A Cluster of He I Emission-Line Stars in the Galactic Center


Krabbe, Genzel, Drapatz, Rotaciuc
1991 ApJ 382, L19 - L22




 アブストラクト

 銀河中心の分解能 1″.9/300 km s-1 He I n=21P → n=21S 画像分光の結果を報告する。1ダースほどの幅広な He I 輝線星の集団が見つかった。その大部分の位置は広帯域 2 μm 光源と一致する。 IRS 16 とその幅広輝線領域はおそらく中心の直径 1 pc He I 星集団の中心核部分 であろう。He I 星は激しい質量放出を行っている青色超巨星であろう。  He I/H I(Brγ,Br;alpha;) ライン比が高いことからこれらの星はポスト主系列期 にあると考えられる。質量放出率は (2-3) × 10-5 - 10-5 Mo/yr、 放出速度は 500 - 1000 km/s である。He I 星は大質量星星団の構成員であり、 銀河中心 数 pc 領域からの全光度、ライマン連続光、かなり低い励起度を説明 できる。今回のデータから過去数百万年以内に大きな星形成が銀河中心数パーセク内 で起きたことが確実となった。


 1.イントロ 

 銀河系中心数パーセクからの 107 Lo という遠赤外光 Becklin, Gatley, Werner 1982 の源はかなり低い (Teff ≤ 35,000 K) 温度の放射である。それには次の 二つの説明が考えられる。
(1)星形成説。数百万年前の星形成で数十の大質量星が生まれ、これら の星が現在のエネルギー源である。
(2)中心エンジン説。大質量ブラックホールの周りの降着円盤。
この二つを調べるため、 He I 2 μm 再結合線画像を撮った。

 2.観測 

 MPE 1 - 5 μm Fabry-Perot imaging spectrometer FAST + 3.9 m AAT
FAST は 58×62 InSb アレイで、FP の分解能は K で 1000 である。画像 スケールは AAT で 0″.95 + 1″.2 シーイング → 空間分解能 1″.9。 結果を下に示す。Ro = 8 kpc を採用したので、1″=0.039 pc. A(2.06μm)=3.4 (Wade et al 1987) 採用。




図1.銀河中心 40″ マップ。左上: 2.06 μm 連続光。他:5 速度毎の He I 輝線。





図2.銀河中心 40″ カラーマップ。左上: 2.06 μm 連続光。他:5 速度毎の He I 輝線。





図3. He I 輝線星位置の図示。輝線プロファイルも示す。

 3.結果 

 2種の He I 天体 
(1)比較的暗い。広がった天体で、 vLSR=[-300km/s, 0km/s] でのみ見える。 位置と速度は Sgr A West 「ミニスパイラル」 Lo, Claussen 1982 と相関が強い。
(2)明るく、コンパクトでライン巾(Δv = 1200 - 2000 km/s)は広い。輝線 中心は赤方に偏移している。

 He I 星 
 IRS 16 天体を含めて、Sgr A* から 20″(0.8pc) 以内に 12 個の He I 星を発見した。そのうち 10 個は 2 μm 連続光天体である。

 AF 星 
 Forrest et al 1987, Allen et al 1990 が発見した最も明るい He I 星は 彼らの名を取って AF 星と名付けられた。この星は IRS 16C の 12″ 南西にある。

 広がった放射と He I 星 
 幾つかの He I 星 ( IRS 1W, 2/13, 9)は 星雲の明るいコブの近くまたは同じ 位置で見つかった。これは Rieke たちが主張していた、それらの星が星雲の エネルギー源であるという考えを支持している。

 IRS 15NE, IRS 11 
 これらは He I 輝線と共に CO 2.3 μm バンドヘッドも見える。ただし、 輝線の検出は確実でなく、再確認が必要である。

 Sgr A*
 Sgr A* に付随する輝線天体は見出されなかった。
He+/H+ 比 
 He I/Brγ = 0.6(星雲)、≥ 2 である。
FHe I 2μm/FBrγ = 0.7{[n(He+)/n(H+)]/0.1} として
(He+/H+) ≤ 0.04 (星雲)、 ≥ 0.3(He I 星) である。つまり、 He I 星では He は ほぼ完全に電離しており、He 量が多い。

IRS 16 集団 
 IRS 16 集団の星の特性は他の He I 星とよく似ている。唯一の違いは IRS 16 の 位置が星団の中心で、 Sgr A* から数秒角の近さにあることである。またその He I 輝線は 3″ の大きさに広がっている。高空間分解能の近赤外撮像によると IRS 16 は 5-6 個の星に分解される。おそらく IRS 16 は直径 0.8 pc の大きさの He I 星団の中心集団であろう。

 He I 星の性質 
 Allen et al 1990 は AF 星を Ofpe/WN9 型星とした。他の He I 星のライン強度比、 ライン巾も Ofpe/WN9 星と似ている。Ofpe/WN9 星の進化段階はまだ分かっていない。

 光度 
 2.2 μm 連続光等級を赤化補正し、Te = 31,000 K の黒体輻射を仮定して光度を出すと、 (4 - 50) × 105 Lo となる。この光度から He I 星は、他の補正を 加え、(1.4 - 20) × 105 Lo の青色超巨星であろう。He I 星団は総光度 1.2 × 107 Lo となる。これは、中心パーセクからの赤外放射をまかなうのに 十分な量である。





表1.He I 輝線星の特性

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.

  

 


 


 



 


 




図.


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