アブストラクト1.2 m 望遠鏡 CO サーベイ銀河系分子雲の大規模 CO サーベイが 1.2 m 望遠鏡を用いて北半球 NY で、南半球 セロトロロで行われた。これによる5つの大きなサーベイと、特定の星形成域 に対する 11 の小サーベイとを加え合わせ、各分解能 0.5° のマップができた。 分子で見る銀河系 銀河系の内側渦状腕は、分子リングとも呼ばれるが、銀緯 2° 厚みで銀河中心 の両側 60° に広がっている。l, v ダイアグラムは分子リングでも他の場所でも 軸対称からの大きなズレを示している。最も大きなそれはカリーナとペルセウスの 渦状腕である。近傍の CO 放射は主にグールドベルトに沿っている。Lupus, Ophiuchus, Aquila がベルトの正銀経成分、Taurus, Orion が負銀経成分を代表している。 近傍ガス雲 今回のまとめで初めて太陽周囲の分子雲の分布が明らかになった。長い間、 暗黒雲の分布とリフトの位置とから近傍分子雲は北側銀河系の方が南側銀河系 より多いのではないかと疑われてきた。 |
今回のサーベイ合成はその疑いが正しい
ことを定量的に確認した。1 kpc 内の分子雲の質量は第1、第2象限の方が
第3,4象限の4倍多い。それに第1、第4象限にある 1 kpc 以内の分子雲は殆ど
全てが直線状に並んでいる。これは局所腕の内側エッジを追跡しているのでは
ないか。銀河面の上下の分子ガスの分散 74 pc はガウス分布では半値半幅 87 pc
に相当する。その平均表面中密度は 1.3 Mo pc-2、 銀河面上で
ガス密度 0.0068 Mo pc-3、 0.10 H2 cm-3
である。I.イントロHI 21cm に較べ、CO の銀河全面サーベイは行われなかった。1.2 m サーベイが 最初である。II.観測と解析II.a. 観測II.b. 合成 |
IIIa. 個々の分子雲第2象限Thadeus et al 1987 は l = 155° - 180° に3つの分子雲を同定した。 (i) Taurus and Auriga d = 140 pc. (ii) IC 348, NGC 1333 d = 350 pc. (iii) California Nebula (NGC1499) d = 350 pc. (ii) と (iii) は Per OB2 アソシエーション(d=350 pc)の両脇に位置する。 第2象限の残りの領域では糸状の放射が多い。一つは局所腕から発する v = 0 から -10 km/s 速度成分、もう一つは -40 から -60 km/s のペルセウス腕 成分である。3つの大きな分子雲 NGC 7538, W 3, S 235 はペルセウス腕に随伴して いる。 第1象限 第1象限は内側銀河系渦状腕と Great Rift を形作る近傍分子雲が重なっている。 近傍では二つの明るい暗黒雲 Cyg OB7 と Aquila Rift が目立つ。遠方だが明るい 分子雲は W 51, W 44, M 17 である。それらは図6で確認できる。 Dame, Thaddeus 1985 は 1° 分解能で CO 視線速度に基づき Great Rift を 10 個の分離した雲が 距離 200 - 2300 pc に渡って並んでいる事を示した。 Aquila Rift の上に ある Ophiuchus-Sagittaurius 領域は可視減光が HIマップからの予想より大き かったので Lebrun, Huang 1984 により調べられ、冷たい分子ガスの存在が明らか にされた。銀河面から離れて、似たそして多分関連する ρ Oph と Lupus 分子雲、それぞれは a few 104 Mo で 100 - 200 pc の距離にある。 Lupus は多くの T Tau 星を含み、 Lupus T Association と呼ばれる。 第4象限 銀河面のはるか下に孤立して R CrA と Chamaeleon 分子雲がある。Gould Belt はこの銀経では銀河面の上を走っているので、この二つは Gould Belt に 属する雲とは離れている。 近傍暗黒雲に覆われた第1象限と異なり、第4象限は近傍低視線速度 CO 放射 が弱い。近傍雲では Coal Sack が l-v 図では目立つが強度マップ上では背景 の内部銀河系放射に紛れて殆ど検出できない。 銀河系中心は非常に大きな速度分散 ±250 km/s と大きな積分強度 948 K km/s で特徴付けられる。 l = 3°, 5° の天体である。この 速度巾 100 km/s と CO 強度から 1054 erg と計算され、これは 3 kpc 135 km/s リングに匹敵する。 l = 280° のカリーナ腕接線方向の付近にカリーナ星雲がある。この接線 方向は CO 強度が強いが、そこを越え 275° になると急落する。 |
