論文I の RCB 星 JHKL 観測結果をさらに議論する。重点はダストの温度と 形成である。ランダム雲モデルと適合する様々なダスト温度の証拠が見つかっ た。ダストフラックスが増大中はダスト平均温度が高く、減少中は低いことが わかったが、これも雲モデルに合う。 1500 K 以上のダストが存在する観測的な証拠は見つからなかった。 | 準定常なエディントン駆動星風中の大きく低温の対流セルの上方で温度が 1500 K になるとダストの形成が起きるのではないか。その場合、ダスト形成 は星表面のかなり近くで起きる。それは RCB 遮光の細かい点を説明するのに 必要な条件でもある。このモデルでは極大期の RCB 星のいくつかで見られる 強い C2 バンドも自然に説明可能である。HdC 星も論ずる。 |
この論文は Feast et al. (1997) で展開した RCB 星 JHKL 観測結果に関する議論の発展である。 | 論文の主目的は、赤外二色図上で RCB 星を半解析的に扱うことである。それ を使って、RCB 現象のモデルをテストする。 |
2色図の導入 Feast, Glass (1973) は、二色図上で RCB 星を T 4000 - 6000 K =星と T 800 - 1000 K =シェルの二成分系として説明可能とした。図1−27は この一般的描像が正しいことを確認するが、さらに詳細に踏み込むことを可能 にする。これで星温度は比較的よく決まる。ダスト温度はそれほどでない。 なぜなら、(1) 放射率でかなり形が変わる、(2) ダスト温度に巾がある、から である。 ダスト放射率の影響 ダスト放射率として、 Drain (1985) の a = 100 A 炭素グレインの表を採用した。このダスト半径は J バンドと より短波長の減光観測 Clayton (1996), Feast (1986) から導かれた値である。 シェル放射を黒体の代わりに変形黒体とした場合、二色図経路の低温端から 得られる温度は黒体の時より 200 K 程度低くなる。 Feast (1986) は RCB 星の減光曲線が少なくとも一部は a = 40 - 150 A の非晶質炭素煙 の実験データ Borghesi, Busoletti, Colangeli (1985) と合うことを示した。このデータを採用すると二色図モデル経路は Drain の 放射率の場合と黒体経路との中間になり、シェル温度は黒体温度より約 100 K 低くなる。 雲の特性 星から離れていく雲は様々な距離を持ち、このため雲温度に巾が生じる。 比較のため、準連続的、定常的に放出される雲からなるシェルのカラーを 計算した。雲は放出後 200 日の間光学的に厚く、放出速度は 200 km と仮定 する。このモデルは遮光に伴い、急速な光度低下とゆっくりした回復を示す 点で観測と合う。このモデルでは、放出雲のサイズ、放出方向と視線との 角度、雲の光学的深さが一様かどうか、最初の雲が散逸する前に次の雲が現 れるかどうか等に応じて、様々な深さの極小を生み出す。 Tmax 星の中心から見た立体角は時間と共に一定値を保つとする。近赤外放射の 大部分は雲が可視光で光学的に厚い期間に放出される。ダスト放射は黒体と 仮定する。ダストはある最小距離で形成され、その時のダスト温度 Tmax を 変えたときの結果を表1に示す。観測されるカラーはダストと星の放射が 合わさったものに対するので、モデルフィットに使用する Tmax カラーは 観測カラーより赤い必要がある。 |
一本の線には乗らない 図1−25を見ると、一本の線には乗らないことが分かる。ここで提案する RCB モデルの立場からは、(1) モデルのカラーは雲形成率が一定の場合で、 (2)遮光により星放射光のカラーは変化する、ためと考えられる。 雲による星放射光の赤化 星本体のカラーは、特に星が隠されても彩層が隠されない (Alexander et al 1972) 場合は複雑な変化をする。しかし、近赤外では単純に 赤化だけを考える。減光の比は AJ:AH:AK:AL = 1.00:0.65:0.42:0.21 で、雲の温度は T = 800, 900, 1000 K, シェルの AJ = 3.0 とする。 この減光比は 5500 K の赤化で観測を合わせたときのフィットから求めたもの だが、Draine の a = 100 A グラファイトにも近い。 Borghesi, Busoletti, Colangeli (1985) の非晶炭素煙を採用すると、 5500 K 黒体の赤化カラーは (J-H)o で 0.2 mag 青くなるが、他のカラーは変わらない。 ![]() 表1.様々な Tmax に対するカラー (その温度の黒体カラー?) |
