SDSS と SEGUE からの F ターンオフ星と青色水平枝星の撮像、分光観測を 行い、おとめ座方向で以前に銀河系ハローの中に認められた幾つかの構造の間の 関係を調べた。サジタリウス星流の先行腕は太陽近傍は通らないことが判った。そ れが銀河面を横切るのは太陽円外側で、太陽から 15 kpc も離れている。また それはおとめ座中の密度超過 S297+63-20.5 とも空間的に重ならない。 S297+63-20.5 ははっきり異なるターンオフカラーと運動性質を有している。 S297+63-20.5 中の暗い(g∼20.3) ターンオフ星は銀河慣性中心視線速度 Vgsr = 130±10 km/sで、サジタリウス腕が持つ負の視線速度 とは符号が反対である。 | もっと明るい g∼19.8 ターンオフ F 型星の分布は銀河中心に関して 対称でない。この矛盾は S297+63-20.5 運動群が原因ではない。 楕円体が銀河中心に関して対称ではないか、副構造がハローにあって、 S297+63-20.5 と同じ側に存在するかである。おとめ座には以前から おとめ座星流(Virgo Stellar Stream=VSS)とおとめ座密度超過 (VOD) の二つの副構造が知られているが、S297+63-20.5 も関係するのかも 知れない。しかし、視線速度の差が問題である。 |
![]() 図4.S297+63-20.5 密度超過の位置とサジタリウス星流の位置。 |
ターンオフF型星は青色水平枝星よりずっと多い。従ってそれらは副構造の
よいトレーサーである。問題は水平枝星より 3 - 4 等暗く、絶対等級の
広がりが大きいことである。サジタリウス矮小銀河と潮汐星流は特に青い
ターンオフを持つ。そのため、それらを他の銀河系種族から区別することが
容易である。この節では、サジタリウス先行星流がターンオフ星に現れるが
S297+63-20.5 密度超過は現れないことを示す。
![]() 図5.F 型星, 0.2 < (g-r)o < 0.3, (u-g)o > 0.4, の北銀極周りの 20.0 < go < 21.0 星の分布図。図の中心が銀極。外側の円は b = 30 °. 図の半径方向の目盛はピクセル当たりの立体角が等しくなるように打たれ ている。つまり r=ro (1 - sin b) の形?黒みが F 型星の密度を表す。低銀緯で 銀河系中心方向が濃いのは銀河系楕円体成分。(l,b) = (205°, 25°) - (255°, 70°) の濃い帯はサジタリウス先行腕。サジタリウス星流は S297+63-20.5 の銀経付近で go = 21 等より暗くなる。右下縁の角括弧は S297+63-20.5 密度超過の主要部を示す。 (上)銀極図の上半分(目立った潮汐デブリは含まれていないように見える) を下半分から差し引いた図。仮定は星計数は l= 0° - 180° ラインに 関して対称と言うもの。S297+63-20.5 密度超過のピークは (l, b) = (300, 60) にあるようだ。l = 255° 縁には Belokurov et al 2007 の "Orphan Stream" が見える。 ![]() 図. |
![]() 図6.(上) 19.0 < go < 20.0 の明るい F 型ターンオフ星。一角獣座 構造が銀河系反中心方向に見える。Dsun = [9kpc, 14.5kpc] (下) 21.0 < go < 22.0 の暗い F 型ターンオフ星。サジタリウス星流 と S297+63-20.5 密度超過が良く見える。Dsun = [23kpc, 36kpc] |
![]() 図7.F ターンオフ星の等級分布。 (上)細線:(l, b) = (288°, 62°)中心。 1.5°半径(VSS 領域) 太線:(l, b) = (72°, 62°)中心。 ミラー領域 (下)細線:(l, b) = (300°, 55°)中心 S297+63-20.5 領域。 太線:(l, b) = (60°, 55°)中心 ミラー領域 ずれは 18.5 < go < 22.5 (8kpc < d < 45 kpc) で著しい。 |
![]() 図8.色等級図 |