The R CrB Stars - I. Infrared Photometry and Long-Term Variations


Feast, Carter, Roberts, Marang, Catchpole
1997 MN 285, 317 - 338




 アブストラクト 

 12個の R CrB 星の JHKL 測光を最長 23 年間行った。他の RCB 星 数個と5個の HdC 星についての限られた赤外測光の結果も報告する。 それらから J バンドにおける長期変動とLバンドでの星周ダストの 性質を調べた。全ての RCB 星は数百日から数千日のタイムスケールで ダストからの放射に変動を示す。Lバンドでのダストフラックスの幅は 3 等にまで達する。変動幅が大きいほどタイムスケールは長くなる。 時には 10,000 日を超す永年変化が見られる。  R CrB それ自体は周期 1260 日のセミレギュラー変動を示す点で 典型的である。減光による極小とダスト放射量変化との間には直接の 関係は認められない。しかし、ダスト放射と遮光頻度との間に統計的な 関係はありそうである。 ダスト放出に固定幾何学を考えるモデルは排除されそうで、観測は ダストがランダムに噴き出すモデルを支持する。大きな赤外超過と 高い遮光活動は水素存在比が普通より高いことを示唆する。


 1.イントロダクション 

 RCB 星とは 

 RCB 星は低水素、高炭素で、可視で最大 7 等に及ぶランダムな減光を 示す星である。これらの星は多分、再生した惑星状星雲か融合した白色矮星 であろうが、その起源はまだ不明である。LMC の3 RCB 星は光度が大きい が、その運動学はそれらが小質量星であることを示唆する。RCB 星のレビュー は Feast 1996, Clayton 1996, Lambert, Lao 1994 を見よ。

 赤外ダスト放射光 

 深い極小はダスト減光によると考えられてきた。900 K ダストに よる赤外超過が R CrB (Stein et al 1969), RY Sgr'Lee,Feast 1973 により発見されている。Feast, Glass 1973 はそれが RCB 星一般の 現象であることを示した。Forrest, Gillett,Stein 1972 は、R CrB が極小に 入ってもダスト赤外放射のフラックスに大きな変化が見られないことを見出 した。これは遮光の原因となるダスト雲が球対称でないことを意味する。 脈動 RCB 星 RY Sgr の場合、 Feast et al 1977 は 3.5 μm L バンド フラックス(主にダスト放射)が脈動周期で変化し、放射ダストが星により 加熱されていることを明らかにした。Feast 1979, Menzies, Feast 1997 に拠れば、L バンドの脈動周期変光は遮光極小期にも変化しない。これは 中心星の状態が遮光現象期間中大きな変化を経ていないことを意味する。 Feast 1986 は R CrB の平均質量放出率を 10-6 Mo/yr と 見積もった。

 フッと噴き出す雲 

 RY Sgr の広範な極小時分光観測の結果(Alexander et al.1972) は、 輻射圧で吹き飛ばされるダストの噴出雲が視線を遮るという考えで 上手く説明される。噴出速度は 200 km/s 程度である。
 L バンドの長期変化 

 R CrB の場合、L 等級はおそらく 1100 日周期、振幅 1.5 等で変光して いるようだ (Strecker 1975)。Feast et al 1977 は RY Sgr も 周期は未定だが長い周期の幅 1.5 等 L バンド変光を観測した。 これらの観測はダスト形成率が不明の原因により、長期の変化を被る ことを示す。したがって、ダストシェルの変化を予期詳しく調べる必要が ある。

 シリーズの説明 

 これらの理由で JHKL 測光を 23 年間続けてきた。このシリーズの論文は4つ だす予定である。

(I) 本論文は赤外測光と長期変化。

(II)Feast 1997 は赤外測光の解析。

(III) Menzies,Feast 1997 EY Sgr の脈動と極小

(IV) Feast in preparation. 星とダストの性質。

 二つのグループ 

 Lawson et al 1990 は分光温度により RCB 星を2グループに分けた。 注意しておくと、 RCB 星の黒体カラー温度は分光温度に比べ約 1000 K 低い。また、いくつかの HdC 星も観測した。これらの星は遮光現象は示さ ないが、化学組成は RCB 星と似ており、温度は (I) と (II) の 中間である。

