COBE Diffuse Infrared Background Experiment Observations of Galactic Reddening and Stellar Populations


Arendt + 11
1994 ApJ 425, L85 - L88




 アブストラクト

 COBE/DIRBE を用い、銀河系星種族のカラーと銀河系減光を調べた。 DIRBE で決めた NIR 減光は Rieke, Lebofsky 1985 の減光則と一致した。第1、第4象限のダストと星の分布は、最高 A(1.25μm) = 4 mag に及ぶ減光膜を隔てて臨む背景星種族と看做せる。  赤化補正した銀河円盤のカラーは晩期 K-型 から M-型の巨星のカラーと 似ている。銀河系バルジは 2.2 - 3.5 μm でそれより僅かに青い。これは Terdrup et al 1991 の結果と一致する。星形成域は 900 K の連続光の存在 を示すが、これは熱いダストか PAH が 3.5 μm という短波長にまで 影響することを示す。


 1.イントロダクション 

 バルジの形 

 COBE/DIRBE の 1.25, 2.2, 3.5, 4. μm マップから、 Weiland et al. 1994 はバルジが箱型であることを見出した。図1にあるように 12, 25 μm では拡散放射は星よりは暖かいダストに占められる。
最適波長 

 星間減光の結果、1.25 μm より短波長ではバルジの形は著しくゆがめられる。 黄道光の散乱成分は 1.25, 2.2, 3.5 μm と次第に弱まる。 一方、4.9 μm より長波長ではダストの放射光が強くなりバルジの星光を 圧倒してしまう。過去の Matsumoto et al 1982, Little,Price 1985, Kent et al 1992 の NIR 観測は単波長のため、減光の評価が出来なかった。IRAS は 12 μm より長い側でダスト光が星光を上回る。輝度分布は星計数 (Whitelock, Catchpole 1992, Weinberg 1992) や以前の赤外マップ(Blitz, Spergel 1991, Kent, Dame, Fazio 1991) にはできない利点がある。



図1.銀河面の 1.25 - 25 μm DIRBE 画像、l = [-180, 180], b = [-10, 10], ただし、l = [-30, 30] では b = [-15, 15]。黄道光は 12, 25 μm で最も強い。 太陽離角は 90°. 色分けは対数等分で、log I(MJy/sr) = [-0.2, 1.4](1.25μm); [-0.2, 1.4](2.2μm); [-0.4, 1.2](3.5μm); [-0.5, 1.1](4.9μm); [1.2, 2.0](12μm); [1.4, 2.2](25μm)

 3.赤化と減光 

 近赤外2色図 

 図2の左側には I(1.25)/I(2.2) 対 I(2.2)/I(3.5)、右側には I(2.2)/I(3.5) 対 I(3.5)/I(4.9) を様々な銀経区間について示す。 一番下段は一番上の銀河中心区間のデータに3種のモデルでフィットした 結果を示す。その3種は

(a)二色図を単純に線形フィット。一種類の星が様々な強さの赤化を受けた モデル。

(b)Koorneef 1983, Rieke, Lebofsky 1995, Mathis 1990 の減光則をフィット。

(c)Rieke, Lebofsky 減光則を仮定し、視線に沿っては星とダストが一様に 混ざって存在。

 上に現れる赤化線の勾配を表1に示した。モデル(a) で得られた勾配は、 Rieke, Lebofsky 減光則に近い。

 白鳥座領域 

 図2(c),(g) の白鳥座方向の2色図は内側銀河系と大分違う。この領域に 関しては 4.4 節で議論する。


表1.赤化線の勾配の比較

図2.近赤外ピクセル二色図。(a) - (d): 短波長。(e) - (h) : 長波長。 (d) と (h) の丸と菱形は近傍星。直線は異なる幾何学効果を表す。詳細は 本文参照。





図3.DIRBE 画像。(a) 黄道光除去後の I(1.25) マップ。(b) τ1.25 マップ。(c) Io(1.25) = I(1.25)exp(τ1.25) マップ。I と Io は 対数表示 log10 I(MJy/sr) = [-0.2, 1.5], τ は実数表示 [0, 2.5] で示す。 τ1.25 > 1 領域での 3c 図 Io は厳密には正しくない。

