Massive Stars Embedded in Molecular Clouds : Their Population and Distribution in the Galaxy


Wood, Churchwell
1989 ApJ 340, 265 - 272




 アブストラクト

 UCHIIR は特徴的な FIR SED を持つ。既知の UCHIIR の IRAS 二色図 からそのカラー選択基準を導いた。IRAS PSC にその基準を適用して、 1717 個の 埋もれた大質量星候補を見出した。内 1646 個は銀河面に へばりつき、71 個はマゼラン雲に属する。IRAS の感度だと、全銀河面 上の O 型星を見つけたはずである。大部分は第1、第4象限にある。 可視で見える近傍 O 型星との比較から O 型星の 10 - 20 % は分子雲 に埋もれている。これは、O 型星の主系列寿命の内 10 - 20 % は 分子雲に埋もれている事を意味する。現在の大質量星形成率は 3 × 10-3 O stars yr-1 であり、 発見された IRAS 天体の数は超新星発生率 1 SN/25 yr と合う。

 1.イントロ 

疑問点 
 ここで扱う疑問点は
(1)O 型星は主系列期の何割を分子雲中で過ごすのか?
(2)現在分子雲中に埋もれている O 型星は何個か?
(3)現在銀河系内に幾つの O 型星があるのか?

 O 型星の数 
 裸の O 型星は d < 2.5 kpc に関しては Conti et al 1983 の 直接の計数がある。非直接的にはSmith, Biermann, Mezger 1978 が HIIR の観測から行ったライマン連続光を通じての推定がある。ここでは 分子雲中の大質量星を同定する新しい方法を述べる。



 2.解析 

 2.a. IRAS PSC から埋もれた OB 星を見出す 

 UCHIIR の SED は互いに似ている。 
 UCHIIR は Ne = 104 cm-3, Emission Measure > 107 pc cm-6, D < 0.1 pc である。FIR SED は 互いに驚くほど良く似ている(Chini et al 1986)。その特徴は、
(1)Fν のピークが 100μm にある。電波 F-F の外挿値 の 3 - 4 桁大きい。
(2)F(NIR) は逆に電波 F-F 外挿値以下である。
ピークが 100 μm 付近にあることはダスト温度が約 30 K を意味する。 また、 NIR フラックスが F-F 外挿値以下であるのはダスト層が NIR で 光学的に厚い事を意味する。

 IRAS 二色図 
  Wood, Churchwell 1989a (WC) は星雲の電離を維持するのに必要なライマン 連続光の量から UCHIIR の中心星は O 型星であることを示した。我々は WC から IRAS に載っている精度の良い UCHIIR を選び、二色図を 作った。UCHIIR が図上で固まったグループを作っている事が判る。
( MYSO と区別できるか? )

 銀河内の埋もれた大質量星の数 
 埋もれた大質量星の他と区別されるカラーは銀河系内の総数を出すのに使える。 銀河系円盤の縁まで 23.5 kpc とし、全光度が FIR で同じ SED で放射されると仮定 する。それは、L(100)/L=16%, L(60)/L=25%, L(25)/L=7%, L(12)/L=2% である。残りは 100 μm より長波長で放射されている。すると、 全ての B0 型 ZAMS 星は 25 μm で、全ての O9.5 型 ZAMS 星は 12 μm で検出される。従って、埋もれた O 型星は全て IRAS で検出されることが わかる。そこには B 型星が幾つか混じるだろうが大部分は O 型星であろう。


図1a. IRAS 二色図。●: 既知 UCHIIR。 □: (l, b) = (40° 0°) 中心 2° × 2° 領域内の IRAS 天体。× : RA = 13h00m - 13h10m からの IRAS 天体。比較用 IRAS 天体の幾つかは検出限界 値が入っている。
 UCHIIR のカラー基準 
 表1と図1を参考にして、我々は  log (F60/F12) ≥ 1.30, log (F25/F12) ≥ 0.57 の範囲 にある天体を調べた。我々は 60 μm か 25 μm で上限しか与えられて いない天体は外したが、 12 μm が上限のものは残した。これは与えられた 基準から当然である。さらに、銀河、 QSO と分類されるもの、可視で見える ものを外した。


表1.UCHIIR の平均カラーと他の一般IRAS 天体との比較(無意味?)


図1b.図1a と同じだが、縦軸が log F(60)/F(12) と変化している。
破線= UCHIIR 領域の境界。



 計数が不完全な理由 
(1)F(60)か F(25)が検出限界に達しなかった。
(2)銀河面で混み過ぎ領域では抜けが起きる。
(3)進化効果で古い埋もれた大質量星が抜ける。

カラー制限を緩めた時の数、それに IRAS は F(12), F(25) > 10 Jy 天体に関しては完全度は 86 % であることを考えると、ここでの選択が 全体の半分以下とは考えにくい。その点に関し、WC サンプルは PSC の 100 μm 分布では上位を占めていることを注意しておく。また、この サンプルは 12 μm でも 10 Jy を越えている。

 SED の比較 
 上の条件を満たす天体は 1701 個あった。図2にはそれらの フラックス中間値を結んだ SED を示す。これから、

(1)カラー選択は既知 UCHIIR と同じ SED 天体を選んだ。
(2)カラー選択天体は電波で選らばれた明るい良く知られた UCHIIR の約 1/10 の強度である。