(I)高温グループ。Tsp = 7000 K
UW Cen, V854 Cen, V CrA, R CrB, RZ Nor, RY Sgr, GU Sgr, SU Tau, RS Tel

(II)低温グループ。 Tsp = 5000 K
S Aps, WX CrA, U Aqr
強い C2 バンドが特徴。


 2.赤外観測 

 観測天体 

 JHKL 観測天体は 11 RCB 星、S Aps, UW Cen, V854 Cen, V CrA, WX CrA, R CrB, RZ Nor, RY Sgr, GU Sgr, SU Tau, RS Tel である。 U Aqr は JHK測光のみである。観測結果は表1に示す。表2に JHKL測光を一回行ったのみの U Aqr, Y Mus, VZ Sgr, V3795 Sgr, と非 RCB の HdC 星 HD137613, 173409, 175893, 182040 の 観測結果を示す。

 装置 

 観測の大部分は SAAO 0.75m 鏡に取り付けた MkII 赤外測光器で行った。 観測結果は Carter 1990 の標準星を用いて SAAO システムで表現される。

 エラー 

 観測日付は JD - 2440000 で示した。 多くの観測の精度は 0.01 等より良い。しかし、遮光により観測時に暗 かった天体では精度はそれより悪い。表1,2ではエラーコードを以下の ようにした。

≤ 0.03 = 1;
0.03 - 0.06 = 2 ;
0.06 - 0.10 = 3 ;
0.10 - 0.20 = 4 ;
> 0.40 = 6 ;

 間違った星を観測 

 RZ Nor(JD6454, 6458), GU Sgr (JD 7311, 7735), RS Tel (JD9263) のカ ラーは正常星のそれであり、間違った星を観測したのであろう。これらの 観測は議論から省いた。

 可視星間減光 

 星間減光は Whitelock, Feast, Catchpole 1986 が採用した式、

   Av = 0.099(1/sin(b) - 1)[1 - exp(-10*r*sin(b))]

を用いた。これは Tammann, Sandage, Yahil 1979 から取られたものである。 RCB 星までの距離は Mv = -5 を仮定して、文献にある極大時可視等級から 決めた。使用した減光値は、S Aps, 0.38; U Aqr, 0.03; UW Cen. 0.58; V854 Cen, 0.20; V CrA, 0.27; WX CrA, 0.58; R CrB, 0.03; T Mus, 1.82; RZ Nor, 1.47; RY Sgr, 0.20; VZ Sgr, 0.85; GU Sgr, 0.98; V3795 Sgr, 1.40; SU Tau, 1.17; RS Tel, 0.31; HD137613, 0.13; HD148839, 0.34: HF173409, 0.34; HD175893, 0.31; HD182040, 0.37 である。 Alcock et al. 1996 は RCB 星光度に幅があることを示唆している。 その場合、距離が変化するため、星間減光に不定性が生じる。しかし、 結論にはあまり影響しない。HdC 星の減光はそれらが RCB 星と同じ光度を 有すると仮定して求めた。

