LMC 星団 NGC 1783, 1846, 1978 中の最も赤い星 12 個に対し、 1.2 - 2.3 μm 赤外観測を行った。 7/12 は炭素星で、LMC フィールド炭素星 と測光上区別できない。銀河系星の赤外データから輻射等級と温度を導いた。 炭素星の平均輻射等級は -4.9 であった。これは以前に公表された値より 2 等暗い。 | それでも、これらの星を AGB 星と位置付けるに十分なほどには明るい。 3星団中最も明るい M-型星は、銀河系高メタル球状星団に比べ、より高温で 明るい。それは Hodge が UBV 測光から得た結果に合う。M-型星の位置は 恒星モデルにある問題を提供する。 |
炭素星光度から求めた星団年齢 LMC の赤く巨大な星団は、そのカラー、巨星枝の勾配と長さなどから銀河系 球状星団とは年齢、組成比が異なるのではないかと考えられてきた。 Mould, Aaronson (1979) は LMC/SMC の9星団 AGB 先端星の分光サーベイを実施し、多くの炭素星が含ま れていることを確認した。さらに、彼らは炭素星の推定輻射光度から星団年齢 を求めた。 |
炭素星の赤外測光 この論文では NGC 1783、1846、1978 中の最も赤い星々に対する赤外測光の 結果を示す。その中には Mould, Aaronson (1979) が輻射補正 BCs を用いて Mbol を計算した 11 星が含まれる。近赤外 波長帯はこれらの星の輻射が極大になる領域であり、観測から輻射 等級と温度が直接求まる利点がある。 |
観測 観測は CTIO 4m f30 + InSb で行われた。スケール 1".77/mmm と大きい ので星団のように込み合った場所では助けになる。 観測星 NGC 1846 と NGC 1978 では、Hodge 1960 a, b のリストから最も赤い星々 を選んだ。Hesser, Hartwick, Ugarte 1976 の研究では Hodge リストからの 星と同じくらいまたはより明るい星もいくつかあるので、それらも可能な限り 観測した。NGC 1783 では Gascoigne 1962 が見出した最も赤い星を加えた。 表1=結果 表1の第1,2行には観測星の名前、第3−7列に観測等級を示す。各列の一番 下に E(B-V) = 0.6 (van den Bergh 1975) を仮定した補正を載せた。減光曲線 は van de Hulst No. 15 である。 |
![]() 図1.(J-H)o-(H-K)o 二色図。LMC フィールドの晩期型 C-, M- 星 70 個と、銀河系 C-星 32 個から 決めた C- 星と M-星の存在領域。C-領域には炭素星しかないが、 M-領域では M-星が支配的だが、他の星も混じる。図中の曲線は銀河系 K-, M-巨星。白丸 と黒丸は表1から。スペクトル型 Ctm の NGC 1783-G85 は JHK カラーから M-型星としてプロットした。 |
図1=JHK 二色図 Mould, Aaronson (1979) は表1中第8列に1星を除いて、分光分類を与えた。赤外カラーと分光分類を 比べると、炭素星が J-K, H-K カラーで M-星よりずっと赤いことが分かる。 それは図1から明らかである。 CO 指数 表1には炭素星の CO 指数が小さいことも示されている。 |
SED 以上の比較から、LMC フィールド、星団の C-, M-星は銀河系の C-, M-星 とよく似た赤外 SED を持つことが分かった。 |
![]() 図2.銀河系星の観測から導いた (J-K)o に対する K-等級輻射補正 BCK の関係。 BCK による輻射等級 可視等級の変光や込み合い測光エラーを避けるため、赤外データのみから 光度と温度を決めた。BCK = (V-K)o + BCV を求める ために、Mendoza, Johnson 1965 の多色測光データを用い、彼らの赤外システム を我々のシステムに変換し、彼らの観測した炭素星に対する BCK と (J-K) の関係を導いた。その結果が図2である。SEDに関して、銀河系 炭素星とマゼラン雲炭素星に差はなさそうなので、図2の BCK を 表1の炭素星に適用して光度を決定した。表1第10行の輻射等級は DM(LMC) = 18.6 を適用したものである。 Mould, Aaronson (1979) の BC が大きすぎる原因 Mould, Aaronson (1979) は可視カラーから輻射等級を導いた。彼らの方法は LMC 炭素星に対し、幅 15 A の λλ5350,6250 間のカラーを求め、それを、 Fay, Warren, Johnson, Honeycutt (1974a) の銀河系炭素星スキャンデータと比較して、相当するカラーに対する BC から 輻射等級を得るというものである。それらを表1の第11行に示すが、赤外データ から導いた値より平均して 2 等明るい。それらのスペクトルを見ると、 λλ5350,6250 間のカラーはラインブランケッティングの影響を 強く受けることが分かる。LMC と銀河系の炭素星の間で、メタル量やミクシン グ史が違うために、ブランケッティングが大きく異なることは考え得ることで ある。このような効果と、 Mould, Aaronson (1979) の図3に示される、カラーが 1 以下での BC の強い勾配 (カラー変化 0.5 の間に BC は5変わる)とが結びつくと、容易に大きな 系統誤差を生み出す。実際、彼ら自身も (BC, B-C) 関係を用いると Mbol が 1.5 等暗くなることを注意している。 |
