アブストラクト距離 1 kpc 以内の O - B5 型星、超巨星、若い星団、アソシエイション は互いに 19° - 22° 傾いた二つの平坦な系に集中している。その 歴史背景、統計的有意性、組成、空間配置、星間減光を調べた。銀河面 ベルト、銀河面に沿っている、の O - B5 星は空間配置、年齢分布共に ランダムであった。グールドベルトは北側が Sco-Oph 領域、南側が Orion 領域に投影像がとんぼのような形に伸びている。系の直径は 750 - 1000 pc で太陽は中心から Ophuichus 方向に少しずれている。系の年齢は 幅広のターンオフが B2.5 付近にあることから 3 × 107 yr と見積もられる。 太陽付近にある O - B2 星の大部分と若い星団はグールドベルトに属している。 しかし、どちらのベルトも B3 - B5 星の空間密度としては同程度で、星間減光 の強度も同じくらいである。グールドベルトは銀河面ベルトに較べ縦方向に 3倍圧縮されているが、各ベルトは星間ダスト、星グループの中心に関し 同じ集中度を面に対して示す。(?)太陽の周りには O - B5 星の小さな 空隙がある。 |
イントロ二つのベルト太陽近傍の O, B 型星は天空上で二つの大円に沿って分布している。一つは 銀河系ベルトでこれはほぼ銀河面と一致する。もう一つはグールドベルトで、 銀河面と約 20° の傾きを持つ。二つ目のベルトはオリオン付近を南端、 Sco-Oph を北端とする。このベルトの存在自体に疑いはないが、その大きさ、 銀河ベルトとの関係など不明点が多い。 論文の内容 これは、近傍 O-, B-型星を調べるというシリーズの第1論文である。運動学的 情報は今後の論文で調べる。今回は主に O-B5 星の測光カタログデータを用いた。 データは 1966 年以前のものである。このデータは V = 6 までは完全で、 V = 9 で終わっている。減光の強いさそり座から白鳥座にかけてはよりよい観測が必要 である。カタログは付録に載せた。 |
A.裸眼観測 Lambert, W.Herschel, があって、 J.Herschel 喜望峰から南天の明るい星が銀河面に約 20° 傾いたベルトを 成している。 W.Struve 1847 星の濃い層が約 10° 傾いた二つの面を形作っている。 Alexander, Proctor, Secchi が続いて、 Gould 1879 明るい星のベルトがほぼ大円の上に分布する。 500 星程度の扁平星団であろう。 Celoria 1877 近いリングと遠いリングが19-20°傾いている Sutton 1891, Easton 1900, Espin 1913, Ristenpart 1892, Prey 1896 星表から二つのベストフィット面。 Stratonoff 1900, 1901 大きな星団に埋もれた小さな星団? Newcomb 1901, 1904 Ptolemy は既に Ara から Sco-Oph を経て Cygnus に続く分枝を指摘していた。 |
B.早期型星 Nassau, Morgan 1951 グールドベルトは腕状の系でない。星による渦状腕の発見も。 Schnirelman 1952 C.星団、アソシエイション Blaauw 1956 グールドベルトに属する星団の研究。 Wenzel 1961 T アソシエイションも D.星間減光 グールドベルトに減光物質が付随する事は星の赤化が大きいことから 知られていた。 Proctor 1868 "zone of avoidance" (くらい銀河の)がグールドベルトのあたりにある。 Lilley 1955 ダストとガスの相関 P.Lindblad 近傍ガスは楕円形の膨張ガスリングを形成している。リングはグールドベルトの 外側部分の星と重なる。 McGee, Milton 1964 リングでなく、ガスのムラムラ |
