Sgr A* から 1 pc 以内の 329 晩期型巨星を分類した。観測は AO 面分光 SINFONI/VLT を使った。これは銀河中心で得られた最も深い分光データである。レッドクランプ (Ks ∼ 15.5 )での完全度は 50 % である。 | 分光の結果を NACO H, K 測光と結合して、 HR 図を作った。これを様々な星形成史に 対するモデル HR 図と比較した。ベストフィットは過去 12 Gyr の間連続的に星形成が 起きてきたモデルであった。ただし、その IMF の形は頭でっかち型の必要がある。この IMF とごく最近に起きた星形成で観測された IMF とが似ていることは、最近の星形成と 銀河中心の全期間を通じての星形成が通じていることを示唆する。 |
銀河中心領域の星種族がバルジと異なる証拠 銀河中心領域の星種族がバルジと異なるという証拠が積み重なっている。 (1)NIR - FIR 表面輝度分布は銀河系中心数百パーセクの構造が平坦な円盤 状恒星系に支配されていることを示す。(Kent 1992, Launhard et al 2002) (2)中心数百パーセクの OH/IR 星は内側単独種族=バルジ種族から期待されるより 大きな回転速度を示す。(Lindqvist et al 1992) (3)現在進行形の星形成も中心領域に限られる。バルジ星は主に 7 - 10 Gyr 以前の 古い爆発的星形成による種族からなる。(Ballero et al 2007) 中心核の星形成史 一方中心核には多数の 若い種族、中間年齢種族が存在する。中間年齢種族の存在は広帯域測光(Figer et al 2004)により推定されている。また、若い超巨星や明るい AGB 星からも、 10 Myr - 1 Gyr の中間年齢星形成史が辿られている。また、OH/IR 星は 1 - 3 Gyr の トレーサーになる。(Sjouwerman et al 1999) 最近では若い種族の研究が盛んになって きた。これら若い種族は主に、3つの若い星団に分かれている:(i) the Arches, (ii) Quintuplet, それに (iii) 中心星団である。(i) と (ii) は中心から投影距離で 30 - 50 pc 離れており、(iii) は中心パーセク内に分布する。 中心核の星形成 中心核の星形成は銀河バーにより誘発されるガスの内向き移動と関係すると考え られている。しかし、ガスがどうやって外側から中心部に落ち込み、それが星形成 にどう影響するかはよく分からない。現在、銀河中心から 2 - 8 pc のところに 分子ガスの塊があり、核周円盤と呼ばれている。この構造が定常的に中心パーセク での星形成ガスを補給しているなら、この領域で生まれた星は Arches や Quintuplet 星団の星種族や、中心 200 pc に渡って発見される中間年齢種族とは全く異なる 種族である。中心ブラックホールの力学効果や、星や残存天体の密度が中心パーセク で高いことも種族の差別化に貢献するだろう。 |
中心星団に 100 の OB 星 そういう訳で、中心星団の性質を明らかにし、それとさらに大きな中心部 (100-300 pc) との関連を探る研究が盛んに行われた。 最近、Paumard et al 2006 は中心パーセクの若い星種族の分光を行い、約 100 の OB-, WR- 星を 同定した。彼らは若い星の大部分が二つの傾いた、逆回転円盤上にあることを 発見した。これは濃い降着円盤上で星が形成されていることを物語る。 中心パーセクの中間年齢星 中心パーセクの中間年齢星の観測は広帯域測光に頼っている。低質量星の 割合は中心からの距離と共に増大する。これは力学的な質量分離効果 かも知れない。 超巨星、明るい巨星の観測 しかし、晩期型巨星の詳細な研究には分光観測が必要である。それは主に 銀河中心方向では減光の変動が激しく、さらに巨星の固有カラーの広がりが 大きいからである。 Blum et al 2003 の研究はこの分野におけるパイオニア ワークである。彼らは明るい巨星と超巨星の分光、測光観測, 50 % at K=10、 を行い、注進 5 pc の H-R 図を作った。彼らは、銀河中心数パーセクでの 星形成率は大体バルジのそれと同じであると結論した。特に、彼らは星の大 部分が 5 Gyr 以前に作られたことを見出した。一方で、彼らは過去 100 Myr の星形成活動が活発であった証拠も見出した。