ΔKs > 1 mag の大きな変光 YSOs が発見されている。Spitzer Extended Green Objects = EGOs の駆動源と推定される 270 天体と ATLASGAL (870μm) ピークに一致する MIPS 24 μm 448 天体を合わせ、718 天体の 変光をVVV を用いて調べた。それにより MYSOs 変光の一般的性質を明らかに する。IQR > > 0.05, ΔKs > 0.15 を変光基準として、190 天体 = 139 EGOs + 51 non-EGOs = 111 周期変光 + 79 非周期変光=eruptive + dipper + fader short-term variable * long-term variable を検出した。 |
変光天体に対しロム・スカーグル ピリオドグラム解析と、SED の YSO モデ
ルフィットを行い、変光源の一般的性質を導いた。変光星の 41 % は > 4
Mo で、> 8 Mo モデルに合致したのは 6 % しかなかった。高質量星は
大部分 non-EGOs で、 EGOs と比べ 2 倍の減光を被っている。HR-図上にプロ
ットすると、低質量 EGO-型星は誕生推定線上に集まり、明るい non-EGOs は
ZAMS 線近くに来る。一様なサンプル選択法を採用したために、大質量の塊り
内にある最大に明るい FIR 源や、赤外で暗い EGO 駆動源は扱われなかった。
EGOs は 139/153 の高変光率を示し、MYSOs の近赤外変光が降着現象と放出流
活動に関連することを示す。
(変光星内での議論で、非変光星との 比較が欲しい。 ) |
降着変動 降着が変動することは多くの観測で確認されている。低質量 YSOs で起きる FUors(FU Orionis) や EXors(EX Lupi) 変光は夫々数年、数か月続く高い 光度増加で降着率の変化が原因と考えられている。 MYSOs の降着変動 同様の現象が高質量 YSOs にも起きることが最近確認された。Kumar et al 2016 は VVV から得られた MYSOs の高変動光度曲線を使い、それが時折起きる 降着が進行している証しであると述べた。Caratti o Garatti et al 2017 は 20 Mo MYSO の測光及び分光変化から、円盤仲介型の降着暴走は質量全般を 通じての一般現象であると主張している。Hunter et al 2017 は ALMA 観測に 基づき、突発的な降着が大質量原始星成長の主因であるとした。 |
点源サンプル Kumar et al. 2016 の発見は MYSO の変光全般の性質を知る必要を示す。 この論文では EDOs と ATALSGAL で発見された深く埋まった赤外源の変光を 調べる。これらの天体は点源 YSOs の無バイアスサンプルとなっている。 狙いを点源に絞る RMSs や UCHIIRs は MYSOs を代表する重要な天体であると考えられる。しか しそれらは広がっていて、変光を調べるためには大アパーチャの測光が必要と なる。それは別の課題としたい。我々は MIPS で点源に見える天体に限定し、 大質量星形成領域に属していて、Ks でも点源である星を扱う。 |
点源 MYSOs を探すために、GLIMPSE, MIPSGAL, ATLASGAL, VVV サーヴェイ
データを調べた。そこから、 a) EGOs の駆動源 b) ATLASGAL の 塊に埋もれた MIPS 24 μm 点源 を探した。この二つは (b) = MYSO の放出流が開始される前と (a) = 放出中 という、大質量星進化の最初期の二つの段階を代表していると考えられる。 最終的には 153 EGO + 448 non-EGO = 601 サンプルを得た。66/153 EGO 天体は ATLASGAL クランプ内にある。non-EGO 天体は後に示すように、 クランプピークに一致する天体のみから成るのである。 2.1.MYSO サンプル2.1.1.EGO サンプルEGOs は 4.5 μm 拡散放射を持つ天体である。このバンドには H2, CO ラインが含まれていて、放出流やジェットが周囲と作用した時のショック で励起される。したがってそのような天体では 4.5 μm での超過が観測され る。Cyganowski et al 2008 はそれら 300 以上のカタログを作製した。