銀河系第1象限の SNRs 距離を測定した。レッドクランプ星を標準光源と減光 探索子に用いて、個々の SNR 方向で Av - D 関係を導出した。15個の SNRs 距離が導かれた。 | G65.8-0.5, G66.0-0.0, G67.6+0.9 の距離は初めて得られた。また、32 天体の 距離上限・下限を与えた。G5.7-0.1, G15.1-1.6, G28.8+1.5, G78.2+2.1 の距離 は以前より改善された。今回求まった距離の殆どは以前の距離推定値と矛盾しない。 |
減光と距離の探索子としてのレッドクランプ Girardi (2016), Gao et al. 2009 はレッドクランプ星を減光の研究に用いた。 Lopez-Korredoira et al. (2002) は視線に沿った星の分布を調べた。 |
X 線源の距離 Durant, van Kerkwijk 2006 は X 線パル サー方向で距離・減光関係を調べ、パルサー距離を求めた。Guver et al 2010 は X 線連星の距離を、Zhu et al 2015 は SNR G332.5-5.6 への距離を与えた。 |
![]() 図1.G29.3-0.3 まわり 0.5 deg2 内 21032 星の CMD. グレース ケールは星密度を対数表示している。赤点= RC 密度ピーク。赤横線= 1σ. 図1:G29.7-0.3 方向の例 我々の手法を提示するため、 G29.7-0.3 を例に説明する。図1に天体を中心 に ΔlxΔb = 1°x0.5° の 2MASS CMD を示す。図の左側に 主系列星、中央に RC 星、右に矮星と赤色巨星が並ぶ。RC 星を K 等級で 0.3 等幅の水平な帯に分割する。RC 星密度が低い等級では、この幅は 0.5 - 0.7 等に広がる。帯の横幅は、 RC 星の大部分を含み、かつ他種族星の混入が最小 となるように決める。帯毎の星分布を次の式 (Duran, van Kerkwijk 2006) で フィットする。
ここに、ARC = RC 星の規格化、AC = 混入星の規格化 を表す。 |
![]() 図2.K = [11.1, 11.4] における (J-K) ヒストグラム。黒線=ベストフィット。 点線=ガウシアンとべき乗則成分。 図2=帯中心の減光と距離 図2には K = [11.1, 11.4] 帯でのカラー分布と、それへのフィットを示す。 この例では、(J-K)peak = 1.56, σ = 0.19 である。 RC の平均固有カラーと絶対等級を (J-K)o = 0.63, Ko = -1.63 と仮定すると、 帯中心の減光と距離が以下の式から分かる。 AK = 0.67 [(J-K)peak - (J-K)o]
D(kpc) = 10[0.2(mK-MK+5-0.1137AV]/1000 Rv = 3.1 を採用した。また、 AK と Rv の関係は Cardelli et al. (1989) による。 |
![]() 図3a.赤線= G 29.7-0.3 を中心とする 0.5 deg2 の Av-D 関係。 黒線= 0.0625 deg2 の Av-D 関係。 測定範囲の実験 この解析を 2MASS 測光限界まで続ける。最良のサンプル領域はどのくらいだろうか? 大きければサンプル数が増える。小さければ領域内の減光の不均一性が減少する。 図3a では、星の表面密度が高い領域でのテスト結果を示す。 0.5 deg2=1°x0.5°, 0.125 deg2=0.5° x0.25°, 0.0625 deg2=0.25°x0.25° の3種類の範囲で 試した。図から分かるように3通りの結果は互いにほぼ一致する。 1.5 deg2=1.5°x1°, 0.5 deg2=1° x0.5°, 0.125 deg2=0.5°x0.25° の3種類の範囲で 試した。図を見ると、 0.5 deg2 と 0.125 deg2 の 結果はほぼ一致するが、1.5 deg2 の結果は系統的に低めに出る。 領域を広げると、減光の散らばりが大きくなることの反映である。そしてそれ はカラー分布の巾に現れる。 |
