Exploring Halo Substructure with Giant Stars
     I. Survey Description and Calibration of the Photometric Search Technique


Majewski, Ostheimer, Kunkel, Patterson
2000 AJ 120, 2550 - 2568




 アブストラクト

  DDO51 法による巨星の検出 

 銀河系や他の銀河のハロー構造を赤色巨星で調べるプロジェクトを開始した。 ここでは赤色巨星を分離する方法を述べる。それは、F - K 型星では 5150 A 付近の MgI 三重線 + MgH 吸収線が表面重力に鋭敏な事を利用する。この吸収強度は DDO51 中間帯域フィルターにより測定される。この方法は Geisler が述べた Washington/ DDO51 統合 4 フィルター法を巨星を検出するという目的のみに絞った変形である。 ここで示すようにワシントン T1 - T2 カラーは M - T2 カラーと単調な相関にある。従って、 T1 測光を 省くことにした。
(M-T2, M-DDO51) 二色図の較正 

 (M-T2, M-DDO51) 二色図を較正する為に、NGC3680, NFC2477 の 主系列星、NGC3680, Melotte66, ω Centauri の赤色巨星枝星の観測、 それに Doug Gleisler らのフィールド星、球状星団星、散開星団星のデータ を合わせて使用した。その結果、M-DDO51 カラーは第1依存性は光度で、第2 依存性がメタル量である事が判った。この経験則は大体において Paltoglou,Bell による人工スペクトルの結果と一致する。



 1.イントロ 

 1.1.サーベイ目標 

 1.2.サーベイ方針 

 Johnston 1998 のレビューはハローの副構造を単なる星計数から出すことの 困難さを示している。壊れた衛星銀河からの "star swarms" は密度が低いので 円盤と中間種族II 矮星のカーテンを通して検出するのは難しい。前景の赤い 矮星を取り除く手段が必要である。

 ハロー K 型巨星の探査には広さが必要 
Flynn, Freeman 1993
  SGP 140deg2で 9.5<V <11.0 K 巨星が 1 deg-2 存在。
Ratnanga, Freeman 1985
   60deg2 で 13<V<16 K 巨星が 2 deg-2 存在。

これから V ∼ 21 ( RGC ∼ 250 kpc ) までの巨星期待値は ≤ 10 deg-2 である。このように、巨星探査で統計的に有意な数 を集めるには広範囲の探査が必要である。そのためには巨星を効率よくすくい上 げる基準の確立が必須となる。

 MgH+Mgb三重線の 5150 A 吸収強度 

 MgH+Mgb三重線の 5150 A 吸収強度が表面重力に依存することは古くから 知られていた。この吸収の弱さから巨星を検出するのは普通の方法である。 分光法としては、Friel 1987, Ibata,Irwin 1997, Ratnatunga,Freeman 1983, 1985。 測光法には McClure 1976, Clark, McClure 1979 の 4880 A (DDO48,"continuum")と 5150 A (DDO51,"Mg") 中間帯域フィルター法がある。フィルター法は Yoss, Hartkopf 1979, Hartkopf,Yoss 1982, Yoss et al 1987 で使用された。

  DDO51 フィルター 

 続いて Geisler 1984 は、適切な広帯域バンド、彼の場合はワシントンシステム の M バンド、を併用すれば DDO51 フィルターにより光度分類が可能な事を 示した。実際、Canterna 1976 は G, K 巨星の温度と組成を与えるにはワシントン システムを UBV システムの代わりに使うべきだと主張した。Geisler+2 1991 を見よ。 Geisler の仕事は、広い範囲のメタル量に対し、 (T1-T2, M-DDO51) 面上で G-K 巨星を矮星から効果的に分離出来ることを示した。Geisler は さらに次のような効果を指摘した:
(1). M-DDO51 指数は G-巨星に沿っての表面重力変化に対し
  変動が小さい。
(2). (T1-T2, M-DDO51) 面上で赤化ベクトルは遠方の赤化を受
  けた巨星を近傍の赤化の小さい矮星から引き離す効果を持つ。
(3). M-DDO51 指数のメタル量による変動は2次的な大きさで、
  低メタル巨星はなおさら小さい Mg 吸収を示す方向に働く。
  この効果は Geisler システムを低メタル種族 II 巨星の選別
  に使う際に有効に働く。

