Simultaneous Observations od SiO and H2O Masers toward Known Stellar H2O Sources


Kim, Cho, Kim
2013 AJ 145, 22 -37




 アブストラクト 

 水メーザー検出 152 天体で、 SiO v = 1, 2 J = 1-0, 29SiO v = 9 J = 1-0, H2O 616-523 の4本のメーザーライン同時観測を行った。 観測は KVN Yunsei 21 m 鏡を用い、2009 年 6 月から 2011 年 1 月にかけて 行った。 SiO と H2O の双方が検出されたのは 62/152 = 40.8 % 天体である。 22 天体で SiO メーザーは検出失敗だったが H2O が検出された。 27/83 では SiO のみが検出された。合計すると 89/152 = 58.6 % で SiO が 検出された。  SiO の新検出は 70 であった。  SiO, H2O 双方検出天体では、ミラ、OH/IR で SiO のピーク 温度、積分温度のどちらも 水メーザーより強かった。また、 OH/IR の方が ミラよりも H2O/SiO が大きかった。152 天体の IRAS 二色図上の 分布も調べた。


 1.イントロダクション 

 水メーザーの加速 

 Imai et al 2003 は RT Vir の VLBI 観測から水メーザーの固有運動が加速 されていることを発見した。 Shintani et al 2008 も水メーザー領域の加速を 述べている。

 メーザー源の位置 

 Choi et al 2008 は VERA から VY CMa の SiO 位置が星を取り囲むリング状 に並び、一方水メーザーはより遠方に位置しており、双極流を示唆している。 これらの統合観測は脈動の伝搬の見地から重要で、マスロス機構の解明につな がると期待される。
 同時観測 

 マスロス機構と並び、励起機構の解明にも同時観測は有用である。そこで Kim, Cho, Oh, Byum (2010) では SiO と H2 の双方で検出報告のある 166 星の同時観測を 実施した。次に Cho, Kim (2012) では SiO は検出されているが、 H2 検出には失敗している 83 星 の同時観測を行った。この論文では 152 個の水メーザー源の同時観測の結果を 報告する。このサンプルは、SiO 観測がこれまで行われたことがない 109 天体 と SiO 検出に失敗した水メーザー源 43 個からなる。



表1.観測のサマリー




表2.観測星リスト



 2.天体選択と観測 

 2.1.天体選択 

 選択 

 SiO 観測がこれまで行われたことがない 109 天体 と SiO 検出に失敗した水メーザー源 43 個を Takaba et al. 2001 の 中から選んだ。しかし、我々の観測が終わった後に Deguchi et al 2010, 2012 が発表したリストには我々のサンプルと重なる物が 22 天体含まれて いた。

 2.2.観測 

 望遠鏡 

 観測は KVB Yonsei 21 m, KVN Tamna 21 m 望遠鏡で、2009 年 6 月から 2010 年 2 月に掛けて行われた。


 図1:スペクトルの一部  

 3.観測結果 


表3.SiO と H2O 両方検出天体のアンテナ温度





表4.SiO と H2O 両方検出天体の積分フラックスと速度




表5.SiO しか受からなかった天体のアンテナ温度




表6.SiO しか受からなかった天体の積分フラックス




表7.水しか受からなかった星




表8.SiO も水も非検出の天体



 4.メーザー線間の強度比とゼロパワー巾の比 




図2.ミラ型星における、左=ピーク温度、右=積分温度の (水/SiO v=1) 比。




図3.OH/IR 星における、左=ピーク温度、右=積分温度の (水/SiO v=1) 比。




図4.左=ミラと右=OH/IR 星における、の (水/SiO v=1) 比。


表9.水メーザー線プロファイルのタイプ

 5.IRAS 二色図 


図5.IRAS 二色図。 黒丸=SiO と水の両方検出。赤丸=SiO だけ。黄色三角=水だけ。 緑逆三角=どちらもなし。


表10.平均ピーク温度と積分温度の比。




表11.ゼロパワー巾の比

 6.まとめ 

 1.検出率 

 62/152 = 40.8 % で SiO と H2 メーザー検出。 内ミラは 28/47 で 60 %, OH/IR 星は 18/41 = 44 %、SR は 8/28 = 29 % であった。 27/152 は SiO のみ、22/152 は H2 のみ検出。 全体では SiO は 58.6 % で SiO を検出した。その内 70 は新検出であった。 一方、 H2O の検出率は 55.3 % であった。

 2.複ピーク 

 5 天体で片側だけの H2O ピークが見られた。8 天体はダブル ピークを示す。6 天体は複ピークを示す。速度構造が単純でない天体か。
 3.アンテナ温度 

 ミラでも OH/IR でも SiO の方が H2O よりアンテナ温度は 強い。T(H2O)/T(siO) は OH/IR の方がミラより大きい。

 4.FWZP=ゼロパワーでの全巾 

 FWZP=ゼロパワーでの全巾をミラと OH/IR で較べた。 ミラでは FWZP(H2O)/FWZP(SiO) = 0.68, OH/IR では FWZP(H2O)/FWZP(SiO) = 2.18 であった。 OH/IR はマスロス率が大きいためであろう。

 5.IRAS 二色図との関係 

 領域 IIIb にある天体のほぼ全てが H2O のダブルピークまたは 片側ピークを示す。これは Kim, Cho, Oh, Byum (2010) でも見られた傾向である。