![]() 図3b.赤線= G 34.7-0.4 を中心とする 0.5 deg2 の Av-D 関係。 黒線= 0.0625 deg2 の Av-D 関係。 最適サイズは 0.5 deg2 従って、減光の分散=カラー分散が変わらない限りはなるべく大きな領域の サンプルを選ぶことにした。通常は 0.5 deg2 が良いバランスを 与えることが分かった。 SRC = 第2 RC 星は効かない 最近、RC に主要部と第2構造 SRC があることが分かってきた。主要部は 低質量で縮退ヘリウム核を持つ。一方、SRC 星のヘリウム核は非縮退である。 Wan et al 2015, 2017 は LAMOST DR3 から RC : SRC = 3 : 1 とした。 SRC の効果を調べるため、二重ガウシアン関数でフィットを試みたが明瞭な 第2成分は検出できなかった。したがって、我々の方法では SRC 効果は無視する。 |
Green 2014, Ferrand, Safi-Harb 2012 のカタログから、我々は第1象限の
161 SNRs を選び出した。その内 47 SNRs に対しては文献から可視減光 Av
または水素コラム密度 NH が見つかった。それらを我々の方法と
比較した結果を表1と表2にまとめた。
3.1.可視減光 Avライン比よく使用されるライン比は Hα/Hβ で ある。その他、[SII]10320A/[SII]4068A と [FeII]1.6435μm/[FeII]4068A も使われる。共通の上準位からのライン同士の比はガス温度や密度の影響が 小さいので、減光を測るのに適している。 付随星の減光 もう一つの方法は、SNR に付随し、距離が既知の個々星の減光を測定する ことである。 |
3.2.水素コラム密度 NHZhu et al. 2017 は 銀河面第1,4象限で、NH/Av = (2.04±0.05) 1021 H cm-2 mag-1 を得た。NH は 0.25 keV 以上の重元素吸収と相関がよいので、 X 線が検出される約半数の SNR では NH がしたがって Av が 評価可能である。3.3.距離 D距離評価法には、運動学距離、固有運動、減光、Sedov 法、付随天体距離 など様々である。我々は、運動学距離、固有運動、付随天体距離、Sedov 法、 Σ-D 関係の優先度で文献から距離を集めた。 |
第1象限 47 SNRs 中 32 SNRs の減光は RCs 減光の範囲外であったので、
減光の上限または下限のみしか与えられない。残り 15 SNRs に対する CMD と
RC 尾根を図5に与える。その方向の Av-D 関係と SNR 距離の確率関数を
図6に示す。
5.1.SNR 距離P(D) = SNR 距離の確率分布、は Guver,Ozel,Cabrera-Lavers,Wroblewski (2010) に従い、 PSNR(Av) = SNR 減光の確率 分布、と PRC(Av|D) = PRC(D|Av) = 与えられた距離 区間内での RC 減光の分布。どちらの分布もガウシアンを仮定する。 (これまでの解析を読むと、ある K 区間内の RC 星は同じ距離にあって、様々な減光を受けている。さらに個々の RC 星の絶対等級、固有カラーは一つに固定されている。本当はこの二つは 両立しないんだけど。でも参考になった。) 天体距離の決定 図6の右枠は上の式で計算した X-線源距離の確率分布を示す。この分布を ガウシアンで近似して、最尤値として天体距離を決定する。 |
5.2.結果のまとめこうして 15 天体の距離を得た。 3/15 G65.8-0.5, G66.0+0.0, G67.6+0.9 は新しい距離である。それらは 2.4, 2.3, 2.0 kpc であった。 その他に 20 天体には距離の下限、 12 天体には上限を与えた。5.3.議論距離精度 15 SMRs の距離を求めた。図7ではその距離を他の手法で決めた距離と比較 した。大部分は他の手法で決めた距離と矛盾しない。 |
結構よく距離が決まった。 |