Discovery of 35 New SNRs in the Inner Galaxy


Brogan, Gelfand, Gaensler, Kassim, Lazio
2006 ApJ 639, L25 - L29




 アブストラクト 

 銀河面 l = [4.5, 22] b = [-1.25, 1.25] の VLA 90 cm サーベイから、 35 の新しい SNRs を発見した。 20 cm. 11 cm. 8 cm アーカイバルデータも用い、 SNRs の性質を調べた。 90 cm 画像は、直径 2'.5 - 50' で表面限界輝度 20-21 W m-2Hz-1sr-1 までの SNRs を検出する。  今回のサーベイにより、この領域の SNRs の数は3倍になり、銀河系全体の SNRs の数を 15 % 増加させた。これらの結果は内側銀河系のより深い、低周 波サーベイが SNRs の予想数と検出数との差を解消する可能性を示す。


 1.イントロダクション 

 SNRs 数の不足 

 OB 星の数、パルサー誕生率、 Fe 量、 局所群銀河中の SN 率から、我々の 銀河系には 1000 個以上の SNRs が存在するはずである。(Li et al 1991, Tammann et al 1994) しかし、 Green 2004 のカタログには 231 個しかない。 その原因は古くて大きく、低表面輝度の SNRs と若くて小さい SNRs が空間 分解能や感度不足で検出されないからと考えられている。特に内側銀河系では 銀河面シンクロトロン拡散放射と HIIRs の熱放射のために、検出が難しい。
 MOST 観測 

  Whiteoak, Green 1996 は Molomglo Observatory Synthesis Telescope (MOST) を用い、波長 35 cm 分解能 45" でかなり高感度の SNRs サーベイを 行い多数の SNRs を発見した。

 VLA 観測 

 そこで、より高感度で高分解能のサーベイを低周波数が期待される。 VLA 90 cm (330 MHz) による、既知 SNR G11.2-0.3 を中心とする 1 deg2 のサーベイ (Brogan et al 2004) は新しい SNRs を3つ発 見し、方法の正しさを実証した。今回はその拡張を報告する。





表1.SNR 候補の性質

 2.観測 

 VLA 観測 

 2002 年から 2004 年に掛け、 VLA B, C, D 配列で l = [4.5, 22], b = [-1.25, 1.25] を 90 cm で観測した。VLA 90 cm メインビームの FWHM = 2.5 ° なので、1.25° 間隔の 14 点で観測を行った。

 感度 

 最終的な rms ノイズは |b| < 0.5° で 5 mJy/ビームであった。 これはこの内側領域において λ > 20 cm で到達した最高感度 の観測である。 
 非熱輻射 

 非熱輻射の証拠を得るために、他波長のデータアーカイバルを参照した。

Southern Galactic Plane Survey (SGPS) の北側拡張
 Australia Telescope Compact Array による l = [5, 20] 20 cm モザイク。 VLA D 配列 20 cm データも加えた。 20 cm 画像は 18' より大きなスムーズな構造に対しては感度が低い。

Bonn シングルディッシュ 11 cm サーベイ
 分解能 4'.3, rms ノイズ 8 mJy beam-1 で広い構造を調べる。

MSX 8 μm
 分解能 20". 非熱放射は IR 放射強度と逆相関するので、熱輻射と非熱輻射 を分離できる。


 2.1. SNR 候補 


図1左.W30 領域。青=VLA 90 cm. 赤= MSX 8μm. 緑= SGPS 20 cm. 新しい SNR は銀河座標で示される。既知 SNRs, HIIRs, WBB も名前を記す。

 選択基準 

(1) 90 cm 42" 画像で分解され、シェル状の外観を示す。

(2) 電波スペクトル S ∝ να で α < 0.

(3) 明るい 8 μm 天体ではない。 Wind-blown bubbles = WBBs もシェル状 の外観持つが、必ず強い 8 μm を伴う。 SNRs の 8 μm は弱い。

 表1のクラス分け 

(Class I)  SNR という確信が強い。3バンド強度の精度が高い。

(Class II) かなり確実。しかし、熱放射が混ざっているか、希薄で 20 cm データが 評価できない。

(Class III) 非熱輻射であるが、弱い。


15/35 = クラスI. 16/35 = クラス II. 4/35 = クラスIII.

図1右.W28. 青=VLA 90 cm. 赤= MSX 8μm. 緑= SGPS 20 cm. 新しい SNR は銀河座標で示される。既知 SNRs, HIIRs, WBB も名前を記す。

 X 線源 

 6/35 SNRs は ASCA X-源と一致する。パルサーとは重ならなかった。

 Helfand et al 2005b 

 Helfand et al 2005b は、より大きな Multi-Array Galactic Plane Imaging Survey = MAGPIS (|b| < 0.8⪚) の一部として、ここと同じ領域で 30 SNRs 候補を発見した。2.1.節で述べた基準を適用して、Helfand et al 2005b 天体のうち 15 個が SNRs として認められることが分かった。彼らと共通の 15 天体は表1にマークしてあるが、彼らは測定を天体範囲に限定せず、また背景の 差し引きを行っていないので、そのフラックスは我々の4倍の大きさである。
 




 3.議論 

 期待値との比較 

 今回発見した SNRs はこの領域で既知の SNRs に比べ、小さく、弱い。 新しい SNRs の直径は、平均 12', 中間値 8' である。 その表面輝度は、 Σ1GHz = (1 - 15) 10-21W m-2 Hz-1 sr-1 である。この結果は、Bonn 11 cm 完全性 限界 10-20W m-2 Hz-1 sr-1 は accurate であることを示す。
(何を言おうとしているのか? )
 今回の 42.5 deg2 という狭い範囲でのサーベイは、そこでの数を 3倍=総数 54 とした。Helfand et al 1989 と Brogan et al 2004 はこの領 域には 65 または 89 個の SNRs があるはずとした。これは観測された数と 大体一致する。特に今回の観測が小さい (≤2,5') か大きい (≥0.8°) 天体に低感度であることを考え、またカニ星雲のような電波を欠く天体の検出は 出来ないことを考えると、そうである。  
 総数は? 

(1)  Green 2004 カタログは |b| > 1.25°, |l| > 50° で完全。

(2) Bonn 11 cm サーベイは第1象限で、 MOST 35 cm サーベイは第4象限で 同じ程度の完全度を有する。

(3)  |b| > 1.25°, |l| > 50° の既知 SNRs 数 = 115 個が、 今回のようなサーベイで 3倍になる。

と仮定する。  l = 50° のカットは内側銀河円盤の広がりとして導入した。これらの 仮定から、銀河系 SNRs の総数として 460 個 = (231-115) + 3*115 = 461 が得られる。これでも予想値の半分である。

 同一視線での混同? 

 新しい SNRs のうち 5 個は 既知の大きな SNRs W28 と W30 の直ぐ近くで 見つかった。大質量星が集団で発生しやすいことを考えると、これは驚くべき ではない。従って位置が重なって見えるために失われた SNRs もあり得る。


 図2:新発見の SNRs VLA 90 cm 画像。