ただ、かれらの研究は明るい 等級の星で、進化寿命が短く、モデルが不確定な星の観測に基づいている。 RGB, AGB, RC の観測 この論文では、Blum et al 2003 の結果をさらに押し進め、中心パーセクの 晩期型巨星種族の特徴づけをより確実に行う。329 晩期巨星の深い測光、分光 観測、50 % at Ks=15.5、を行った。初めてレッドクランプ星の観測を行った。 その結果、銀河中心星形成史が確実になった。と言うのは、 RGB, AGB, RC 星 は Blum et al 2003 で調べた超巨星や明るい巨星より、深く理解されているから である。 |
2.1.分光観測と Te の決定積分フィールド分光器 SPIFFISPIFFI/VLT で8フィールド観測。Sgr A* から 20″ 以内で、しかし ミニスパイラルは Brγ の混入の危険から避けた。また、Sgr A* 北側で AO ガイド星からあまり離れていない個所を選んだ。K ≤ 9 の明るい星も 避けた。 観測目的は (1)中心パーセクの外でB-主系列星を探す。 (2)晩期型巨星のスペクトルを集める の二つである。 観測モード 各フィールドは 50×100 mas ピクセルモード、つまり 0.2″ 分解能で、視野 4.2′×4.2ℙ、で観測を行った。 H, K バンドでの分解能は R = 1500 であった。図1には観測フィールドの 位置を示した。 図2には星位置の分布を示す。 (って、これ何だ? ) K スペクトル VLT 規格化スペクトルを Wallace、Hinkle 1997 や Kleinmann, Hall 1986 の規格化スペクトルと比較した例が図3に示してある。 ![]() 図1.NaCo Ks モザイク。箱=SINFONI スペクトル観測箇所。アステリスク = Sgr A*. |
星の分類 12CO 2.2935 μm ν = 2 - 1 回転バンドヘッドを分類に利用する。 これは光度クラスが与えられば良い温度指標である ( Kleinmann, Hall 1986 )。この波長帯は、星雲輝線が少なく H, K-バンドの他の吸収を併用するより 信頼度が高いので、この吸収帯のみを使うことにする。Blum et al 1996b, 2003 と 異なり、 H, K バンドの H2O 吸収は有効温度決定には使用しない。という のは Ks > 10.3 の巨星のみを対象とするからである。超巨星や LPV のように 稀な天体は我々のサンプルには含まれない。 Blum の CO 指数 Te - 12CO 指数関係を定義するために、我々は Blum、Sellgren, DePoy 1996 で定義されている 12CO 指数を計算した。他の CO 指数、例えば Frogel et al 1978 ほどは知られていないが、彼らの指数は他の指数との 相関が良い。その上、近傍の連続光の小さな変動に対して鈍感である。というのは、 この方法は連続光へのフィットを要求しないからである。指数の定義は、 CO(%) = [(1 - Fband/Fcont)×100] である。ここに、λ(band) = 2.302μm, λ(cont) = 2.284μm でバンド幅 = 0.015μm である。計算は Plum et al 1996 の通りにやったが、 彼らのスペクトルと違い、我々のは規格化されており、同一の指数は得られない。 ![]() 図2.図1にあるボックス内の星の Sgr A: 距離の分布。 |
CO - Te 関係 Blum et al 2003 に倣い、CO 指数から Te を導いた。有効温度がしっかり決 められたサンプルスペクトルには、 Wallace、Hinkle 1997 や Kleinmann, Hall 1986 から採った。表1にはこれらの星のデータを載せた。図4にその 関係がプロットされている。 Wallace、Hinkle 1997 と Kleinmann, Hall 1986 の関係は非常によく一致しており、 CO 指数がスペクトル分解能や観測システム の影響を受けないことを示している。関係は CO ≤ 17 で緊密である。我々 の銀河中心サンプルは全て、 CO ≤ 17 であったので、CO > 17 の参照星 はフィットには用いなかった。結果は 3 ≤ CO ≤ 17 で、 log Te = 3.7351 - 0.0060×CO - 0.00040×CO2 冷たい巨星と暖かい巨星 暖かい巨星と主系列星から、冷たい巨星を分離するために、 CO < 3 の 星はサンプルから外した。我々の分光した 355 星中 329 星が CO 吸収ありと 判定された。これ等の星に、上の関係式を用いて有効温度を定めた。温度を計算 する前に、CO お手本スペクトルとクロス相関させて視線速度を除いた。 Ramirez et al 1997 に述べてあるように、こうして得られたエラーは下限と看 做すべきである。 CO が検出されなかった星の解析は Martin et al 2007 に述べる。 |