 赤外減光 

 赤外減光則は van de Hulst No. 15 に基づき、

Av : E(J-H) : E(H-K) : E(K-L) = 1 : 0.105 : 0.052 : 0.043 を仮定した。

表2.RCB 星と HdC 星の赤外観測


 表1.RCB 星の赤外測光 



















 3.観測星の長期変化 




図3.S Aps の JHKL 光度曲線




図8.UW Cen の JHKL 光度曲線




図15.V CrA の JHKL 光度曲線




図18.R CrB の JHKL 光度曲線


図21.RY Sgr の JHKL 光度曲線




図23.SU Tau の JHKL 光度曲線



図7.U Aqr の JHKL 光度曲線




図10.V854 Cen の JHKL 光度曲線




図17.WX CrA の JHKL 光度曲線




図20.RZ Nor の JHKL 光度曲線




図22.GU Sgr の JHKL 光度曲線




図24.RS Tel の JHKL 光度曲線

 3.1.一般には 

 RCB 星の変光 

 図 3, 7, 8, 10, 15, 17, 18, 20 - 24 は表1の等級の図示である。これら から J 等級のくぼみが深く鋭いことが分かる。これらの窪みは可視光極小に 対応する。窪みは H, K と浅くなり、 L では検出されない。これは、 J 光が星本体、L 光が熱い星周ダストから来ると考えると理解できる。

 L 等級への星の寄与分 

 Feast, Glass 1973 は 4000 - 6000 K BB の星と 800 - 1000 K BBの星周 ダストからの光の組み合わせで RCB 星の SED が再現できることを述べている。 図1にはそれらの黒体温度の組み合わせに対して、L 等級への 星の寄与 = δL を (J-L)o の関数として表した。


図1.L 等級への星の寄与 = δL と (J-L)o の関係。 白三角: (Ts, Td) = (7000, 1000). バツ: (Ts, Td) = (7000, 800). 白丸: (Ts, Td) = (5000, 800). 黒三角: (Ts, Td) = (4000, 800).  
 Jmax-L  

 表3には極大時の平均 Jo 等級 Jmax と L バンド光度の 極大と極小の L 等級との差を示す。
(意味が分からない )



表3. (Jmax-L)o の最大値と最小値。
(意味が分からない )
 


 星とシェルの比率 

 表4には(Jmax-L) の平均値または単観測値を示す。これを図1と比べると、 一般に L バンドフラックスは主に RCB 星のシェルから来ることが分かる。 また極大時には L バンドフラックスは主に RCB 星本体から来ることが分かる。 極小時外では J 等級へのシェルからの寄与は 0.1 mag 以下である。 以下の議論では、極小時の外では J は星、L はシェルと考える。その 比率は図1から決まるとする。

 カラー温度 

 ある場合には RCB シェルからの総輻射の比率を近似的にでも求めることが 役に立つ。星からの輻射は大部分が短波長帯にあり、赤外観測から導かれる カラー温度は可視波長帯でのカラー温度とは異なる。

 θ = Fbol(shell)/Fbol(star) 

 図2には θ = Fbol(shell)/Fbol(star) と (J-L)o の関係を示す。 図1と比べると、 θ の上限は 0.5 つまり、シェルからのフラックス は最大 50 % である。L 等級の変化が大きい星を集めた表3では 50 % から 10 % にわたる。星とシェルの総輻射が一定の場合、これは星の輻射等級が 0.7 等変わることを意味する。
(総輻射一定は確立されている? )



図2.θ = Fbol(shaell)/Fbol(star) と (J-L)o の関係。 白三角: (Ts, Td) = (7000, 1000). バツ: (Ts, Td) = (7000, 800).

表4.(Jmax-L) の平均値または単観測値

 3.2. S Aps 



 遮光タイムスケール 

 図3の赤外観測は 23 年にわたる。この間、5回の極小があった。最近 JD 9200 付近の極小は J では観測されなかった。この時の H 等級が過去で最も 暗かったので、 J では見えなかったのだろう。JD 2500 付近の散らばりは いくらかは表1の精度を見ると観測エラーのためである。L 等級は不規則に 約1等の幅で変化する。しかし、L バンドで暗いときには星からの寄与が大き いことを考慮し、星本体を 4000 K 黒体とすると、シェル輻射としては ΔLsh = 1.5 mag であろう。L 変化のタイムスケールは 1000 日程度で あるが、これは一部は観測の頻度と期間にもよる。永年変化は見えない。

 JD 4700 極小 

 図 3 を見ると JD 4700, 6500, 7700 の可視遮光後には L 等級が 0.5 mag 明るくなっている。図4では、J に見える JD 4700 J 極小後の増光期 JD 4686 - 4819 に L 等級の目立った変化はない。しかし、 JD 5010 - 5033 に J 等級 が極大を回復する時には L 等級も 0.4 等明るくなっている。