それらの 追加を Chen et al 2013 が行った。RGOs は MYSOs により駆動される H 2 (Cyganowski et al 2008) または MYSO 放出流の cavities (Takami et al. 2012) と考えられている。これまでに 270 の EGO 天体が見つかって いる。その駆動源を探すために EGO 検出位置の周りに VVV 天体を探し、 1.0" サーチで 187, 0.5" サーチで 153 天体を見出した。円盤と放出流を伴う YSOs にはしばしば近赤外の星雲が見える。それらは点源でなく広がった天体として 分類される。そこでここではそれらの広がった天体 20 % 以下だが、も残した。 |
2.1.2.non-EGO サンプルKumar et al 2016 は ALTASGAL クランプ中の MYSO 候補天体が大きな変光 を示すことを発見した。ここではそれと逆に進む。ATLASGAL を用いて、 Contreras et al 2013 と Urquhart et al. (2014) は 10000 個の濃い塊のカタログ CSC = Compact Source Catalog を作った。 それらの質量、密度、距離は Urquhart et al. (2018) に与えられた。それらは活発な高質量星形成の場所を表す。 ATLASGAL クランプに MYSOs が埋もれていると仮定して、我々は ATLASGAL CSC 天体の半径 5" 以内に MIPSGAL 点源を探した。873 点源が見つかった。 候補が複数個ある時は最近天体とした。MIPS の FWHM は 6" なので、この 873 MIPS 天体の 5" 以内に VVV 天体を探し、574 Ks 天体を候補とした。 これら 574 候補は 5" 以内に複数の VVV 星がある。そこで次の段階では、 574 天体の MIPS ピーク位置 1" 以内の VVV 星を探した結果 2171 星を得た。 そこから、サチっていない検出が VVV 5年間の間に 10 回以下の者は撥ねた。 その結果、367 単一検出と 147 複数検出が残った。複数検出天体は天体等級、 カラー、距離を調べ、 66/147 天体を撥ねた。その結果残った 367 + 81 = 448 星が ATALASGAL ピークにある MYSO 候補に対応する Ks 星である。 |
2.4.1.変光星の同定![]() 図2.爆発的増光の例。上:光度変化。下:青= 3.6, 緑= 4.0, 赤= 24 μm の三色合成、青丸=VVV 星。緑バツ= MIPS co-ordinates. 等高線= ATLASGAL 850 μm |
2.4.2.等級の変光への影響![]() 図3.等級と系統エラーの関係 |
2.5.ピリオドグラム、FAPエイリアスScargle 1982 は FAP = false alarm probability = 周期成分を欠くラン ダムサンプルのシグナルがたまたまそのレベルに達する確率、 を定義した。ピリオド グラムに現れたピークが有意かどうか、真の信号か、それのエイリアスか、を 確認しなければならない。 そのため、最高ピークとそれに続く10のピークを確認する。そして、 a). 周波数で整数倍か b). 周期で整数倍か c). 次式を解く。 fi = ft +n*fw ここに、fi はエイリアス周波数、ft は真の周波数、 そして fw は周波数窓で、窓は 1年=0.0027 day-1, 1 日 = 1 day-1, 1 恒星日 = 1.0027 day-1 である。 |
2.6.SED 解析![]() 表1.SED フィットに使用したバンドと波長。 Python 版 SED フィッティング R0bitaille et al 2007 を使って、モデル 化した。やり方は Grave, Kumar 2009 に倣った。Av = 0 - 50 を使用。105 天体の距離は Urquhart et al. (2018) から採った。残り 102 天体は d = 1 - 13 kpc の範囲とした。 |
IQR 601 = 448 non-EGO + 153 EGO の LCsを目で調べ、IQR = interquatile range = 四分位範囲を比べた。サンプル星の 20 % はフィールド星での 1σ エラーを超えるが、それらは IQR > 0.05 であった。 |