ことが判る。これは IRAS PSC サンプルは WC89a が使った VLA サーベイ より完全度が高いことから予期される結果である。

 進化効果 
 進化が進むと HIIR が大きくなり点源として登録されない、カラーが 選択領域外に出る、可能性がある。 WC89a は HIIR の進化を研究し、 UCHIIR は O 型星主系列寿命の 10 % くらいの間小さいままでいることを 見出した。

 他のタイプの天体の検討 
(1)低質量原始星 
SED から Td ∼ 30 K とされているが、そのように低温のダストが低質量星 に付随する場合は少ない。
( 理解できない。何故か?)
仮に低質量星でも低温ダストを伴うとしても、光度が小さいため近傍に限られる。
( こっちは理解できる。)

(2)系外銀河
銀緯分布からその可能性は低い。

(3)暗黒雲、惑星状星雲など
UCHIIR の領域は van der Veen, Habing 1988 が定義した 10 領域から十分に 離れている。その近くに来そうな天体としてはまず暗黒星雲がある。惑星状 星雲、冷たいダスト雲を伴う F-, G- 星も考えられる。Pottasch et al 1984 が IRAS で見出した PN の 1/3 は UCHIIR カラー領域にある。しかしその FIR 光度は O-型星の 10-2 - 10-4 倍であり、近傍 PN しか混入しないだろう。
( でも IRAS PN の 1/3 も?)

図2.●=既知 HIIR の中間値フラックス。■=図1b破線内 IRAS 天体 の中間フラックス。こちらが一桁低いのはこうして選んだサンプルが より鋭敏で完全であることを示す。




低温ダストを持つ F-, G-星は少なく、 Pottasch, Parthasarathy 1988 が みつけた HD 161796 しか UCHIIR カラーを持たない。

(4)シラス
F(12) で外される。

(5)光度
距離が判った場合の全てで、その光度は O-型星または早期 B-型星 のそれと一致した。




図3.埋もれた O-, B-型星候補 1717 IRAS 天体の位置。銀河面から離れて 見える集団は、 LMC, SMC, オリオン、 Per OB2 (G160-20), G170-15 付近の 集団(恐らくHeiles 1984, Kulkarni,Dickey, Heiles 1985 の提唱する HI スーパーシェルに付随?)
銀河面上には l = 60°, 80°, 110°, 140°, 192°, 264° に塊りが見られる。 l = 270° - 50° の間は混み過ぎて そのような塊りがあったとしても見えにくい。l = 80° 塊りは多分 Cygnus X 複合に付随している。60° 塊りはオリオンーシグナス局所腕 の延長かも知れない。265° 付近の塊りはサジタリウス・カリーナ腕に 付随している。他の塊りは大きな OB アソシエイションか他の渦状腕であろう。 85°, 115°, 130°, 165°, 245°, 278° のギャップ には異常に少ない天体しかない。

 2.c.銀河系内分布 

 スケール高 
 図3はカラー選択サンプルの位置分布である。図4には銀緯分布を示した。 分布はスケール高 0.6° の指数則で良くフィットする。図3には 塊りが見え、キャプションで説明した。

 LMC/SMC
 LMC には 58, SMC には 13 見える。SED と L からこれらは皆 埋もれた OB 星であろう。メタルの違いに拘らず、同じ SED を 示すのは興味深い。

 2.d.埋もれた大質量星の割合 

 Conti et al 1983 は 2,5 kpc 以内に 436 個の裸の O-型星を見出した。 マゼラン雲 71 個を引いて、我々は 1646 個の埋もれた OB 星候補を 見出した。それらが 15 kpc 半径の円盤に均等に分布すると仮定すると、 2.5 kpc 内には 1646 × (2.5/15)2 = 45 個の埋もれた O 型星が期待される。従って約 10 % の O 型星が埋もれた状態でいる と考えられる。

 2.e.エネルギー収支 

 仮にここで見つかった天体の光度が UCHIIR の平均光度 7 × 105 Lo と同じとすると、全体では 1.1 × 109 Lo となる。これは Sodroski 1988 が 分子雲全体で 3 × 109 Lo とした評価の 30 %、 銀河系の遠赤外全体で 1.4 × 1010 Lo の 8 % に当たる。これは大質量星が銀河系の遠赤外光度を担う という主張とは反する結果であるが、評価の誤差が大きい。

図4.埋もれた OB 星の銀緯分布。破線はフィットライン 112 e-|b|/0.6°。8.5 kpc 距離では 0.6° は 90 pc に相当する。



 3.まとめ 

 既知 UCHIIR の IRAS カラーの分布は (60-12, 25-12) 二色図上で 最も他のタイプから離れる。IRAS PSC 上でこのカラー範囲に ある天体を選択した。これらは 1717 個である。抜けを考えて もおそらく全部の半分をそう下回らないであろう。  2.5 kpc 以内の裸の OB 星の数との対比から埋もれた O, B 星は 全主系列期間の 10 - 20 %を埋もれた状態で過ごすと考えられる。