 JD 6500 極小 

 図 5 に示すもう一つの遮光 JD 6500 では JD 6439 - 6638 の極小期に L 等級は明るくなっていく。しかしこれは図3に見えるより長期の増光の 影響かもしれない。

 JD 7700 極小 

 図6では極小期に L が浅い極小を示すことがわかる。これは星からの寄与が 減った効果かも知れない。図3を見ると、J が極小後に増光する際に L が極大 を通過することが分かる。

 L の極大 

 この三つのケースでは L 増光が直前の遮光と物理的に関連しているのかどうか を判断できない。


図5.S Aps JD 6500 遮光期の J, L 変化。


図4.S Aps JD 4700 遮光期の J, L 変化。




図6.S Aps JD 7700 遮光期の J, L 変化。

 3.3.U Aqr 

 図 7 には16年間の JHK 観測を示す。3回の極小が観測された。ΔJ=0.4 の極小 期以外でも J 等級はかなりの変動を示す。観測エラーは変動幅より小さい。表2の 1.9 m 望遠鏡 HJKL 等級は (J-L)o = 2.5 を示す。かなりのダストシェルが存在することがわかる。

 3.4.UW Cen 

 ダスト形成低下 

 赤外観測は 23 年間行われた。図8でもっとも目立つのは J 変光で JD 4000 と 7000 付近で多重極小が見られることである。両期間の中間では J 極大が 2000 日間続いた。JD 5000 - 6200 では L 光度曲線が一貫して低下している。 そしてその後急な上昇に転じている。L 光度低下は J 光度の安定期と重なっており、 ダスト形成が、視線に重なる領域だけでなく全体として、この時期に低下して いたことを示唆する。L 光度低下は JD 5006、最終遮光からの J 等級回復まで には既に始まっていた。

 L 光度極小 

 JD 6219 の L 極小の時に (J-L)o = 1.54 で青い。図1から Tstar = 6000 K として δL = 0.5, Lsh = 6.8 となる。したがって、この星寄与分補正 を行った後のシェルの L 等級振幅は ΔLsh = 2.7 mag となる。シェルフラックス はタイムスケール 2000 日で変化しているが、規則性は認められない。

図9.UW Cen JD 4300 - 4400 遮光期の J, L 変化。

 J 等級と L 等級の間に反相関なし 

 J 遮光極小期での J 等級と L 等級の間に反相関が存在しないことは、図9 JD 4309 - 4363 に明らかである。点の散らばりは脈動があるのかも知れない。 L が長期低落する JD 5000 - 6200 の間 J は一定であるが、この期間に V が僅かに明るくなることが知られている。これは論文 IV で議論する。


 3.5.V854 Cen 

 高水素量と頻繁な遮光 

 この星は最近の 1986 年に McNaught, Dawes により発見された。したがって 観測期間も 6.5 年と短い。もし FG Sge が RCB 星に含まれなければ、この星 は分光観測された RCB 星の中で最も水素量が多い。この星はまた発見以来 RCB 星の中で最も頻繁に極小を繰り返す星としても有名である。図10を 見ると J 変光が常に起きていることが分かる。ただし、活動性の確認には より長期の観測が必要である。例えば、図8を見ると分かるが、UW Cen は 2000 日間非常に活動的だが、 R CrB 自体は 19 世紀第2四半期の間極小 を起こしていない。

 L バンド 

 図10に見えるように、L バンドでは 1000 日タイムスケールの大振幅 変動はない。しかし、長期の観測が行われないと確証はない。図11には V854 Cen JD 7200 - 7430 の J, L 変化が示されている。J が極大に向かって 落ちていく際に L も落ちることが目に付く。これはダストを加熱している星 の光度がその時期低下しているのかも知れない。図12の JD 7720 - 7760 J が増光している時には L は一定である。図13 JD 8000 - 8500 では 最初の J 増光では L もそれについて行くのだが、 JD = 8100 で J 増光が 止まっても L 増光は止まらない。図11、13、14を見ての印象は タイムスケール 200 日のゆっくりした変化は J と無関係なようである。