O-B5 星の X-Y, X-Z 投影分布 O-B5 星の空間分布を図1,2に示す。遠方では不完全性が 増すことを考慮しながら図2を見ると、かなりはっきりした とても平たい系が二つ存在する。これらの分離した恒星分布は X-Y 面では Plannekoek 1924, Blaauw 1956, Eggen 1961, Bonneau 1964, Klare, Neckel 1967 により、X-Z 面では Charlier 1916, Shapley 1919, Schnirelman 1952, Eggen 1961, Bonneau 1964, Clube 1967, Lesh 1968, Lesh,Aizenman 1973, Schmidt-Kaler, Schlosser 1973 によって示された。 この論文では数が多く、距離が遠くまで及び、減光補正が以前より 正確な点が特徴である。 ![]() 図2.カタログ中 800 pc 内の O-B5星全てを X-Z 面に投影した。 |
![]() 図1.カタログ中 800 pc 内の O-B5星全てを X-Y 面(銀河面)上 に投影。 |
グールドベルトの現実性を確かめる 銀河面上に一辺 100 pc の 256 個の方眼(reseau)を切り、そこで 銀河面の上に幾つ、下に幾つ O - B5 星があるかを算える。二項分布を 仮定して、5 % レベルで上下分布の対称性を調べた。N < 5 個の 方眼は有意な結果が出ないのでブランクにした。 ( 5 % レベルで対称な場合も?) 図3がその結果である。+サインは銀河面の上側に有意に多く、−サインは逆 を示す。 この図を見ると、グールドベルトが確かに実在することが判る。 図3.太陽を中心とした一辺 100 pc 方眼で上下分布の対称性を調べた。 +サインは銀河面の上側に有意に多い。−サインは逆。 |
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![]() 表1.グールドベルトと銀河面ベルトへの最小二乗解。太陽の周りに立てた 円筒状の壁に含まれる星に対して、 O - B5 星全てでグールドベルトと 銀河面ベルトへの最小二乗解。 フィットのやり方 フィットは以下の手順を繰り返して収束させた。 (1)予備的な二面を決め、Z 値の近さで所属を決める。 (2)最小二乗法で面を決める。 (3)(1)に戻り、所属を決め直す。 フィット面 (I) フィットする星の選び方に二つある。第1の選択法は太陽を円筒状の 壁に含まれる全ての O - B5 星を対象とした。その解は表1にある。 太陽に付随する特別な条件、例えば局所穴、が ρ = 0 - 200 pc の フィットには影響している。しかし、その先では影響は薄れる。 IAU が定めた銀河面と銀河面ベルト星から定めたベストフィット面とは 大きな逸脱が見られない。0 < ρ < 200 pc ではグールドベルト 天体に大きく重みがかかるが、600 pc < ρ になると銀河面ベルト 天体が支配的となる。 |
フィット面 (II) 第2のグループ分けでは ρ < 800 pc の星をタイプでグループ分けして それぞれのフィット面を探す。その解は表2に載せた。 X-Y 面への投影距離 ρ = r cos b < 800 pc 星の結果が表2にある。 最終解 夫々の解は互いに近いので、表2の O - B5 、ρ < 800 pc に対する、 l = 205°, b = 72°, ho = 0 pc, を採用した。この値は Gould 1879 の求めた値、 l = 201°, b = 72°, ho ≥ 0 pc, に驚くほど近い。 銀河面ベルトに対しては、 l = 59°, b = 85°, ho = 24 pc, が得られた。 太陽位置 Charlier 1916 はグールドベルトた星間減光の配慮なしに太陽が銀河ベルトの 20 pc 上にあるという結果を出している。OB 星に対する最近の値は 10 - 23 pc で我々の出した値と一致する。それはまた局所 HI 雲に対して Davis 1960 が 求めた 22 pc という値とも合致する。 |
