Identification of A-Colored Stars and Structure in the Halo of the Milky Way from SDSS


Yanny,B., + 23.
2000 ApJ 540, 825 - 841




 アブストラクト

 SDSS 開始観測が赤道に沿った狭い帯で行われた。36 > |b| > 63 である。 15 > g > 22 で主系列 A 型星のカラーを持つ 4208 星 が選ばれた。これらの星の分布はハロー中に著しい副構造を示すことが判った。 A-型星カラーの星の密度超過が、北天で (l, b, R) = (350°, 50°, 46 kpc), 南天で(157°, -58°, 33 kpc) で 10° 以上にわたって存在する。Ivezic et al 2000 は北側副構造を SDSS の RR Lyr から見つけた。

 測光結果を星の表面重力で分けることに使い、どちらの構造にも低表面重力星が 含まれていることが判った。それらは青い水平枝星と同定された。また、高表面重力 の星で BHB 星より 2 等暗い星も含まれるが、それらはブルーストラグラーである。 南側A型星超過の場所には F 型星も見つかった。北側はF型星検出には遠過ぎた。 検出された BHB 星の数から導かれた副構造質量の下限は 6 × 106 Mo と 2 × 106 Mo である。ただし空間的広がりの全体はまだ 不明である。全天の 1 % を見ただけでこんな大きな副構造が見つかったということは ハロー中にこの様な副構造が稀ではないことを意味する。

 簡単な楕円体分布を BHB 星に当てはめて、 c/a = 0.65, 密度低下の指数 α = -3.2 を得た。

 1.イントロ 

 A型カラーの主系列重力星

 暗くて A 型星カラーの星は通常ハロー種族(種族II)で、従って BHB 星と看做 されてきた。しかし、多くの遠方の青い星が主系列 A 型星の重力に相当する水素 線巾を持つことが明らかになってきた。

高重力星が普通の主系列星でない理由 

 ではなぜ高重力星を普通の主系列星にしてはいけないか?理由は
  (1)LMC, Sextans のような 矮小不規則銀河を除いて、30 kpc も離れたハロー で過去 10 億年以内に星形成が起きた証拠はない。 10 億年は A 型星の主系列寿命 を上まわる。
(2)星が銀河面内の星形成領域から離れ過ぎていて、普通の速度では辿りつけない。

ブルーストラグラー 

 球状星団内で見つかるブルーストラグラーは年齢が 10 Gyr に近く、表面重力が 高い。BS 星は低質量星の合体により生じた主系列星と考えられている。形成メカ ニズムが何であれ、彼らはハローにも存在する。



図1.赤道に沿った SDSS 星の u - g 対 g - r 二色図。見かけ等級別に3種に 色分けした。 A = A 型星カラー, F = F 型星カラー, G = G 型星カラー, Q = クエーサー

 2.A 型星カラーの星 

 2.1.A 型星カラーの星の選択 

0.8 < u - g < 1.5, -0.3 < g - r < 0.0 で、 g < 22.5 で選んだ。北領域に 3126 星、南領域 に 1082 星の計 4208 星あった。

 2.2.A 型星カラーの星の分布= アーク  

 BHB 星に対しては、Mg = 0.7 とした。図3に4208 星すべて の分布をウェッジ図として示した。著しい特徴は d = 70 kpc にある Sextans 銀河と g = 19, 21(北領域) と = 18, 2(南領域) のアークである。  北アークは Ivezic et al が SDSS で RR Lyr 星の分布を調べた時に検出した。



図3.A 型星カラーの星の polar wedge plot. Sextans 銀河 α = 153°, g = 20.5 と Pal 5 α = 229°, g = 17.3 もプロットした。右側に Pal 5 部分を拡大して示す。Pal 5 の BS が 18.5 < g < 20.5 の直線として現れている。 斜線は赤道面と銀河面との交線。円の周りの2段の数字は銀河座標(上)と 赤道座標(下)






