AKARI's Infrared View on Nearby Stellar Populations


Ita,Y., Ishihara,D., Oyabu,S., and others
2010 AA 514, 2 - 14




 アブストラクト

 
 あかりの 9, 18 μm 全天サーベイ天体をヒッパルコス、2MASS と 結合して色等級図を作った。その天体を SIMBAD でスペクトル タイプ、光度クラスを調べた。(B-V) - (V-S9W) 二色図は IR エクセス のある星を見出すのに有効であった。(L-L18W) - (S9W-L18W) 二色図は 幾つかの天体分類に有効であった。この図上で炭素星と OH/IR 星は 独自の系列を形成した。YSOs, PMSs, post-AGBs, PNe は大きな赤外超過 を持つので赤外カタログ中で同定できる。(L18W, S9W-L18W) 色等級図 をヒッパルコスと一緒にして調べた。この図は低質量 YSO と AGB 星を 同定するのに用いられた。この図はSpitzer の LMC カタログにおける [24] - (8-24) 色等級図に相当する事が判った。

 1.イントロ 

 2.データ 

 2.1.フラックス精度 

 2.1.1.IRAS PSC、2MASS との同定 

IRAS
 図1を見ると、あかりの S9W, L18W に対応するのは IRAS 12, 25 である。 IRAS フラックスクオリティが 12、25のどちらかで 2 か 3 の天体は 170,754 天体ある。内 145,751 天体はあかり天体と同定された。 25,003 IRAS 天体にあかり対応天体が見つからなかった。それらの分布は図2に示されている。 同定されなかった原因としては、
(1)あかりがサチった
(2)あかりでは星雲に見えた
(3)あかりが広がった天体に分解した
(4)スカイカバレッジのズレ

図1.上:あかり IRC と IRAS のスペクトルレスポンス。下:参考星。


2MASS 
 47,860 あかり天体に Ks < 14.3, S/N > 5 で 2MASS 対応がない。 その分布は図2に示す。それらはダストに覆われている可能性があり、 追観測が特に興味深い。

図2.上:あかり検出なしの IRAS 天体。下:2MASS なしのあかり天体。
(LMC で 2MASS なし天体チェック は IRSF が使える )



 2.2.同定位置精度 

new Hipparcos astrometric catalog と 2MASSの5“以内で同定。
2つ以上の時は近い方を選ぶ。
等級は各カタログのものを使う。星間減光補正はしない。
new Hipparcos astrometric catalog はVを含まないのでVは古い 版から取った。
スペクトル型、光度クラスはSIMBADから。
スペクトル型、光度クラス別の個数の表が欲しい。

図3.同定の位置差。



 3. 既存カタログとのクロスコリレーション  

 ヒッパルコス 
 ヒッパルコスカタログは 1991.25 に固有運動を補正している。一方 IRC-PC は 2000.0 に揃えてある。ヒッパルコス天体中 15,052 は 固有運動が 0.1" yr-1 より大きく、固有運動の補正が 必要である。位置を 2000.0 に揃えて同定を進めた。その結果、許容 距離 3 arcsec で 68,744 マッチを得た。

 2MASS
 2MASS では 847,836 マッチを得た。

 3.1.分類既知の天体  

 カタログとの同定 
分類カタログとの同定作業は以下の種類について行った。

(1)S型星: Stephenson 1984, 1990 から 1412 星。
(2)post-AGB: Szczerba et al 2007 から very likely 326 星。
(3)PNe: Acker et al 1994 から 1143 星
(4)WR: van der Hucht 2001 から 226 星
(5)Be: Zhang et al 2005 から 1185 星
(6)炭素星、OH/IR 星、PMSs, YSOs は SIMBAD から
(7)M-型巨星、超巨星も SIMBAD から

 3.1.1.系外銀河  

 NED との同定 
 NED x IRAS F12μm>0.1Jy は 2907 天体がある。
IRC-PSC x NED x IRAS F12μm>0.1Jy は 794 天体。
どうやら、NED 天体の多くは広がった天体として IRC-PSC からは落とされ、 遠方の暗い天体が点源として残ったらしい。この 794 銀河は解析から はずした。

