AGB 変光星が 24 μm という中間赤外でも近赤外と同様の周期光度関係に 従うことが判った。そこではダストからの星周放射が支配的である。 LMC と HBC 6522 とは年齢もメタル量も異なるが、 M - log P 関係は同じらしい。 | その傾きには波長による系統的な傾向はない。見かけ等級対 log P 関係の 差は 3.8 で、これは距離指数の差に等しい。変光星のカラーは log P > 1.85 が検出可能な質量放出の条件であることを示す。最長波長 24 μm では 多くのセミレギュラー変光星がミラと同じくらいの明るさのダストシェルを有す。 24 μ を含む LMC CMD には明白な分岐が見える。 |
SRの利点 AGB 星の近赤外周期光度関係は、バーデの窓、LMC, NGC 6522 などで確認 されている。AGB 星には多くの SR があり、振幅が小さいので少ない回数の 観測で平均等級が求まる利点がある。 領域 Schultheis, Glass, Cioni 2004 は 2MASS から MKs,0 ≤ -5.0 の全サンプルを選び出した。この等級は TRGB より 1.5 等下である。 彼らの選んだ天体は MACHO サーベイの r, i と対応された。各 MACHO 変光 データはフーリエ解析から周期と振幅を決められた。 |
NGC 6522 で 1032 arcmin2, LMC で 271
arcmin2 の領域をそれぞれ 1800 星を選ぶために定めた。
Spitzer 天体の ISO 観測から 7, 15 μm が得られる場合はそれも使った。 しかし、いまや Spitzer のデータが使えるのでそちらが優先する。 |
同定 今回 スピッツアーデータを用いて議論する NGc 6522 及び LMC 領域は Schultheis, Glass, Cioni 2004 の対象領域の一部である。その論文で MACHO 天体と同定されたリストをスピ ッツアーとさらに同定した。IRAC, MIPS フラックスを 3.6, 4.5, 5.8, 8, 24 μm バンドゼロ点を用いて等級に変換した。NGC 6522 領域の赤化は E(B-V) = 0.5 と仮定する。 データコメント (1)MACHO を同定に使うのでスピッツアーが検出した赤い天体が落ちている。 |
(2)非常に明るい天体が二つあり、グラフの画面をはみ出す。一つは WOH S
286 超巨星である。もう一つは Hα 天体 LHA 120-N 132E で、
MACHO天体 log P = 2.661 でもある。
サチュレイション NGC 6522 領域にはミラ以上に明るい天体はない。ここでは [3.6], [4.5] は サチュレイションの影響を受ける天体があるかも知れない。また、比較のため 太陽近傍の AGB 星を使ったが、スピッツアーには明るすぎるので Marengo, Reiter, Fazio 2008 による ISO SWS スペクトルを使った合成 IRAC 測光の 結果を援用した。ヒッパルコスの新しいデータ整約で π > 5σ の 天体のみを使用した。それらの周期は GCVS から採った。 |
NGC 6522 距離 図1でミラはMACHO 振幅が 1等以上の星である。NGC 6522 領域では距離厚み 効果による等級散らばりが LMC より大きい。NGC 6522 領域の距離指数 dm を 幾つか試した結果、 dm = 14.7 - 14.8 の時、短周期 SRs 系列が LMC とよく 合うことが判った。ただし、 Groenewegen, Udalski, Bono 2008 は RR Lyr と 種族 II セファイドから 銀河系中心の dm = 14.5 を導いた。両者の差の解釈 は不明である。 MIR でも関係成立 図1は Schultheis, Glass, Cioni 2004 が Ks - log P で見出した関係がより長波長でも成立することを示す。 ダストシェル放射になっても依然としていくらかの傾向は残っている。短い 波長帯では大気放射である。 Ks - 8 μm までは基本的に同じ関係が成立 している。 |
