銀河系で発見された SNRs の数はモデル予想値に比べ非常に少ない。その原
因は、高感度の電波連続波データの不足にあると見做されている。広がった、
低輝度電波源の探索は新しい SNRs の発見に繋がるはずだが、数の多い HIIRs
との混じり合いがその探索を困難にしている。 しかし、SNRs の中間赤外表面輝度は電波連続光強度に比べ著しく低い。この 特徴を使うと、 HIIR と区別することができる。そこで、連続電波源のうち、 MIR 対応天体のないものを SNR 候補として挙げることができる。 | THOR 観測から 1 - 2 GHz 高分解能電波連続波データ、VGPS 1.4 GHz 低分解 銀河面サーベイデータ、それに GLIMPSE, MIPSGAL, WISE サーベイデータを使い、 SNR 候補を探した。事前に WISE Catalog of Galactic HIIRs と一致する天体は 省いておいた。こうして、THOR と VGPS が重なる l = [17.5, 67.4], b = [-1.25, 1.25] 領域から新しく 76 SNR 候補を選び出した。それらの分布は既知 SNRs と 似ているが、 l = 30 付近に多数存在する。そこは盾座腕の接線方向である。 既知 SNRs のサイズは 11.0'±7.8' だが、候補 SNR 天体は6.4'± 4.7' で小さく、暗い。これらの候補が偏光観測やスペクトル指数の測定から真の SNRs と認められると、この領域の SNRs の数はほぼ倍増する。しかし、それでもなお モデルとの差は大きい。 |
SNRs の謎 現在銀河系内の既知 SNRs 数は 294 (Green 2014) である。しかし、 OB 星 の数、パルサー誕生率、 Fe 存在量、それに他の局所群銀河での SN 発生率 からは 1000 個以上 (Li et al 1991, Tammann et al 1994) の SNRs が期待 される。 SNRs の識別 (1)スペクトル指数が負、大体 -0,5 くらい。 (2)電波偏光 (3)X-線か宇宙線源を伴う。 (4)MIR/Radio 比が低い。 基準 (1) と (2) は熱的(平坦で偏光なし)と非熱的(スペクトル指数が負で 偏光あり)電波を分ける。第3基準は SNRs の高温(107K) プラズマ を HIIR と区別する。第4基準は "has characteristics of the other three" と書いてあるが何のことかよく分からない。 |
SNR の MIR は弱い Cohen, Green 2001 は HIIR に比べると、SNR が MIR で弱いことを発見した。 Pinheiro Goncalves et al 2011 によると F(24μm)/F(1.4GHz) = 0.5 - 10 (平均 5) である。≥ 1 GHz の光学的に薄い周波数域では SNR の F(MIR)/ F(Radio) 比は HIIR の 1/100 以下である。それにより、 Helfand et al. (2006) は、MAGPIS = The Multi-Array Galactic Plane Imaging Survey の 20 cm データを用いて新たに 49 SNRs を発見した。同様の手法で Brogan et al. (2006) も 39 SNRs を発見した。 (Helfand06 はXからの殴り込み? Brogan06 に批判されてる。 ) Greem et al 2014 は電波と 8 μm との逆相関を利用して MGPS = Molonglo Galactic Plane Survey から 23 SNRs を発見した。 この論文はもっと確実にやっている これらの研究は、(1)まず電波で怪しい奴を見つけ、(2)それらの 8.0 μm 強度が弱いことを確認している。この方法はシェル構造 SNRs に偏る難 点がある。もっと良いのは、MIR 画像から MIR/Radio 比の高い全ての HIIRs を初めに探しておき、次にそれらと一致しない電波源をリストアップすること である。このやり方で HIIRs の混入を防げる。我々は、THOR = the HI, OH, Recombination line suevey of the Milky Way (Beuther et al 2016) と VGPS = VLA Galactic Plane Survey ( Stil et al. 2006 ) の 1.4 GHz 連続波 データから広がった連続電波源を探し、WISE Catalog of Galactic HIIRs (Anderson et al 2014) から熱放射天体を分離する。THOR のコンパクト源は 解析済みである。我々は広がった電波源を対象とする。 |
2.1.THORTHOR は l = [14.5, 67.4], |b| 6lt; 1.25 の HI, OH, 再結合線、 連続波の VLA 20 cm サーベイである。THOR と VGPS 20 cm データを結合すると、 これまでで最も深く、高分解能の連続波データが得られる。それを "THOR+VGPS" データと呼ぶ。その範囲は l = [17.5, 67.4] である。2.2.The WISE Catalog of Galactic HIIRsこのカタログは WISE 画像を眼視で検査して作られた。MIR で HIIR は 確率過程論的なヒーティングを受ける HIIR プラズマに混じる極小ダストから の 20 μm 放射とそれを囲む PAH 10 μm 放射で特徴づけられる。 既知の HIIRs 全てはこの形態的特徴を有する。 ( Anderson et al. 2014 ) PNe は似ているが、大きさが小さく、 FIR が弱いことで区別される。 ( Anderson et al. 2012 ) WISE と Spitzer の検出限界は銀河全面に亘って HIIRs を検出するのに 必要な値よりはるかに低い。 |
WISE HIIR カタログには HIIR 形態の天体が
8000 個載っている。内 2000 個は Hα または電波再結合線で視線速度が
測定済みである。残り 6000 個は二種類に分けられる。2000 個の電波で静かな
天体と 4000 の電波で賑やかな天体である。電離ガス f-f 放射による電波連続光
は HIIR の確定をより確実にする。2.3.グリーンカタログGreen 2014 カタログは 294 SNRs を含む。文献からの収集なので、その一様 性は保証されていない。却って古い版のカタログの方が 10-20 W m-2Hz-1sr-1 で完全である。 |
基準 (a) 電波連続光の独立天体。 (b) WISE HIIR カタログに載っていない。 (c) Spitzer, WISE の MIR 放射を欠く。 MIR と電波で一致する天体のほぼ全ては HIIRs であり、WISE HIIRs カタロ グに含まれているので、上の基準はある意味冗長とも言える。 眼視検査 我々は THOR+VGPS データを眼視でチェックした。 (a) まず、WISE HIIR カタログにない電波領域を探した。 (b) それらを Spitzer GLIMPSE 8 μm と MIPSGAL 24 μm データで 調べ、MIR 放射のない天体を選んだ。 (c) Spitzer サーベイの外側の天体に関しては WISE 12, 22 μm データ を使用した。 この処置で PNe とカタログに取りこぼした HIIRs を全て除いた。残った 電波源は既知または未知の SNRs である。図1に手順の進行を示す。 |
背景放射の除去と放射強度の測定 THOR+VGPS データから 1,4 GHz 放射フラックスを測った。 測定にはアパーチャ測光法を採用した。天体の周り4点で背景レベルを決めた。 難点 (a) フィラメント形状。SFR 周辺で星間原子または分子と作用している電離ガス なので SNR と考えない。 (b) 明るい SFR に発生する偽パターン。 |
![]() |
![]() |
76新 SNRs 新しい SNRs を76個発見した。また Green 2014 カタログ中の既知 SNRs 53 個のうち 52 個を検出した。新発見 SNRs を表1に示す。また、既知 SNRs に 1.4 GHz フラックスを加えたデータを表2に示す。 |
|