![]() 図1.UW Cen の (J-H)o - (H-K)o 図。白丸:ΔJ 1.0 - 2.5. 小バツ:ΔJ > 2.5. 黒丸:その他. ただし、 白三角 JD 5396, 黒三角 JD 6442 は除く. 矢印= 5500 K 黒体から AJ 3.0 の赤化まで。図上部の下線=黒体。 図上部の上線=グレイン放射率のかかった黒体 図中央の下曲線= 5500 K 黒体と 1000 K 黒体の結合。 図中央の上曲線= AJ 3.0 の 5500 K 黒体と 1000 K 黒体の結合。 大きな十字=雲モデル。 二つのダスト温度 星とシェルをいろいろな割合で組み合わせた単純なモデルでは全ては説明で きない。それにも拘わらず、二つの二色図はダスト温度 1000 K, 800 K が 出てくる。噴出雲モデルは Tmax < 1350 K を与える。 領域Aについて 図1、2では、極小期 ΔJ = 1.0 - 2.5 は白丸、ΔJ > 2.5 は小バツで表される。(H-K) > 1.3 の点は全て ΔJ > 1.0 である。 "A" でマークされた丸の中の点は興味深い。それらは JD 6498 - 6542 で、 その間 ΔJ ∼ 3 であった。ΔJ = 3 で T = 5500 K の黒体と 1000 K [(J-H)-(H-K) 図] か 900 K [(H-K)-(K-L) 図] 黒体を結ぶ経路が この領域 A を通過する。 観測点の散らばり 図1,2の点の散らばりはかなり大きい。ダスト温度の変化、遮光の不完全度、 などが考えられる。ダストカラー温度の幅は不確定であるが、円A内の点が遮光 極小期に他の観測(小さいバツ)より青い側に移動している主な理由は、この 時期は論文Iの図8にみられるように L が急上昇し、ダスト温度が高いから であろう。 |
![]() 図2.UW Cen の (H-K)o - (K-L)o 図。白丸:ΔJ 1.0 - 2.5. 小バツ:ΔJ > 2.5. 黒丸:その他. ただし、 白三角 JD 5396, 黒三角 JD 6442 は除く. 矢印= 5500 K 黒体から AJ 3.0 の赤化まで。図上部の下線=黒体。 図上部の上線=グレイン放射率のかかった黒体 図中央の下曲線= 5500 K 黒体と 1000 K 黒体の結合。 図中央の上曲線= AJ 3.0 の 5500 K 黒体と 1000 K 黒体の結合。 大きな十字=雲モデル。 ダスト温度の変化の証拠 ダストカラー温度が変わっている他の証拠は、遮光極小以外の時期から得ら れる。それはダスト寄与の大きい(H-K)-(K-L) 図でよりよく分かる。図2の L 極大を含む領域B JD 4639 - 4782 をその後の長い L 低下の初期にあたる 領域 C と比べると、後者(領域 C )の L 低下期のシェル温度は前者(領域 B) より低い。これは赤化による星有効温度の変化が原因ではない。なぜなら、 二つの領域間の ΔJ は 0.4 mag 以下だからで、星の有効カラーはほと んど変わらないからである。L がさらに暗くなり JD 6256 の極小付近 図2の 白三角 JD 5396 - 6256 の観測点は 5500 + 800 K 曲線より下に位置する。 ところが、その後 L が上昇し始める領域 D JD 5006 - 6459 では、観測点が 曲線の上方に移る。これはシェルのカラー温度が上がったことを意味する。 (曲線の上下をシェルの温度の上下 と解釈しているらしい。その時の ΔJ に対応する変形黒体=赤化線の途 中と一定シェル温度 Tmax=800 K と結んでも良いのではないか?それとも ΔJ < 0.4 では赤化線で動かない?いずれにせよ、下方側に動かすのは 赤化星では無理でシェル温度を動かす必要がある。図1でも成立するのか はっきりわからない。もしかして不成立? 時間経緯を追う解析が欲しい。) UW Cen の JD5396 (図2の白三角)は JD 6442 と同じくらいの L 等級だ が、L の低下期にあり、得られたシェル温度が低い。これは上に述べた解釈と 合致する。 グレインサイズの影響 レフェリーはグレインサイズの変化の可能性を指摘した。 シェル光度低下期と上昇期でグレインが星から遠いか近いかして、サイズが 違うために減光曲線が異なり、ダスト温度が変わるかも知れない。 Hecht et al 1984 は時間により R = Av/E(B-V) が変わる証拠があると 述べた。しかし、 R の決定には、星が一様な減光を受けているかどうか が大きな影響を持つ。 これは Alexander et al 1972 が述べている効果で、 見かけ上中性の減光 Feast 1986, Cottrell et al 1990 はそれが原因かも 知れない。 |
