アブストラクトCO 観測IRAS 天体で光学対応天体がなく、冷たい SED を持つ 50 個を選び、 電波の CO 及び連続光観測を行った。大部分は強い CO 強度と高いガス コラム密度から、最近の星形成とのつながりを表わす。24/50 天体では CO のラインプロファイルにウイングがあり、放出流を伴っていることが 判った。 連続波観測 2.7 mm 干渉計観測から 16/39 天体の放射域は < 35" であった。 この放射は、3天体を除いては、冷たい(Td = 35 - 60 K)ダストから のものである。ダストの 2.7 mm 光学的深さは非常に大きく、遠赤外で ダストは光学的に厚い事が想像される。その質量は 0.6 - 270 Mo に 渡る。 二つのクラス ダスト放射域を二つのクラスに分ける事が出来る。(1)d = 500 - 5000 AU と、小さくて空間的に分解できない。n(H3) > 107-9 cm-3 と大きく、光学深さが大。 近傍分子雲中の低質量(< 4 Mo) で、星形成に深くかかわっているダスト。 (2)大きく広がり(0.1 - 0.3 pc)低密度 105-6 cm-3 で、光学的に薄い。遠方の高光度天体に属し、多分、分子雲コアの内側領域 で、中に若い若い大質量が住んでいる。 |
1.イントロ原始星の条件原始星の条件として次の4つが考えられる。 (1).放射エネルギーの大部分が遠赤外。 (2).HII 領域がない。 (3).星周円盤が付随している。特に大質量星では輻射圧が大きく、 物質降着に不可欠。 (4).分子流を伴う。 IRAS16293-2422 IRAS16293-2422 は興味深い。 L = 27 Lo で 25μ より短波長側では検出 されない遠赤外天体である。Walker et al 1986 は 25μm から 2.7 mm SED が BB(40 K) で完全にフィットすることを示した。2.7 mm 干渉計観測から 1 - 6 Mo の 1800 AU × < 800 AU の円盤構造が分解された。その短軸は高速分子流 の方向と一致する。 原始星候補天体のリスト IRAS16293-2422 をモデルに、類似天体 50 個を IRAS PSC から選んだ。それらの 12CO, 13CO 観測を行い、39/50 天体の 2.7 mm 干渉計 観測を実施した。 |
以下の選択条件で原始星候補を選んだ。 (1).Sν(60μm) > 100 Jy (2).Sν(100μm) > Sν(60μm) (Td<50K) (3).25, 60, 100 μm で検出。 (4).IRAS 点源テンプレートとの相関が 98 % より高い。 (5).δ1950 > -30°, |b| = 2 - 25° (6).可視天体が随伴しない。 (7).暗黒雲の中にある。 |
条件(1)は中間光度の原始星の検出チャンスを下げたかも知れない。 表1には 50 候補天体のリストを載せた。天体が付随する既知の分子雲、 YSO も掲載した。その中には分子流を持つ YSO が多数含まれる。例えば、 L1551 IRS 5, NGC 2264 IR, IRAS16293-2422, S140 IR, Cep A である。 |
III a. CO(J=2-1) データ12CO と 13CO 観測はテキサス大学 4.9 m ミリ波望遠鏡で行われた。大部分で一本の輝線が見つかったが 10 天体 で複数の速度成分が見つかった(表1)。III b. 2.7 mm 連続波39/50 天体をオウエンスバレイ3素子干渉計で観測した。結果は表2 にまとめられた。III c. 2 cm, 6 cm 連続波2 cm (15 GHz)と6 cm (4.9 GHz) 連続波の VLA 観測が幾つかの天体 に対して行われた。3/21 天体が新しく 2, 6 cm で検出された。 IRAS 光度は B0 -B1.5 天体に相当し、電波連続波は HII 領域からの ものと考えられる。5/21 天体は以前に観測され、報告済みである。 |
III d. 距離幾つかの IRAS 天体は距離が既知の天体に随伴している。しかし、 大抵の場合、距離の推定は視線方向での CO ラインに依存する。まず 第一に、分子ガスの距離を既知の距離を持つ分子雲とマッチさせる。 個々の分子雲に対する文献上での距離の探索に加え、 HII 領域の CO 探査の結果、コロンビア CO 銀河面探査の結果も用いた。距離の値は表1に載せた。CO 輝線の速度を使った場合には参考文献 も示した。そのような随伴天体がなかった場合には単純な銀河回転モデル を用いて(Clemens 1985) 距離を決めた。 |
