Age Calibrations of Magellanic Cloud Clusters


Hodge
1983 ApJ 264, 470 - 475




 アブストラクト

 主に主系列測光に基づき、マゼラン雲 81 星団の年齢を集めた。これらを用いて Searle, Wilkinson, Bagnuolo と van den Bergh の年齢クラスを較正した。 以前に発表された較正は系統的な改訂が必要である。特に炭素星を含む事に 基づいた年齢決定は直す必要がある。

I.イントロ 

 マゼラン雲の星団は星形成史を探る有用な道具である。 Hodge 1973 van den Bergh 1981 は星団形成域が年齢と共に変化する様子を調べた。同様に、分光、中間帯域 測光によるメタル量変化が Cohen 1981, Searle, Smith 1981, Harywick, Cowley 1981, Hodge 1981 らによって研究された。したがって、星団の年代決定法 を可能な限り正確に較正しておく必要がある。この論文は色等級図に基づく 星団年齢決定データを集めた。


II. 年齢の決定 

 一様なデータと解析法 
 データを解釈する方法と使用されるモデルがあまりに多様なので発表 された星団年齢を互いに比較することは困難である。なるべく一様な基盤 の上で比べるため、報告された色等級図を集め、共通の方法で主系列と 後主系列星を解析した。比較用のモデルも1種類に限定した。前者は若い 星団では特に大事である。というのは年齢が依存するターンオフの定義が はっきり決まっていない場合が多いからである。また、古い星団では モデルによる差が大きく、さらに年齢がメタル量に大きく依存するため、 同じモデルで比べるのが大事である。

 若い星団の年齢 
 若い星団の年齢決定には二つの指標を用いる。一つは主系列ターンオフ 等級であり、もう一つは青い(B-V < 0.4)進化した星の内、最も 明るい星の等級である。使用した図1は Schlesinger 1969, Stothers 1972, Brunish 1981 の理論モデルと Hodge 1981 のメタル量変化とを 合わせた結果である。

 古い星団の年齢 
 古い星団に対してはと個々の色等級図のメタル量を考慮したモデルとの比較 に基づく Hodge 1982 の半経験的な関係を用いた。非常に古い(10億年)星団 に関してはデータの問題でかなり粗い扱いとなった。

 主系列先端等級と青い星の最高光度の差 
 実際には若い星団の年齢はまず主系列先端から求める。これは通常主系列 の星数が急に減少することで判る。次に青い星の最高光度から独立に年齢を 定める。古い(∼ 1 Gyr)星団だと、両者は 0.5 mag 程度しか違わないが、 0.1 Gyr ではそれが 2 mag に達する。

 二つの方法で決めた年齢の差 
 表1にはこうして求めた星団年齢を載せた。色等級図がよく決まっていると 二通りの方法で決めた若い星団の年齢は ±20% 以内で一致した。表の 不確定さは異なる著者の色等級図の間の差である。



図1.実線=主系列ターンオフの等級。破線=最も明るい青い星の等級。 Sc = Schlesinger 1969, St = Stothers 1972, Br = Brunish 1981. Ad = Adopted curve
 年齢のモデル依存性 
 注意しておくが、導かれた年齢は使用したモデルに依存する。与えられた 指標等級 Mv に対しモデルの違いによる分散は log t で 0.2 くらいある。 この理由だけで表の年齢にはこのくらいの不定性が付く。さらに後主系列 の最も明るい青い星と主系列先端の等級の精度は ±0.2 mag くらいある。 これは年齢に直すと log t で 0.12 のエラーになる。したがって、年齢は 絶対値としてはファクター2程度の不定性を持つ。しかし、相対的にはエラー はもっと小さい。

 他の方法との比較 
 こうして、表1は一様な基準に基づいているため、相対的には信頼の できる年齢を提供している。それらは他のもっと間接的に求まった マゼラン雲星団年齢と比べられた。その結果、他の決定法には大きな 系統誤差が存在する事が示された。それは特に 1 Gyr かそれより古い 星団で本当で、それらの公表年齢は炭素星光度や積分カラーに基づくため 表1よりずっと古いのが通例である。その点は Hodge 1981a で詳しく述べた。