 高銀緯 
 |b| > 30° にはあかり天体が 85,965 個ある。NED との同定を 3 arcsec で試みた結果 1224 マッチを得た。その内 412 個が IRAS F12μm>0.1Jy であった。このように系外銀河の数は 十分小さく、解析の結果に影響は及ぼさないと結論した。

表1.SIMBAD PMS リストから外した星。



表2.あかり-ヒッパルコス、あかり-2MASS で同定された既知星の数。



表3.あかり・ヒッパルコス同定カタログ最初の3行。CDS参照。



表4.あかり・2MASS の同定カタログ最初の3行。



図4.あかりとヒッパルコスで共通、かつ S/N > 5 の 58,793 天体の (B-V) - (V-S9W) 二色図。矢印は Av = 2 の星間吸収。

 4.結果と解析 

 4.1.二色図 

 4.1.1.(B-V) - (V-S9W) 二色図 

 あかりとヒッパルコスで共通、かつ S/N > 5 の 58,793 天体の (B-V) - (V-S9W) 二色図を図4に示す。 B, V はヒッパルコスカタログより。

 Be, Wolf-Rayet 星 
 (B-V, V-S9W) = (-0.2, 0) から (0.5, 3-5) への系列をなす。 幾つかは S9W で強い赤外超過を示す。星周のフリーフリー放射にダスト放射 が加わったものと考えられる。Waters et al 1987, Zhang et al 2004. この分類中には Herbig Ae/Be 星 HD100546 や Be 星 ι Ara も 含まれる。 ι Ara は Waters et al 1987 により赤外超過のある Be 星とされた。この系列には幾つか未同定天体がある。それらはこの グループに属している可能性がある。

 M-型巨星 
 M-型巨星は V-S9W が赤くなると B-V が少し青くなる。一方炭素星は B-V も次第に赤くなって行く。したがって、この分離は AGB 星の分類に 有効である。
 図5を見ると分かるが、M 型星はスペクトル型が進むと B-V が青くなり、 V-S9W が赤くなる。
(データ出所? AQ とは異なる。)
モデル大気から Bessel 1998 は Z ≥ Zo の星では有効温度 Te と (B-V) が逆相関することを 確認した。ただし、Z < Zo では順相関である。Andrew 1975 は TiO 吸収が V バンドで強く、B バンドではそれ程でもない為、低温 になると V バンドフラックスが相対的に抑えられことがその原因で あろうと推測した。

図5.M-型巨星のカラーとスペクトル指数。大きいバツ印は中間値。

 M-型超巨星 
 7 < (V-S9W) < 9.5, 2 < B-V に 6 個の M-型超巨星がある。 その近くにある 3 つの星も超巨星であろう。与えられた (V-S9W) に対し ては M-型超巨星は M-型巨星より赤い (B-V) を示す。
(表面重力、有効温度、分子吸収 など色々言っているが、V-S9W との関係の言及なし。 )



図6.上: あかりと 2MASS で同定した S/N > 5 の 117,576 天体の (S9W-L18W, J-L18W) 二色図。シンボルは図4と同じ。
下: 分類された星毎の二色図。折れ線=タイプの区分け線。
中左:炭素星と OH/IR 星。中右:PNe と post-AGB。下左:M-型巨星と 超巨星、S-型星。下右:YSO,PMS, WR, Be 星。


表5.各領域内の既知星の数。


 4.1.2.(S9W-L18W, J-L18W) 二色図。 

 図6には あかり・2MASS 同定天体の (S9W-L18W, J-L18W) 二色図を 示す。

 炭素星 
 C-リッチ星と O-リッチ星はこの図で二系列に分離している。これは主に ダストの性質が異なるためである。
(ダストの差はどこに現れるのか? 出典があるのか? )
青い赤色巨星では分子吸収の差が効いている。炭素星では SiC と非晶質炭素のダストが存在するが、SiC は S9W では もう低下している。したがって非晶質炭素の連続吸収が赤外超過 に効く。この為、炭素星の S9W-L18W と J-L18W は単調に増加して行く。
 O-リッチ巨星 
 これに対し、激しいマスロスをする O-リッチ星は 9.8, 18 μm の 吸収を示す。図6で OH/IR 星は O-リッチ星全般の系列上に貢献している。 OH/IR 星では 9.8 μm は吸収、18 μm は放射で見える事が多い。 そのため、OH/IR 星の S9W-L18W は炭素星より赤い。

