Evolution Paths in Multiple-Shell Plnetary Nebulae


Stanghellini, Pasquali
1996 ApJ 452, 286 - 303




 アブストラクト 

 Schwarz,Corradi,Melnick1992 の Hα画像から選んだ楕円形多重シェル惑星 状星雲 24 個の立体プロットと等高線図を示す。楕円形多重シェル惑星状星雲 を分離ハローと接続ハローに分けた。観測とモデルを比較して調べた進化経路は、
(a) 熱パルス AGB 期に起きる数回の噴出。星風、超星風を含む。(b) post-AGB 冷却期のシェル放出。(c) 非対称シェル膨張である。解析の結果、
1.分離ハローと接続ハローとは固有性質も銀河系内分布も異なる。どうも異 なる進化経路を辿ってきたらしい。分離ハローは丸く、接続ハローはしばしば 著しい楕円形状を示す。
2.分離ハローは TP-AGB 期の繰り返しシェル放出、または "born again" 事象(中心星のスペクトル型から推定)から生まれた。
3.接続ハローは非球対称星風の動力学効果により形作られる。
4.接続/不規則ハローの一つと分離ハローの二つは元素組成から双極型星雲 の投影効果による。


 1.イントロダクション 

 熱パルスと多重シェル 

 Trimble, Sackman 1978 は多重シェルルを熱パルスに伴うマスロスの息切れ として説明した。 Chu, Jacoby, Aendt (1987) は CCD 観測に基づき、多数の PNs に多重シェルが存在することを見出した。 Frank, van der Veen, Balick 1994 は熱進化期にマスロスを 停止させる進化計算 Vassiliadis, Wood (1993) を観測と比較した。彼らはモデル熱パルス間隔と観測される運動学的なシェル 間隔の間に非常に弱い相関しか見出せなかった。

 born again PNs 

 Iben et al 1983 は、A30 と A78 を説明する目的で、 "bon again" PNs の モデルを提案した。この二つは多重シェルを持ち、運動学と組成が異なる。 Iben83 は post-AGB 期に熱パルスが起きた場合の進化経路を求めた。
 その他 

 その他には、楕円多重シェル PNs における高速マイクロ構造 Balick93, 94, 巨大ハロー Meabun91, Bryce92, シェル間組成差 Manchado89, Chu91 などの 研究がある。

 論文の目的 

 Stanghellini, Corradi, Schwarz 1993 は PN 形態とHR図上での中心星位置 との相関を統計的に研究した。彼らは多重シェルでは進化した中心星の割合が 単一シェルより高いことを見出した。 この論文では、楕円型多重シェル PNs の色々な型を調べる。形態の詳細、星の 進化位置、組成、次官尺度の間の相関を探る。 SCS093 は EM = 楕円型多重シェル PNs, BM = 双極型多重シェル PNs, PM = 点対称多重シェル PNs という分類を提案した。この論文ではその中の EM 型の みを扱う。





表1.明るい縁の星雲を除いた、楕円型多重シェル PNs




表2. PNs の物理パラメター




表3. PNs の組成




表4. PNs 中心星のパラメター

 2.星雲データ 

 2.1.形態クラスと他の星雲パラメター 

 サンプル 

 我々は Schwarz, Corradi, Melnik 1992 の PNs カタログから、Stangellini, Corradi, Schwarz 1993 の分類法にしたがって、24/255 EM = 楕円多重シェル PNs を選び出した。表1にそれらを示す。図1はその表面輝度分布 SCS93 である。

 第1グループ=分離ハロー 

 第1グループ(図1a-f)の構造は、明るいない領域と淡い分離外側領域とから成る。
(図には a, b, c ... が付いていない。 順番と考えれば、元の6個か? )
それらを分離ハロー多重シェル PNs と呼ぶ。この用語は以前 Chu, Jacoby, Aendt (1987) が名付けたものである。ここでは EM(DH) または単に DH と呼ぶ。「分離」の 基準は内側星雲とハローの最外側縁の間に表面輝度の強い極小が存在すること である。これは密度急落の効果でも生じるので、必ずしもシェル間に物理的な 分離があることを意味しない。
(ハローとシェルは違う意味を持つの か、単なる言い回しで同じ実体を指すのか?定義が書いていない。 )
 第2グループ 

 第2グループは図1g-p(7-16 番目)である。内側星雲は DH 型と同じく大変 明るい。外側領域は外側に次第に淡くなって行く。表面輝度は内側星雲の縁で 鋭く変化する。我々はそれらを接続型ハロー多重シェル PNs = EM(AH) と呼 ぶ。