![]() 図4.2.3 μm CO 指数と有効温度との関係。スペクトルデータは Wallace、Hinkle 1997 と Kleinmann, Hall 1986 から採った。表1にはこれらの星のデータを載せた。実線= 17 > CO ≥ 3 データへのフィット。 |
2.2.測光観測測光テクニクについて。VLT/UT4 のアダプティブオプティクス NAOS と赤外カメラ CONICA を使い、 H,Ks 撮像観測を行った。図1には Ks 画像の一部を示した。ここにはこの論文 で扱う星が全て写っている。 有益そうな情報がいろいろ説明してあるが省略。 |
![]() 図5.画像のパワースペクトルと Sheehy et al 2006 のベストフィット パラメタ―化モデルとの比較。 |
3.1.H-R 図の構成前節で得た有効温度と測光結果を用いて、我々は銀河系中心星を H-R 図上に プロットしたい。観測等級を光度に変換するため、まず NaCo システムを Johnson- Cousins-Glass システムに Carpenter 2001 により変換した。次に、Fluks et al 1994 の M-型星 輻射補正, Girardi 2005 の早期型星輻射補正(log g = 2.0, Z = Zo)を適用する。R(GC) = 8 kpc とした。 最後に、測光カラ―、有効温度、それにRieke 1999 による NICMOS/HST の銀河 中心星の測光観測から導いた減光則を用いて、各星を個々に減光補正した。( 固有カラーも CO から決めたのかな?それなら、 あちこちで利用価値がありそう。) 得られた結果は表2に載せた。 3.2.観測 H-R 図銀河中心 H-R 図の特徴 図7には銀河中心 H-R 図を示す。我々のデータは log(L/Lo) = 1.7 付近に明らか なレッドクランプ、それに上部 RGB/早期 AGB を示す。AGB バンプらしい特徴も log (L/Lo) = 2.3 付近にある。下の方には下部 RGB も見える。以前に報告された データに比べると、ここに示す図7のデータにより、銀河中心星形成史のより確かな 解析が可能となる。 |
H-R 図の方が CMD より優れている 測光による研究では光度のモデル化のみに限定される。それは 晩期型巨星のカラー自体に幅があり、銀河中心の減光が大きく変動するからである。 その点は図8を見ると明らかに分かる。図では H-R 図を同じ星の CMD と比べている。 RGB/AGB 星とレッドクランプ星は CMD より、 H-R 図の方がよりはっきりと認識 できる。Te の分散よりも減光変動による H-Ks の 変化の方が大きい。結果として、 広帯域測光データだけだと、K-バンド光度関数のみがモデルと比較する際に信頼 できる量となる。 分光が 5 mag 深くなった利点 この分光観測は従来より 5 mag 深いので、H-R 図中のより星数が多く、 進化モデルもより確実な領域を解析できるようになった。 等時線との比較 図7を見ると、広い年齢幅に渡って等時線が重なっている。図7はまた、年齢と メタル量の縮退が H-R 図のこの領域では避けられないことを示している。 H-R 図のこの領域は、高メタルで中間年齢(< 数Gyr)種族とも、低メタルで 古い(≥ 5 Gyr) 種族とも考えられる。5 Gyr より若い中心星は太陽組成に近い ことが知られている。より古い種族のメタル量分布は分からない。 |