![]() 図3.V854 Cen の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 アステリスク= JD 7442. 一定カラーモデルは困難 図3,4に赤いカラーが欠けていることは、観測中シェルの寄与が大きく、 星の赤外カラーを決めにくいことを意味する。また、星とシェルのカラーを 固定して、観測点を表現することもこの星の場合難しい。 |
![]() 図4.V854 Cen の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じだが、 5500K + 900K と 5500K(ΔJ=3mag)+900K である。 ΔJ = 3.0 が 3.0 - 4.0 より青い V854 Cen では二色図平均経路の周りの散らばりは他の星より小さい。しか し、それでも JD 7422 アステリスクは ΔJ = 3.0 だが、 ΔJ = 3.0 - 4.0 の JD 8434 - 8455 と 8764 - 8790 点よりも青い。 これは JD 7422 のダスト温度が高かったことを意味する。他の可能性として、 JD 7422 の減光がよりグレイか、星が赤かったかも知れない。 |
![]() 図5.SU Tau の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 高いダスト温度の例 (H-K)o > 1.4 の観測は全て4回の遮光極小時、J > 9.8, ΔJ > 2 である。図6の A 領域 JD 6756 - 6829 は 第3極小に対応し、他の3回の極小より青い。もっとも単純な解釈は この時ダスト温度が高かったというものである。論文 I の図23を見ると、 この第3極小は L が急上昇している最中に起きた。 他の例 同様の現象は遮光極小外でも起きた。図5,6のアステリスク JD 6380 - 6506 点は L が低下途中であるが、(H-K)-(K-L) 図上で、JD 7823 - 7918 の L 上昇期の下に来る。 (J-H)-(H-K) 図上で、これらの時期フラックスは星の光が主であるが、異なる シェル光度の効果を示す。 (ここの議論はよく分からない。 ) |
![]() 図6.SU Tau の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じ 一つの例 ダストカラー温度と L の増減のもう一つの例は、JD 5678 - 4649, 図6の 領域 B で、 L 光度が上昇中である。この時期の観測点は図6で 下降期の JD 4904 - 5023 領域 C より上に位置する。 |
![]() 図7.S Aps の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 データ数不足 S Aps は低温度星なので、図7の (J-H)-(K-L) 図には、 4000 K 黒体が 使われている。観測点がまばらではっきりした結論は出しにくい。 |
![]() 図8.S Aps の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じ 黒体経路から外れる (J-H)-(H-K) 図は黒体経路から外れている。低温のため星 SED が 黒体からずれているのが原因でないか。 |
![]() 図9.V CrA の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 V854 Cen と似る この星は、V854 Cen と、(1) 活動が活発、(2) 赤外超過が大きい、という 点で似ている。 |
![]() 図10.V CrA の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じ カラーと遮光極小 そのもっとも赤い観測点は全て遮光極小 JD 1827, 1927, 5095 の際に得られ た。モデルと比較すると Tmax < 1350 K となる。 |
![]() 図11.R CrB の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 観測点は比較的まばらであるが、他の星と似る。 |
![]() 図12.R CrB の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じ |
![]() 図13.RZ Nor の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 |
![]() 図14.RZ Nor の (H-K)-(K-L) 図。線は図2と同じ |
![]() 図15.U Aqr の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 |