タイプ分布の特徴 表3には各ベルトに属する星をタイプ別に分けた。B4 - B5 星に幾分か の不完全性があることを認めると、銀河面ベルトの星は年齢分布が 均一である。一方グールドベルト天体は B2.5±0.5 で主系列星の ピークが見られる。 所属アソシエイション さらに、グールドベルトでは pc2 当たりの O - B2 星数が 銀河面の 3 倍になる。それに対し、B3 - B5 星の数は大体等しい。この 理由は単純にグールドベルトには Ori OB1, Sco OB2, Per OB2 のような 非常に若いアソシエイションが属する一方、太陽付近の銀河面ベルトには Lac OB1 しかないからである。 β Cephei 従って、同様に若い β Cephei、明るい超巨星、R-, T- アソシエイション がグールドベルトに多いのは当然である。しかしながら、 Be 星や B 型連星は 予想されるように孤立 B 型星の分布に従う? ( ? ) B2.5 > 2.5 を外す? B2.5 > 2.5 を外して、グールドベルトへの帰属を改善する可能性は ある。しかし、それらの数は小さ過ぎ、フィット面の改善には役立たないだろう。 一方、銀河面ベルトから O - B2.5 星を外すのは Lac OB1 が銀河面に属してい るので危険である。 |
![]() 表3.グ-ルドベルトと銀河面ベルトから 400 pc 以内の星のタイプ別の数。 ( 二重に数えられた星があるかどうか?) ヘリウム量 Sco OB2, Ori OB1, Orion Nebula と Lac OB1 と較べた限りでは ヘリウム量に 大きな差は認められない。同様にメタル量にも差は認められない。 |
VI.A. ベルト面上の投影分布グールドベルト所属星の分布図4には、グールドベルトに所属する ρ <l 800 pc の O - B5 星を グールドベルト面に射影した。Y' 軸はグールド面と銀河面との交差線。 l' = 0° は Ophiuchus 方向、180° はOrion 方向である。大体 l' = l - 25° である。分布に見えるムラムラは実際にある星の集合の 結果と星間減光の不規則な分布の結果との重なりである。強い吸収はその 背後に太陽からの放射状空隙を産み出す。Y' 軸に沿った疎らな星領域は 星間吸収のためでなく、星をベルトへ配分する時の計算手続きによる 効果と思われる。一方で、統計的に決めた絶対等級を個々の星に適用した為に 平滑化が生じる。特に星の集団を放射方向に細長く引き延ばす。しかし、集団 は実際にも大きな広がりを持つゆえに全ての伸張形態を平滑化の効果と決める わけにはいかない。 グールドベルトの全体的な形 グールドベルトの全体的な形は「とんぼ」状と呼べる。この類似性を 産み出しているのは以下の特徴である。
アソシエイションの特徴 アソシエイション Per OB2, Ori OB1, それに Sco OB2 を含む Sco-Cen complex は良く知られている。 Slaauw 1964 を見よ。 Her-Lyr グループは Pannekoek 1929 にその名が出てくるくらいで あまり知られていない。星の運動が不揃いで、かつ l=60° (l'=35°) 付近を例外として、多くの暗黒雲が l = 0° - 90° を 目隠ししているので、このグループが実質的なものかどうか疑問視された。 l=105°(l'=90°), r = 700 pc の散在する星の群れは Cep OB2 と Cep OB3 の一部である。これら遠方のアソシエイションはおそらく銀河面 ベルトのメンバーで、ここに現れたのは帰属を決める方法の機械的な適用 のためである。 |
空疎な区間 l = 110° - 200° (l' = 85° - 175°) は Per OB2 アソシエイ ションを除くと空疎な区間である。広がった Cas - Tau グループは r = 0 - 400 pc に広がり、α Per 星団と恐らくはプレアデス星団も含む。 Her-Lyr グループと同様に Cas-Tau グループは比較的高齢で、おそらくは実質的な 集合ではない。この様なわけで、B2 より若い星を殆ど持たない、グールドベルト 内、約半数の広がった星グループは Per OB2 のみを例外として残りの半数より 年取っている。しかし、若い星は現在もグールドベルト全域の暗黒雲の中 から生まれつつある。 ガス雲 McGee, Milton 1964 は近傍 HI 雲、Sco-Oph, Pup-Vel, Ori-Tau 雲は 大きな複合体を形成していると主張した。彼らが提案した雲の複合体は 我々の O-, B- 型星に基づくグールドベルトと一致するのは面白い。 Lindblad が想定した膨張ガスリングは、もしあるとすれば、太陽を 中心とするガス中の局所的ホールを取り囲んでいるか、または多分グールド ベルト内の高温ガスの周辺部なのであろう。 