図12.V854 Cen JD 7700 - 7800 の J, L 変化。


図11.V854 Cen JD 7100 - 7500 の J, L 変化。




図13.V854 Cen JD 8000 - 8500 の J, L 変化。


 3.6.V CrA 

 図15に示されるようにこの星は22年間にわたり極めて活動的であった。 4回の極小が記録されている。さらに J 曲線はこの期間継続的な活動の印象 を与える。というのは、極大期でも 1 等程度の散らばりを示しているからで ある。それに赤い (J-L)o を加えると、この星は V854 Cen と似た高水素比 の RCB 星という可能性がある。
 図15は L が幅 0.5 等で不規則に変化することを示す。L の平均値は 10,000 日の間に 0.6 等の永年増光を示す。図16に JD 3680 極小時に L = 一定を示す。

 3.7.WX CrA 

 この星は S Aps と似て低温の RCB 星である。図17に示すように観測は 21 年間に及ぶ。0.75 m 鏡ビームにはぬか星の混入が僅かにある。最初の5個 と最後の1個の観測は 1.9 m による。深い J 極小はないが、0.1 等幅の変 動がある。Beatson 1978 の可視観測によると、遮光が JD 1050 と 2650 に 始まっている。また深い極小以外でも多分不規則な 1 mag 変光を繰り返す。 シェルの L バンド成分 Lsh はこの期間に 1.5 - 2 mag の不規則変動を示す。 幅の大きさは星成分の補正による。

図16.V CrA JD 3600 - 3800 の J, L 変化。


 3.8. R CrB 

 半規則的な L 変光 

 SAAO 以外の赤外測光が存在する唯一の RCB 星である。SAAO データは図18 に示す。図19には Strecker 1975 の JD 0070 - 2256 L データを 示す。 SAAO と Jones et al 1990 の JD 5396 - 8388 データも示す。 Humphreys, Ney 1974 は シェルの L 変化が半規則的ではないかと述べた。 周期 P = 1260 日を仮定し、Strecker の第一極小 JD 0640 と第一極大  JD 1000 に基づいた極大と極小の予想日を図の上枠と下枠に示す。 図19を見ると、平均して下 L = 2.5 の方が上 L = 2.1 より暗く、 振幅も 1.6 mag から 0.9 mag へと小さくなっているが、周期自体は 全体によく合っている。JD 5500 と 7750 付近の L 極小は可視遮光極小時に 起きている。その時の L には星成分の寄与が小さいと考えられる。一方、 JD 6500 L 極小は J 極大期に起き、したがって L への星成分寄与が大きい と考えられる。これを考慮すると、この時期の Lsh もその前後 JD 5500 と 7750 の L 極小期と同じくらいと考えられる。Jones et al による JD 6055 点はその前後と大きく異なるが、図19の全般的な散らばりを見ると異常とは 言えない。

 その他の観測 

 図19の上下間には赤外観測記録は4回しかない。しかし、それでは 周期性の研究には不十分である。

 L の周期性? 

 他の RCB に比べ R CrB 星には周期性を 疑わせる兆候が多いが、図18の遮光極小と L 極小の間に明白な相関は 見えない。

図19.R CrB の L 変化。上: Strecker データ。下:黒丸=この論文。 バツ=Jones et al. 短い縦線= JD 1260 期の予想極小と極大。  


 3.9.RZ Nor 

 可視遮光に対応赤外観測がない 

 図20のデータは 13 年間で深い J 極小が1回記録されている。 可視観測(Bateson) では JD 4150 に短い遮光があるが、JD 4095 - 4321 の 赤外観測は欠けている。JD 5300 の浅い遮光も赤外観測がない。

 変動の様子 

 比較的短期間に J も L も 0.5 等くらいの変動を繰り返す。L で 1000 日 程度の長周期変光の証拠はないが、十分の数等程度の永年変化が 13 年 を超えるタイムスケールではあるのかも知れない。