![]() 図4. 第3象限 l = 210° - 279° は May et al 1987 が観測した。l = 265° 付近には Vela、4 つの 105 程度の大質量が d = 800 - 2400 pc の間にある。 その他、ここにはばら星雲を含む Mon OB2, コーン星雲を含む Mon OB1 がある。CMa OB1 と Mon OB2 の間の面の下には非常に大きな 106 Mo の冷たく静かな雲が横たわっている。 非常によく調べられた分子雲 オリオン星雲、 NGC 2024(Orion B), Mon R2 は l = 210° 付近で銀河面の下にある。 |
内側銀河系 銀河面に沿って中央部 120° の高い尾根は図2で最も著しい 特徴である。図3の l-v ダイアグラムが示すように、この高い放射 輝度は視線方向に横たわる多くの分子雲の重なりの結果である。その 多くは内側渦状腕か銀河中心領域に位置する。太陽円周より先での 分子雲個数の急速な低下は、局所腕分子雲の放射が弱く、 太陽円周外側の分子雲が見える第2、第3象限での放射強度を内側 放射強度と比較すれば明らかである。 近傍雲 内側銀河系の尾根を除くと、図2の放射の多くは 1 kpc 以内の 近傍分子雲から来る。 l = 0°l, 90°, 180°, 270° 付近では速度が縮退して分離しにくいが、他の銀経帯では局所雲 は視線速度でより遠方の雲と区別できる。第1、第3象限ではそれら は主に -10 から +20 km/s の間に分布する。第2、第4象限では -20 から +10 km/s の間である。図2で銀河面から 3° 以上離れ l-v 図でも除外される大きな雲もこの間隔内に収まる。 近傍雲分布の非対称性 近傍雲分布の大きな特徴は北側銀河面 (l=0°-180°)に片寄って、 南側銀河面 (l=180°-360°)に少ないことである。この非対称性は l-v 図が銀河面から 3° 以上離れた雲を除外して、北銀河面の局所放射 の主要部を外してもなお明らかである。北銀河系での暗黒雲の多さは可視で も Great Rift としてはっきり見える。図2の l = 100° と 180° の間では図2に見えるように、フィラメント状の暗黒雲が複合体として多数 存在する。それらは Schlosser, Gornandt 1984 により Northern Dark Cloud System と呼ばれた。かれらはそれが一つに揃った系であると示唆したが、図2 はその考えを幾分支持しているようだ。フィラメント状の外観は他の象限、 特に第4象限と較べると大きく異なっているからだ。 |
グールドベルト 図2に見える大きな構造はグールドベルトに随伴している。グールドベルトとは OB 星、ガス、ダストの円盤で銀河面に約 20° の傾きを持っている。 Stothers,Frogel 1974 を見よ。 それは銀河中心方向では Lupus, Ophiuchus, Aquila の雲で示され、 その反対側では Taurus, Orion の雲がベルトを形作っている。 可視光で観測される暗黒雲やそれに付随するベルト星と 21 cm で観測 された Lindblad et al 1973 の "Feature A" との間をつなぐ重要な リンクを与えるのが CO の雲である。Dame, Thadeus 1985 が強調 したように CO 雲は暗黒雲と空間的に相関しており、多くが速度面で "Feature A" と関係する。 局所腕 もう一つの大規模特徴は強くて複雑な Cygnus X (l = 80°) 方向の 放射、l = 270° Vela 方向の放射である。この二つは 180° 離れて、しかも全体の強度、角直径、視線速度の広がりの点で非常に よく似ている。(Murphy 1985)その上、双方共に種族 I の電波、光学的 トレーサーがかなりの距離巾に渡って集中している。 CO データは長い間議論されてきたアイデア:太陽は Vela 方向から Cygnus 方向に伸びる局所渦状腕に属している、と合致する。 |
局所分子雲の距離 ここでは「局所」を 1 kpc 以内という意味で用いる。これくらい 近い雲は l-v 図で低速度領域, |v| < 20 km/s に見つかる。大抵 の方向で局所雲はより遠方の雲とは、低速度と大きな角度広がりで 容易に区別される。多くは可視写真上で暗黒雲として見える。雲までの 距離はそれに随伴する種族 I 天体、スターカウントなどから決められる。 視線速度に基づく運動学距離は用いられない。従って、銀河系中心距離 の変更は局所分子雲距離には関係ない。 局所分子雲の質量 NH2/WCO = 2.7 × 1020 cm-2K-1km s-1 (Bloeman et al 1986) を用いて雲の質量が決まる。 リスト 表2には局所雲のリストを載せた。 Aquika Rift, Per OB2, ρ Oph は形が不規則な為 2 種類の (l, b) が与えられている。 第2象限の雲 第2象限の複雑で広がった放射は特別に述べる必要がある。この方向の 放射は -40 km s-1 付近のペルセウス腕と -20 から +10 km s-1 付近の局所成分とに分かれる。図3を見よ。この局所 放射は -7 km s-1 付近のギャップでさらに二分される。 よりマイナスの成分は -12 km s-1 中心で幾つかの大きな 雲とより小さい破片、多分 800 - 1000 pc 距離の OB アソシエイション列、 Cep OB2, Cep OB3, Cep OB4, Per OB3, を含んでいる。 個々の天体の研究結果からこれら "-12 km s-1" 雲に 800 pc の距離を適用する。 |