![]() 図16.WX CrA の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 赤外超過は小さく、深い極小は起きない。興味深いのは与えられた (H-K) に対し、(J-H) の幅が大きいことである。その理由ははっきりしない。 |
![]() 図17.WX CrA の (H-K)-(K-L) 図。赤化等は図2に同じ。 |
![]() 図19.RS Tel の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 |
![]() 図19.RS Tel の (H-K)-(K-L) 図。赤化等は図2に同じ。 |
![]() 図20.GU Sgr の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 |
![]() 図21.GU Sgr の (H-K)-(K-L) 図。赤化等は図2に同じ。 |
![]() 図22.RY Sgr の (J-H)-(H-K) 図。赤化等は図1に同じ。 ![]() 図23.RY Sgr の (H-K)-(K-L) 図。赤化等は図2に同じ。 ![]() 図24.RY Sgr の (H-K)-(K-L) の拡大図。赤化等は図2に同じ。 |
この星の2色図は大きな散らばりを示す。それが、この星によく知られて
いる脈動変光で全て説明はされないことは図中の白丸と白三角で示される。
それらは共に遮光外の時期の観測で、白丸は JD 4429 - 4476 (ほぼ
一変光周期)、白三角は JD 5543 - 5622 (ほぼ2周期)である。
それらは、脈動変光ではデータの散らばりの一部しか説明できないことを
示す。他の CBR 星と同様、この散らばりは星自体のカラーの変化とシェル
温度の変化が原因である。
![]() 図25.RY Sgr の (H-K)-(K-L) の拡大図。赤化等は図2に同じ。 |
![]() 図26.RCB と HdC 星 の (J-H)-(H-K) 図。 十字=HD175893. 黒丸=HdC 星。大十字= Y Mus. 白丸=他の RCB 星。直線=黒体。曲線= 5500K 黒体+1000K黒体 Y Mus と HdC 星には L の赤外超過がない。それらの (J-H), (H-K) カラー は星周放射で汚されていない星の固有カラーとみなせる。そして それらは RCB の熱いグループの星自身のカラーとみなせる。 水素欠乏星の (J-H)-(K-K) カラーは黒体に近い。これは通常星が H- を主要オパシティとすることに合う。 Y Mus は興味ある天体で、典型的 RCB 極小が Payne 1928 により報告された。 そのほかには 1953 に短期の光度低下が観測されただけである。 しかし、 SAAO 1979 - 1988 の 38 回の赤外観測はこの星が 1981 に暗かったことを示す。75 cm の観測はぬか星のため困難 であったが、 1983 には M, N の超過が観測されている。 |
![]() 図27.RCB と HdC 星 の (H-K)-(K-L) 図。 十字=HD175893. 黒丸=HdC 星。大十字= Y Mus. 白丸=他の RCB 星。直線=黒体。曲線= 5500K 黒体+900K黒体 |
カラー温度の差 一般には、黒体ラインまで外挿すると、(J-H)-(H-K) プロットはダストカラー 温度 1000K, (H-K)-(K-L) プロットは 900 K になる。もし、2.1 節で述べた ようにグレイン放射率を黒体にかけると、その温度は 200 K 程度低くなる。 しかし、(J-H)-(H-K) プロットと (H-K)-(K-L) プロットからの温度差は残る。 もし、ダスト雲が赤外で光学的に厚いと、黒体カラーへの補正はもっと小さく なる。 Tmax の意味 この結果が RCB 全体で共通している。特に S Aps のように普通の RCB 星 より表面温度が 2000 K 低い星でさえもそうなので、少なくても定性的には、 ダスト温度はダスト自体の性質、つまりダストが形成される最高温度で 決まると考えられる。 噴出雲モデル (J-H)-(H-K) 図のカラー温度は (H-K)-(K-L) 図のカラー温度より高い。 これはいろいろな温度を持つ複数のダストシェルを示唆する。噴出雲モデル =一定割合で連続的に雲が噴出されるモデルはそのような状態を予想する。 観測されるダストカラーは図中の大十字で示されるモデル系列に乗るに違い ない。この系列上のそれぞれの位置はダストの最高温度=ダスト形成温度 Tmax に対応する。第1章で示されたように、観測からは Tmax の上限を知る ことができる。大部分の場合、これは大体 1500 K くらいであるが、いくつか の場合ではそれよりかなり低い 1350 K となる。(J-H)-(H-K) 図と (H-K)-(K-L) 図のどちらからも似た Tmax が得られる。