表1.主系列色等級図を備えたマゼラン雲星団の年齢。



 III.年齢クラスの較正 

 SWB クラス 過去の年齢較正は過大評価 
 SWB と van den Bergh 1981 は星団の積分測光に基づいて年齢クラスを定めた。図2にはそれらの年齢較正を 本論文の年齢と比べた。これまでの較正では年齢を過大に評価していたことが 判る。例えば、 SWB クラス IV に対して Rabin 1981 は中間値 2.5 Gyr、 Frenk-Fall 1981 は 2.0 Gyr を与えているが、表1の中間値は 0.4 Gyr である。 主系列ターンオフのみを使えば 0.6 Gyr である。

  SWB クラスの年齢較正の重なり 
 表2には図2に基づいて定めた SWB クラスの年齢較正を載せた。クラス間で 年齢に重なりがある事に注意しておく。現時点ではそれが年齢較正の不定性に よるのか、クラス分類にかかわる、年齢、メタル量、光度関数などのパラメター が多過ぎるためなのかは不明である。



表2.SWB クラスの年齢較正



図2.SWB クラスの年齢較正。実線= Frenk, Fall 1981, 縦線= Rabin 1981、破線=本論文。古い星団の一部は Hodge 1981 より。
 van den Bergh 1981 の年齢クラスとの比較 
 van den Bergh 1981 の年齢クラスは Sandage 1963 の銀河星団の年齢 に基づいて較正を行った。図3にはそれと、 Hodge 1981b と今回の年齢 を比較した。それらの一致は極めて良い。表3には van den Bergh クラス の年齢巾を示した。

  U-B カラーと年齢 
 図4には U-B カラーと表1からの年齢をプロットした。 LMC 星団 点は分散が小さい。 SMC ではそれが大きい。しかし、 若い星団に関し、 同じ U-B に対し SMC では LMC より高い年齢となるらしい徴候がある。 多分メタル効果であろう。

 カラーから年齢を決める際の問題 
 図4には古い星団に対してはカラーから年齢を決める際に問題が生じることを 示している。そこでは年齢が U-B のみでは決まらない。

表3.van den Bergh クラスの年齢較正



図3.van den Bergh 1981 のクラスと年齢。




図4.U-B 対年齢のプロット。左:SMC, 右:LMC. かなり良く決まった LMC カーブをどちらにも描き入れた。


 IV.炭素星年齢の問題 

 AGB 先端等級法 
  Mould, Aaronson 1982、 Frogel, Cohen 1982 はマゼラン雲星団の上部 AGB と炭素星のデータを 収集した。理論モデルに基づいて   Mould, Aaronson 1982、 は炭素星の輻射等級から年齢、または年齢上限を導いた。彼らの星団の 幾つかは我々と重なっている。図5には両者の年齢を比較した。矢印は 彼らの "t9,m", つまり推定年齢上限である。エラーバーは 彼らの"tf" 値の不定性と我々の側の不定性である。

 図を見ると、最も古い星団に関しては二つの推定値が一致するが、 10 Gyr より若くなると Mould, Aaronson の見積もりが系統的に大きくなる。 この差は "t9,m" が上限値ということで説明するには大きすぎる。

 詳しい検討の例 
 NGC 2134 の場合、厚い主系列が V = 18.4 ±0.2 まで伸びている。 V = 20 と 18.4 の間に約 180 主系列星がある。その上に 25 個の星が 疎らに散在する。これらは最近主系列から離れた星と解釈される。もし、 AGB 星からの年齢 1.5 Gyr だとすると主系列ターンオフは Yale 等時線 によれば、広い範囲のメタル量に対し V ∼ 21.5 となる。観測された ターンオフ 3 等級の差は明らかに AGB 方が古過ぎる年齢を与えることを 物語る。

 AGB 進化モデル 
 t < 1 Gyr の星団に炭素星が含まれている以上、大質量母星から 予想外に暗い炭素星が生まれるメカニズムを進化モデルに組み込む必要が ある。以前のモデルより大きなマスロスが要るだろう。


    おしまい。

図5.主系列から決めた本論文年齢と Mould, Aaronson 1982 の炭素星の数に基づく年齢の比較。上限は矢印で示されている。 NGC 1856 のデータは Richer 1981 に基づいて加えた。



 参考 Hodge, Schommer 1983 より 


 NGC 2134 色等級図。フィールド星を含む。E(B-V)=0.20±0.1. Av=0.60 と考え (m-M)A = 18.45+0.60 = 19.05

フィールド星を統計的に削除した色等級図。等時線は Ruotsolainen 1982 の Z = 0.02.を使用した。数字は年齢 (Myr)。