図1.メタル量とカラーが同じくらいのK-型巨星(上)と矮星(下)の比較。 MgH+Mgb 三重線の光度クラス効果に注意。斜線= DDO51 フィルターの位置。
MgHλ4850A と NaD線も強い重力効果を示す事に注意。



Paltoglou,Bell 1994 のモデル指数 

 Paltoglou,Bell 1994 はモデルスペクトルのグリッド(表面重力、表面重力、 組成)を用い、Geisler システムが表面重力を分離することを示した。 彼らの仕事は重力と組成が M-DDO51 指数にどう影響するかを良く示している。 それによると、重力はカラーより効き目が大きい、しかし組成の効果が2次的に ある。図2を見るとその効果が良く分かる。

  Paltoglou,Bell 1994 の欠陥 
 Lejeune, Buser 1996 は Paltoglou,Bell 1994 で使われたフィルターバンドが ワシントンフィルターと少し異なり、また恒星進化モデルも少し古いことを指摘した。 その結果、3.6節で論じるがこのモデルを観測と比較する際に少し注意がいる。 ただし、その修正量は小さい。

 その他の効果 

(1)[Fe/H] ≤ -2.5 の準矮星では Mg 吸収線が弱くなり、巨星と似てくる。 円盤内の主系列星のほぼ全てとハロー矮星の大部分ももっと高メタルなので巨星 と混同される虞はない。
(2)巨星枝にある星では M-DDO51 指数はメタル量の決定に使える。 T1-T2=0.6 で、∂(M-T2)/∂[Fe/H] ∼ 0.13 である。


図2.M-DDO551 指数の変化。線=巨星。破線=矮星。数字は [Fe/H]。 (左)横軸=T1-T2 (右)横軸= M-T2

 (1)M-DDO51 のメタル量効果 
 M-DDO51 のメタル量効果は暗い巨星をまずより分けるのに有用である。例えば、 M-DDO51 に基づく組成分布で、ある組成で超過が見られたらそれは単一組成の 母天体からの潮汐テールの信号である。実際、この様な超過がカリーナ(次論文) で見られる。

 (2)準矮星混入の問題 
  Reid,Majewsli 1993 の暫定モデルでは、 1≤M-T2≤2 区間 にある IPII/thick-disk 星の数は、北銀極 V=20 まで、で 200 個/平方度である。 Beers 1999, Norris 1999 によると、この半数が矮星で、その 8 % くらいが [Fe/H] ≤ -2.5 であろう。これは 8 個/平方度にあたる。これは高銀緯で条件 の良い場合である事は注意が必要である。一方では [Fe/H] ≤ -2 でメタル分布 関数が急低下することを考えると、巨星選択条件をもう少し厳しくすれば準矮星 の混入をほぼゼロにできるかもしれない。例えば、[Fe/H] ≤ -1 の巨星を 選ぶなら、[Fe/H] ≤ -3 の準矮星を考えればよいのでその場合は 2 個/平方度 となる。それらはその後の分光観測で同定可能である。また、準矮星はそれ自身 重要な研究対象でもある。

M, T2, DDO51 3フィルター測光シス テム
 スピードと情報量を両立させるため、3フィルター測光システムを
採用した。 それにより、矮星と巨星の分離、表面温度、さらに巨星メタル量の大雑把な 推定を達成する。 Geisler 1984 によると、T1-T2 は 表面温度、 M-DDO51 は光度を表わす。しかし、M-T2 は T1-T2 と単調に相関するのでこれを温度指数として 使う事ができる。こうして、フィルターを一個節約でき観測時間を短縮できる。 この論文では (M-T2, M-DDO51) 面上で巨星と矮星を分離する。

 ワシントン C フィルター 
 ワシントン C フィルターは巨星の測光メタル量の為に特別に設計された ことを注意しておく。このフィルターの使用は我々が観測する巨星の [Fe/H] 決定には M-DDO51 のみより精度を上げることは確実である。しかし、この フィルターの観測は M フィルターの 3 倍も時間がかかる。このため、Cフィ ルターの使用は見送ることにした。

