WISE Discovery of MIR Variability of MYSOs


Uchiyama, Ichikawa
2019 ApJ 883, 6 -




 アブストラクト 

 Red MSX Source (RMS) サーベイから一様に選ばれた 800 MYSOs の WISE 変光を調べた。331/800 天体は 9 年間の W1, W2 データが得られた。変光 検査の結果、5つの MIR 変光を検出した。変光曲線は様々である。  (W1-W2) - W1 CMD 上で明るくなると青くなる傾向が分かった。これは減光 の変化か、降着率の変化のどちらかが原因であろう。 G335.9960-00.8532 は 周期 690 日の変光を示す。SED フィットからこの天体は進化した MYSO で ある。UCHIIR の極めて初期を見ているのかも知れない。


 1.イントロダクション 

 YSO の変光 

 YSO の可視、近赤外の変光は 50 年以上に亘り続けられてきた。 Menard, Bertout 1999. 最近 Spitzer による Young Stellar Object VARiablity (YSOVAR) 計画 Morales-Calderon et al 2011 が λ > 3 μm での 変光サーベイを行っている。その結果、低質量 YSO では変光は普遍的であるこ とが分かった。Gunther et al 2014 は変動の特徴から、変光の原因を 星の表面活動、円盤の密度構造、降着率などに分類した。 ても変光は普遍的である。
 MYSO の変光 

 VVV サーベイから Kumar et al 2016 は 13 MYSOs に ΔKs > 1 mag の年スケールの変光を見出した。それに続き Teixeira et al 2018 は 190/718 MYSO から ΔKs > 0.15 mag の変光を検出した。つまり、MYSO におい  しかし、サンプルは以前として不足している。


 2.サンプル 

 2.1.RMS  

 RMS MYSO カタログ Lamsden et ak 2013 は MSX 銀河面サーベイから選ば れた若い大質量原始星のカタログである。その範囲は l = [10, 250], b = [-5, 5] である。そこにはカラーで選ばれた 806 MYSOs が載っている。その 選択基準は F21 > 2F8, F21 > F14, F14 > F8, F6 > 5FK, FK > 2FJ である。さらに、F(5GHz) > 10 mJy は HIIRs または PNe として除かれた。

 2.2.RMS と WISE の位置同定  

  



  

 2 arcsec で同定を行った結果、660 MYSOs が残った。 使用する WISE データは 

   ph_qual = A

   qi_fact = 1.0

   qual_frame > 0.0

   saa_sep > 5.0

図1.サンプル選択のフロー。  





図2.W1 と W2 バンドでの変光。濃い色は個々の測定。薄い色は平均値を 100 日ずらして表示。

 2.3.変光の検出 

 変光基準 

(1) ALLWISE 2010-2011 は2エポック観測から成る。各エポック内での等級 分散 を σ とした時、2エポック間の平均等級差が 3 σ より大きい。

(2) 2エポック間の平均等級差が 0.3 mag より大きい。

(3) σ < 0.3 mag.

(4) 各エポック内の securer な観測が2個以上。

この基準から 12 天体が残った。
 低質量 YSO の除去 

 RMS では輻射光度も与えている。Lumsden et al. 2013, Urquhart et al. (2007) Urquhart et al. (2008) そのデータを使い、 L < 500 Lo は撥ねた。 その結果 5/12 個が残った。



表1.変光天体の性質

 3.結果と議論 

 3.1.変光の分類 

 3.1.1.変光 

 周期解析 

 観測は大体 180 日に一回なので、検出可能な周期はその倍=360 日より長い はずである。一方、データセットの長さは 3300 日なので、検出周期の上限は 1650 日であろう。したがって、 P = [360, 1650] 日の間で Lomb-Scargle ピリオドグラムを作った。

 FAP 

 FAP = false alarm probability = ガウシャンノイズだけの時にあるパワー スペクトルがある高さになる確率、を用いてピリオドグラムのピークが有意か どうか判定した。ここでは、 FAP < 3 10-3 = 3 σ 検出 値を周期的変光の境界とした。

 分類 

 各変光曲線は
1. 周期的: FAP < 3 10-3
2. Dipper: どのエポック間でも変光巾が 1 mag 以下。
3. Increase/Decrease with Plateau:部分的に変化するが、他は σ 以下
4. Other : その他

 3.1.2.カラー変化 

 CMD 

 図3には、各エポックで4回以上の観測があった天体の色等級図を示す。 図中には星間空間と分子雲内の 3 - 8 μm で典型的な Rv = 5.5 (Weingartner, Draine 2001、Wang et al 2014) を示す。

 フィット 

 CMD のフィットは Orthogonal Distance Regression (ODR) 法を用いた。 これは YSOVAR 計画 (Gunther et al 2014)で用いられる手法で、データが ノイズのみの場合 45 度の傾きを与える。ODR の結果は有意にノイズと異な っていた。

 明るいと青くなる? 

 G076.1807+00.0619 の傾きは 45° より急で、明るくなると青くなる。 一方 G269.5205-01.2510 の勾配エラーは大きく確かなことは言えない。





図3.変光天体の CMD. 灰色=単一露出。黒=平均。マゼンタ線=赤化ベクトル。 緑線= ODR フィット。

 3.2.MIR 変光 MYSOs の割合 

 今回検出された変光は 5/331 = 1.5 % で YSOVAR で 70 % に変光が見つか ったことに比べると非常に少ない。しかし、YSO 変光の原因は回転が多く、 年スケールの変光は少ないので単純な比較はできない。また今回の変光基準 は大きな変動を要求している。

 3.3.MIR 変光 の特性 

 表2に時間変化とカラー変化のクロスマトリックスを示す。これによると "Plateau" タイプの星に "BB" カラー傾向がみられる。減光または温度変化 を示唆している。G335 は周期変光を示すが、 W2 がサチっているためカラー 変化は検出できなかった。

表2.等級とカラーの変化の傾向  





図4.G335 の W1 変光曲線。P=693.3 日。

 3.4.等級とカラー変化の原因 

 3.4.4.G335 の周期的変光 


図5.G335 SED. とモデルフィット

 SED モデルフィット 

 図5のSED にMYSO モデル Robitaille et al 2007 をフィットした。 パラメターは表3に示す。G 335 の距離は運動近距離 (Urquhart et al 2007) を用いた。中心 MYSO は 10.5 Mo である。中心星の温度は 10,sup>5 K を越すが、 HIIR は検出されていない。HIIR が抑え込まれている可能性は ある。

 変光の原因 

 YSO では星の回転が原因となる変光が多い。しかしそれには周期が長すぎる。 連星の相互作用で降着率に周期的変動があるのかも知れない。その場合 BB 型 の変光になるので多波長モニターが重要である。Inayoshi et al 2013 は MYSO の脈動モデルを提案した。周期光度関係からは 2.8 105 Lo が予想され、G335 の 7.6 103 Lo より一桁高い。もし、G335 が 遠距離 12.1 kpc にあるなら、1.0 105 Lo に跳ね上がり、モデルと の一致は良くなる。

 今後の観測 

 SWIMS と MIMIZUKU を予定している。

表3.G335 モデルの主要パラメター