IVa. 統計IVa. (i) 光度関数なぜ明るい天体が主体か天体総フラックスは各バンド内フラックスの総和から求めた。その テクニックに関しては Emerson 1988 in Formation and Evolution of Low Mass Stars (Reidel) を見よ。この方法で 7 - 135 μm 総フラックスが W m-2 の形で与えられる。距離と球対称放射を仮定して光度が 決まる。図1にその光度関数を示す。大部分が 103 - 4 Lo, の遠い天体である。これは 60 μm フラックスに下限を設けた直接の結果 である。 20 - 200 Lo の 50 K 天体がこのリストに残るには距離が 300 - 1000 pc 以内の必要がある。一方 104 Lo 天体だと 7 kpc まで伸びる。 従って、我々のサンプルは基本的には可視光で上から 20 個の見かけが明 るい星を挙げた時、大体光度の高い、かなり遠く (数十から百 pc) の星が 含まれる事と同じ事情である。 基本サンプル天体 我々の基本モデルは Ophiuchus 内 27 Lo の IRAS 16293-2411 である。 前に述べたように、60 μm 100 Jy 制限は Taurus か Ophiuchus のような 最近傍分子雲にある天体しか選ばせない。450 pc 以内ではあと L1551 IRS 5 しかないという事実から、低ー中間光度天体の密度が非常に低い事 が推察される。制限を下げたサーベイからこのような天体のサンプルは上がる だろう。 |
![]() 図1.IRAS 低温サンプル 50 個の光度関数。 ( フラックスリミッテドなので 解釈は面倒。) 光度は 7 - 135 μm バンドフラックスに 4πd2 をかけた。 |
IVa. (iii) 高速ガス半数に高速ガス(速度巾 20 km/s 以上)が CO ラインのウイングとして 検出された。多数が実際前主系列天体であることを示している。残りの 多くは遠方天体で、ビーム巾が大きすぎてウイングが薄まっている可能性 がある。例えば、 IRAS 00494+5617 は 2.2 kpc の NGC 281 内にあり、 水メーザー源だが、ウイングは検出されなかった。 |
IVa. (iv) 小さく冷たいダスト放射天体16/39 天体で 2.7 mm 連続波が検出された。上の NGC 281 天体を除き、 その全ては高速分子ガスが付随していた。表2や図2に見られるように、 6/16 天体ではフリーフリー放射が検出された。Mon R2 (IRAS 06084-0611) では明らかに 2.7 mm フラックスの大部分が IRS 1 で励起された HII 領域からの光学的に薄いフリーフリー放射である。IRAS 06084-0611 (GGD 12-15) と IRAS 22543+6145 (Cep A) でも 2.7 mm 放射のかなり (≤ 50%) をフリーフリーが占めているかもしれない。しかし、 Cep A では 3.45 mm 観測からフリーフリーで説明するには全体のスペクトル 勾配が急すぎることが判っている。初見では IRAS 21391+5802, 22198+6336, 22272+6358A のミリ波フラックスは電離領域からの寄与が かなりに見える。しかし、そうするには 2.7 mm フリーフリーが光学的に 厚く、輻射光度が現在値の十倍くらい大きい必要がある。したがって、 これらの放射は小さい(< 35") ダスト源と考えるべきである。観測 ビームサイズが波長毎に異なるので、正確な SED は得られていない。 |
IVb. (i) スペクトルエネルギー分布温度決定に電波観測が重要図2には小さく冷たいダスト放射を持つ 16 天体の SED を示す。その 多くではフリーフリーの寄与が小さい事が判る。プランク関数に λ -1.5 をかけてデータにフィットすると、25μm - 2.7 mm での放射は Td = 35 - 60 K と得られる。どの場合も、mm 波のフラックス は SED ピークの決定に重要である。 厚いダスト光学的深さの天体 7 天体では 12 μm が検出されなかった。それらの SED は単一黒体 輻射でよく近似された。しかし、多くの天体、例えば L1551 IRS 5 や GL 490 では 12 & mu;m - 2.7 mm の SED の巾はもっと広く、ダスト温度の 広い巾を示している。