変光天体の選択 この選択基準から、 51/448 non-EGOs と 139/153 EGOs が変光天体と認められた。それらは表2に 変光型と共に載せた。図4には変光曲線の例を示す。図5のように、各天体で、 変光曲線、ピリオドグラム、位相折り畳み変光曲線、3色合成図が得られる。 |
Contreras Pena et al 2017a の変光曲線分類 Contreras Pena et al 2017a の変光曲線分類に従う。まず、大きく、 a): 長周期変光=LPV-yso, b): 短時間変光 = STV, c): ディッパーとフェイ ダー. d): 噴火型に分ける。Contreras Pena et al 2017a ではピリオドグラム の最高ピークしか考えなかったが、我々は有意なピーク全てを考慮する。 |
長周期変光=LPV-yso 長周期変光=LPV-yso は P > 100 d で、 P < 15 d の恒星回転や円盤 公転周期と区別される。図5にその2例を示す。 |
短時間変光 = STV 短時間変光 = STV は P < 100 d の周期、または明かな周期がない変光星 である。 P = [15, 100] d の周期は星周円盤の遮光や変動性降着で説明される。 |
図6= STV の例 図6には P = 29 d と 18 d の例を示す。左は IRDC フィラメントの上にある。 右は VLA1a 天体 (Zapata et al 2008) から 2" 以内にあり、MYSO 集団に 属す。 |
![]() 図7.フェイダー事象の例。 フェイダー フェイダーとディッパーは非周期変光の二つのタイプである。フェイダーは 緩やかに続く減光か、継続的な増光の後に続く急落と1年間の低光度状態 が特徴である。ディッパーには星周減光の増加がしばしば伴う。 |
![]() 図8.ディッパー事象の例。 ディッパー ディッパーは 数か月から1年に亘る長期の減光とその後の正常光度への復帰が特徴である。 同じ用語が YSOVAR でも用いられるが、そちらは数時間から数日である。 ディッパーを短時間モニターした場合には、フェイダーと見誤ることも あるだろう。ピリオドグラムにはピークが見当たらない。 |
噴火型= Eruptive 噴火型も非周期的であるが、数か月から数年に及ぶ光度増加が特徴である。 FUors や EXors は噴火星の古典例である。Medina et al 2018 は、 低振幅噴火星 ΔKs < 1 mag という区分を立て、可視でより派手な FUors や EXors と区別した。しかし、円盤の幾何学配置等で FUors や Exors がNIR では低振幅に見えるかも知れない。とにかく、低振幅噴火型は 26 個 あり、正常な噴火型が 15 ある。 例 図2に示したのは現在進行中の噴火である。いくつかの噴火を重ねながら 光度を上げている。図9には低振幅噴火の例を示す。この天体にはジェット に特徴的な緑色の筋が画像に見える。というがどれがそれか? |
![]() 図9.低振幅爆発型事象。 |
モデル Robitaille et al 2006 の YSO モデルを用いて、変光星の SED フィットを 行った。表A.2 にその結果をまとめた。この表には 190 天体が載っている。 しかし、距離が得られているのは 105 天体で、他は 1 - 13 kpc の距離を仮定 してフィットを行った。その結果幾つかの天体では星以下の質量星の結果と なってしまった。 |
図10=SEDフィット 図10に変光タイプの代表例に対してフィットした結果を図示する。サンプ ル星の質量は 1,84 - 10.30 Mo、光度は 57 - 6918 Lo に広がる。これは主に t = 104 - 106 yr の進化段階の差に起因する。 表4には SED フィットの結果をまとめた。質量範囲毎の割合、光度等の平均 を示す。 |
