On the Rotaion of Gould's Belt


Lindblad
2000 AA 363, 154 - 158




 アブストラクト

 グールドベルトの特徴は、系のひらぺったさ、銀河面に対する 20° の 傾き、膨張である。これはその 30 - 40 Myr という年齢と一致させる必要が ある。ここで提案するモデルは傾いた回転と膨張する円盤からなる。モデルは 線形近似で解かれ、観測に合うパラメタ―が決められた。  その結果、つじつまの合ったパラメタ―が得られた。しかし、非線形のシ ミュレイションで現実的なモデルを作る必要がある。そこには自己重力と 継続的な星形成も含まれる必要がある。


 1.イントロダクション 

 グールドベルトの特性 

(i) 銀河面に対し 20° の傾き。ノード線はほぼ銀河回転の向き。
(ii) 銀河面からの高さで判断した銀河系動径方向の広がりは中心方向 300 pc, 反中心方向 600 pc である。回転方向の広がりは決定困難である。
(iii) その運動は銀河中心周りの回転運動とは明らかに異なる。特に K 項 が大きいことは系の膨張を示唆する。
(iv) 特徴的な運動を示すのは 30 - 40 Myr の星である。
近傍ガス 

 系にはかなりの量のガスとダストが含まれる。近傍の星間物質とグールドベルト との関係はその空間分布と運動から示唆される。暗いガンマ線天体がグールドベルト に付随しているという観測がある。 Poppel 1997 がレビューを与えている。





図1.30 Myr より若い星で、銀河面高度 500 pc 以内の星の分布。X-軸は銀河 系反中心方向、Y-軸は銀河回転方向。数字はパーセクである。長方形の箱= Lindblad 1997 がグールドベルトの傾きを決める時に用いたサンプル領域。楕円= Olano 1982 による HI の膨張リング。小さい丸=近傍のアソシエイション。

 2.観測データ 

 グールドベルトの傾きと大きさ 

 グールドベルトの傾きと大きさは系をどう同定するかに依存する。 Torra et al 2000 は銀河面に対し 20° 傾き、ノード線が銀経 105/285 方向とした。図1には 30 Myr より若い星の分布を示した。 サンプルは Lindblad 1997 のものである。

 運動 

  Lindblad 1997 はグールドベルトの運動を調べた。 Torra et al 2000 は年齢群別にオールト の定数 A, B, C, K を求めた。 Torra et al 1997 によるその結果 を表1に示す。これらの値を Kerr, Lynden-Bell 1986 が一般銀河系回転に 対して求めた A = 14.4, B = -12.0, C = K = 0 km/s/kpc と比較する。 表1の若い年齢群のオールト定数は上の値と大きく異なる。しかし、90 Myr では正常値に戻る。
HI ガス 

 近傍の HI ガスの運動は  

  Lindblad 1973 により調べられた。Sclober 1976 は天空上の HI 分布を調べ、銀緯方向の 分布が広がってはいるがその平均線はグールドベルトに従っていることを示した。

 モデル 

  Lindblad 1973, Grape 1975 は膨張リングモデルを唱えた。それは星の運動データに基づいて いたが、 Olano 1982 はガスの運動モデルを作り、膨張年齢を 30 Myr とした。このモデルではベルト内の HI ガスの総質量は 1.2 106 Mo である。



表1.年齢群ごとのオールト定数。

 3.傾いた回転膨張リングの運動 

 3.1.平面運動の基礎方程式 

 3.2.面と垂直方向の速度勾配 

 3.3.モデルパラメタ― 


表2.回転膨張円盤のパラメタ―


 4.議論 

 微分歳差運動 

 我々はグールドベルトを若い星から成る、平らな回転膨張系と看做す。 回転と膨張は初期の角運動量と系自身の重力により支配される。回転は 十分に大きく、銀河面垂直方向の重力による微分歳差運動が平らな系を ゆがめないようにしておく必要がある。

 ワープ 

 Bahcall 1984 による円盤に垂直方向の力を適用して、モデル Nr.1 では ノード線の歳差運動として 12°/Myr を得た。微分歳差は 60°/60 Myr である。この結果系のワープが生じるが検出は困難である。

 リングの中心 

 Olano 1982 はグールドベルトの中心= HI リングの中心までの距離を 166 pc とした。その場合、太陽位置では回転方向速度 4.0 km/s, 膨張速度 3.3 km/s となる。