 第3グループ 

 幾つかの AH PNs (図1q-s), 第17-19番目 は不規則性が目立つ。それらを 不規則接続ハロー PNs = EM(AH/I) と名付ける。NGC 5882 と NGC 6804 は以 AH PNs に分類されていた。しかし、その形はギリギリ AH/I である。

 第4グループ 

 図1t-x 第20-24 は明るい縁を持つ。これらは、中心星から非常に離れてい る。幾つかの天体では、主シェルの外側の質量の方が大きい。

 表1 

 表1には第4グループを除くサンプルを載せた。図2には等高線マップを示 す。図2a-f と g-p を比べれば、接続ハローと分離ハローとの違いがはっき り分かる。接続ハロー(第7-16)は鋭い輝度勾配を示すが、分離ハローの勾配は 緩い。


 図1.楕円惑星状星雲の表面輝度プロット 









 図2.楕円惑星状星雲の表面輝度等高線プロット 










表5.中心星のスペクトル型



図4.多重シェル PNs 中心星の HR-図。黒印=AH, AH/I. 白印= DH. バツ=H 欠乏星。進化経路= 0.55, 0.6, 0.8 Mo.
 



図5.横軸=シェル間隔の力学的時間。縦軸=モデル熱パルス間隔。 黒印=AH, AH/I. 白印= DH.  

図6.外側シェルと内側シェルの電離ガスの質量比 Mi(out)/Mi(in) と中心星 質量の関係。黒印=AH, AH/I. 白印= DH. 縦軸=Vassiliadis93 の最後の 放出と最後から二番目の放出の比。  



図7.外側の電離質量と星の進化時間の関係。丸=AH. 四角=DH.  


 4.理論と観測の比較 

 AGB 星が辿る3つの進化経路 

(1) 熱パルスが始まる前に超星風で外層が完全に剥ぎとられる。
 水素欠乏の表面が露わになり、ヘリウム殻に火が点く。non-DA(He-rich) 白 色矮星に進化する。post-ealy AGB 星と呼ばれ、HR-図を右に移動する間へリウム を燃やしている。

(2) 熱パルス後にマスロスが起き、H-外層が剥がされる。
 最終的な経路は (1) と同じ。中心星はヘリウム殻燃焼で、non-DA 白色矮星 へと進化する。

(3) ヘリウムシェルが静謐な時期にマスロスが起きる。
 ヘリウムシェルが静謐な時期にマスロスが起きると、水素燃焼中心星が残 る。星表面は H-rich で DA 白色矮星が作られる。
 VW93 モデル 

Vassiliadis, Wood (1993) Vassiliadis, Wood (1994) のモデルでは、post-EAGB と "bon again" 進化は扱わない。マスロスは脈動 周期 P から、経験式で与えられる。AGB 進化最終段階 TP-AGB 期の喘ぎ喘ぎ (gasping)マスロスで外層放出の大部分が起きる。著者らは post-AGB 残骸と して H-, He-燃焼星の両方を得ているが、低質量星では He-燃焼星の方が起 きそうである。また、低質量星では最後の2回のマスロスが際立って強い。 一方質量が大きくなると、隙間なく続けざまに起きる。喘ぎ喘ぎのマスロスで 形成される多重シェルは最終質量が 0.7 Mo 以下に限定されるのではないか?

 中心星 

 post-EAGB 星の場合、シェルは単層で H-リッチである。中心核はヘリウム燃 焼星はスペクトル型 WN で L = 102-3 Lo であろう。第2シナリオ では、観測的にはほとんど変わらない。違いは星が WC - hgO(C) 型であること である。もし、二回以上の熱パルスが生じた場合には、多重シェルが現れる。 第3シナリオでは、水素燃焼中心星を産み出し、スペクトル型は WR-Of(H) - hgO(H) となる。


 4.2.個々の天体 

 4.2.1.分離ハロー PNs 

 DH PNs 

 DH PNs は分かれたシェルを示す。 "born again" PNs では水素欠乏型中心核 しか見えないはずである。その意味で注意すべきは、水素欠乏星が見つかるのは DH PNs のみである。ただ、サンプルが少ないので確定ではない。

 Cn 1-5 

 図1、2から、非常に淡い外側ハローが見える。ハロー物質の分布は一様で ない。HeII ザンストラ温度が得られないので HR-図上の位置は不明である。 HI logTeff-L/Lo からは、図4 0.55 Mo 経路より下に来そうである。PNs の 90 % がそうであるように、 M = 0.55 - 0.8 Mo と仮定すると、図4から、 星は post-AGB 進化の初期、Teff < 75,000 K であろう。中心星が WC4 で あることから考えると、この星が "born again" PN である可能性は高い。シェ ルの運動年齢は 20,000 年と非常に大きく、0.6 Mo の水素燃焼星がその最大 光度から冷却期に最後の熱パルスを起こすまでの期間 (Iben83) と同程度である。 この星が "borm again" であることを確認するには、元素組成の勾配を知る必 要がある。未だないが将来は必ず行われるであろう。

