アブストラクトWISE は 2009 12 月 14 日の打ち上げ、全天サーベイ開始 2010 年 1 月 14 日で、第1 回の全天走査を 7 月 17 日に終えた。5σ観測限界は混んでいない領域で 0.08 mJy(3.4 μm)、 0.11 mJy(4.6μm)、1mJy(12μm)、6mJy(22μm) である。空間分解能は 6".1(3.4μm)、 6".4(4.6μm)、 6".5(12μm)、 12".(22μm)で、S/N 比がよい天体の位置精度は 0".15 よりよい。 |
1.イントロWISE は2010 7月に全天走査を終える。以前の全天サーベイとしては IRAS, AKARI, DIRBE がある。WISE の対応する波長帯での感度は IRAS, DIRBE よりずっと高い。AKARI は 9, 18 μm での感度 50 mJy, 100 mJy だが、WISE はそれよりも感度がよい。WISE の口径は 40 cm である。 |
![]() 図1.WISE 衛星 2.1.デザイン軌道は黄極を結び太陽と正対する大円を描く。望遠鏡は慣性で回転させ、 スキャンミラーで露出時間(8.8秒)の間画像を静止させている。WISE の画角は 47' で、10% を隣と重寝ている。読み込みと移動を合わせ、![]() 図2.WISE 画像の重複図。左=1軌道。中=2軌道。右=多軌道。 |
この方法で6月かけて全天を走査する。![]() 図3.左=1軌道。中=続いた2軌道。右=20日離れた軌道。 ![]() 図4.WISEのポインティング方向は太陽ー地球ラインと直角。 ![]() 図5.WISE走査面積の時間変化。走査回数毎のラインも示す。縦破線=He 消失。 |
2.2.装置検出器短波長チャネル: 1024×1024 HgCdTe アレイ 4.2 および 5,4 μm カットオフ 長波長チャネル 1024×1024 Si:As BIB アレイ > isophotal wavelengths バンド中心波長の決定は、特に W3 のように波長帯が広い場合には、あいまいさを 伴う作業である。我々は isophotal 波長をこの目的に選んだ。isophotal 波長と ゼロ等等級は、一定 F0μ は WISE バンドでベガと同じ シグナルを与えるものとして定義される。つまり、 F0λ = FVegaλ (λiso) ベガのスペクトルとして、2.5 < λ < 29 μm で以下の式を使う。 Fλ=1.0158×10-16(1-0.0083ln(λ/8.891μm) 2)×Bλ(14454K) 上式で使われた温度はベガの有効温度よりずっと高く、逆に立体角は小さい。これは 赤外域で f-f と b-f オパシティが波長とともに増加するからである。こうして決めた λiso は以下の通り。 W1 3.3526 μm W2 4.6028 μm W3 11.5608 μm W4 22.0883 μm ![]() 図6.重み付き平均 WISE 相対スペクトル応答関数。毎光子当たり電子数。 |
ゼロ等フラックス MSX によるベガの絶対測光によると、21.3 μm においてモデル予想値より 2.7 % 大きかった。WISE W4 ではこの補正を加えた。その結果、ゼロ等フラックスは バンド F0λ F0ν (W cm-2μm-1) (Jy) W1 8.180×10-15 306.681 W2 2.415×10-15 170.663 W3 6.515×10-17 29.0448 W4 5.090×10-18 8.2839 ここに、F0ν = (λiso2/c) F0λ 天体カラーによる補正 観測中に赤い(典型的には F0ν ∝ ν-2) と、青い(典型的には F0ν ∝ ν2) 較正天体を W3, W4 で測った。その結果、赤い天体は W4 では明る過ぎて見え、W3 では 暗すぎて見えることが分かった。このずれは赤い天体の有効波長を W3 では 3 - 5 % 短く、 W4 では 2 - 3 % 長くすることで解決する。 等級からフラックスへ カウントから等級への変換の際の装置ゼロ点は青い標準星に基づいている。 青い標準星と赤い標準星との不一致を考慮すると、W3, W4 において等級からJyへの変換 は ± 10 % の不定性がある。 isophotal wavelength とフラックスゼロ点についての上の定義は、ベガと異なる 決定法から分かるように、 Fλ = 一定の場合、スペクトルを持つ天体に対するカラー補正はゼロ、 レーリージーンズ型 Fλ ∝ λ-4の時は殆ど ゼロである。これらのスペクトル勾配は WISE 天体の非常に広い範囲をカバーしている。 したがってカラー補正は通常は小さい。ただし、 W3 は波長幅が大きいので Fν 一定の天体で 0.1 等のカラー補正が必要となる。 表1には様々なスペクトルに対する補正を示す。例えば、Fν ∝ ν0 に対して fc(W3) = 0.9169 である。これは、このようなスペクトル 天体に対しては ゼロ等フラックスが 29.0/0.9169=31.7 jy となることを意味する。 ![]() 図7.重み付き平均 WISE 相対スペクトル応答関数。ピーク=1に規格化。 |
