Luminositirs and Temperatures of the Reddest Stars in Three LMC Clusters


Frogel, Persson, Cohen
1980 ApJ 239, 495 - 501




 アブストラクト 

 LMC 星団 NGC 1783, 1846, 1978 中の最も赤い星 12 個に対し、 1.2 - 2.3 μm 赤外観測を行った。 7/12 は炭素星で、LMC フィールド炭素星 と測光上区別できない。銀河系星の赤外データから輻射等級と温度を導いた。 炭素星の平均輻射等級は -4.9 であった。これは以前に公表された値より 2 等暗い。  それでも、これらの星を AGB 星と位置付けるに十分なほどには明るい。 3星団中最も明るい M-型星は、銀河系高メタル球状星団に比べ、より高温で 明るい。それは Hodge が UBV 測光から得た結果に合う。M-型星の位置は 恒星モデルにある問題を提供する。


 1.イントロダクション 

 炭素星光度から求めた星団年齢 

 LMC の赤く巨大な星団は、そのカラー、巨星枝の勾配と長さなどから銀河系 球状星団とは年齢、組成比が異なるのではないかと考えられてきた。 Mould, Aaronson (1979) は LMC/SMC の9星団 AGB 先端星の分光サーベイを実施し、多くの炭素星が含ま れていることを確認した。さらに、彼らは炭素星の推定輻射光度から星団年齢 を求めた。
 炭素星の赤外測光 

 この論文では NGC 1783、1846、1978 中の最も赤い星々に対する赤外測光の 結果を示す。その中には Mould, Aaronson (1979) が輻射補正 BCs を用いて Mbol を計算した 11 星が含まれる。近赤外 波長帯はこれらの星の輻射が極大になる領域であり、観測から輻射 等級と温度が直接求まる利点がある。





表1.観測星リスト

 2.観測 

 観測 

 観測は CTIO 4m f30 + InSb で行われた。スケール 1".77/mmm と大きい ので星団のように込み合った場所では助けになる。

 観測星 

 NGC 1846 と NGC 1978 では、Hodge 1960 a, b のリストから最も赤い星々 を選んだ。Hesser, Hartwick, Ugarte 1976 の研究では Hodge リストからの 星と同じくらいまたはより明るい星もいくつかあるので、それらも可能な限り 観測した。NGC 1783 では Gascoigne 1962 が見出した最も赤い星を加えた。

 表1=結果 

 表1の第1,2行には観測星の名前、第3−7列に観測等級を示す。各列の一番 下に E(B-V) = 0.6 (van den Bergh 1975) を仮定した補正を載せた。減光曲線 は van de Hulst No. 15 である。

図1.(J-H)o-(H-K)o 二色図。LMC フィールドの晩期型 C-, M- 星 70 個と、銀河系 C-星 32 個から 決めた C- 星と M-星の存在領域。C-領域には炭素星しかないが、 M-領域では M-星が支配的だが、他の星も混じる。図中の曲線は銀河系 K-, M-巨星。白丸 と黒丸は表1から。スペクトル型 Ctm の NGC 1783-G85 は JHK カラーから M-型星としてプロットした。


 3.C-星と M-星の同定 

 図1=JHK 二色図 

  Mould, Aaronson (1979) は表1中第8列に1星を除いて、分光分類を与えた。赤外カラーと分光分類を 比べると、炭素星が J-K, H-K カラーで M-星よりずっと赤いことが分かる。 それは図1から明らかである。

 CO 指数 

 表1には炭素星の CO 指数が小さいことも示されている。
 SED 

 以上の比較から、LMC フィールド、星団の C-, M-星は銀河系の C-, M-星 とよく似た赤外 SED を持つことが分かった。


 4.光度と温度 


図2.銀河系星の観測から導いた (J-K)o に対する K-等級輻射補正 BCK の関係。

 BCK による輻射等級 

 可視等級の変光や込み合い測光エラーを避けるため、赤外データのみから 光度と温度を決めた。BCK = (V-K)o + BCV を求める ために、Mendoza, Johnson 1965 の多色測光データを用い、彼らの赤外システム を我々のシステムに変換し、彼らの観測した炭素星に対する BCK と (J-K) の関係を導いた。その結果が図2である。SEDに関して、銀河系 炭素星とマゼラン雲炭素星に差はなさそうなので、図2の BCK を 表1の炭素星に適用して光度を決定した。表1第10行の輻射等級は DM(LMC) = 18.6 を適用したものである。

 Mould, Aaronson (1979) の BC が大きすぎる原因 

  Mould, Aaronson (1979)   は可視カラーから輻射等級を導いた。彼らの方法は LMC 炭素星に対し、幅 15 A の λλ5350,6250 間のカラーを求め、それを、 Fay, Warren, Johnson, Honeycutt (1974a) の銀河系炭素星スキャンデータと比較して、相当するカラーに対する BC から 輻射等級を得るというものである。それらを表1の第11行に示すが、赤外データ から導いた値より平均して 2 等明るい。それらのスペクトルを見ると、 λλ5350,6250 間のカラーはラインブランケッティングの影響を 強く受けることが分かる。LMC と銀河系の炭素星の間で、メタル量やミクシン グ史が違うために、ブランケッティングが大きく異なることは考え得ることで ある。このような効果と、   Mould, Aaronson (1979)   の図3に示される、カラーが 1 以下での BC の強い勾配 (カラー変化 0.5 の間に BC は5変わる)とが結びつくと、容易に大きな 系統誤差を生み出す。実際、彼ら自身も (BC, B-C) 関係を用いると Mbol が 1.5 等暗くなることを注意している。