3.3.星形成史の導出様々なシナリオ星形成史の様々なシナリオが考えられる。 (モデル1) 7.5 - 8.5 Gyr 昔の爆発的星形成。 バルジ星形成と似る。Genzel et al 2003 はこのシナリオでできる K 光度関数を中心パーセクの観測と比べた。 (モデル2) 10 Myr - 10 Gyr 昔の間一定の星形成が起きた。 中心から 40 pc 以内の K-LF をベストフィットして Figer et al 2004 が支持した。 (モデル3) 中心 5 pc での AGB, 低温超巨星の H-R 図をフィット Blum et al 2003 が提案した。 表3にはその他のモデルの特徴をまとめた。 モデル色等級図 各モデルシナリオに対して、その結果の合成色等級図をモンテカルロ法 で作成した。その結果を図9に示す。(1)の古代星形成爆発説は観測を 説明できない。(2)の連続星形成モデルは観測された光度、温度の全領 域を覆っているが、低温度星を作り過ぎている。もし、CO 指数を系統的に 小さくすると全体を高温側に移せる。しかし、現在の観測点はヘルツシュプ ラング間隙の赤い側の縁(log Te = 3.7 )をよく再現しており、系統誤差 の存在はありそうにない。 |
低温度星が少ないことを説明するシナリオ 第1の最も単純な案は昔はあまり星が出来なかったと考えるもので次の二案を検討。 (モデル4) 5 Gyr 以前の星形成率が低かった。バージョンA 0.01 - 5 Gyr と 5 - 12 Gyr の夫々で一定の星形成率 (モデル5) 5 Gyr 以前の星形成率が低かった。バージョンB 0.01 - 7 Gyr と 7 - 12 Gyr で一定の星形成率を与えた。 第2の可能性では最も古い星は低メタルと考える。ここまでの シナリオではメタル量を太陽と考えていた。これは多分に、 Ramirez et al 2000 の 5 Gyr より若い星ではほぼ太陽であるという結果、Sadler et al 1996 の 7 - 12 Gyr 以前に形成されたバルジの星が大体太陽であるという結果 に影響されている。従って、古い種族は低メタルという仮定は銀河中心種族 がバルジ種族と全く異なることを意味する。 (モデル6) Z=0.02、0.01 - 5 Gyr, Z=0.008 5 - 12 Gyr で一定星形成。 (モデル7) 0.01 - 12 Gyr で単純なボックスモデル。 スタートは Z = 0.004, 現在は Z = 0.019 とする。 最後、第3の可能性は非正規な初期質量関数により、低温度星が少ない ことを説明する。これまで採用してきたサルピータ IMF は 0.7 Mo - 120 Mo で 考えてきた。最近の研究では、現在の中心星 IMF の傾きがサルピータ IMF より 緩いか、下限質量が高いようである。そのような IMF ならば、古い種族に低 質量の星が欠けていることを説明できる。 (モデル8) 緩い傾きの質量関数 dN/dm = m-0.85 (モデル9) 傾きはサルピータ型 dN/dm = m-2.35 で、下限 2.5 Mo (モデル10) 傾きはサルピータ型 dN/dm = m-2.35 で、下限 1.5 Mo |
3.4.フィット度の定量評価Dolphin の方法HR-図を、[δlog(L/Lo), δlog Te ] = [0.12, 0.018] の小区画 に分ける。区間巾は観測エラーの3倍にした。 尤度計算の方法 省略 3.5.モデルの結果各モデルの検討モデルフィットの結果を表3に示す。図10には観測とモデルとの差をヘス 図で示した。白駒=モデル星数多すぎ。黒駒=モデル星数少なすぎ。初めの 3図、モデル1,2,3、は文献モデルで、全てに斜めの白い筋 が見える。これは観測低温度星が欠けている現象を反映している。モデル4,5 は初期星形成率を下げたモデルであるが、やはり低温度星が多すぎる。しかし モデル5はかなり改善されたフィットを返してきており、棄却しきれない。 初期メタル量が低いモデル6,7ではレッドクランプ/水平枝の位置が青くなり過ぎる。IMF の下限質量を上げたモデル9、10ではレッドクランプが青く、明るくなり過ぎる。 このモデルでは大体、古い低温度星が一つもできない。 傾きが緩いモデル8が最良のフィットを与える。 |
距離による種族変化 分光観測を行った領域を内側の4領域、4″ - 15″, 中間値 11″, と外側領域、13″ - 26″, 中間値 20″ (図1参照)に分けて、 夫々で、モデル5とモデル8によるフィットを行った。得られた結果は全体のフィット と有意な差を示さなかった。つまり、種族組成の勾配は検出できなかった。広帯域 測光に基づく Schodel et al 2007 の結果、低温、小質量星種族の変化は Sgr A* から 3″ - 7″ の範囲内で著しい、と突き合わせると納得できる。 我々の分光観測の範囲はその外側だからである。将来はここで述べた手法で Sgr A* により近い領域での研究が期待される。 フィットのまとめ 簡単なモデルの制約はあるが、緩勾配 IMF モデルは他の低メタル量、低 SFR、高 下限質量モデルよりフィットが良かった。他モデルのパラメタ―をいじって緩勾配 モデルよりよいフィットを得ることは難しいだろう。 |