 2.3.クエサーによるチェック 

 選択効果があるのではないかという疑問をチェックするため、クエサー箱のサンプル を同様にプロットした。図4に見られるように分布は一様であった。



図4.図1クエサー箱サンプルのウェッジ図。分布は一様。


 3.分光観測  

 3.1.観測 

6つの分光サンプル 

 SDSS サンプルから6星、同時に表面重力が既知の5つの A カラー 星が選ばれた。観測はリック天文台3m望遠鏡で行われた。比較星には CS29516-0011 = フィールド水平枝星、WD0148+467 = 白色矮星、HD 13433 = A0V が含まれる。

 3.2.分光的表面重力指標 

バルマー線の巾 

 BHB を AV から区別するのはバルマー線の巾である。主系列 A 型星 (M = 2.5 Mo, R = 2 Ro) は log g = 3.5 - 5 である。一方、BHB は M = 0.7 Mo, R = 3 Ro で log g = 2.5 - 3.2 である。この差が シュタルク圧力巾として現れる。
 A型星を主系列星と低重力 BHB 星とに分ける標準的な手続きでは H δ 線 の巾を連続光の 80 % の所で測る。フラックスが強く、金属線の影響を受けにくい からである。



図7.Pal 5 周辺の CMD. g - r 上での A カラー星範囲を縦線で示した。 BHB 5星と BS 候補 7 星が見える。両者の間隔は g で 2 等。丸四角マークの2星が図8で分光された。


図8.上:赤線=球状星団 Pal 5 の BHB 星スペクトル。点線(フィールド BHB) に合っている。
   下:赤線=球状星団 Pal 5 の BS 星スペクトル。実線(フィールド A0V) に合っている。




図9.赤線=SDSS A カラー星6個のスペクトル。左下の星だけは高重力星(A0V) が 良く合うが、その他の5星は吸収線巾が狭く、BHB の重力に合う。左上の星は 連続スペクトルがデコボコで Am 星であろう。


 4.Aカラー星の性質 

 4.1.Pal 5 

PAL 5 中の BHB と BS 間の等級差は 2 等 

 A 型星から銀河系構造を出す時には2種類の星の分離に注意しなければいけない。 Pal 5 がどう見えるかを調べてみよう。Pal 5 は太陽から 20 kpc 離れ、5 個の BHB 星 g ∼ 17.3 と 5 個の BS 星 18.5 < g < 20.0 を含む。絶対等級では Mg(BHB) ∼ 0.7, 1.9 < Mg(BS) < 3.4 である。

二重リングの成因 

 図3に顕著な二重の弧にもやはり2等の差がある。これは、同じ距離にある BHB と BS を表わしているものであろう。この解釈が正しいなら、BHB 等級から各弧までの距離 を見積もれる。例えば、北弧は g ∼ 19 で、太陽から 45 kpc の距離になる。



 4.2.表面重力のカラー分離 

 Wilhelm et al 1999 は A 型カラー星が U - B, B - V 二色図で分けられることを 示した。しかし、SDSS の u から U への変換には問題が ある。そこで、u - g 対 g - r 二色図上での分離を試みた。 図10の実線がその結果である。


図10. モデルスペクトルと表面重力が測られた星の  u - g 対 g - r 二色図。  Lenz et al 1998 モデル Teff = 6500 - 10,000 K は黒丸= BHB モデル、 しろまる= BS モデル。実線は低表面重力と高表面重力を分ける経験線。
赤い方で線の下に PAL 5 BS がある。青い方で 低重力モデルが線の上に伸びている。



 4.3.Aカラー星のサブサンプル 

BHB,BS の分離ウェッジ図 

 図10の星にカラー分別を施した結果、北の 3126 星は 2041 BS 星 + 1085 BHB 星に分かれた。南は 674 BS + 408 BHB となった。図11には BHB, 図12には BS 星のウェッジ図を示す。



図11.カラーから選んだ BHB 星のウェッジ図。 北の g = 19 と南の g = 18 円弧は、Pal 5 の BHB と共に、はっきりと見える。
等級分布ヒストグラム 

 図13には北と南とで、BHB, BS 候補星の等級分布を示す。北の α < 200° (左)には特徴がないが、BHB の密度超過が北の α > 200° (中央) g = 19 に見える。南の (右) g = 18 にも密度超過がある。