 分光観測 
 その代わり、分光の追観測を行う。この観測は巨星分類が正しいかどうかを 確認すると共に、視線速度を測定できる。また、メタル量をより正確に決定 出来る。我々が使用する典型的なスペクトルの例を図1に示した。



 1.3.観測フィールド選択の方針 

 潮汐テール 
 衛星銀河からは大量の星が剥がされつつある。その潮汐テールを探す観測を 開始し、すでにマゼラン雲(Majewski 1999), カリーナ(第2論文)で報告済み である。このサーベイからは衛星銀河のハローと銀河自体の広がりについて知る事 ができると期待している。潮汐テールは全天を周回するほど長い可能性がある。 従ってテールを追跡する観測には大量の観測時間が必要である。この方法と、 戦略的に配置されたペンシルビーム型観測グリッドとどちらが有効かを比較する 必要がある。

 未知のデブリの発見 
 既に中心核が消滅した潮汐デブリの存在も重要である。ハロー形成史の観点からは 破壊された天体がハローにどのくらい貢献しているかは興味のある問題である。


 スムーズなハロー背景成分。
 スムーズなハロー背景成分は、副構造の目立ちやすさを決めると共に、ハロー主成分 として体系的なサーベイを必要としている。

 Grid Giant Star Survey (GGSS) 計画 
 これら全ての問題を考えて、我々は Grid Giant Star Survey (GGSS) 計画に 乗り出した。この計画は 5°.6 間隔の 1303 点で 0.4 - 0.6 平方度の深い 観測を行い、銀河系構造を探るものである。

この計画は Morrison et al 2000 のスパゲッティサーベイ観測と似ている。スパゲッティサーベイは C, M, DDO51, T2 測光により巨星と水平枝星を同定し、分光観測でさらに調べる というものである。



 2.測光変換 

 2.1.T1-T2 から M-T2 へ 

 図3にはワシントンシステムの整約論文に現れた様々なメタル量、光度クラスの 星を集めた。赤化未補正に拘らず関係は極めてタイトである。従って、 G-K 型星に 対し、 M-T2 カラーは Teff の指数として T1-T2 の代わりになる。 Paltoglou, Bell 1994 の図2b には M, T2, DDO51 システムでの巨星・矮星分離がモデル 測光により示されている。 この論文ではそれを観測により示す。

 2.2.( M, T2 ) からカズンズ ( V, I ) へ 

 この変換は既に得られた大量のデータとの比較で有用である。Harris, Canterna 1979 はワシントン測光と V 測光を行った。T2 = Ic と仮定して変換を求める。 この仮定は、二つの透過曲線が非常に似ていて、同じ Schott RG-9 フィルタ+ Ga-As 光電子倍増管で較正され、有効波長も 7885 A で同じくらいであることから 正当化される。あとグダグダ略。

 Harris, Canterna 1979 の 79 星から、

  (V-I)c = (Vc-T2) = -0.006 + 0.800(M-T2)

  Vc = M -0.006 - 0.200(M-T2)

を得た。

 2.3.減光則 

 有効波長から以下の式を得た。

  E(M-T2) = 1.60 E(B-V)

  E(M-DDO51) = 0.06 E(B-V)

  A(M) = 3.43 E(B-V)



図3.M-T2 対 T1-T2 面上で論文中の 星をプロットした。シンボルの意味は図4と同じ。上側の矢印=Canterna 1976 の 赤化ベクトル。下側= 2.3 節で求めた赤化ベクトル。実線=4次式のフィット。 データは巾広いメタル量を含み、赤化補正を行っていないがかなりタイトな相関を 示す。



 3.マグネシウム指数の較正 

 3.1.Geisler 1984 のフィールド星 

 図4には Geisler 1984, Geisler et al 1991 からの、光度クラス、赤化 が揃った測光データをプロットした。この図は Geisler 1984 図3と同じである。 図を見ると分かるように、超巨星と巨星を分離する力は弱いが、矮星と光度 クラス I-III ははっきり分かれる。これはモデルスペクトルの 図2b からも 察せられた事だ。 また、 M - T2 > 1 では準巨星と矮星も良く分かれる。。