![]() 図8.WR星の星風泡 NGC2359 の合成カラー画像。毎週の画像トピックは http://wise.astro.ucla.edu で見ることができる。 ![]() 図9.11回観測天体の等級標準偏差。曲線=ノイズモデル。破線は S/N=5.86(8回でS/N=5 に対応) |
![]() 図10.WISE と UCAC 位置の差 ![]() 図11.PSFの距離プロファイル。 |
飽和等級と限界等級 WISE飽和フラックスは 0.3 Jy (W1), 0.5 Jy (W2), 0.7 Jy (W3), 10 Jy (W4) である。 WISE 観測が 8 回以上行われた天体に対しては 5σ 検出限界は 0.08 mJy(W1), 0.11 mJy(W2), 1 mJy(W3), 6 mJy(W4) である。これは ベガ等級で 16.5, 15.5, 11.2, 7.9 等に対応する。一般的に言って 2MASS より 1 等以上深い。 WISEのサイエンス WISE の科学目的は中間赤外での全天探査である。いくつかの分野ではほぼ 確実に大きな成果が約束されている。それらは、WISE カラーが極めて赤い 系外銀河、褐色矮星である。 図12には各タイプの天体が占める二色図上の位置を示した。 図12.星と早期型銀河は原点付近にある。褐色矮星は W1-W2 が 非常に赤い。渦状銀河は W2-W3 が赤い。ULIRGS は双方で赤い。 |
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4.1.褐色矮星褐色矮星スペクトルの特徴メタン吸収がないので 4.6 μm の放射が強い。したがって WISE W2 バンドは 冷たい褐色矮星の探査に威力を発揮する。これまでは SDSS z' バンドや 2MASS J バンドが褐色矮星探査に用いられてきた。そのため、これまでに 発見された褐色矮星は高温で若い天体にバイアスがかかっていた。図13には 様々な温度のモデルスペクトルを示す。 期待される褐色矮星の数 WISE は 10 Gyr の古い褐色矮星を見つけることが可能である。それらは太陽 近傍で通常星の 1 - 2 倍存在すると考えられる。図14には、WISE バンド での褐色矮星フラックスを νFν/Fbol の形で表示した。 検出数 Spitzer による 4.5 μm で WISE の 20 倍深い 10 deg2 探査 の結果は、モデルの予想より少ない数, 10 個, の非常に赤い天体の発見であった。 観測と合うには、メタンか水以外の吸収源により IRAC4.5μm フラックスが 50 % 程度低下している必要がある。いずれにせよ、Spitzer 観測から WISE は, 10(41253/10)/201.5 = 400 個の晩期 T と Y クラス褐色矮星を 発見するであろう。表2には期待される褐色矮星の数を温度と仮定した質量関数 毎に示した。 ![]() 図13.褐色矮星モデルスペクトル。 |
![]() 図14.WISE バンドでの褐色矮星フラックス。νFν/Fbol の 形で表示。 ![]() 表2.褐色矮星の期待数。 |
4.2.超高光度赤外銀河 (ULIRGs)![]() 図15.青線: z=0.33 に置いた L*銀河。赤線:z=3 の ULIRG。 橙線:z=6.42 QSO. 赤丸=WISE, その他は GALEX, SDSS, DPOS, UKIDSLAS, 2MASS, AKARI, IRAS | ![]() 図16.WISE で観測される QSO と AGN の数。 |
4.3.小惑星![]() 図17.0.5 AU 離れた直径 0.13 km の地球近接小惑星のフラックス。上から 下へアルベド=0.52, 0.145, 0.04。 |
4.4.その他4.4.1.彗星トレイルと黄道帯4.4.2.若い星とデブリ円盤![]() 図18.距離 2.5 kpc の M0 T Tau 星(TTS) と距離 300 pc デブリ円盤付き A2 星(PDD) を WISE 感度と比較。シンボル点の意味は図17と同じ。 |
4.4.3.星間塵4.4.4.銀河系構造WISE は Spitzer の GLIMPSE=銀河面に沿った 300 deg2 サーベイ を補う。GLIMPSE は |b| < 1 deg が主だが、WISE は面に垂直方向の構造も 明らかにする。特に、潮汐破壊された衛星銀河からの K 型巨星を 3.4 μm で 70 kpc まで、 4.6 μm で 45 kpc まで探せる。これは 2MASS を大きく上回る。 4.4.5.近傍銀河 |
4.4.6.銀河星団 |
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