 分子吸収 
 色々な分子吸収について勉強した事が書いてある。それがカラーに及ぼす 効果も。定量的な評価には至っていない。

 他バンドの二色図 
 図7には他バンドの二色図を S/N > 5 の星について描いた。これら の図は近赤外を重視した時に星の種類の区分線がどうなるかを示している。 この図では M-型超巨星と炭素星の分離は曖昧となる。これはあかりが 強い分離力を持っている事を示す。ただ、この図はマスロス超巨星を  M-型巨星と区別するのに役立つ。



図7.(Ks-S9W) - (J-Ks) 二色図。矢印は Av = 20 の星間吸収ベクトル。


 YSO と PMS 

 YSO, PMS は AGB 星とは離れているが PNe, post-AGB がカラーでは 重なる。YSO, PMS は L18W の光度が低い。図6で YSO と PMS は PMS の 方が J-L18W が青いのでやや分離している。この論文では YSO をクラス I, II, PMS をクラス III 天体と考える。二つがやや分離しているのは多分 PMS で 星周円盤が光学的に薄くなり、中心星が見えてきたためと思われる。

 未同定天体 

 図6では天体分類の 6 領域を定義した。それは
(A)赤い炭素星
(B) OH/IR 星と YSO のいくつか
(C) M-型巨星、超巨星、S-型星。青い炭素星、赤い方で赤い PMS
(D) Be 星、M-型巨星、S-型星。
(E) PMS、PNe, post-AGB
(F) PNe, post-AGB
まだ、多くの天体がまだ未同定なことが図6から判る。



図8. 13,252 星の(S9W-L18W, L18W) 色等級図。矢印= Av 20 mag

 4.2.色等級図 

 4.2.1.色等級図の一般論 

 (S9W-L18W, ML18W) 色等級図 
 図8は ヒッパルコス ω/σω < 0.4 かつ S/N > 5 の天体の (S9W-L18W, ML18W) 色等級図である。 この基準にあう星は 13,252 星である。我々のデータ中 ML18W が 最も明るいのは post-AGB 星である。その次が M-型超巨星と M-型巨星、 炭素星、 S-型星である。YSO, PMS は 1.5 < (S9W-L18W) < 3 で大きな 赤外超過を示す。Be 星は ML18W で暗い。 0.3 < (S9W-L18W) < 1.3 で赤外超過を示す。 WR 星は Be 星と似た振る舞いを示す。

 M-型巨星の二系列 
M-型巨星は (S9W-L18W) ∼ 0.1 で ML18W -3 から -8 に伸びている。これらの 星は星周層からの放射は非常に弱い。ダストシェルが発達すると赤い方へ二つの 系列が形成される。一つは ML18W = -9 で(S9W-L18W) ∼ 1.5 まで 上がり、もう一つは ML18W = -7 で(S9W-L18W) ∼ 1.2 まで 上がる。これが何を表わしているのかはっきりしない。
 マスロスの強い星は欠けている事に注意が必要である。

表7.M-型超巨星だが、おそらく M-型巨星。


 4.2.2.M-型超巨星 

 図8には M-型超巨星が6個ふくまれている。ただし、ML18W > -7 mag で暗い。それは、ダスト放射がないとしても暗過ぎる。しかも (V-S9W, B-V) 図上で M-型巨星の場所にいる。おそらく M-型巨星で あろう。

(ヒッパルコス距離がキー になっている。専門家の意見は? )