 4.結果と議論 

 4.1.カラー 

 名目カラーの定義 

 |b| = [10, 15] は低減光なので、領域の中間値カラーを星の名目カラー と定める。バルジに対しては l = [-10, 10] をカラー領域とする。その外側は 円盤種族星の名目カラーとする。低銀緯の赤化が強い点から伸ばした赤化線が 名目カラーを通るので、この選択は妥当であろう。

名目カラーと明るい星のカラーの比較 

 図22d と 2h には明るい K, M-巨星の DIRBE カラーが赤で、 B3 - F0 星が 青でプロットされている。バルジ、円盤の名目カラーは晩期 K から M-巨星の カラーに近い。バルジ星の名目カラーは円盤星より、 I(2.2)/I(3.5) で ≤ 3 % 青いようである。これは、 Terndrup, Frogel, Whitford 1991 による、バルジ星はその円盤対応天体(同じスペクトル型)より 400 K 高温で あるという結論と一致する。τ = 0 でのカラーを決めることが困難なため、 I(1.25)/I(2.2) カラーがバルジと円盤で異なるかどうかは定かでない。

 4.1.τ1.25 と τ240 の相関 

 τ1.25 マップ 

 銀河系の I(1.25)/I(2.2) 固有カラーが単一であると仮定し、Rieke-Lebofsky 減光則を適用して、τ1.25 マップを作ることが出来る。図3bを 見よ。バルジと円盤との間の I(1.25)/I(2.2) 名目カラーに 5 % の差があると、 τ1.25 では 8 % の差が生じる。得られた減光値はフラックスで 重みが付いた減光の平均値なので、強い減光の小領域は見逃されてしまう。
 τ240 マップ 

 Sodroski et al 1993 はダスト放射率 ε ∝ λ-2 を仮定して、DIRBE I(140) と I(240) とから τ240 マップを 得た。図4を見ると、τ1.25 < 1.0 では相関が 直線的で良好である。その先では τ1.25 は深い領域の星を 棄てているので光学的に薄い τ240 との相関が崩れる。
直線部は τ240 = 0.0011 τ1.25 と表される。 この値は Mathis 1990 の表に比べると 2/3 である。 n = 1.5 とするとダスト 温度が高くなり、τ2401.25 はさらに 2/3 小さくなる。


図4.l = [-10, 10], b = [-5, 5] バルジ領域での τ1.25 と τ240 との関係。τ1.25 < 1.0 では相関が 直線的で良好である。その先では τ1.25 は深い領域の星を 棄てているので光学的に薄い τ240 との相関が崩れる。


 4.3.減光補正した銀河系マップ 

 Io(1.25) マップ 

 図3c には減光補正した Io(1.25) マップを載せた。他のバンドでも同様の 補正マップが作れるが、最も大きな変化を示すのは Io(1.25) である。 減光補正した銀河系マップは補正前より滑らかで対称的な形を示す。これは バルジと内側銀河系のより正確な形 (Weiland et al. 1994) の研究に繋がる。

 τ 大の深部からの放射 

 減光補正を行った後の形はどのバンドも同じになった。しかし、|b| ≤ 3 の 減光の強い領域では、最も遠方からの放射の補正は不十分である。

 4.4.熱いダストからの NIR 放射の証拠 

星形成域のカラー 

 銀河面から離れて存在する星形成域の二色図はカラー間の相関が小さく、 勾配が急である。その勾配は単一星種族に減光を与えただけでは得られない。 これら、 Cygnus, Carina, ρ Oph, Orion A, B, それに ロゼッタ星雲、 は 3.5, 4.9 μm マップに現れている。このバンド帯には原子や PAH 放射帯は存在しない。従って連続光と考える必要がある。

 高温ダスト? 

 シグナス領域の二色図は銀河円盤の星の放射に 900 K の成分を 重ねると得られる。より長波長の二色図も同様であるが、 600 K 成分が要る。もし、この低温成分が平衡温度を表しているとするなら、それは ダストが星のすぐ傍に位置することを意味する。または Sellgren 19984 のいうような極小ダストの放射かも知れない。その場合必ずしも近い必要はない。