The AKARI Far-Infrared Surveyor Young Stellar Object Catalog


Toth, Marton, Zahorecz, Balazs, Ueno, Tamura, Kawamura, Kiss, Kitamura
2014 PASJ 66, 1 - 13




 アブストラクト

 QDA 法で YSO 選択 
 FIS Bright Source Catalogue/WISE catalog から YSO を抜き出した。 選択には quadratic discriminant analysis (QDA) 法を用いた。 トレイニングサンプルは既知の YSO を SIMBAD から選んだ。

44001 YSO 検出 
 FIS YSO 候補は 44001 天体あり、分類の信頼度は 90 % を超える。 76 % は以前に未登録であった。
密度超過 
 新発見 YSO の大部分はクラス I と II である。その方向分布は 銀河系星間物質の分布と良い相関がある。局所的密度超過は赤外ループ の上と、Planck で発見された冷たい塊方向で見られる。


 1.イントロダクション 

 Evans et al. 2009 はペルセウスとへびつかい座の星形成域 SST サーベイ に基づき、YSO 進化期の長さを 星以前、クラス0 , クラスI , クラスII で 0.46, 0.16, 0.54, 0.40 Myr と見積もった。 AKARI FIS Bright Source Catalog には 427071 天体が載っている。


 2.データと解析 


図1.座標差。黒プラス=FIS - 2MASS。赤プラス=FIS - WISE

図2.感度曲線。黒=WISE.色つき=FIS。


 2.6.観測とモデルの比較  




表1.フィルター特性

図3.フィットモデルと観測のフラックスの比較


 3.分類 


図4.牡牛-御者-ペルセウス 領域内 YSO の規格化平均SED. 青=クラス0, 緑=クラスI, 赤=クラスII. 黒=爆発的星形成銀河。 灰色四角=WISE, FIS バンド。YSO と 星形成銀河との SED の類似に注意。

 3.1.Quadratic Discriminant Analysis

 QDA (McLachlan 1992) の計算には R を使用した。最初に訓練サンプル を用意する。QDA は訓練サンプルの多次元空間の中で、グループ間の二次式で 表現される境界を求める。境界が定まると本チャンサンプルに対して、各 グループに所属する確率 η を計算する。η に基づいて、各天体の タイプを決定する。

 3.2.Quadratic Discriminant Analysis の適用 



FIS と SIMBAD カタログの一致 

 まず、FIS と SIMBAD カタログの一致を行う。探索半径は FIS N160 の HPBW = 30 を使用する。複数天体がヒットした場合、 全ての結合を保存する。使用タイプはSIMBAD の主タイプに限る。 21736 天体が SIMBAD と一致した。 404406 天体では一致がなかった。 それらを WISE と較べた後、64653 天体が remained for further studies.

( 427071 FIS = 21736 SIMBAD + 405335 non-SIMBAD
         = 64653 FIS/WISE + 362418 non-WISE
で、この研究で分類にかけるのは 64653 FIS/WISE 天体ということらしい。 )


図5.多次元カラーカラー、カラーフラックス空間のスライス。 グループの境界がリニアでないことが分かる。



教練期  

 教練では以下の仮定を置いた。

(1)AKARI 天体 = 銀河+進化した星+YSO

(2)4609 銀河= |b| > 3° で、SIMBAD で銀河のどれかのタイプに分類。

(3)13 進化した星=RG*(red giant branch star)+AB*(asymptotic branch star) +C*(carbon star)+S*(S star)+sg*(evolved supergiant star)+pA*(post-AGB star)

(4)2021 YSO = Y*O(young stellar object) + Y*O?(young stellar object candidate) + TT*(T Tau star) + TT?(T Tau star candidate) + Or*(variable star of Orion type) + HH(Herbig-Haro objects) + pr*(pre-main sequence star) + pr?(pre-main sequence star candidate) + FU*(variable star of FU Ori tupe) + HII(H II region) + Em*(emission-line star) + *iC(star in cluster) + WR*(Wolf-Rayet star)



 分類空間 

(1)[F140] 

(2)[F65/F90] 

(3)[F90/F140] 

(4)[F140/F160] 

(5)W1-W2






表2.QDA 分類の結果とSIMBAD 分類との比較。上4項目は FIS/WISE 64653 の QDA 分類の中で、SIMBAD 分類のあったものが実際にはどう分類されていたかを示す。 最後の項目、"Other FIS detected" は WISE に載っていない FIS 天体で SIMBAD にあったものがどう分類されていたかを示す。