 RY Sgr 

 38 日脈動 

 23 年間の赤外観測期間中に J 極小が 5 回あった。活動的な星である。 J 極大期にはっきり見える J の散らばりはおそらく 38 日周期の脈動の結果 である。脈動は L のダスト放射 (Feast et al 1977, 論文 III)にはっきり 反映されている。

 L の長期変動 

 図21には 1000 - 2000 日タイムスケールの大きな L 等級変化が示され ている。特に目立つのは、 JD 2700, 4200, 7700 の L 極小である。L 変光 曲線の特徴はゆっくりした光度低下と急速な回復である。この点及びタイム スケールで UW Cen と似ている。長周期変光の振幅は 2.1 等であるが、暗い 時期に星からの寄与が大きいことを考えると、ΔLsh = 2.7 mag となる。 この値も UW Cen と近い。

 J - L 対応 

 もう一つ JD 6000 から JD 8000 にかけて L 光度が一方的に低下している。 その間 J は極大を維持している。この時期の終わり頃に Lsh は J 遮光 極小を上回っている。JD 3346, 5000 の J 極小は L 極大に対応するが、JD 8000 の J 極小は L が急速に明るくなる途中で起きた。論文 III でこの星を 議論する。

 3.11.GU Sgr 

 図22には 20 年超えの赤外観測を示す。二つの遮光極小の間 4000 日は 静謐である。第2極小 JD 7800 は極めて深く ΔJ > 5 mag である。 L 等級の変動は大きくその巾は 2 mag 以上であり、星の寄与を補正すると、 ΔLsh > 3 mag となる。変動タイムスケールは 2000 - 3000 日 で、最初の L 極大は遮光極小直後に、次の L 極大は直前に起きた。 遮光と L 変動に相関はないようだが、JD 7000 - 8000 の L 低下期に起きた 第2遮光極小期には L 変化の停止が観測された。

 3.12.SU Tau 

  

 図23では 15 年間に4回の遮光極小が起きた。L 曲線で目立つのは JD 6500 の極小である。表3と図1を見ると、遮光極小外では L フラックスの かなりが星起源と分かる。これを考えると ΔLsh = 2 mag. になる。 L の極大と極小の間隔は 2000 日であるが、その間の L 光度曲線は大変乱れ ている。多分一番目立つ変光タイムスケールは 1000 日であろう。 加えて、6000 日で ΔL = 0.4 mag の長期の光度低下がある。

 J, L 変化の比較 

 図23と表1 見ると、 JD 3848 - 3924 の期間 L は 4.56 でほぼ一定である のに対し、 J は 7.69 から 11.21 へと暗くなっている。しかし、 JD 4578 - 4694 では、J が極大へ回復する過程にある一方、 L は 4.13 と明るくなっている。JD 5336 - 5621 の J 極小は L に何の変化も 引き起こさない。一方で、JD 6756 - 6829 の L 増光は J の遮光 減光期に一致する。

 ダスト雲の被覆率 

 この L 増光が J 遮光と結びつくと仮定するとダストの噴出雲が星の表面の 何割を覆うか計算できる。 JD 6506 の J 極小前は (J-L)o = 1.75 で、 極小後の JD 7185 には (J-L)o = 2.97 である。Tstar = 7000 K を仮定すると、図2からシェル光度の割合は 7 % と 27 % となる。 セミアングル 52° のとき星表面の 19 % がダスト雲で覆われた と考えられる。


 3.13.RS Tel 

 JHK観測は 21 年間、 L は 15 年間行われた。図24で最も目立つのは L の 変化が 2 mag 以上なことである。L の暗い端の等級誤差が大きいことを考え ると 3 mag. になるであろう。変動タイムスケールは 2000 日のオーダーで あるが周期性は認められない。JD 5000 の L 極小からの増光は遮光前に始ま っている。J 観測は JD 5216 以降である。可視観測の極小は JD 5355 に始まる。 JD 5000 - 7000 の間 L は遮光と無関係に変動している。図24を見ると、JD 4003 - 4096 の J 極小からの増光は L の急激な減光に対応する。 JD 5500 の J 極小は L の急激な増光と一致するが、JD 6300 の J 極小は L の 急な減光と同時に起きている。
( その時 Lbol は減少するのか? )