メタル効果 Schultheis, Glass, Cioni 2004 は LMC が Ks で銀河系より明るい限界まで達することを示し、それを低メタル のためとした。 Groenewegen, Blommaert 2005 は LMC が NGC 6522 より大き な質量の星を含むことを指摘した。LMC と NGC 6522 の M - log P 関係には 多くの微妙な相違が多数存在するが、残念ながら NGC 6522 方向の距離厚み のため定量化できない。 ( 同じ周期光度関係成立なら、LMC の 最高光度が明るければ、最長周期が大きいことになる。そうか。それは 単に年齢構成の差でないか?) |
![]() 図1.log P - m[スピッツアー]図。赤点= LMC セミレギュラー。赤バツ= LMC ミラ。マゼンタ点= LMC 補助長周期星。黒点= NGC 6522 セミレギュラー。 黒バツ= NGC 6522 ミラ。青バツ=近傍M型ミラ。青プラス=近傍 C 型ミラ。 LMC では [24] は感度限界、NGC 6522 では [3.6], [4.5] がサチュレイション効果。 |
![]() 図2.LMC星の IRAC および 2MASS の M - log P 関係。 J-Ks カラーから 判定して、 黒点= O 過多、赤点= C 過多。アステリスク=ミラ。直線フィッ トに使用した範囲(O過多星のみ使用)を赤枠で囲った。フィット線の係数は表1. |
3.1.勾配直線フィットPLRの勾配が波長で変わるのかを調べるために LMC サンプルに直線フィッ トを行った。系列名は Ita et al. (2004) を採用した。ただし全てが良く分離しているわけでない。特に B+ と B- ははっきりしない。図2にはフィットに使った部分が赤枠で 示され、結果は表1にある。 M-, C-ミラ 図1と同じく、MACHO r振幅が 1 等以上の星をミラと呼ぶ。この振幅レベル は一般に振幅の小さな炭素星ミラを含めるために設定した。Glass, Lloyd Evans 2003 を見よ。J-K > 1.6 の星は全て炭素星と看做し、直線フィットには 使用しなかった。Glass et al 1987, Feast et al 1989 は O-, C-型ミラの Ks - P 関係は同じであるが J - P, H - P 関係は、従って Mbol - P も、 そうでないことを示している。図2を見ると炭素星ミラは Ks では M型星ミラ の Ks-P 関係の下に、長波長では上にある。しかし、サンプルが少なく、 Ks データと IRAC データは異なる時期に撮られていることに注意する必要がある。 ![]() 表1.フィット線の係数 |
4.周期カラー関係図3には周期とカラーの関係を示す。最も目立つのは log P - [Ks-24] 関係 で、 SRs は P = 60 d で鋭い立ち上がりを見せる。これは Alard et al 2001 が log P と 15 μm 超過の関係で示した立ち上がりの強調版と言える。 ここでも再び注意したいが、多くの SRs の赤外カラーが非常に赤く、短周期 ミラに匹敵するか、場合によってはしのぐほどである。 しかし、それらはミラ程明るくはない。 第2の長周期を持つ SRs は特に 24 μm でダストシェルを持つことが明らかである。不運にも LMC サンプルは MIPS の 感度の関係で最も明るい星に限定されている。![]() 図3.log P - [Ks-Spitzer] 関係。赤点= LMC SRs(主周期)。赤バツ= LMC ミラ。 マゼンタ点= LMC 補助長周期星。 黒点= NGC6522 SRs(主周期)。黒バツ= NGC6522 ミラ。 緑点= NGC6522 補助長周期星。NGC 6522 の明るいミラはサチュレイションで 図から落ちている。 |
図4は LMC, NGC6522, 太陽近傍の AGB 星を示す。前と同様、 J-Ks > 1.6 の星は炭素星、残りは M-型星と考える。 (こういう議論でこの分け方は 荒すぎないか? 図では C-, M- 星の区別はないようだ。) 赤の LMC 星は二股に分かれる。右側は NGC 6522 星と重なり、おもに M-星 である。左側は主に C-星である。 (しかし、分光的に C-, M- 星の区別は 行っていないらしい。) 24 - 25 μm フラックス なぜ炭素星が左側に行くのか? IRAS [25-60] - [12-25] 図でも炭素星の F(25) が低いことが判る。 |
![]() 図4.[3.6-24] - M24 関係。赤+=LMC 炭素星。赤点=LMC 酸素 星。NGC 6522, 近傍星も加えた。分岐は炭素星では 24 - 25 μm フラックス が欠けているためか、または全体の光度が高いためと考えられる。 |