Ori OB1 はメンバーか? Ori OB1 を外して、グールドベルトを制限する意見もある。しかし、より 遠くの星を含めてみると Ori OB1 は連続的につながっていることが判った。 図4から広がりを測ると、 オリオン方向に 800 pc、へびつかい座方向に 300 pc、やや不確かだが両側に 500 pc くらいである。グールドベルトが 銀河ベルトと交差するラインはカシオペアからカリーナの方向に伸びて いるので、その方向でのグールドベルトの広がりは決めにくい。 Klare, Neckel 1967 は ρ = 1500 pc までの OB 星をプロットした。 彼らの図は我々がここで決めたグールドベルトの大きさの先には星が 存在しないことを示している。 銀河面ベルト 図5には銀河面ベルトに属する OB- 星を IAU 銀河面上に投影した 分布図を示す。分布は全体として一様に近い。 l = 110° - 200° は先に述べたように星が少ない。 l = 20° - 50° の Sct - Aql 領域では減光が特に強い。一般的な一様性はグールドベルトに見られる 星の固まりとは対照的である。 ( 銀河面ベルトではOB-星が 分子雲に付随して集団で存在するのではないのか?) 太陽の周りのホール 太陽の周りのホールは図1,4,5ではっきりと見える。このホールは 減光マップでも認められる。このホールは銀河面上に投影されるとほぼ 円形で直径 200 pc, 太陽はその中心から l = 0° 方向に 50 pc ずれている。 |
VI.B. 中心位置グールドベルトの中心を決める幾つかの方法がある。 (1).図3の楕円形状の分布の中心はオリオン方向 200-300 pc (2).図4のもっと広い不規則な範囲の中心は大犬座方向 200-300 pc (3).表4にあるようにサンプル星の平均値をとる。 サンプル星のタイプで到達距離が変わるため中心位置は大きく変わる。明るい O-B1 型星 62 個を選び中心を決めると、 l = 180° b = -16° r = 212 pc となる。 太陽中心? グールドベルトの研究を近傍星に制限して行うと、図5の銀河面ベルトの図 から見える通り、太陽を中心とするリングを見出す。より遠方の星まで 対象にして調べると上に述べたような結果になるのである。 |
VI.C. 面に錐糶な方向の分布面の厚みを決める際に二つの人工的効果が影響する。 (1)ベルトが向かい合う空間ではいきなり切断が入る。 (2)向かい合わない側では勝手に帰属を近い側の面に決める。 そこで、向かい合わない側の星だけを用いて厚みを決めた。 厚みの決め方には、 (1).|ζ|m =メディアン (2).〈ζ〉 = 平均 (3).〈ζ2〉1/2 = rms (4).n(ζ) = n0e-|ζ|/β (5).n(ζ) = n0e-|ζ|2/ 2σ2 表5にその結果を載せた。 |
カタログ中から MK分類がある B0-B5 星を選び, Av/E(B-V) = 3.0
を仮定する。減光物質の分布を、スケール高 β の平面層と
すると減光は Parenago の式 A = α|csc b'|(1-e-|ζ|/β) で表わされる。 γ = α/β は面内での減光率である。 結果は表6に載せた。最後の列の 〈A/r〉 は個々の星の A/r の 平均値である。 |
![]() 表6.面毎の星間減光 |
銀河面ベルト 局所複合構造には多くの不明点がある。この論文ではグールドベルトの 実在を統計的に確認した。銀河面ベルトは 1kpc までの範囲では IAU 銀河面に対して 5° 傾き、太陽はその面の 24 pc 上にある。 B-型星は面上にランダムに分布し、年齢分布は非一様である。 |
グールドベルト グールドベルトは IAU 面に対し 18° 傾き、オリオン方向に 傾いている。オリオン方向には 800 pc, 反対側へびつかい座方向には 300 pc の広がりを持つ。太陽はその平均面の上に載っている。 B 型星の分布はとんぼのように見える。グールドベルトの星の 年齢は一意には決まらない。星形成は現在も進行中である。しかし、 主系列星は B2.5±0.5 に盛り上がりをしめす。その年齢は 30±7 Myr である。 |