 4.2.3.YSO と PMS 

 図8には 16 の YSO と PMS が (S9W-L18W) > 1 に見出される。 中心星が可視域で暗い星はヒッパルコス観測が行われていないので 図には現れない。これらの星は T Tauri 型星や Herbig Ae/Be 星として 分類されている。全てに赤外超過が見られる。S9W-L18W カラーの巾は 比較的狭い (∼ 1 mag) が、 ML18W は広い (∼ 7 mag)。 ML18W の巾が大きい理由は判らない。



図9..LMC のスピツアー ([8-24], M24) 色等級図。DM LMC = 18.5 を仮定。星の分類は 松浦その他 2009 による。
系列A=前景星。系列B=O-, C- リッチ AGB 星。先端での激しいマスロス星 ([24]<-15) を含む。実線=Srinivansan et al 2009 が定義したライン。 この線の下=系列D= Blum et al 2006 が述べた暗くて赤い脈動星。この 系列は (S9W-L18W) ∼ -1, ML18W ∼ -9 の赤い系列と 同じである。系列B,Dには O-リッチも C-リッチも存在する。破線は 検出限界。

 4.2.4.スピッツアーの LMC 色等級図との比較 


図8[小] あかり/ヒッパルコス天体


 暗く赤い赤色巨星? 
 あかりの中間赤外色等級図はスピッツアーの LMC 色等級図 ([8]-[24], M24) Meixner et al 2006 を理解するのに有用である。アペンディックスに述べたが、(S9W-L18W) ∼ 1 は (8-24) ∼ 1.7 に相当する。従って 図8中 (9-18) < 1.5, M18 < -6 の M-, C-型星、 S-型星は 図9で実線の下、系列Dに対応する星と考えられる。
(上に二つの図を並べて見たが なぜこういう対応が言えるのか全く分からない。)


 暗く赤い赤色巨星の性質 
 次にこれらの、我々のサンプルでは最も明るいグループだが、 LMC サンプルでは暗い赤色巨星、の性質を調べよう。(9-18) > 0.4, M18 < -6 の M-, C-, S-型星を抜き出した。この領域には 4 つの S-型星、 7 つの C-型星、 38 つの M-型星が存在する。そして、 それらの脈動の性質、周期、 ISO/SWS スペクトルを調べた。その結果が 表8である。一つの星、HIP 56551 を除くと全てが変光星であった。大部分 が不規則型が SR 型変光を示し、周期が長い事からそれらが AGB 星である ことが予想される。なぜなら、TRGB より下にある暗い変光星は周期が 30 日より短い(Ita et al 2004)からである。
 表8の 49 星中 7 星に ISO/SWS スペクトル(Sloan et al 2003)が 見つかった。それらを Kraemer et al 2002 の分類と共に 図10に示す。 彼らによれば、グループ 2 の SED は恒星大気からの輻射が支配的であるが、 ダスト放射が影響している。 SE と CE のサブグループはダスト放射が O- リッチか C-リッチかを表わす。M サブグループは「その他」を表わす。全て の星が薄い星周ダストシェルに囲まれているのは明らかである。シリケイト バンドは M-型と S-型の殆どの星で見えるし、炭素星は 11.3 μm の SiC バンドを示す。面白い事に所謂 13μバンドが M-, S-型星に見られる。 このバンドはおそらく酸化アルミであろう。
 これらから LMC でも系列 D の星は低マスロス率の M-, C-, S-型星が 混じり合っていると考えられる。

 系列Bの対応天体は図8には存在しない。
 系列Bの対応天体は図8には存在しない。おそらく、それらは視差が測れ ないほど遠いか、明る過ぎて測光がサチったのどちらかであろう。

図10.あかり・ヒッパルコス天体中の暗くて赤い星の ISO/SWS スペクトル

図9[小] スピツアー/LMC 天体


表8.LMC 暗く赤い巨星に対応する銀河系巨星。



 5.まとめ 

(1)あかりの二色図で C-リッチ星と O-リッチ星が分離した。
(2)可視等級と組み合わせると Be, WR 星が検出できる。
(3)LMC の暗くて明るい星の性質が判った。




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




( )


Schlegel et al. 1998 先頭へ