図12.BS星のウェッジ図。遠い方の塊りは固有光度が暗いBSによる。


図13.北領域と南領域における BHB と BS 候補の等級分布。北図は R.A. > 200° (左) と R.A. < 200° (右)を全て含み、 南図は R.A. > 0° を全て含む。北の R.A. > 200° には g = 19 と 南図の R.A. > 0° には明らかに g = 19 の集中がある。


 4.4.回転楕円体ハローのシミュレーション 

 北方面の構造がバルジのためでないかを調べた。全く似ていない。




図15.c/a = 1, α = -3 のモデルハローの Mg = 0.7 BHB 星分布のウェッジ図。星密度の極大は b = 0 に近いがピタリではない。この 分布は図3と全く似ていない。



 4.5.もっと赤い星の分布 

F型星 

 図16には F型星候補のウェッジ図を示す。南側には g ∼ 21 に円弧が見える。これは BHB で g ∼ 18 に 見えたのに対応する。
 北側構造に対応する F 型星は検出限界より暗い。



図16.F型星候補 0.6 < u - g < 1.0, 0.1 < g - r < 0.3 のウェッジ図。数が多かったので、10 個に 1 個をランダムに選んだ。 南領域、 20° < α < 40° の F 型星は g = 21.5 で A カラーの円弧と同じパターンを示す。 北側では銀河系ハロー星が圧倒して、塊りが見えない。あるとすれば g = 22 - 23 のはずである。


G 型星 

 図17には G 型星候補のウェッジ図を示す。南がわにも北側にも 構造の徴候はない。MV(G) ∼ 5 であるから、構造に 付随する G 型星は見えなくて当然である。この種族は銀河系のより近距離での 構造を調べるには有用である。



図17.G 型星候補 0.9 < u - g < 1.3, 0.3 < g - r < 0.4 のウェッジ図。数が多かったので、5 個に 1 個をランダムに選んだ。 低銀緯に行くと円盤の構造が見えてくる。A 型カラー星で見えたような円弧は 見えないが、見えるとすると g > 24 のはずである。



 5.大構造の性質 

円弧の位置 

 GCまで 8 kpc を仮定して、各星に(α, d )から(α, RGC) の変換を施して図18、19を作った。太陽位置を (-8, 0, 0) とする 銀河系直交座標系では北円弧は (X, Y, Z) = (12, -13, 41) から (21, -5, 38) を 中心に (26,1,34) へと伸びている。南円弧は 33 kpc 離れており、(-18, 9, -25) から (-22, 6, -24) を中心に (-25, 3, -22) へ伸びている。このシステムでは Sextans は (-36, -53, 58), Pal 5 は (7, 0, 16) である。

円弧の質量 

 図13(左)から単位平方度当たりのカウントを背景カウントとして採用する。 その上の部分を円弧成分とみなし、北円弧には 200 個の BHB 星が属するとした。 Pal 5 には5個の BHB 星が存在する。Djorkovski, Meylan 1993 の球状星団テーブル から Pal 5 の質量を 1.5 × 105 Mo と推定する。この関係を 用いると、北円弧の質量は 6 × 106 Mo となる。この値は RR Lyr からの値と合致する。Ivezic et al 2000 は北領域内に 50 % の検出効率で 80 個 の RR Lyr を検出した。これは Pal 5 と比べると 160 対 5 となり、先の 200 対 5 と対比される。

ちょっと判らないぞ。RR Lyr と BHB は同じものを別の 方法で探したのか?それとも別種だが、同じくらいの数が期待されるのか?

 南円弧には 60 BHB があり、それから質量 2 × 106 Mo が 期待される。



図18.R.A. と銀河系中心距離の BHB 星ウェッジプロット。
R,A. は太陽から見てで、銀河系中心距離は 銀河系中心から見てで、同じグラフに突っ込めるのか?
北では R = 46 kpc, 南では R = 33 kpc に集中が見える。R = 80 kpc に Sextans が見える。α = 194°, R = 50 kpc の構造が 何かははっきりしない。これらの差はおそらく種族の違いに起因しているのではないか。

