Tracing the Galactic Anticenter Stellar Stream with 2MASS M Giants


Rocha-Pinto, Majewski, Skrutskie, Crane
2003 ApJ 594, L115 - L118




 アブストラクト

 最近一角獣座方向に発見された、天の川銀河円盤の外側にあるリング状構造を 2MASS M 型巨星で追跡した。視線方向の星に対して、距離の確率密度関数から この構造を再構築する方法を開発した。この方法を応用して、 +36° < b < +12° (?), 100° < l < 270° に渡り、銀河系中心距離 18 ±2 kpc の所に M-型巨星が集積していることが判った。  このストリームが銀緯が負の領域におおきく広がっている証拠も見つかった。 構造に M 型巨星が含まれていることは、この系に対し以前報告された平均メタル量 [Fe/H] = -1.6 よりも少なくとも一桁は上のメタル量を持つ種族が含まれる ことを意味する。(?)M-型星で追跡したストリームの構造はこれが一様に厚い リングという解釈よりは、サジタリウス銀河のように潮汐腕を持つ融合しつつある 矮小銀河という解釈を支持する。

 1.イントロ 

 2MASS により天の川銀河の構造に対する見方が新しく変わった。Strutskie et al 2001, Weinberg/Nikolaev 2001, Majewski et al 2003. 特に、減光の強い領域 が探られた。Dutra/Bica 2001, Ivanov et al 2002, Dutra et al 2003.

 最近 Newberg et al 2002 は反中心方向の一角獣座付近に低銀緯の星の構造を 発見した。それは、可視光で Yanny et al. 2003 や Ibata et al 2003 により さらに調べられた。これらの研究は、この構造が天空上で長く伸びているが、 距離の散らばりは狭いことを示した。Ibata et al 2003 は色等級図上で主系列の 巾が極めて狭いことを示した。Yanny et al 2003 は SDSS のターンオフ星スペク トルからこの種族のメタル量が [Fe/H] = -1.6 ±0.3 とした。
 しかし、Majewski et al 2003 は 2MASS M-巨星、 J-Ks ≥ 1.0, を使い、 Newberg et al 2002 と同じ箇所に一角獣座領域特性の証拠を(意味?)を見出した。 (Ks)o では一角獣座特性は Nerberg et al 2002 が示したようにふわふわした構造 に見える。しかし、Sgr コア ([Fe/H]∼-0.4) と同じ色等級関係を仮定して Ks を距離に変換すると、もっと緊密な巾の狭い構造が現れる。

 これは、一角獣座種族のメタル量が同じくらいであることの状況証拠と言える。 なぜなら、大きく異なるメタル量に対するカラー等級関係(Ivanov/Borrisova 2002) を採用すると距離の広がりが大きくなるからである。 (論理が不明)
 この論文ではメタル量が不明な種族の密度超過を分離する研究を行う。

 2. データ選択と密度関数 

 近赤外二色図(右図参照、 Bessell/Brett 88 )は M-型の矮星と巨星をすぐに分離する手段を 与えてくれる。 我々は Majewski et al 2003 と同じく 2MASS データセット二色図上 で M-型巨星を選ぶが、彼らよりカラー巾を広げ、0.86 < J-Ks < 1.10 を加えた。これにより |b| > 34° の 4° × 4° の個々のフィールドでも十分な数のサンプルを得ることができるようになった。 我々は 51 ms 2MASS 露出データを排除した。その結果、我々のカタログでは Ks ≥ 8 mag の等級限界を与えられた。サンプル数は |b| = 34° で 14 - 27, |b| = 14° で 51 - 395 であった。目標が一角獣座システムの存在を確認し、 その長さと方向を決めることなので、解析は減光が穏やか、E(B-V) < 0.555, でバルジ星の混入が最小に抑えられる箇所に限定した。こうして、 |b| < 12 ° でかつ -54° < l < +54° の領域は除いた。

 個々の M-型星の [Fe/H] は判らないので絶対等級も不明である。単一メタル量 を仮定し、相対距離を確かにするのなら、カラー範囲を狭くして距離指数の分散 を小さくするという手段がある。しかし、そうするとサンプル数が減って広い グリッドが必要となり、その結果空間分解能が低下する。

 その代わりここでは個々の恒星に確率距離分布関数を与える。
P([Fe/H]) = メタル量確率分布関数。
P(D|Ks,J-Ks) = (Ks, J-Ks) の星が距離 D である確率密度。
以後、P(D|Ks,J-Ks) は P(D) と略す。

すると、
P(D|Ks,J-Ks) = P([Fe/H]) | d[Fe/H] | | dMKs |
dMKs dD


ここは良く分からない。表記を簡単にするため、M = 絶対等級、K = 見かけ等級、C = カラー、Z = メタル量、 D = 距離、とする。
   dN = F(K, C, D)dKdCdD = G(M, Z, D)dMdZdD とした時、
  ∂(K,C,D)/∂(M,Z,D) = (∂C/∂Z)M,D なので、
  G(M, Z, D) = F(K, C, D)*(∂C/∂Z)M,D である。逆に
  F(K, C, D) = G(M, Z, D)*(∂Z/∂K)C,D
上の P(D|Ks,J-Ks) は規格化定数を別として、F(K, C, D) のことらしい。すると、
P(Z) | dZ | | dM | = G(M,Z,D) ∂Z |
dM dD ∂K C,D


これは理解し難い等式である。そんな事を考えずに、 P([Fe/H])と Z に依存 する CMR, つまり色メタル量等級関係を使って、 個々の星、つまり個々の (Ks, J-Ks) に対して、距離分布を与え、それらの総計 としてサンプル全体の距離分布を決めればいいのではないか?