 4.結果 

 64653 FIS/WISE 天体 = 44588 YSO(η>0.5) + 18494 銀河(η>0.5) + 1303 進化星(η>0.5)となった。268 天体は η<0.5 のため 分類不能であった。

 4.1.分類の信頼度 

 表2の説明 

 分類の信頼度を調べるため、以前天体に付与されたタイプを再チェックした。 30 以内で最近接距離にある Simbad 天体と、その範囲内の Simbad 天体全てを調べた。その結果が表2にまとめてある。それらは、

(1)QDA で決めたタイプ。
(2)天体数
(3)最近接天体か探索範囲内の全天体か?
(4)(3)の各カテゴリー毎の結合数
(5)SIMBAD YSO 天体の数
(6)SIMBAD IR-type 天体の数
(7)SINBAD ISM-type 天体の数
(8)SIMBAD "*"-type 天体の数(星)
(9)SINBAD 銀河の数
(10)SINBAD 進化星の数

11 - 17 列は各タイプの割合。
 YSO 分類の信頼度 

 QDA で YSO と分類された FIS/WISE 天体は 1034 ある。その内 965 (93.3 %) が QDA 法で YSO と分類された。
( 論文ではこの "93.3 %" を "value of accuracy" と呼んでいる。少し おかしくないか? QDA で YSO とされた内 SIMBAD 同定のある 11235 天体中 965 天体が YSO と同定ということで、965/11235 = 8.6 % を信頼度というなら まだ分かる。)


牡牛ー御者ーペルセウス(TAP) YSO の解析 

 TAP 領域には 585 個の FIS BSC 天体がある。内、 174 個は YSO 型 SED を持つ。 またその内の 68 個は信頼できる FIS 測光が 1 バンドのみなので、外す。残り 106 個を QDA 分類した結果、YSO = 97(92 %) であった。残りは 7 銀河 + 2 進化星であった。

 YSO 候補の掃除 

 表2にあるように QDA で YSO 候補は 44588 個あった。ただし、SIMBAD で 銀河とされたものが 587 (5.2 %) 個あった。それらを除くと、残りは 44001 個 となる。

 4.2.YSO カタログ  

 カタログは VizieR から取ってこれる。



図6.黒= 全 FIS 天体の銀経分布。灰色= 44001 YSO 候補の銀経分布。 どちらも l= 0°, 80° にピークを持ち、 240° に底を持つ。


 4.3.YSO の分布  

 44001 YSO 候補の分布は FIS 全天体の分布と似ていて、l = 80° ( Cyg-X SFR) に極大、l = 240° に極小を示す。局所的な極大は オリオン (l = 200° - 210°), 帆座(l = 270°)、カメレオン(l = 290°)、 ケフェウス(l = 105°) 牡牛ー御者ーペルセウス(l=160° - 180°) 星形成域で見られる。

図7.黒= 全 FIS 天体の銀経分布。灰色= 44001 YSO 候補の銀緯分布。 b= 45° にピークが見える。南側の天体数(53 %) は北側(46 %) より 少し多い。

 4.3.1.YSO の相対密度  

 YSO の表面密度 N を Dame et al. 2001 による W(CO) (K km/s) と比べてみた。図11の上と中に示されるように、 主要な星形成領域、すなわち、 オリオン、TAP, Polaris Flare, 狼、帆座シート、 Cyg X, Cyg OB7, カリーナ、鷲座リフト全てで N(YSO)/W(CO) の超過が見られる。 超過の構造が見える良い例は、O8 星 λ Ori (図8a) の周りに広がる 膨張分子リングで、10 < N/W(CO) < 100 である。このリングは多分 SNe II によりできたのであろう。



図8.λ Orionis 領域。(a) N/W(CO) マップ。等高線の値は、 3.2, 10, 32, 100 (K km/s)-1 (柱密度の単位は?) (b) 100 μm 輝度分布。 (c) YSO 分布。橙= ループ内側にある QDA YSO.  赤=ループ上にある YSO. 青=ループの外にある YSO. 黒楕円= GIRL G195-11 の境界。YSO 候補の表面密度はループ状で超過を示す。

 4.3.2.IR ループと YSO 

 ループとは 

 FIR ループ (GIRLs: Konyves et al 2007) は星間物質の超過または 不足密度領域のことで、星形成過程と関係すると考えられている、 ループ状、穴状、紐状の構造である。

 

 図8cにループと YSO 位置の比較を載せている。しかし、銀河面自体は 混雑度が高過ぎるので、 3° < |b| < 28° 領域で

 

 



表3.N/E(B-V) の観測値とシミュレーションの比較。


 4.3.3.YSO を伴う分子雲の冷たいコア 

 