図3.LMC星団星の HR 図。二つの銀河系球状星団、一つの銀河系散開星団、 それに 47 Tuc LPVs(極大と極小)も加えた。

 Crabtree, Richer, Westerlund 1976 の炭素星光度  

 我々の炭素星光度平均値は Crabtree, Richer, Westerlund 1976 の炭素星 光度平均値より暗い。彼らは V, R 測光と BCv-(V-R) 関係を用いた。しかし、 この観測は Richer, Olander, Westerlund 1979 に取って代わられ、新しい結 果は古い光度よりかなり暗い。

 M-星の有効温度 

 Cohen, Frogel Persson 1978 のモデル大気と (J-K)o とから求めた M-星の有効温度を表1の第9列に示す。

 C-星の有効温度と図3ギャップの解釈 

 広帯カラーから炭素星の有効温度を与える問題は Wallerstein 1973, Scalo 1976 が広範に議論している。我々は、Mendoza, Johnson 1965 の Te-(J-K) 関係を用いて、表1の炭素星有効温度を決めた。Wallerstein 1973 が強調する ように、このような温度はカラー温度と見做されるべきである。我々の推定で はこれらの温度は実際の有効温度と ±300 K 異なる可能性がある。有効温度 のより良い値が得られるまでは、図3における星団中 M-星と C-星の間の大きな ギャップを解釈することは難しい。


 5.議論 

 巨星 HR-図 

 表1から得た LMC 星団巨星は図3の光度・温度図にプロットされた。図中には 基準線として、銀河系球状星団 M 13, 47 Tuc, 古い散開星団 M 67 も描き込ん である。47 Tuc 中の最も赤い 4 星の変光はこれまでに半周期分の観測が完了 し、その最大光度と最小光度も記入した。

 Mould, Aaronson (1979) の炭素星光度は間違いだった 

 炭素星の新しい Mbol は図3上でそれらを 47 Tuc 巨星枝先端から 0.8 - 1.6 mag 上方に位置付けた。しかし、それらは 47 Tuc 変光星の極大時より 0.6 mag 以上明るくはない。これらのミラ型星も炭素星も AGB 星なのではないか?   Mould, Aaronson (1979) がマゼラン雲星団の炭素星に対し与えた Mbol(LMC) = [-5.5, -7], Mbol(SMC) = [-4, -5.1] と比べると、今回我々が与えた Mbol(LMC) = [-4.4, -5.2] は かなり低い。この新しい値は、Mould, Aaronson (1979) AGB 先端光度に関する 彼ら自身の予想値と観測値との矛盾を解消する。明るすぎる炭素星を説明する ため無理やりひねり出した 低ヘリウム量や非常に若い (1 Gyr) 炭素星モデル は不必要になる。
 M-型星 

 図3の LMC 星団 M-型星光度は 47 Tuc 巨星枝先端光度(∼ -3.6 mag) の ±0.5 mag のあたりに散らばっている。やや低メタルの太陽質量星 のモデル計算では、巨星枝先端光度は Mbol ∼ [-3.6, -3.8] mag なので、 一応矛盾はない。星団 M-型星の光度は 47 Tuc 変光星 V1, V2, V3, V4 の 極大光度よりは暗い。LMC M-型星の有効温度は 47 Tuc 巨星枝星のそれより 高く、 M 13 巨星枝星に近い。しかし、LNC 星のメタル量が M 13 ほど低い ことには少なくとも二つの反証がある。
(1) NGC 1846-H39 の CO 指数が観測され、高メタル球状星団 M 71 での 値に近かった。
(2)これくらい高温の星で TiO が観測される Mould, Aaronson (1979) のは M 13 のように低メタルでは無理である。
ここで観測された 3 星団に関しては、以前に中間年齢ではないかという議論 があった。図3を基に再吟味してみよう。Mbol = -3.0 のライン上で、 LMC 巨星と 47 Tuc 巨星との間では log Te の差= 0.06 である。 Sweigart, Gross 1978 の巨星枝モデル計算に依ると、メタル量に関係なく、 巨星枝星の質量、つまり年齢を変えて得られる有効温度の変化は最大で ΔlogTe = 0.04 である。Y = 0.30, Z = 0.01 モデルの場合、それは 赤色巨星質量 0.8 - 1.8 Mo に相当し、年齢差にして 14 Gyr である。 それより高い質量になると、ヘリウムが穏やかに燃焼して高い光度に 達しない。 巨星枝の位置はメタル量に最も敏感ではあるけれど、先に [Fe/H] = -1.8 まで LMC 星団のメタル量を下げることには反対したばかりである。 モデル計算の見直しが必要かも知れない。


 6.まとめ 

(1)LMC 星団内の晩期型星 12 個の近赤外 SED は、LMC フィールド、銀河系 内巨星のそれと同じである。

(2)赤外測光からしっかりした輻射補正が得られた。 DM(LMC)o = 18.6 とすると、星団炭素星7個の平均光度は Mbol = -4.9 である。この値は 47 Tuc 変光星の極大光度より十分の数等明るいだけであるが、明らかに 赤色巨星先端の理論値を超えている。これは LMC 星団炭素星がおそらく AGB 星であることを意味する。また、それはこれらの星団が中間年齢 であるという Mould, Aaronson (1979) の推測を裏付けている。
(3)Mbol-logTe 面上で、LMC 星団 M-型星は M 13 巨星枝先端付近に位置 する。しかし、他の独立な証拠から、LMC 星団のメタル量はより高メタルな 球状星団のそれに近い。これらの M-型星の位置を理論的に説明することは 現在のモデルでは難しい。