 簡単のため P([Fe/H]) はピークが一つの関数と考える。また、K-, M-巨星 に対してはメタル量に依存するカラー等級関係(Ivanov,Borrissova 2002) を 採用した。 (矮星を考えているのではない!) P([Fe/H]) は 中心値 μ = -1, 分散 σ = 0.4 のガウシャン を仮定した。

 P(D|Ks,J-Ks) の計算は次のように行った:
まず、与えられた (Ks, J-Ks) に対して、[Fe/H] は一つの D に対応する。それを 上式の右辺に入れる [Fe/H] に使う。これは Ivanov/Borrissova 2002 の [Fe/H](MKs) を使うことでなされる。右辺の微分はこれらの式を 使って計算される。こうして決めた個々の星の距離確率分布関数を全ての星で 足して視線方向の密度分布が決まる。 (やはり、なぜ直接分布関数に行かないか判らない。)

 図1には距離分布関数の一般的傾向、円盤に対応する幅広の盛り上がりが手前 5 - 7.5 kpc に来て、ある方向ではさらに遠く 9 - 13 kpc の間に第2のピーク、 が示されている。別の方向では手前のピークがより広がり岩棚のようになる。

 図2にはピーク検出のまとめが示されている。大きくて近い方のピークは円盤 M 型巨星から来ている。これは我々のサンプルでは 4 kpc から始まる。図2の 外側のピークは太陽から 11 kpc 離れている。この帯は図 2a ではっきり見える。 これは距離確率分布関数の -36°: < b < +36° の広い範囲で認められ る特徴に対応している。ただしこれは南側では赤化が強くなるためはっきりしない。

図 G5 - M6 の矮星と巨星の二色図。矢印は赤化。Bessell/Brett 1988.




図1.一角獣座構造が Ibata et al 2003 と Yanny et al 2003 で報告された 4領域における距離確率分布関数上のピークと棚。P (ピーク)がわれわれの 一角獣座構造の確認ということになる。


図2.縦軸=ピーク位置の太陽からの距離。黒四角= 36° - 32°, 白三角= 32° - 28°, クロス= 28° - 24°, 右向き三角= 24° - 20°, 白星= 20° - 16°, 白丸= 16° - 12°。実線と破線は特徴の平均距離を平均 [Fe/H] = -1.6, -1.0, -0.5 に対して求めた。(-1 のガウシャンじゃなかったのか?)
(a) 北銀河半球 (b) 南銀河半球。

 3. 一角獣座ストリーム 

 図2の第2帯を一角獣座ハローストリームと考える。これは Ibata et al 2003 が オリオンリングと呼んでいるものと同じである。図2(a) では 150° l < 220 ° でこの特徴がはっきりしている。この領域では集められた M-巨星のうち 20 - 30 % が 9 - 13 kpc に集中しているようである。銀河面近くでは構造は 円盤巨星の数が増えるため、ピークから棚状になる。

 北銀河半球ではこの構造までの太陽距離は 11.2 ±0.11 kpc で、Newberg et al 2002, Yanny et al 2003, Ibata et al 2003 の 8 - 11 kpc と一致する。 図4には銀河面上に投影したが構造がはっきり見える。一角獣座構造は銀河中心 から 17.5 ±0.5 kpc 離れている。図4を良く見ると、第3象限では距離が 第2象限より小さくなっている。

 テストを繰り返した結果、(略)

 第1章では赤い 2MASS 星を使った以前の研究結果について述べた。その時の構造 は半分離型の中心が (-20, -7) kpc の斑点として見えた。Majewski et al 2003. この仕事は Sagittarius 中心核のカラー等級関係を用いている。この銀河は [Fe/H] < -1 と考えられている。この方法では各星に一つの距離が与えられる。 一角獣座構造がこのように赤い星でも見出されたというのは Yanny et al 2003 が 想定した [Fe/H] = -1.6 よりかなり高メタルの星が存在することを示している。 彼らの言うような低メタル星では would have few tip giants だろうからである。
(この論理はよく理解できない。)


図3.(a) スケール高の変化。(b) 文献にあらわれた特徴。灰色領域は減光が強い所。 バツ四角= 9 - 13 kpc ピークが見つかった。五角形= Newberg et al 2002, 丸= Yanny et al 2003, 半黒菱形= Ibata et al 2003
 太陽距離 9 - 13 kpc, 140° < l < 270° の星は全て一角獣座 構造のメンバーと仮定して、スケール高を 1.3 ± 0.4 kpc と見積もった。 これは Yanny et al 2003 の 1.6 kpc と合う。Ibata et al 2003 は半分くらい の厚みを出しているが、彼らの距離は 8 kpc と近いのでそれも薄さの一因で あろう。

 図4は構造が l = 270° 付近で銀河系円盤に溶け込んでいくことを示す。 一方、反対側でも l < 90° では構造が消滅しているようだ。 -90° < l < 90° では 2MASS は内側銀河の巨星を多く拾って いて、消滅はそのためかも知れない。いずれにせよ(?)、本研究は 一角獣座構造は一様なリングではない。

 Helmi et al 2003 はマージャーの数値計算から同一面内の衛星銀河降着 が一過性の星の弧を作るというモデルを提示した。この説が観測に近く 思える。


図4.銀河面上への北銀河半球内ピーク位置投影。一角獣座構造は銀河系中心 から 16 - 17 kpc に見える狭い帯である。帯は 195° < l < 240° で厚く、l ≈ 270° で円盤に溶け込んでいる。







Schlegel et al. 1998 先頭へ