上限温度を決めるのに使われるカラー が星の寄与で影響されるとこれは期待できない。こうして、実際の Tmax の値 は決められた上限値に近いと思われる。上の議論からはグレイン放射率を含め るとこれらの温度を多分 200 K くらい下げることを予想する。これらダスト 温度への上限は Salpeter 1977 などによる理論値とも合う。それらは炭素グ レインに対し、 2000 K を与えている。ノバでは背景赤外黒体放射 1000 K でのダスト形成が報告されている。Harrison, Strinfellow 1994 は Nova Her 1991 に対し、炭素ダストが 2000 K で形成されたと述べている。ただし、 この温度は、フリーフリー放射など他の貢献を考慮すると下がる可能性がある。 |
高温ダスト形成はない RCB 星の表面近くで炭素グレインを形成する必要があるため、過去には通常 適用される凝結温度より高い温度でグレイン形成が起きると考えられた。例えば、 Alexander et al 1972, Clayton et al 1992, Donn 1967 を見よ。 今回の結果はそれらを支持しない。ここで採用された単純なモデルはダストが ある温度で急速に形成されることを示す。小さな非晶炭素が 1500 K 以上の 温度で形成される可能性は排除できないが、その証拠はない。観測からはダス トの大部分が 1500 K かそれより少し低い温度で形成されることを示す。 ダスト平均温度の変化は星輻射の変化が原因でない 上で示されたように、いくつかの RCB 星でダストの平均カラー温度が時間 と共に変化する。これは星からの加熱フラックスが変化するためだろう。その ような変化は脈動変光に伴い、月の時間スケールで予期される。RCB 脈動変光 が最も大きく規則的な星は RY Sgr である。論文 III ではこの星を調べる。 星の変光効果は比較的小さく、またダスト温度変化は J が極大に留まっている 最中に起きているので、星の変化がダスト温度変化を引き起こすという説明は 排除される。可能性があるのは、ダスト分布が定常的でない効果である。もし 雲の放出率が増加していくなら、星の近距離にあるダストの割合が増え、その 平均温度は上がるだろう。逆にダスト形成が減少していく時には平均温度が下 がるだろう。ダスト形成率の変化は明らかに L 光度の変化に結び付くであろう。 こうして、L 上昇期の平均ダスト温度は高くなると予想される。 そのような例は UW Cen, SU Tau, RS Tel, RY Sgr で見つかった。 |
星の表面近くで雲を作る必要 RCB 星でのダスト形成は表面付近で可能かどうかの興味もあり、 活発に議論されてきた。Clayton 1996, Jeffery, Herber 1996 を 見よ。もしダストの大部分が 1500 K 以下で形成されるなら、 Te = 6000 K の星表面から 10 Rs 以上離れる必要がある。 しかし、 RCB 星の遮光は速いと数日で起こり、増光はゆっくり進む。 そして、少なくとも幾つかの場合、遮光の初期に赤化は中性である。噴出雲 モデルは最初星の一部のみを覆うダスト雲の形成から始まる。ダスト雲はその 後膨張して星本体、次に外側の彩層をも覆うのである。単純な幾何学から、 もし、雲が 10 Rs の距離で星を覆い始め、星中心からの立体角一定の形状を 保ちながら 200 km/s で星から離れていく場合、雲の大きさが星を完全に覆う のに数日では不可能である。噴出雲モデルが上手く働くには雲の形成が星表面 のもっと近くで起きる必要がある。実際 Feast 1986 のモデルでは、ダストを 星表面で形成させた。 却下モデル例 Rs = 85 Ro, Te = 6000 K の RCB 星を考える。星表面から 2 Rs で発生した ダスト雲を星中心から見る立体角を半角 10° とし、ダスト速度 200 km/s を仮定すると遮光のタイムスケールは 3.4 日となる。しかし、その時ダスト 温度は 3000 K となり却下される。 対流セル Wdowiak (1975) は巨大対流セルの低温部でダストが形成されると提案した。 これは局所的なダスト形成の基本メカニズムを提供する点で魅力的な考えで あるが、グレイン形成が可能になるほど低温になるとは思えない。Feast 1996 は RCB 星で観測される 10 km/s 程度の「彩層」流が連続的な質量放出を表す と提案した。これは Asplund, Gustafsson 1996 が述べているエディントン 限界超えの星で起こる輻射駆動流のようだ。Feast 1996 はダスト形成がこの 流れに生じる不安定の中で起きると考えた。この機構を巨大対流セルと結びつ けると面白いことになる。対流セルにより、局所的に温度が 3000 - 4000 K まで下がるとする。