![]() 表5.サンプルグループ毎のフィッティングパラメターの中間値。 non-EGOs は深く埋もれた天体 EGO サンプルは 139/156 = 91 % が変光し、non-EGO サンプルは 51/433 = 12 % が変光する。これは MYSO の変光が流出活動と関連することを疑わせる。 表3に変光の統計をまとめた。 変光 EGOs の 64 % が周期性変光を示すのに 対し、変光 non-EGOs の 59 % が非周期性変光である。表5にはグループ間の 変光特性の差を示す。 (区分けが二重に重なるから注意。 なぜ4区分しないのか?) 図11と表5を見ると、non-EGOs 変光巾の区間は EGOs の倍くらいあること が分かる。モデルパラメターでも、non-EGOs の星周減光 AV,circum は EGOs の倍くらい深い。また、non-EGO 変光星は遠方にあってより明るい天体 らしい。これら全てから、non-EGOs はより深く埋もれた天体と言える。 エイリアス 各変光ピリオドグラムの上から10個のピークを調べた結果、non-EGOs では 5/9 = 11 %, EGOs では 22/139 = 22 % にエイリアスが見つかった。こうして non-EGOs で1個、EGOs で15個の星が LPV-YSO から STV へと分類が変わった。 降着率 図12を見ると、non-EGOs の降着率は EGOs のそれに比べ一桁小さい。これ は非周期変光星に対しても同じである。non-EGOs は非周期変光星が多数を占め ているが、それが図12の上と下の差を説明する。非周期変光、つまり噴火型、 ディッパー、フェイダーは、低光度静謐期と短期間の降着事象で特徴付けられ る。これが、非周期変光で降着率が低い理由である。 |
![]() 図11.ΔK のヒストグラム。左=non-EGOs. 右= EGOs. ![]() 図12.SED フィットから決まる質量と降着率の関係。左上=EGOs. 右上=non -EGOs. 左下=周期変光。右下=非周期変光。 |
EGOs 図13 HR-図を見ると、 EGOs は誕生線近くに集中しており、多くが < 4 Mo である。高質量星の前駆天体は質量を増加させている最中の低質量天体 である。したがって、 EGO 駆動星の多くが若い 低・中間質量星であるのは 当然である。 non-RGOs non-EGOs が ZAMS で上の方に集まっている。non-EGOs は EGOs より深く埋 もれていて、より大きな ΔKs を示す。ZAMS に近い天体は従って 膨らんで脈動する若い高質量星をテストするよい試料かも知れない。 Inayoshi et al. 2013 は ZAMS に落ち着く過程で脈動変光星を経過すると した。一方 Contreral Pena et al. (2017a) は、 PMS 早期には噴火型変光がより多いと述べた。今回の解析では、 噴火型変光星の 70 % が誕生線近くに、その半数が ZAMS 上にある。 誕生線天体の特徴は明るい原始星外層である。したがって、噴火型 MYSO の 大部分が外層降着の結果と考えられる。高質量原始星は降り注ぐ降着物質を 飲み込んで膨張期を経過してから、再調整と収縮に入る。これが、 ZAMS での 噴火なのかも知れない。 メタノールメーザー 表6にはメタノール II 型メーザーの 32 天体をリストした。このメーザー は大質量星形成、特に放出流、の強い指標である。32 天体中、non-EGOs は 2天体しかない。これは メーザーが流出流活動と関係するよい証拠である。 |
![]() 図13.サンプル星の HR 図。PMS 経路の破線は下から、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 Mo.実線=ZAMS.青= EGOs. 赤=non-EGOs. |
MYSOs の の中で特に EGOs と ATLASGAL ピーク近くの明るい
24 μm 源の NIR 変光を調べた。サンプル数は 718 である。
190 天体 = 139 EGOs + 51 non-EGOs に IQR > 0.05, ΔKs > 0.15 の変光を検出した。周期性111, 非周期性 79 である。 SEDs を YSO モデルでフィットした。47 天体が ≥ 4 Mo, 6 天体が ≥ 8 Mo となった。 |
HR-図上で低質量 EGOs は誕生線付近に多く集まる。
EGOs の高変光性 139/153 は近赤外変光が降着と流出流に関係することを 意味する。 この研究は Kumar et al 2016 の高振幅 MYSO 変光 12 天体の発見に次ぐ 組織的変光調査である。これらは MYSOs の周辺環境を調べる重要なサンプル となる。 |