表面組成、 s-元素超過、ガイア視差の分かった post-AGBs を現在得られる AGB 進化計算の結果を使って研究する。それにより、個々の天体の質量、組成、 年齢を得る。 | 表面炭素組成と光度の情報は星の過去の歴史を推測する際に最も貴重である。 それにより、AGB進化に関する新しい見方が得られる。 |
宇宙におけるダスト供給源 Valiante et al 2009 は、宇宙におけるダスト供給源として AGB が重要な 役割を持つ事を示した。 AGB 進化計算 最近の AGB 進化計算 (Ventura14, Nanni14)は AGB 星風にダスト形成過程 を組み入れることに集中している。 対流とマスロス AGB 進化において、重要だが依然としてはっきりしないのは、対流不安定性 とマスロス強度である。第1原理計算でそれらを喜寿する方法がまだないので、 観測結果との対比がそれらに制限を付ける唯一の方法である。 |
post-AGBs の意味 post-AGBs は AGB 最終期の表面組成を与えるので極めて重要である。それら は分子線が少なくて分光解析が容易であり、かつ進化経路中、光度一定で質量 との対応が付けられる。 ガイア これまで、銀河系 post-AGBs に対してこの方法は部分的にしか使えなかった。 距離がはっきりしなかったからである。しかしガイア視差が得られるようになり、 状況は変わった。 Kamath et al. (2022) は 測光、分光観測のある post-AGB 星サンプルに Gaia 距離を組み合わせて 光度を出し、個々の天体の解析を行った。 |
もし炭素増加が検出されなかったら、以下のどれかである。 (a) 低質量 AGB 開始時の外層質量が小さ過ぎて、数回の TP で全外層が無くなり、 TDU 効果がない。これは AGB 開始期 M < 1 Mo に起きる。Mc = 0.5 Mo, Me = 0.5 Mo で、4 - 5 TP 経過後 1 Myr で外層は失われる。 TDU は起こらない。 これらの星は普通は 5000 Lo 以下で post-AGB 期に入り、 Miller Bertrami (2016) 第1ドレッジアップか、RGB 期の深い対流混合によるあったとしても弱い炭素、 窒素増加が期待される。質量がいくつ以下で上に述べたような進化に入るか、 その境界質量がメタル量にどう関係するか、論争中で (b) 進化早期のマスロス 進化早期にマスロスを起こす。原因は近接遭遇や連星作用。このためコアマス の成長時間が足りない。 (c) HBB M>3Mo 星でコアマスが 0.8 Mo を超すと、コア境界温度が 30M K 以上と なり、 12C のプロトンキャプチャーが生じて炭素が消費される。 HBB 期の星は 2 104 - 105 Lo という高い光度に達し、 外層質量が低下するまでその光度を維持する。 図1に 4 Mo 星でその例を示す。図では L が 35000 Lo に達し、その後総質量 が 50 % にまで減少してから最終 AGB 光度 1.4 - 3 104 で終わる。 |
HBB と C, N, O 図1左下には C, N, O の表面組成の時間変化を示す。HBB を経た post-AGB は N が著しく増加している事が判る。図1で 8 104 yr までの [N/Fe] = 0.5 はFDU によるものである。HBB により HBB と Na, Al HBB 温度は Ne - Na 合成を開始させる。ただし 24Mg には不足 である。また 27Al も少し作られる。 図1 では [Na/Fe] = 1, [Al/Fe] = 0.3 まで上がることが示される。 HBB と Li 3He の α 捕獲から始まるキャメロン・ファウラー過程に より Li の合成が進む。 図1右下の灰色部が高リチウム期である。 その後は Li 破壊が進行し、最後には Li ナシに終わる。post-AGB 期にリチ ウムが残るかどうかは、HBB と対流のバランスに掛かっている。もし外層基底 温度が 60 M K を超すと、3He の消費が速過ぎて、高リチウム期 は短く、 post-AGB 前にリチウムは消えてしまう。図1では正にそうなっている。 しかし、もし HBB が弱ければ Li はpost-AGB まで生き残れる。 HBB と C 12C の表面組成は HBB による破壊と TDU による移送とのバラ ンスで決まる。両者は M = 3 - 4 Mo で拮抗するが、それより高質量では HBB が強くて TDU を停止させるので炭素とリチウムの増加が起きない。この問題 は現在も論争中である。 |
1−3Mo の [C/Fe] 1 - 3 Mo では TDU の影響が大きい。図2に幾つかのパラメターでの結果を示す。 二つのメタル量それぞれに対して、数回の TDU しか起こさない星と、最も高い [C/Fe] を達成した星の例を示した。同じメタル量では、質量が大きいほど最終 [C/Fe] は高くなる。また、メタル量が低いほど最終 [C/Fe] は高い。その 原因の一部は低メタルほど TDU 効率が高くなることにある。しかし、最大の 要因は同じ量の炭素が運ばれた時、低メタルほど相対変化は大きいという算術 効果であろう。図の例では、2.5 Mo、[Fe/H] = -1.2 の星は [C/Fe] = 1.85 に、 3 Mo, [Fe/H] = -0.4 の星は [C/Fe] = 1.3 になり、post-AGB に入る時の 炭素質量比は 1.5 弱である。 ("carbon mass fraction 1.5" と言 うのはどういう意味なんだろう? ) これら 1 - 3 Mo 星では RGB 期 対流混合 の効果で N 増加も期待される。 |
HBB と N 増加 HBB の最も確かな証拠は表面窒素の増加である。これは HBB 強度のような 変数に関係しない。というのは CN サイクルが HBB 条件下で最も容易に 起きる過程だからである。この点は Mg-Al-Si チェインにおける Ne-Na サイ クルのようにその発火条件が温度に敏感な過程と大きく異なる。 |
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5.1.炭素増加のための光度限界 |
![]() 図4. Kamath et al. (2022) サンプル星の光度とメタル量。 破線= TDU による影響がある高質量星とない低質量星の境界。 |
5.2.HBB |
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5.3.RGB 期の深い対流混合の現れは? |
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5.4.TDU に失敗した星 |
![]() 図7.Z= 0.004 M = 1.25 - 3 Mo AGB 星の炭素組成と光度。 |
5.5.暗い側で。 HB と post-HB 星 |
![]() 図9.暗い星の HR 図上進化。 |
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