そこでは上空 2 Rs の地点でダスト形成が可能な温度に まで低下する。それに加えて、対流セルが全体流の内部に不安定を引き起こし、 ダスト形成をさらに発生しやすくする。巨大対流セルの反転時間は極めて短い。 恒星中心からの半角 20° を張るセルではそれは 1 月程度と Feast96 は 評価した。この期間の間にダスト雲は 10 Rs まで吹き飛ばされる。したがっ て表面部が正常温度に復帰することによるダストの蒸発はありそうにない。 また、興味深いのは Asplund, Gustafsson 1996 は RCB 星の超エディントン 限界光度では全体的不安定性より局所不安定の方が生じやすいとした。 「対流」セルはこの局所不安定と関連するのかも知れない。 |
このモデルでは RY Sgr のような脈動変光星では極小で星表面 全体の温度が低いときには対流セルの低温部が発生しやすい。実際、Pugach 1977 は RY Sgr に関して、統計的に脈動位相と遮光極小とに相関があると 述べている。 分子形成はどこで? グレイン形成に先立ち分子形成が起きそうなものである。しかし、遮光期に 分子吸収線が観測された例は少ない。これはグレイン形成が星表面の限られた 領域でしか起きないことと矛盾しない。しかし、星表面が最初から光学的に 薄いダスト雲で覆われ、それが次第に光学的に厚くなるような場合、例えば V854 Cen の 1988 年遮光、のような時には強い C2 吸収帯が 観測された。また、好適条件に恵まれれば対流セルの上方で分子が形成される こともありうる。 R CrB で極大時期に C2 が観測されるのは これを意味している。 分子強度と星カラー Searle 1961 の R CrB, Danziger 1965 の RY Sgr 観測は C 2 存在量が光球で期待される値であることを示した。 また、 Clayton et al 1995 は R CrB の分子帯強度が B-V カラーと相関する ことを発見した。しかし、一方光球起源と思えない分子吸収の例もある。 星表面より上方に分子を含む雲が存在するのかも知れない。 分子励起温度 Rao et al (1990) は R CrB の浅い遮光極小 ΔV = 1.4 mag 時期の スペクトルから、その光球温度が極大期と等しいことを見出した。しかし、 分子帯強度と低励起原子線は強くなっていた。彼らはこれを星の上空に低温の 雲が存在するためと解釈した。Lambert, Rao, Giridhar 1990 は 深い極小の後の回復初期に強い C2 吸収を観測した。彼らが観測 した回転温度は 4000 - 5000 K であり、光球温度 7000 K よりかなり低いが、 ダストシェルの予想温度よりは遥かに高い。どちらの観測でも吸収線の速度は 輻射圧で吹き飛ばされるダストに伴うなら予想される大きな負速度を示さなか った。したがって、分子雲は光球の上にできるが、必ずしもダストを伴うもので はない。ダスト雲と同様に分子雲にとっても、もちろん光球温度の低下、例え ば脈動、は好条件である。しかし、そのような温度変化が観測される現象の引 き金になっているかどうかは確定していない。 衝撃波モデル RY Sgr で二重線が見つかり、それが衝撃波のせいとされてから、衝撃波の 非平衡条件下での炭素グレイン形成が活発に研究された。この過程に好意的な レビューとして Clayton 1996 を見よ。理論的な研究としては Woitke, Goeres, Seldmayer 1996 が完全で、どうやって星表面から 1.5 - 3.0 Rs の距離で 1500 K 以下のガス温度を達成するかの機構を論じている。これは魅力的ではあるが、 RY Sgr 以外ではそれほど大きな脈動を示す RCB 星が見つかっていないのが 難点である。 |
(1) ダスト温度がシェル内で広がりがある。 ダスト温度がシェル内で広がりを持つことの証拠があり、それは噴出雲モデルに合う。 (2)高温ダスト 1500 K 以上のダストが大量に存在する証拠はない。ただ、最高温度はそれより 僅かに小さいだけである。 L 光度が高まる際にはダスト温度が高く、L 光度が低まる際にはダスト温度が低い。 |
(4)ダスト温度 低温の RCB 星 S Aps でも、平均ダスト温度は他の高温 RCB と変わらない。 (5) HdC 星 HdC 星は赤外超過がない。その JHKL カラーは黒体に近く、 H- オパシティ欠如に合う。 (6)ダスト形成 ダストは大きな対流セルの上方星表面から 2 Rs くらいで、超エディントン 限界光度での星風中に形成される。セル上方での輻射が弱いことが不安定を 引き起こし、ダスト形成につながる。そのような場所では C2 も 起きる。 |
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