 3.2.星団の観測 

 観測は Swope 1m 望遠鏡で 1997 年に行われた。標準星には SA98, SA110, NGC3680 が使われた。

 3.3.NGC 3680

 メタル量 
 中間年齢星団 NGC 3680 の色等級図は図5に示されている。Friel.Janes 1993 はメタル量を [Fe/H] = -0.16 と定めた。しかし、色等級図解析から Nordstrom, Andersen,Andersen 1997 は [Fe/H] = +0.11、 年齢 1.45±0.3 Gyr とした。

 混入 
 図5の色等級図を見るとかなりの混入が判る。特に (M-T2)o=1.0 付近 で著しい。そこは古い円盤種族フィールド星のターンオフ [(M-T2)o=0.85] で、 NGC 3680 の主系列にかなり重なる。我々の測光カタログを Kozhurina- Platais et al 1995 の固有運動カタログおよび Nordstrom, Andersen,Andersen 1997 の視線速度カタログと相互参照した。その結果、多くの混入星から NGC 3680 メンバー を選り出す事が出来た。
 図6a には Kozhurina-Platais et al 1995 で固有運動を測 り、固有運動空間メンバーシップ結合確率が Pμ,r > 15% の ものを表示した。この値が低いのは Kozhurina-Platais et al 1995 の選択基準を まね、色等級図の暗い等級部分の様子を保存するためである。しかし、この 甘い基準は多分フィールド星の主系列下部の混入をもたらした。そこで、

図4.(M-DDO51) 対 (M-T2) 面に Geisler 1984 のフィールド星 と Geisler et al 1991 の太陽近傍星をプロット。この面では超巨星と巨星を 区別する能力はないが、矮星と光度クラス I-III は良く分かれる。




 固有運動、視線速度基準 
 そこで、図6a の大きい黒丸では、より厳しい Pμ,r > 75% が採用された。図6b では固有運動採択サンプル に対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図を示した。図6 c, d では Nordstrom, Andersen,Andersen 1997 の視線速度基準で選ばれたサンプルの 色等級図と二色図を示した。



図5.(左)散開星団 NGC 3680 周辺 1815 星の色等級図。E(B-V)=0.046 仮定。 (右)測光エラー。



図6.(a) 我々のカタログ星に Kozhurina-Platais et al 1995 の固有運動選択基準を 併用した結果。小さい黒丸は Pμ,r > 15%、 大きい黒丸は Pμ,r > 75%。
(b) 同じサンプルに対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。
(c) Nordstrom et al 1997 の視線速度メンバーシップで選り出した星の (M-T2, M) 色等級図。
(d) 視線速度メンバーに対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。



 3.4.NGC 2477 

 色等級図 

 豊かな星団 NGC 2477 は主系列下部を目的にしたため、巨星候補はサチって しまった。図7には周辺 11,300 星の(M, M-T2)o 色等級図を示す。 以前の研究からかなりの微分減光 E(B-V)=0.2-0.4 が知られているが、ここでは E(B-V)=0.33 を採用した。

 星団パラメター 

 Kassis et al 1997 は等時線フィットから、 [Fe/H] = -0.05±0.11, t = 1+0.3-0.2 Gyr を得た。


 メンバーシップ 

 多くの研究がある割にはメンバー同定は行われてこなかった。主系列をもっと はっきりさせる目的で、中心 7'.8 (図8a, b)と中心 3'.9 (図8c, d) に 絞った図を作った。眼視により主系列沿いに赤化の小さそうな星を選んで 2色図に載せた。予想されるようにきれいな矮星系列が二色図上に現れた。 多くの巨星が小さな点として見えることに注意。



図7.(左)散開星団 NGC 2477 周辺 11,300 星の色等級図。E(B-V)=0.33 仮定だが 図をみると E(B-V)=0.2-0.4 の変動が認められる。主系列から上方への分散は フィールド内の微分赤化によるものだろう。 (右)測光エラー。



図8.(a) 中心 7'.8 半径に制限した時の色等級図。 大きい黒丸は「眼視」で明らかに赤化の小さい星を選んだサンプル。
(b) 同じサンプルに対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。
(c) 中心 3'.9 半径に制限した星の(M-T2, M) 色等級図。
(d) (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。