ダスト温度巾の狭い天体はダスト光学的深さが厚い 為と考えられる。 IVb. (ii) 質量2.7 mm フラックスから求める質量2.7 mm フラックスから質量を導ける。Hildebrand 1983 の与えた N(H2)/τdust, 400μm = 6 × 1024 を放射率 λ-n で λ = 2.7 mm に直すと、 M = 3.29 2.5nλmmn+3 SJydkpc 2[exp(14.4/λmmTd)-1] Mo 表2には Td = 45 K, n = 1.5 を仮定したマスが載っている。IRAS 06035-0622, 06084-0611, 22543+6145 はフリーフリーの寄与があり得るので上限値である。 |
![]() 図2.冷たいダストからの 2.7 mm 放射が検出された 12 天体の SED。 右端括弧内の数字は図示する際にフラックスにかけた10の指数。 |
光度とガス・ダスト質量の関係 図3では光度とガス・ダスト質量の関係を示した。参考のため主系列の 星質量光度関係 L ∝ M4 を示す。観測光度が主系列近く の中心星によると仮定すると、その星の質量はこのライン上にある。サン プル中の明るい天体が主系列ラインの近くにあるだろうという仮定は大 質量天体の進化が速いことを考慮するとそう悪くない。低質量で 光度超過がある天体は主系列のずっと上に来る。図3を見ると、ダスト放射 領域の質量は埋もれた恒星の質量と同程度である事がわかる。明るい星に なるほど、星周領域のガス質量が埋もれた恒星質量より大きく超過する 傾向にあることが判る。これはおそらくより明るく遠いところにある大きな 天体を検出しやすいからであろう。 (良く分からないが、中心 に星があってその光を再放射しているという意味ではないんだろうな。 ) IVb. (iii) 2.7 mm 光学的深さ2.7 mm での天体サイズが判った場合、 SED から決めた Td を用いて 光学的深さ τ(2mm) を推定でき、表2に載せた。得られた値は 全ての天体で非常に大きい。例えば、 τ(2mm) = 0.0034 - 0.085 で τ ∝ λ -1.5 の場合、50 - 500 μm で τ = 1 となる |
![]() 図3.L(FIR) 帯 M(gas+dust) |
サンプル CO, 連続波の観測は我々の選択条件がうまく星形成に付随した天体 を選べたことを示した。全ての天体で CO が検出された。24/50 天体は ウィングまたは広い線巾を示し、多くが若い分子流天体であることを 示す。 冷たく小さいダストガス 最も面白いのは、冷たい (Td = 35 - 60 K) で小さい(< 35") の大量の ガス+ダストの存在である。フラックスと天体サイズとから、ダスト分布には (1)近傍中間光度天体で非常に小さく固まった天体、 IRAS 04287+1801, 05338-0624, 05375-0731, 16293-2422, 21391+5802、から遠方の大光度 で広がったサイズの天体、IRAS 00494+5617, 18162-2048, 18265\1517 まで 様々である。2 cm, 6 cm 連続波は 1/3 天体でしか検出されない。HII 領域 の寄与はあったとしても小さい。 |
近傍天体 近傍の小さい空間未分解天体は特に興味深い。それらは距離 750 pc 以下で、 光度 230 - 260 Lo である。これは M < 4 Mo の特徴である。ダスト域の 大きさ上限は 500 - 5500 AU である。これは、星形成に深く関与している 星周ダストを見ている可能性を示唆する。この星周ダスト雲の質量は 0.6 - 7 Mo と低いが、それでも密度は 7 106cm-3 - 2 109cm-3 と高い。これらの天体は前主系列進化の 初期にあり、我々が探している原始星の候補に最も近い。 遠方天体 遠方天体 1.7 - 2.2 kpc でダスト放射がもっと広がっているものは 大質量星、 B3 かそれより早期、である。分解されたそのサイズは 0.1 - 0.3 pc で質量は 70 - 270 Mo ある。密度は 0.3 - 5 106cm-3 である。ダスト放射は中心にある YSO に付随した、でも同一ではない、ダスト から出ている。これらは既にかなり進化しているのではないか。 |
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