(分解能の差の効果がなぜ明るさに 依存するのかよく分からない。 )


 図3=ISO SWS と AKARI PSC フラックスの比較 

 図3では ISO SWS と AKARI PSC フラックスを比較した。

図3.ISO SWS と AKARI PSC フラックスの比較

 3.2.MSX データ 

 MSX PSC には 8.28, 12.43, 14.65, 21.34 μm で 441,879 天体が載って いる。10"(30") で IRAS 位置との同定を行い 1575(1966) O-リッチ、609(687) C-リッチ、125(128) S, 19(22) シリケイト炭素星を見出した。10" - 30" に 見つかった星の大部分は正しい同定なので 30" を同定半径に使う。



図4.IRAS, AKARI, MSX の AGB 星二色図

 4.赤外二色図 

 カラーを次のように定義する。

   M1-M2 = 2.5log[(F2/ZMC2)/(F1/ZMC1)]

 4.1.IRAS, AKARI, MSX 二色図 

 図4= IRAS, AKARI, MSX の AGB 星二色図 



図4上段は、AGB 星の IRAS 二色図である。モデル線はサンプル点の込み合う 箇所を通っている。シェルが厚くなると 10 μm 帯が放射から吸収に変わる ため、O-リッチ星のモデル線勾配はその辺りで変化する。

 IRAS 二色図の炭素星 

 IRAS 二色図上で炭素星は”C" が横たわったような分布を示す。左上に見える 一群の星は F60 の超過を持つ可視炭素星である。この超過は、炭素星以前の O- リッチ AGB 星だった時代の名残りである。(Chan, Kwok 1990)右側の赤外 炭素星は光学的に厚いシェルを持つ。

 中段は AKARI 二色図 

 図4中段は AKARI 二色図である。使えるサンプル数が少ないので、モデルと の比較は難しい。しかし、AKARI PSC は IRAS, MSX, NIR と組み合わせると有益 である。

 下段はMSX 二色図 

 下段はMSX 二色図である。Ortiz et al 2005 はこの二色図を用いて、 AGB から post-AGB への進化経路を調べた。図に記入した post-AGB は確かに Ortiz et al 2005 が定めた post-AGB ラインの上側に全てがある。

表5.ゼロ等フラックス ZMCi





図5.AGB 星の AKARI - IRAS 二色図




図6.AGB 星の AKARI - IRAS - NIR(K) 二色図




図7.AGB 星の AKARI - IRAS - NIR(L) 二色図

 4.2.post-AGB 候補星 

 O-リッチ post-AGB 星を [9-12] ≥ 2, [12-25] ≥3 とし、
 C-リッチ post-AGB 星を [9-12] ≥ 1.5, [12-25] ≥2.2 とする。

AGB 星の大部分がこの内側にあることがこの境界を決めた理由である。こうし て決めた post-AGB 領域に我々は 18 O-リッチ星、8 C-リッチ星を見出した。 それらを表6に示す。それらの post-AGB 候補は前の図1、4、5、6,7で 目印を付けておいた。ある図で post-AGB 領域に存在する星が他の二色図では AGB 領域にある場合もあり得るが、我々の post-AGB 候補星は全ての図で AGB 領域の外側域に位置している。

 4.3.AKARI - IRAS - NIR 二色図 

 図6と7には、AKARI, IRAS, NIR データを使った二色図を示す。それらは 図4,5より C/M 分離がはっきりしている。

表6.post-AGB 候補星


 5.モデル 

 DUSTY を使い、ρ ∝ r-2, Tc = 1000K, 500 K, Rout = 104 Rc, L = 104 Lo でモデル 計算を行った。

 5.1.O-リッチ星 

 ダスト 

 純シリケイトのモデルと、シリケイト(質量比 80%)+コランダム 20% のモ デルを計算した。シリケイトオパシティには Suh (1999) の暖かいシリケイトと冷たいシリケイトの光学定数を用いた。 コランダムには Begemann et al 1997 の値を用いた。ダスト半径は 0.1 μm に固定した。

 モデルパラメター 

 λ = 10 μm での光学深さ τ10 をパラメターとし て、τ10 = 0.005. 0.01, 0.05, 0.1, 0.5, 1, 3, 7, 15, 30, 40 のモデルを計算した。 τ10 < 3 では Ts = 2500 K で暖かいシリケイト、, τ10 > 3 では Ts = 2000 K で冷たいシリケイトを採用した。

 5.2.C-リッチ星 

 ダスト 

 非晶質炭素の光学定数は Suh 2000 から採った。αSiC は Pegourie 1988 から採った。AMS (90%) + SiC (10%) とした。 グレイン半径は 0.1 μm である。

 モデルパラメター 

τ10 = 0.01, 0.1, 1, 2, 3, 5, 7 のモデルを計算した。 τ10 ≤ 0.1 では Ts = 2300 K、, τ10 > 0.1 では Ts = 2000 K を採用した。

 5.3.ダストオパシティについて 

 モデルは未だ以下の3点で改善の余地がある。 (i) ダスト成分。MgFeO シリーズを考える必要がある。Henning et al 1995

(ii) 光学定数の改善。

(iii) シェルコードの改良。ダスト複数成分を扱う、


 6.結論 

 AGBs カタログの改訂 

 IRAS に基づく Suh, Kwon (2009a) のカタログを改訂した。AKARI, MSX, 2MASS とクロスマッチした。
 二色図 

 O-リッチ、C-リッチ星の二色図を作りモデルと比較した。