 4.議論 

 4.1.シェル光度の長期変光 

 (1)大振幅 ΔL ≥ 2 mag 

 大振幅 ΔL ≥ 2 mag 変光はタイムスケール数千日で起きる。 星としては UW Cen, WX CrA, RY Sgr, GU Sgr, RS Tel である。

 (2)小振幅 ΔL ∼ 0.5 mag 

 小振幅 ΔL ∼ 0.5 mag 変光星は不規則でタイムスケール数百日 である。星は S Aps, V854 Cen, V CrA, RZ Nor である。これらの星の平均 L 等級は S Aps のように観測期間中ほぼ一定であるか、 V CrA のように ΔL ∼ 0.5 mag の長期増光変化示すか、 RZ Nor のように L 光度低下を示す。

 (3)SU Tau 

 SU Tau は前記2タイプの混合である。全体の変動幅は &Delta:L = 2 mag と大きいが、個々の変動は小振幅で短周期である。平年変化が重なって いる可能性がある。
 (4)R CrB 

 R CrB 自身は他の RCB 星と違っている。その変光は ΔLsh ∼ 0.9 - 1.7 mag で中間振幅を持ち、P ∼ 1260 日の半規則的変光を示す。

 L 変動と他の特性との相関 

 これら L 変動の特徴と他の特性との相関はあまり強くない。したがって、 これらの分類が固定される性質か、もっと長い観測をすると一つの星にすべて の性質が現れるのかは決められない。長期変動の存在は 10,000 日以上の タイムスケールの変化が存在する可能性を示唆する。


 4.2.遮光極小と赤外放射の関係 

 J(主に星の光) と L (主にシェルの光) 

 J(主に星の光) と L (主にシェルの光) の間に一般的な反相関は見出されな かった。 SU Tau や S Aps では、 遮光極小時またはその直後に L の増光が 見られた。これは遮光の原因となるダストが L 光に直接結びつくことを示唆 する。しかし、 L の変化一般を見たときに、それが全てとは考えられない。 例えば、遮光時に L 一定の例として、UW Cen JD 4350, V CrA JD 3700 などが あり、明るくなる例 S Aps JD 4000, RS Tel JD 5000、暗くなる例 RS Tel JD 4000, JD 6300 などがある。球対称なダスト放出モデルが成立しないことは 明らかである。

 固定幾何学のモデルは排除 

 この J - L 関係の不規則性は、ダストが固定面上の一様円盤に放出されて われわれはそれをほぼ面内で観測しているというモデルも排除する。 こうして残されたのは雲モデルである。そこでは星の限られた表面上でラン ダムにダストが形成される。
 雲モデル 

 個々の雲はシェル全体の L バンド光を大きく変えるほど大きくはない。 シェルの増光は雲の発生率が増大するか、大きな雲または濃い雲の発生が原因 となる。そのような考えを支持する例は、

(1) V854 Cen と V CrA では遮光頻度が高く、同時に (J-L) が赤い。

(2) UW Cen は JD 3500 - 4500 と 6500 - 8300 期間に活発であったが、 その時期 (J-L)o も赤くなった。一方、 JD 5000 - 6200 の L 低下期 には遮光が起きていない。

(3) RS Tel は JD 5600 と 6300 に遮光極小を起こした。その時に L は 極大を示した。

(4) HdC 星は分光的には RCB 星と似るが遮光を示さない。これらの星は 赤外超過がほぼない。

(5) XX Cam は 80 年間に一度だけ浅い極小が報告されているが、赤外 超過がない。


 5.結論 

 どうも puff = 雲の放出が最も良く観測を説明できる。