 M1-46 

 この DH PN について語れることは少ない。HR-位置も確実でないが、AGB から の進化の初期であることは言える。外側シェルの運動年齢は十分大きい。
 NGC 2867 

 非常に淡い外側シェルは SCM92 で発見された。 H-欠乏の WC3 型スペクト ルは今回のサンプル中最も高温である。中心星質量は 0.59 Mo である。 外側シェルの運動年齢は "born again" シナリオに合致する。

 NGC 6629 

 内側ハローに対し、外側ハローの中心が大きくずれている。中心星は水素リ ッチの Of(H). HR-図上の位置は良く定まり、0.625 Mo の post-AGB 進化初期 にあることを示す。我々のサンプルでは2番目に重い。平坦部光度と熱パルス 間隔を推定した。間隔は非常に長いが、二つのシェルの速度が不明なため、運 動年齢は分からず、年齢の比較ができない。

 NGC 6751 

 複雑なシェル形態を示す。分離ハローの外側にも大量の物質が存在し、内側 シェル自体にも多くの構造がある。中心星は非常に高温の水素欠乏星である。 熱パルス間隔とシェル間の運動年齢は一致しないので、連続する熱パルスで多 重シェルが形成されたと考えることはできない。"born again" シナリオが浮上 する。Chu91 は内側の N/O が外側より高いことを示し、この考えを支持した。

 Tc 1 

 その形態は典型的な DH 多重シェル PN のものである。中心星は Of(H) 型 で post-AGB 進化初期と考えられる。NGC 6629 と似るが、それより光度が高く、 質量が大きい。したがって、パルス間隔は短いだろう。ただし、HeII λ 4686 の上限しか得られていないので、質量、光度、温度は上限値である。




 4.2.2.接続型ハロー PNs 

 成因 

 AH PNs の大きな特徴はその楕円度が大きいことである。二つの例外を除き、 殆どの AH PNs 外側シェルは楕円形である。内側シェルは一つを除いて楕円形 である。楕円シェルは AGB 期及びその先での非対称星風に伴う偏った密度面 とジェットに伴うとされてきた。高密度面の成因には連星、磁場、回転、非動 径脈動などが考えられる。

 IC 2448 

 この規則的な接続ハローは水素リッチ 0.625 Mo 中心星を持つ。熱パルス間 隔はシェル間の運動年齢より一桁大きい。
(残念なことに、どれが多重シェル なのか、わからず読んでいる。図の丸い垣根は普通にいう惑星状星雲で、それが 内側シェルで、その外側が接続外側ハローということか?するとシェル間隔 とは何のことか?さっぱりわからない。 )
外側シェルの運動年齢は "born again" シナリオには短すぎる。この場合、多 重シェルは力学的現象 Mellena93 として考えられる。

 IC 4642 

 高温中心星があり、接続ハローは内側シェルに非常に近接している。非常に 高いヘリウム組成はこの星雲をタイプIの境界に位置付ける。炭素も多い。 外側シェルは丸く、 AGB 星風起源かも知れない。

 K1-2 

 連星である。物理量不明。

 My 60 

 ハローと内側シェルは滑らかにつながっている。 HR-図上の位置は中心星が 進化の最高温度近くにあることを物語る。M = 0.615 Mo. 運動年齢は極めて短 く、 "born again" シナリオは排除される。モデルパルス間隔は運動年齢の 30 倍長い。したがって、連発パルスによる多重シェル形成はあり得ない。この形態 は力学効果であろう。外側シェルは丸く、 AGB 星風の可能性を残す。
 NGC 1535 

 中心星は 0.565 Mo で O(H) 型。パルス間隔はシェル間運動年齢の 40 倍で、 多重シェルはマス放出後の力学効果だろう。外側シェルの非対称性は AGB 期の 球対称星風の可能性を否定する。

 NGC 2610 

 ハローは完全につながっていない。M = 0.55 Mo. 物理量は不確か。

 NGC 3242 

 中心星は水素リッチで低質量。パルス間隔は運動間隔の 30 倍長い。 Balick et al. (1993) は高速の低電離領域を見つけた。これは衝撃波面の存在を示し、力学効果説 を支持する。

 NGC 5882 

 中心星は Of(H), 0.585 Mo で高光度平坦進化期にある。

 NGC 5979 

 データ不足。

 NGC 6804 

 特異な "waist" を内側シェルに持つ。円環形状の星雲を横から見ている のかも知れない。 0.59 Mo.