二つの局所ガス成分 二つの速度成分は HI データにも表れている。-12 km s-1 成分は Lindblad 1974 により局所腕成分とされた。彼によると、もう一つ 0 km s-1 成分は "feature A" と呼ばれ、太陽を囲む冷たい 膨張ガスシェルとされた。第2象限では Lindblad の膨張リングまでの距離 は 300 pc で Elmergreen 1982 が与えた最近傍ダスト雲までの距離と 一致する。そこで、我々は 21 cm feature A に一致する速度を持つ分子雲 に同じ 300 pc という距離を与えることにする。それらをリンドブラッド リング雲と呼ぶ。 局所雲の分布 図7には局所雲の分布を示した。第1、第4象限の雲は Vela Sheet から Cygnus Rift にかけ、ほぼ一直線に並んでいる。Chamaeleon から Nul Rift にかけての雲はリンドブラッドの膨張リングと関連するのかも知れないが 第4象限の雲の距離は Lindblad et al 1973 のモデルよりはずっと遠方に ある。 雲列の全体は局所渦状腕の内側をなぞっているのかもしれない。そして、 Vela Sheet と Cyg Rift の雲が大きく見えるのは、その列に沿って伸びる 様々な距離の雲の重なり合いを見ているのかも知れない。雲の全体的な分布 は太陽が局所渦状雲の内側の縁近くに位置するという描像と矛盾しない。 第1、第4象限の大きな空白領域は局所腕と l=0°: 方向で 1700 pc 離れたサジタリウス腕との間の腕間領域である。この広大な腕間空白域 が、何故例えば Rift 系(Aqila Rift や Vul Rft)の局所減光が偶々小さい l=14° M17 方向でサジタリウス腕の天体が見えるのかを説明する。 |
ガス密度 図8には近傍平均密度を銀河面高度の関数として示した。分子ガスが 銀河面の北側に偏在していることは明らかである。また、第1、第2象限の ガスは第3、第4象限の4倍も多い。局所分子ガスの質量の半分は5つの かなりコンパクトな天体, Cyg Rift, Cyg OB7, Cepheus, Orion B, Mon OB1 に集中している。少数サンプルによる偏差は大きい。密度の高度 変化を表3にまとめた。 ![]() 表3.近傍分子ガスの密度 |
![]() 図8.上太線=1 kpc 以内の平均ガス密度の銀河面高度変化。影は4象限各自 の寄与。差し込み=太陽近傍での各成分の表面密度。 |
他のトレーサーとの比較 局所雲の多くが銀河面から 10° 以上離れているので、今回の合成 サーベイが分子雲を全て捉えているのかが問題である。図9には 他のトレーサーとの比較が載っている。図の特徴には幾つかの差が見られる。 暗黒雲は比較的近距離の分子雲しか捉えないので、内側銀河系の銀河面稜線 が出て来ない。CO は分子雲なので分布の銀緯が小さい。他のマップは原子 ガスを追跡しており、スケール高は CO の倍くらいある。 暗黒雲と CO 暗黒雲と CO の分布は一番似ている。l = 35° にある小さな暗黒雲 でさえも CO で検出されている(Lebrun 1986)のは興味深い。暗黒雲マップ から Cepheus 雲が落ちているのは不思議である。 |
IR, γ線と CO IR, γ線と CO の比較はこの論文の範囲を越えている。しかし、 暗黒雲と同じく両者は CO サーベイ域の外に大きな分子雲がある可能性 は小さい事を示している。 |
分子マップ 分解能 (1/2)° の CO 合成マップを作った。内側銀河系の 渦状腕は薄く強い稜線を中心から 60° に作った。局所雲の 放射はもっと高い銀緯に及び、低速度で、暗黒雲と良く似た 見かけを示す。 局所雲 グールドベルトのプラス銀緯側には Lapus, ρ Oph, Aquila Rift が並び、マイナス側には Orion, Taurus が横たわっている。北側 銀河に暗黒雲が多いという特徴は分子雲でも確認された。 |
局所雲の分布 今回のマップから太陽付近の大分子雲の完全なリストができた。 全体の配置は太陽が局所渦状腕の内側縁近くに位置する事を 確認した。局所分子雲層の HWHM 値は 87 pc で、内側銀河と 外側銀河で得られた値と一致する。 |