BS 対 BHB 比 

 Pal 5 では BS : BHB = 7 : 5 = 1.4 : 1 である。北円弧では BS は 図13 (左)を背景として、 450 BS が属する。したがって、 BS : BHB = 450 : 200 = 2.2 : 1 となる。しかし、BS は検出限界に近いので実際の比はずっと大きいだろう。 南円弧では BS : BHB = 380 : 60 = 6 : 1 となる。ただし不定性は大きい。

星流の起源 

 円弧はハロー中の星流であろう。ハローは銀河系より小さな天体の破壊または 降着で形成された, Majewski 1994 という考えもある。Majewski, Munn, Hawley 1994 は北銀極の 4 - 5 kpc 上にハロー星が 6 - 10 個集まった塊りを見出した。 それらは同じ視線速度と固有運動を持ち運動群を形成している。Helmi, White 1999 は衛星銀河の破壊をシミュレートして、ハローの位相空間中の拡散を調べた。彼らは ハローが 300 - 500 の星流から構成されているのではないかと提唱した。

21 cm 高速度雲 

 21 cm 高速度雲との対比からは相関が見えなかった。

円弧の星 

 結局、北円弧では BHB, BS 星、南円弧では BHB, BS, F 型星 が見つかり、それらは 球状星団その他の銀河系種族から大きく外れるものではない。質量は球状星団より 大きく、衛星銀河の数分の一である。したがって、U Min や Draco のような 70 kpc 付近ににある矮小楕円銀河、現在の中心密度がその広がりから予想されるよりずっと 高い、が円弧の星を供給したのではないか?



図19..R.A. と銀河系中心距離の BS 星ウェッジプロット。 Mg(BS) = 2.7 を仮定した。北で R = 46 kpc, 南で R = 30 kpc に緩い構造が見える。



 6.銀河系ハローモデルへのフィット 

BHB 星へのフィット 

 円弧に属する A 型カラー星の数は 滑らかな背景の星と同じくらいである。 4.3.説で用いた方法で BHB 星を分離して単純な α と a/c のみをパ ラメターとする回転楕円体ハローにフィットしてみよう。図20は BHB 星を 8 kpc < d < 40 kpc でフィットしたものである。 再尤法で決めたパラメターは α = -3.2 &plums;0.3, c/a = 0.65 &plums;0.2。

外側と内側でハロー構造は違うか? 

 分光によるもっと正確な BHB の決定と数を増やすことで R < 40 kpc のハローの 構造が明らかになるであろう。しかし、もし外側ハローでは星流の寄与が大きいと したら、単純なパラメターフィットではハロー全体の質量構造を明らかにするには 不十分である。



図20.円弧成分を除いたあとの BHB 星に 2 パラメターハローをフィットする。 上左=北領域 BHB 対太陽距離。上右=北領域 BHB 対赤経。下は南領域。 再尤法で決めたパラメターは α = -3.2 &plums;0.3, c/a = 0.65 &plums;0.2


 7.結論 

 1.A カラー星サンプル  

 A カラー星 4208 個は g = 19.5 まで一様で、 22 等まで 拡がっている。このサンプルを使い R = 60 kpc までのハロー構造を調べた。

2.円弧構造の発見 

 A カラー星の等級ー赤経図には北側で (α, δ) = (220°, 0°) に 30° に及ぶ円弧を発見した。Ivezic et al 2000 の 80 RR Lyr 星での 集合はこの構造を確認するものである。南側には第2の円弧が 20° に渡って 検出された。

3.Pal 5 の A カラー星 

 Pal 5 の BHB 星と BS 星の等級差が2等であることから2重アークの原因が判った。
4.分光 

 8天体の分光の結果、低重力の BHB 星と高重力の BS 星を確認した。

5.円弧の位置と質量 

 Mg(BHB) = 0.7 から円弧までの距離を決めると、北円弧は銀河中心 から 46 kpc, 南円弧は 33 kpc であった。質量は 6 × 106 Mo, 2 × 106 Mo である。これはハローの可成りを占める。

6.ハロー構造 

 円弧成分を除いたあとの BHB 星に 2 パラメターハローをフィットする。 再尤法で決めたパラメターは R < 40 kpc で α = -3.2 &plums;0.3, c/a = 0.65 &plums;0.2 である。しかし、円弧が R > 30 kpc で支配的であることを考えると、外側ハローの構造は 異なるかも知れない。