 より小さいスケールでは、QDA YSO サンプルを Planck Early Cold Core (ECC: Planck Collaboration 2011) に載っている冷たい (T < 14 K) ISM の塊り と比較した。ECC には 915 の信頼できる検出例が、Planck Early Release Compact Source Catalog (ERCSC) の一部として載っている。 我々は冷たいコアの周辺で YSO を探した。見出された相関は表4に載せた。

表4.ECC に付随する YSO の数。


 4.4.他のカタログとの比較 

 Polla, Rybka, Takeuchi 2010 

 AKARI FIS BSC β-1 バージョンを用い、天の川の低減光領域から 5176 天体を選んで、Polla, Rybka, Takeuchi 2010 は銀河と星を分離した。 彼らの選択基準はフラックス精度による制限を含んでいない。分離には、 カラー・フラックス、カラーカラー図の4バンド全てのフラックスが用いられた。 彼らはカラー・フラックスおよびカラーカラー図上に二つの「クラウド」を 見出した。一つは銀河を 95 % 含み、もう一つは星を 80 % 含んでいた。
 我々の解析は W90 と W140 のフラックス精度最高サンプルでは 13 倍多く 含んでいる。我々は平均して我々が YSO 候補とした天体の 41.2 % は 彼らの基準では銀河となることを見出した。同時に、我々が銀河と同定した天体の 32 % が彼らの銀河クラウドに属している。

 Gutermuth et al 2009 

 Gutermuth et al 2009 は Spitzer IRAC, MIPS から 2548 の YSO を分類した。

 Rubull et al 2011 

 Rubull et al 2011 は 牡牛・御者領域 260 deg2 を 2MASS/WISE を用いて YSO 探しを行った。彼らは既知の 126 YSO に 加えて 94 の新しい YSO を発見した。

 Takita et al 2010  

 Takita et al 2010 はAKARI/IRC サーベイを用いて牡牛・御者領域で YSO を探した。 517 の既知 T Tau 星の内 133 個を検出した。

 Koening et al 2008  

 Koening et al 2008 は W5 HIIR の周囲で Spitzer IRAC/MIPS 観測を行い、 17771 個の天体を検出した。

 Harvey et al 2007 

 Harvey et al 2007 はヘビ座で 286 個の YSO をリストした。

 Povich et al 2011

 Povich et al 2011 は Chandra Carina Complex Project で 1439 YSO のカタログを示した。

 Kang et al 2009 

 Kang et al 2009 は Spitzer データを用い、 W51 巨大分子雲中に 737 個の埋もれた YSO を見つけた。

 Kun et al 2009 

 Kun et al 2009 Cepheus Flare 領域に 77 個の前駆主系列星を見つけた。

 

 Felli et al 2002 は ISOGAL プログラムで 715 YSO を見つけた。

 

 Minier et al 2003 はメタノール 6.7 GHz メーザーで YSO を探した。
Koening et al 2012

 Koening et al 2012 の WISE に基づく分類は YSO の素早い分類を 可能にした。しかし、我々のデータは FIR 情報を含んでいる点で優れている。

 Majaess 2013  

 Majaess 2013 は 2MASS と WISE に基づき、 スペクトル勾配による 分類を提案した。彼は > 10000 個の YSO を報告した。我々は彼の 勾配分類を我々の QDA YSO に適用してみた。結果は 22594 クラス I, 7905 フラット、8872 クラス II, 4630 クラス III 天体であった。

 ATLASGAL

 ATLASGAL (Schuller et al 2009) APEX Telescope Large Area Survey of the Galaxy はAPEX に LABCOCA ボロメタ―アレイを APEX に付けて、内側天の川 400 平方度を 870 μm でマップする 計画である。その領域には AKARI YSO が 18806 個存在する。

 GLIMPSE  

 GLIMPSE (Benjamin et al 2003)は ATLASGAL とほぼ同じ領域を 探査している。4219 AKARI YSO が Spitzer の 15 以内で見つからなかった。AKARI YSO の 22 % が Spitzer では見つからない。

 大質量 YSO の密度超過 

 Thompson et al 2012 は大質量 YSO の密度超過を 322 MIR Spitzer バブル の周囲で調べた。


 5.まとめ 

 YSO 候補の検出 

 44001 個の AKARI FIS BSC 天体を YSO 候補として提示した。その大部分は クラス I である。それらの MIR + FIR データから冷たい星周物質の 性質が明らかになるであろう。
 N/W(CO)  

 近傍の星形成域では N/W(CO) が超過することが分かった。

 ループ 

 より小さいスケールでは、ループとの相関が見出された。