課題研究の志望者は、研究室の見学、実地での面談、zoomによる面談を歓迎します。sakoioa.s.u-tokyo.ac.jpまでお問い合わせください。

2022年度テーマ

時系列データからの突発・移動現象の探査と関連する装置開発


内容

本課題研究では、可視高速観測による時系列ビッグデータの取得、突発・移動現象の観測的研究、および関連する装置開発に取り組む。ソフトウェアまたはハードウェアの開発に携わりながら、履修者が興味のある短時間変動天体(微光流星、地球接近小惑星、太陽系外縁天体、系外惑星、YSO、恒星フレア、X線連星、パルサー等)に対してミリ秒-1日の短時間スケールの突発・移動現象の観測的研究を実施する。装置開発を軸とする場合は、TAO6.5m望遠鏡用の新可視装置の初期検討および主要コンポーネントの開発に取り組む。本課題では自らによる観測データの取得および実験を重視する。以下に課題の例をあげる。

1. 木曽広視野動画カメラTomo-e Gozenによる短時間変動現象の探査

東京大学木曽観測所の広視野動画カメラTomo-e Gozenを用いて、これまで検出が困難であった1日-ミリ秒の短時間スケールの突発および移動現象を探査する。Tomo-e Gozenは木曽観測所1mシュミット望遠鏡の焦点面を84台の高感度CMOSイメージセンサで覆う世界初の広視野高速カメラと、機械学習モデルを搭載したデータ解析および自動制御ソフト群からなる統合観測システムである。20平方度の空を毎秒2fpsで観測が可能であり、1晩に約30TBの動画ビッグデータを取得する。Tomo-e Gozenは数秒以下の短時間現象の探査においては世界最高の能力を有する。現在進行中の全天動画サーベイや重力波対応天体サーベイでは、データの中に埋もれた突発・移動現象の即時検出と、追観測に必要なアラートの即時生成の実現が急務となっている。特定のターゲット天体に対してはミリ秒の絶対時刻精度を持つ最大100fpsの高速観測を実施できるため、X線や電波との高い時刻精度での同時観測が可能である。本課題研究ではTomo-e Gozenの特長を活かした観測的研究を実施する。必要に応じて京大せいめい望遠鏡の可視多色高速カメラTriCCSによる観測やX線望遠鏡のデータの利用も行う。

2. TAO望遠鏡用新可視装置の開発

TAO6.5m望遠鏡用に新たに可視光観測装置を開発する計画がある。今、担当教員の頭の中には構想が雲のように広がっている。これを材料に設計をより具体化する初期検討を行う。この開発フェーズは概念設計と呼ばれる。装置開発の一連の工程の中で最も自由でクリエイティブな開発フェーズである。科学的目標を掲げ、望遠鏡の特長と制約を整理し、人類が初めて手にする画期的な観測装置の実現をめざす。必要に応じて、新観測装置の実現の核となる主要コンポーネントの実験的評価も実施する。数年後の近い将来、ここで創造した設計案が具現化され標高5,600mのTAO望遠鏡で天体からの光を受けることになる。

3. データサイエンス的手法による突発・移動現象の検出と分類

Tomo-e Gozenが取得する天文動画ビッグデータに対して機械学習やスパースモデリング等のデータサイエンス的手法を導入し、天体の光度変動や移動現象の検出と分類を高精度かつ効率化する開発研究を行う。これまでに、畳み込みニューラルネットワーク機械学習による超新星の画像検出、ランダムフォレスト機械学習による高速移動する地球接近小惑星の検出、スパースモデリングによる突発現象の検出と動画圧縮、中間赤外線背景変動の除去の研究例がある。データサイエンス的手法の天文学への導入は未だ黎明期にあり、観測天文学にパラダイムシフトをもたらした半導体検出器に匹敵するテクノロジーとして期待されている。

担当教員、課題研究の実施場所

酒向重行, 三鷹2008号室/三鷹実験棟/木曽観測所

関連研究者, 大学院生

大澤亮(特任助教), 瀧田怜(研究員), 紅山仁(D2), 津々木里咲(M1)    —— 2022年度の学年

過去の受講生、課題研究の内容、関連する発表

2021年度 津々木 里咲「中間赤外線全天雲モニタの開発」, シュミットシンポジウム2021発表, 可視赤外線観測装置技術ワークショップ2021発表, 天文学会2022春発表予定, SPIE2022発表予定, 特許申請中

2020年度 西野 耀平「木曽Tomo-e GozenとX線望遠鏡NICERによる矮新星SS Cygの可視光・X線同時高速観測」, 可視赤外線観測装置技術ワークショップ2020発表, 天文学会2021秋発表, シュミットシンポジウム2021発表, 論文投稿中

FAQ


1. 課題研究をどのように選べばよいですか?

科学的な興味に加え、研究手法、研究室の雰囲気がご自身に合っていることが大切です。研究を楽しめることが何よりも重要です。

2. 研究グループの特長を教えてください

光赤外線の観測天文学を展開します。独自の望遠鏡を保有し独自の観測装置の開発が可能な国内有数の研究グループです。

3. 研究グループの研究手法を教えてください

開発と観測を軸とした研究を行います。手を動かすこと、挑戦することを大切にします。現場を大切にします。

4. 研究対象を教えてください

最先端の観測装置および観測手法の開発、自ら開発した装置の利点を活かした観測的研究を推進しています。天文学の研究対象は多岐にわたるため、指導教員と研究グループの助言を受けながらご自身でその道を切り開きます。

5. 研究室の雰囲気を教えてください

研究室の見学を歓迎します。大部屋で多人数でガヤガヤとやります。実験装置や観測データが身近にあります。メンバーが持ち寄るお菓子が並んでいます。TAOグループや木曽観測所グループと強く連携します。

6. ソフトウェア、ハードウェアの開発経験がありません。大丈夫ですか?

開発の経験は不要です。興味を持つこと、手を動かすことが大切です。1年経つころには指導教員ができないことを平然とこなすようになるでしょう。

7. 三鷹キャンパスに通うのが大変です

本郷キャンパスから1時間30分かかります。通学はたしかに大変ですね。とはいえ三鷹は日本の天文学が集まる中心地です。三鷹に通うことで本郷では体験できない幅広い分野の天文学に触れることができます。武蔵野の森に囲まれ落ち着いた環境です。

8. 三鷹へ週にどのくらい通う必要がありますか?

新型コロナウイルス感染症の推移が気になるところですが、週に2回ほど来られると良いですね。自宅からリモートで可能なことであっても、現場ではより豊かな体験が得られます。

9. 課題研究と大学院の研究室をそろえるべきですか?

課題研究は基礎学力の獲得をめざす学部教育の最終課程です。大学院は研究を目的とする教育がなされる場所です。必ずしも研究室をそろえる必要はありません。

10. 課題研究での体験をもとに大学院の研究室を決めれば良いですか?

はい、大いに参考にしてください。大学院の願書の提出が例年7月初旬であることに注意が必要です。課題研究がはじまった直後であるため、課題研究の実施が進路の選択の十分な助けにならない場合があります。課題研究を選択する3年生の時からご自身に合う研究内容と研究スタイルについてじっくりと考えてみてください。