アブストラクト銀河中心 4″ の 30μm, 50μm, 100μm 観測の結果を示す。 30μm は 2 μm 輝度分布と電離ガスの密度分布から定めた銀河中心位置 に鋭いピークを示す。50μm と 100μm はもっと広がっていて、 30 μm ピーク の両側に耳を持つ。100μm 表面輝度は銀河中心位置で極小となる。銀河中心 周辺数パーセクはダスト密度が中心に向けて減少していると思われる。中心 1 パーセクでのダスト密度は低すぎて、可視光と紫外光は減光を受けず (Av≤1) にこの領域を通っている。遠赤外光を出す中心数パーセクにあるダストの加熱源 は 1 - 3 × 107 Lo と推定された。 |
1.イントロ現在まで得られた遠赤外マップは、波長 50 μm、 分解能 30″ のもの (Harvey,Campbell,Hoffmann 1976, Rieke et al 1978) しか ない。これらの観測は銀河面に沿って二つの耳を示す。この起源は 不明であった。 この論文はカイパー望遠鏡を用いて銀河中心 4′ を 30″ 分解能で 30μm, 50μm, 100μm 観測した結果を報告する。 |
![]() 図1.(a) - (c) 30μm, 50μm, 100μm マップ。十字=34 μm 地上観測のピーク。 等高線レベルは、 30 μm で、0.125, 0.25, 0.5, 0.75, 1.0 × 4300 Jy/beam 50 μm で、0.125, 0.25, 0.5, 0.75, 1.0 × 3000 Jy/beam 100 μm で、0.25, 0.5, 0.75, 1.0 × 3000 Jy/beam (d) (a)-(c) から積分で導いた 25 - 130 μm マップ。等高線は 0.125, 0.25, 0.5, 0.75, 1.0 × 106 Lo Jy/beam (e) 30μm マップ(破線)に 100μm マップを重ねた。 (f) 50 - 100 μm カラー温度(破線)に 100μm マップを重ねた。粒子の放射率は グレイ。等高線は 60, 70, 80 100 K。 |
![]() 図2.Sgr A から 30″ 以内の 3 - 1000 μm SED. 比較するのは、 H II 領域 G333.6-0.2, K3-50 と 惑星状星雲 NGC 7027 である。 |
全体の様子 カラー温度と光度の分布はダストが中心の光源により加熱されていることを示す。 これは 100 μm マップが銀河中心の両側に耳を出している事実で支持される。 加熱源は(1) 銀河中心 1 pc 領域にあり、Sgr A* プラズマを電離している光源、 (2)中心に密集した晩期型星、の二つが考えられる。しかし、以下の議論は (1) を支持する。 ダスト分布 温度が中心位置をピークとするのに、 100 μm ピークが中心位置の両側に あることから、ダスト密度は中心パーセク領域では低いことが判る。しかし、 100 μm 放射がリング状に見えないことから、ダストの高密度領域は 銀河面に乗っていることも分かる。ダスト/ガス比も中心に向かい減少する。 ( ダスト分布がリングなのか、中央に穴の 開いた円盤なのかは議論していない。対称を仮定すれば一応は出せる?) 2種類のダスト加熱 電離ガス領域内では、共鳴トラップされた Lyα による加熱が重要である。なぜなら、 電離領域内での Lyα 光子の光路長は普通の光の 1 桁上だからである。中心 30 ″ で Lyα の形で得られる光度は体積放射メジャーの形で評価できる。それは 1.6 × 107 cm-6 pc3 である。この値を 使うと光度として 6 × 105 Lo を得る。この値は 3 - 130 μm 遠赤外光度のかなりを占める。 一方、電離源の総光度はそれよりずっと大きいことが示唆されている。したがって 中心 30″ 領域のダストはトラップ Lyα により大部分の加熱をうけ、星からの 直接加熱がそれを補っている。 30″ 領域のダスト光学的深さは低いので非電離光子 は殆ど自由に中心パーセク領域を通り抜け、よりダスト密度の高い領域で吸収される。 それが 100 μm で見える耳部である。 |
天体構造 中心パーセク領域の比較的少数の熱いダストは主に 10 - 30 μm で放射し、その 加熱はトラップ Lyα 光子と、極近くにある高温度星からの輻射による。 銀河中心の周囲の高ダスト密度域では中心パーセク領域からの可視・紫外光が主な 加熱源である。この領域はおそらく銀河面上に横たわるリング状領域であろう。ただし、 内側は明らかにダスト密度の上昇を意味するのだが、銀河中心から 2 pc にある 「耳」の外側縁が、ダスト密度の低下によるか、加熱光子の不足によるのかはっきり しない。後者の場合は外側縁は加熱輻射の光学的深さが 1 となる位置を示す。 ( この問題はもっと突っ込めるがその後 どうなったのか?) 中心パーセク領域からの光度 (1)下限 図1d の最低等高線で囲まれた領域 2pc × 4pc からの遠赤外光度は 5 × 106 Lo である。この光が銀河中心の光源を遮るリングから 出ていて、銀河中心から見てリングが張る立体角を 2π とすると、光源の 光度は 107 Lo である。ただし、リングを照らす輻射の全てが吸収される わけではなく、立体角も多分 2π より小さいから、上の値は下限値である。 (2)上限 上限を考えるためダスト温度 Tg を考える。ダストグレインの放射率を λ -1 と仮定すると、その温度は Tg5 ∝ L R-2 となる。R = 2 pc, Tg = 70 K とすると、他の天体 Orion Neb., NGC 7023, 30 Dor, M17C との比較から L = 3 × 107 Lo となる。 銀河中心パーセクの減光 可視/紫外の加熱光度 L = (1 - 3) × 107 Lo である。一方 遠赤外光度は積分して 2 × 106 Lo = 0.1 L である。したがって、 銀河中心 1.5 pc 以内のダスト密度は低くて、1.5 pc の光学的深さは 0.2 mag. 程度 である。 |