The Kinetics and Nature of Gould's Belt - A 30 Myr Old Star Forming Region 


Lindblad, Palous, Loden, Lindengren
1997 ESASymp ESA-SP 402, 507 - 512




 アブストラクト

 グールドベルトのヒッパルコス星 
 ヒッパルコス非超巨星でストレームグレンの早期グループの光度を持つ 2440 星の、温度、年齢、距離を決めた。 よく決まった年齢と視線速度を持ち、 30 Myr より若い 241 星は銀河面に対し 20° 傾いた面 = グールドベルト に属する。この系には多数の 700 pc 以内の明るいアソシエイションが支配的 で、真っ先に挙げられるのはオリオン、サソリーケンタウルスアソシエイション である。

 銀河系回転 
 グールドベルトの外にある年齢 30 Myr 以下の星から銀河系回転パラメタ― を導いた。それから平坦回転曲線と太陽距離で Ω = 25.3 km/s/kpc を 得た。
グールドベルトの運動 
 グールドベルトの運動はその外側の星と大きく異なる。僅かな外向きの運動 以外に、この系は銀河回転と同じ方向に回っていて、かつ膨張もしている。 その結果見かけ上の銀河回転は B = -21, K = +12 km/s/kpc である。

 回転膨張運動 
 この系は 30 - 40 Myr 昔に、おそらく渦状腕で、生まれ、角運動量が大き すぎて系を重力的に束縛することが出来なかった。回転はこの傾いた系が平たい 理由を説明する。


 1.イントロダクション 

 Plaskett 1930, Blaauw 1946 は太陽から 500 pc 以内の早期型星の空間分布 と運動を研究し、より遠方の星と異なる性質を持つことを見出した。この若い星 の系は銀河面に対し 20° 傾き、グールドベルトと呼ばれる。  グールドベルトの運動の研究は、 Westin 1985, Mestres 1996, Torra et al 1997 が行った。 Lindblad et al 1973, Sandqvist et al 1988 は星間水素と ダストの近傍成分を同定した。グールドベルトの運動のズレの説明は互いに大 きく異なっている。


 2.選択と較正 

 ヒッパルコスカタログから、ストレームグレン u, v, b, y, Hβ 測光 が揃い、Stromgren 1966 の "早期型" の星を選んだ。赤化補正とMv を用いて、 距離を決めた。Maeder, Meynet 1988 の星モデルを使い年齢を決めた。 赤化補正に誤差が多いので超巨星は除いた。また、連星、固有運動が 2 mas/yr のもの、視線速度誤差が 20 km/s 以上のものも外した。こうしてサンプル数 は 1222 星になった。

 3.グールドベルト天体の選択 

 この運動学研究ではグールドベルト天体を、純粋にその特異な空間分布のみ に基づいて選びたい。図1には 30 Myr より若い星の分布を示す。 この図では傾いたグールドベルト天体が |X| < 500 pc に見える。 試行錯誤の後で次の基準を設けた。

年齢 30 Myr 以下。
-450 - Y < X < 600 - Y, -450 + Y < X < 990 + Y 
太陽からの距離 500 pc 以下

図2の X-Y 分布では、700 pc 以内の系は多数の明るいアソシエイションが 支配的である。とくにサソリーケンタウルス、オリオンが目立つ。図3には グールドベルト天体の天空上分布を示す。



図1.年齢 30 Myr 以下のサンプル星 593 個の空間分布。太陽は原点。X 軸 は銀河系反中心方向。


図2.年齢 30 Myr 以下で、Z < 500 pc のサンプル星 560 個の空間分布。 太陽は原点。X 軸は銀河系反中心方向。Y 軸は銀河回転の方向。長方形の箱 はグールドベルト領域の境界。




図3.グールドベルトに属する 249 星の銀河座標分布。

 4.条件方程式 

 U = X-軸方向(反中心方向)速度。V = 銀河回転方向速度。 W = 銀河面に 垂直方向速度。太陽周辺の速度場を A, B, C で表現する。

Vr=Uo cosl cosb - Vo sinl cosb - Wo sinb +
    r cos2b (K + A sin2l + C cos2l)     (1)