 3.5.Melotte 66 

 星団パラメター 

 Melotte 66 は古い散開星団の典型と看做されてきた。Twarog et al 1995 は [Fe/H] = -0.53, t = 4.5 Gyr, Kassis et al 1997 は [Fe/H] = -0.51, t = 4 Gyr を得た。Twarog et al 1995 は E(B-V) = 0.16 とした。

 二重準巨星枝と連星 

 図9には Melotte 66 の (M-T2, M) 色等級図を示す。かなりの フィールド星混入があるが、 MSTO と RC は明瞭に示されている。視線速度 によるメンバーシップ同定が得られたサンプルを図10a, b に示す。明瞭な 二重準巨星枝が認められる。図10b の二色図上で位置がおかしい星を 黒丸で、帰属がはっきりしている星を白丸で示した。黒丸は二重色等級図の上 の方に属しているようだ。問題星は DAOPHOT χパラメターが大きい。
 中心 5' 以内の色等級図と二色図 

 図10 c, d では中心から 5' 以内に絞って、視線速度からメンバーシップ を確認された星をプロットした。ここでも黒丸は二色図上の問題星、白丸は 正常星である。図では赤色巨星枝からレッドクランプを経て連星系列と孤立 星系列がそれぞれの主系列につながる所まで追跡できた。図中他の 5' 以内星 は小さい点で表わされている。図10dでは巨星が Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ラインに乗っているのが判る。予想されるように、準巨星は カラーが青く矮星と融合している。また、この星団でも二色図上の「問題星」 が色等級図の上の連星系列に乗っていることを注意する。



図9.(左)散開星団 Melotte 66 周辺 2643 星の色等級図。E(B-V)=0.16 仮定。 (右)測光エラー。



図10.(a) Melotte 66 視線速度メンバーの色等級図。多数の連星を含むための 二重準巨星枝が見える。 大きい黒丸は (b)で巨星ラインから外れた箇所にある星。 これらの多くが 上の準巨星枝にあることから逸脱の原因は連星にあるのではないかと考えられる。
(b) 同じサンプルに対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。大きい黒丸は巨星ラインから外れた箇所にある星。
(c) 中心 5' 半径に制限した星の(M-T2, M) 色等級図。 Kassis et al 1997 の孤立星と連星の等時線を参照して、それぞれの巨星・準巨星枝 からサンプルを選んだ。連星枝の星が二色図上でおかしな位置に来るようだ。
(d) (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 Paltoglou, Bell 1994 の巨星(実線)ライン と矮星(破線)ラインも示す。



 3.6.ω Centauri 

 ω Centauri 星はメタル量が太陽から -2 以下まで広がっている。この為 距離の違いによる系統誤差なしにメタル量効果を較正する絶好の天体である。 我々のデータは8枚のモザイクから成る。図11には色等級図を示した。 採用した赤化は E(B-V)=0.15 である。この図に関し、
(1)図は単に表示用なのでモザイク境界の重なりの多重検出の整理はなし。
(2)サチュレーションのため明るい星が落ちている。
図11で著しい特徴は数本の RGB が見えることでこれは別論文で扱う。

 分光サンプル 
 Suntzef, Kraft 1996 の分光サンプルは固有運動と視線速度に基づき、 343 星を選んだ。それらは二つの等級区間、赤色巨星と準巨星、に分かれている。 図12a には色等級図、b には二色図を示す。図12b を見ると、M-DDO51 指数は 矮星・巨星の分離ほど大きくはないが(縦軸のスケールに注意)、メタル量変化を 反映することが判る。


 半解析表示 

 図11には RGB がはっきり表れていて、ワシントンシステムでの測光距離を 求める基準になる。それらは2次式でフィットされた。計数は表にして載せた。 サンプル数が少ないので、観測値と Paltoglou, Bell 1994 の合成スペクトルカラーをマッチさせる試みを行い、変換式を得た。



図11.(左)散開星団 ω Centauri 周辺 100,000 星の色等級図。幾つかの 非常に赤くて明るい星は短時間積分でもサチって、カタログから省かれた。 (右)測光エラー。9モザイクでチップ毎に誤差が異なるため、縦に厚い。