より複雑なモデルが必要か? 簡単なモデル間の比較では、緩勾配 IMF モデルは他のモデルより優れた フィットを示した。勿論、もっと複雑なシナリオは可能であり、フィットは 向上するであろう。しかし、データセットのサイズ、エラーを考えると それが必要とは思えない。 最近の星形成 IMF も同様に傾きが緩い 我々の銀河系中心の知識からは、緩勾配 IMF での連続的星形成が最も合理的な 解釈と思われる。最近の星形成 IMF も同様に傾きが緩いようである。質量分離 が効くのは 0.01 pc 領域であるので、今回のような 1 - 2 pc 領域では力学効果 で種族の分離が起きることはないだろう。 Blum et al 2003 の結論と違う Blum et al 2003 は我々と非常に近い方法で、中心 5 pc を観測し、超巨星と 明るい AGB 星を用いて星形成史を構築した。そして、彼らの H-R 図を使い、長期間に 渡って変動する星形成史を導き出した。彼らの結論は大部分の星は 5 Gyr より前に 太陽組成で生まれたというものである。我々は太陽組成で 5 Gyr より古い小質量星 の割合はずっと少ないという結論を得た。 Blum et al 2003 との違い:1.視野 数が少ないので、Blum et al 2003 は r < 2.5 pc にあり、ある等級より 明るい星全てを調べた。そのため、彼らは絶対星形成率を決定でき、力学 的に星団質量を割り出せた。一方、我々のサンプルは r < 1 pc の狭い 0.2 pc2 範囲から採られ、相対的星形成率しか出せない。 Blum et al 2003 との違い:2.混み合い SINFONI からスペクトルを抜き出すのは混み合ったフィールドでは難しい。CO 吸収 を測る際に隣接する星の光の混入は避けられない。一方 Blum et al 2003 の測光星は よく孤立していてエラーが小さい。しかも明るい。 |
Blum et al 2003 との違い:3.スペクトル分類 Blum et al 2003 で提案されたスペクトル分類法はここで述べた手法と非常によく 似ている。我々の深い観測は巨星のみを取り出せた点に違いがある。そのため、光度 クラスの決定作業は必要なかった。さらに我々の天体は Blum et al 2003 より暖かい ので CO - Te 関係はタイトである。付け加えると、彼らが導いた超巨星 Te は系統的 に冷た過ぎる可能性がある。というのは、 Levesque et al 2005 が最近赤色超巨星 は以前考えられていたより 400 K 暖かいという結果を出しているからである。 Blum et al 2003 との違い:4.進化モデル 本論文では、レッドクランプ、 RGB, 早期 AGB が観測と比較され、Blum et al 2003 は 超巨星、TP-AGB が比較対象となった。しかし、 Gallart et al 2005 のレビューで指摘 されているように、明るい AGB 星の進化をモデル化する場合、 現在のところ、TP-AGB まで進化経路が達しているのはパドヴァグループのみであるが、 パラメタ―の影響が大きい。したがって、観測と比較するなら、我々のフィットの方が 星形成史を確実に追跡できるはずである。さらに、我々のデータにも AGB バンプや レッドクランプのように進化経路の特徴が入っている。これらの HR-図上の形態学的 特徴は我々の結論に系統的なエラーが含まれていないことを保証する。 Blum et al 2003 との妥協 以上の理由で我々はより確実な結論に達していると考えるが、彼らと矛盾するわけ ではない。まず、彼らと我々とは見ている場所が違う。次にどちらも太陽組成が必要と 考える。勿論、 IMF の勾配や星形成史が連続的か変動型かという問題は残る。現在 GEMINI で進行中の FLAMINGO-2 GC サーベイで半径 1° 4000個の R=20,000 中心星 スペクトルが得られれば、画期的な進歩があるだろう。 |