4.74 r μl cosb = -Uo sinl - Vo cosl +
    r cosb (B + A cos2l - C sin2l)     (2)

4.74 r μb cosb = -Uo cosl sinb + Vo sinl sinb - Wo cosb
    - r sinb cosb (K + A sin2l + C cos2l)     (3)
ここに、
A = - 1 ( ∂U + ∂V )
2 ∂Y ∂X


B = + 1 ( ∂U - ∂V )
2 ∂X ∂Y


C = + 1 ( ∂U - ∂V )
2 ∂Y ∂X


K = + 1 ( ∂U + ∂V )
2 ∂X ∂Y




 5.グールドベルト外側の若い星 

 グループ分け 

 銀河面上、グールドベルト外側の若い星の運動を調べるため、図2の長方形の 外にあり、銀河面高度 500 pc 以内、太陽から銀河面投影距離 2 kpc 以内の星 を選んだ。表1は式(1), (2), (3) の結果である。解析では星を3グループに 分けた。(1)30 Myr 以下。(2) 30 - 60 Myr。(3) 全ての年齢。最後のグル ープの中には 30 Myr より若い星が 142 個、30 - 60 Myr が 55 個、60 Myr より古い星が 94 個ある。

 銀河回転 

 グループ間の差は小さい。最も若いグループは古いグループより、数 km/s 内側向きの平均速度を持つ。30 Myr より若い星は局所的に平坦な回転速度 を持つ。太陽距離での回転速度は Σ = 25.3 km/s/kpc である。

表1.グールドベルトの外の銀河面上若い星による銀河回転パラメタ―。


 6.グールドベルト 


表2.グールドベルト領域の若い星の銀河回転。

 グールドベルトの速度場 

 グールドベルト内の星に対する方程式 (1), (2), (3) の解は領域が小さい ので難しい。式 (1) と (2) は別々に解き、(1) - (3) は一緒に解いた結果を 表2に載せた。視線速度エラーが 2 km/s を越えた星は棄てた。目立つ特徴 は B が負値であること、Kが正であることである。これは Westin 1985 の 結果とも一致する。しかし、固有運動と視線速度の双方を満足させる解を 見つけることは難しい。この小さな領域内で既に非線形効果が効いているらしい。

 アソシエイション 

 グールドベルトは 第3と第4象限に属するアソシエイションが支配的である。 それらの位置と速度を図4に示す。これら9つのアソシエイションを使った 銀河回転解を表2の最後の列に示す。図4は時計周りの回転を示唆する。これが B の大きな負値を説明する。一方膨張は正の K 値を説明する。

図4.点丸=9つのアソシエイションの空間分布。バツ=その平均位置。 ベクトル=非回転座標系での平均運動に対する相対的速度。


 7.議論 

 星の運動 

 グールドベルト内の星の運動の整合する説明はまだない。系は銀河中心から 離れる方向に 5 km/s で動き、12 km/s/kpc で膨張し、 B = -21 km/s/kpc で回転するが、 視線速度と固有運動からは A と C の整合した値は得られない。 図5には 30 Myr より若い星の銀河面に投影した速度を示した。 速度ベクトルが連続的に向きを変えていく様子から、オリオンとサソリー ケンタウルスアソシエイション以外に、シグナスアソシエイションも運動学 的解析に加えるべきであることを示す。

 初期角運動量の必要性 

 グールドベルトの起源に関する標準的な仮説はこうである:渦状腕の中で 10 6 Mo 程度の分子雲が収縮して第1世代の星を 30 - 40 Myr 以前に生み出した。これ等の星は消え去ったが、超新星や星風により掃き寄せ られた雲の中で第2世代の星が生まれた。しかし、それだけだと B = 0 と なってしまう。初期の雲が重力平衡になり得ないほどの大きさの角運動量を 有している必要がある。この大きな回転は系が平たいことの説明を与える。

図5.30 Myr より若い星 361 個の太陽に対する相対速度の銀河面投影図。 右上隅の矢印= 20 km/s