![]() 図3.LMC星団星の HR 図。二つの銀河系球状星団、一つの銀河系散開星団、 それに 47 Tuc LPVs(極大と極小)も加えた。 Crabtree, Richer, Westerlund 1976 の炭素星光度 我々の炭素星光度平均値は Crabtree, Richer, Westerlund 1976 の炭素星 光度平均値より暗い。彼らは V, R 測光と BCv-(V-R) 関係を用いた。しかし、 この観測は Richer, Olander, Westerlund 1979 に取って代わられ、新しい結 果は古い光度よりかなり暗い。 M-星の有効温度 Cohen, Frogel Persson 1978 のモデル大気と (J-K)o とから求めた M-星の有効温度を表1の第9列に示す。 C-星の有効温度と図3ギャップの解釈 広帯カラーから炭素星の有効温度を与える問題は Wallerstein 1973, Scalo 1976 が広範に議論している。我々は、Mendoza, Johnson 1965 の Te-(J-K) 関係を用いて、表1の炭素星有効温度を決めた。Wallerstein 1973 が強調する ように、このような温度はカラー温度と見做されるべきである。我々の推定で はこれらの温度は実際の有効温度と ±300 K 異なる可能性がある。有効温度 のより良い値が得られるまでは、図3における星団中 M-星と C-星の間の大きな ギャップを解釈することは難しい。 |
巨星 HR-図 表1から得た LMC 星団巨星は図3の光度・温度図にプロットされた。図中には 基準線として、銀河系球状星団 M 13, 47 Tuc, 古い散開星団 M 67 も描き込ん である。47 Tuc 中の最も赤い 4 星の変光はこれまでに半周期分の観測が完了 し、その最大光度と最小光度も記入した。 Mould, Aaronson (1979) の炭素星光度は間違いだった 炭素星の新しい Mbol は図3上でそれらを 47 Tuc 巨星枝先端から 0.8 - 1.6 mag 上方に位置付けた。しかし、それらは 47 Tuc 変光星の極大時より 0.6 mag 以上明るくはない。これらのミラ型星も炭素星も AGB 星なのではないか? Mould, Aaronson (1979) がマゼラン雲星団の炭素星に対し与えた Mbol(LMC) = [-5.5, -7], Mbol(SMC) = [-4, -5.1] と比べると、今回我々が与えた Mbol(LMC) = [-4.4, -5.2] は かなり低い。この新しい値は、Mould, Aaronson (1979) AGB 先端光度に関する 彼ら自身の予想値と観測値との矛盾を解消する。明るすぎる炭素星を説明する ため無理やりひねり出した 低ヘリウム量や非常に若い (1 Gyr) 炭素星モデル は不必要になる。 |
M-型星 図3の LMC 星団 M-型星光度は 47 Tuc 巨星枝先端光度(∼ -3.6 mag) の ±0.5 mag のあたりに散らばっている。やや低メタルの太陽質量星 のモデル計算では、巨星枝先端光度は Mbol ∼ [-3.6, -3.8] mag なので、 一応矛盾はない。星団 M-型星の光度は 47 Tuc 変光星 V1, V2, V3, V4 の 極大光度よりは暗い。LMC M-型星の有効温度は 47 Tuc 巨星枝星のそれより 高く、 M 13 巨星枝星に近い。しかし、LNC 星のメタル量が M 13 ほど低い ことには少なくとも二つの反証がある。 (1) NGC 1846-H39 の CO 指数が観測され、高メタル球状星団 M 71 での 値に近かった。 (2)これくらい高温の星で TiO が観測される Mould, Aaronson (1979) のは M 13 のように低メタルでは無理である。 ここで観測された 3 星団に関しては、以前に中間年齢ではないかという議論 があった。図3を基に再吟味してみよう。Mbol = -3.0 のライン上で、 LMC 巨星と 47 Tuc 巨星との間では log Te の差= 0.06 である。 Sweigart, Gross 1978 の巨星枝モデル計算に依ると、メタル量に関係なく、 巨星枝星の質量、つまり年齢を変えて得られる有効温度の変化は最大で ΔlogTe = 0.04 である。Y = 0.30, Z = 0.01 モデルの場合、それは 赤色巨星質量 0.8 - 1.8 Mo に相当し、年齢差にして 14 Gyr である。 それより高い質量になると、ヘリウムが穏やかに燃焼して高い光度に 達しない。 巨星枝の位置はメタル量に最も敏感ではあるけれど、先に [Fe/H] = -1.8 まで LMC 星団のメタル量を下げることには反対したばかりである。 モデル計算の見直しが必要かも知れない。 |
(1)LMC 星団内の晩期型星 12 個の近赤外 SED は、LMC フィールド、銀河系
内巨星のそれと同じである。
(2)赤外測光からしっかりした輻射補正が得られた。 DM(LMC)o = 18.6 とすると、星団炭素星7個の平均光度は Mbol = -4.9 である。この値は 47 Tuc 変光星の極大光度より十分の数等明るいだけであるが、明らかに 赤色巨星先端の理論値を超えている。これは LMC 星団炭素星がおそらく AGB 星であることを意味する。また、それはこれらの星団が中間年齢 であるという Mould, Aaronson (1979) の推測を裏付けている。 | (3)Mbol-logTe 面上で、LMC 星団 M-型星は M 13 巨星枝先端付近に位置 する。しかし、他の独立な証拠から、LMC 星団のメタル量はより高メタルな 球状星団のそれに近い。これらの M-型星の位置を理論的に説明することは 現在のモデルでは難しい。 |