図12.(a) ω Centauri 視線速度及び視線速度メンバーの色等級図。視線速度は 二つの等級帯で測られたので色等級図も二つに分かれている。記号はメタル量区分を 表わす。実線は各メタル量グループに対する2次式フィット。
(b) 同じサンプル内の巨星に対する (M-T2) - (M-DDO51)o 二色図。 破線=各メタル量巨星グループに対する2次式フィットも示す。 実線= Paltoglou, Bell 1994 の巨星ライン



 3.7.以前の結果  

 Geisler グループ 

 Geisler グループは10年以上に渡り、球状星団、散開星団の星を 用いてワシントンシステムの較正を行ってきた。 しかし、DDO51 観測 は数が少なく精度の低いものも含まれる。図13b では二色図上にそれら のデータをまとめた。

 の図13a,bの分散の意味 

 しかし、同じメタル量区間内での図13a,bの分散は図12に示す ω Cen の場合より大きい。これは部分的にはサンプル天体が非一様で かつ観測手段も様々であるためであろう。また、散開星団を導入したことに よる年齢の広がりの影響は大きいだろう。これに対し、 Paltoglou, Bell 1994 は球状星団を対象とし、 14 Gyr という一定年齢に限定されている。
 図13の較正は行わない。 

 データ源の非一様性という問題を抱えているため、我々はカラーを絶対等級に 変換する際、図12で ω Cen 星に対し行ったようには図13は用いない。 図13を示した目的は、(M-T2, M-DDO51) 二色図でメタル量の粗い推定 が可能であるという我々の主張を裏付けるためである。表1の較正を高メタルで若い 年齢の星に拡張するのはよいことだが、現在我々が考えているプロジェクトでは 高メタル散開星団のような巨星に出くわす可能性は低い。したがって、この問題は 将来必要が生じた時に考えることにしよう。

 C フィルター 

 C フィルターを導入すればより正確なメタル量が得られるかも知れない。 しかし、観測時間の節約と、3フィルターでどこまで可能かを見るためあえて 使わない。



図13.Geisler グループによる様々な球状星団と散開星団の測光データ。 (左)色等級図。等メタル量線は図12からのもの。
(しかし、年齢効果はどうなるのか?)
(右)二色図。直線の枠は図14から。


 3.8.巨星・矮星の分離 

 ポスト主系列はひと塊りになる。 

 この論文で議論した矮星と巨星の全てを図14の二色図上にプロットした。 主系列を離れた 星はクラス "IV-V" から "I" に至るまで全てひとまとまりになっている。 Geisler 1984 は特に M-DDO51 指数が表面重力の異なる巨星に対してどう 反応するかを研究し、表面温度とメタル量が同じで表面重力が異なる log g を持つ巨星間ではこの指数が殆ど変化しないことを見出している。

 

 巨星と矮星は (M-T2) の広い範囲でよく分離している。 (M-T2) ≈ 0.7 - 0.9 の主系列から離れたばかりの青い準 巨星と、(M-T2) ≈ 2.3 の非常に赤い晩期 K 型より先で のみ矮星とオーバーラップする。直線の枠は大体の境界線を引いたもの。


 結論 

 この様に、1mクラス望遠鏡と CCD があれば、数百 kpc の巨星サンプルを完全に得ることができる。我々は、MWのハロー、局所群 銀河の周辺を小さな望遠鏡で探るつもりである。

図14.この論文で議論した矮星と巨星の全てのまとめ。バツ=巨星。 出所は、NGC 3680、ω Cen の赤色巨星、 Melotte 66 の赤色巨星 と準巨星、Geisler et al 1991 のフィールド太陽組成巨星、Geisler 1984 からのクラス "IV-V" から "I" までの星。
黒点=矮星。出所は、Geisler 1984 クラス "V" と "V-VI"、我々の散開星団 NGC 3680, NGC 2477 の主系列である。
(M-T2) の大部分の領域で全てのメタル量に対して、巨星は矮星 から分離している。直線の枠は大体の境界線を引いたもの。矮星領域に はみ出た「非矮星」は Geisler の準巨星、Melotte 66 準巨星、Melotte 66 の特異性グループのみである。