Dust Grains in AGB Stars as Sources of Interstellar Dust


Suh
2004 JKAS 37, 289 - 294




 アブストラクト 

 AGB 星から放出されたグレインは星間空間で混ざり、変成作用を受ける。 星間空間のグレインと AGB シェルのグレインの間には類似点と相違点がある。  銀河系内の質量循環は、様々な場所におけるダストが多くの類似点と 相違点を持つ事に現れている。


 1.イントロダクション 

 2.AGB 星のダスト 

 2.1.光学特性 

 図1= AGB 星のダストのオパシティ関数 

 図1は AGB 星のダストに対するオパシティ関数を示す。吸収ファクター Qabs は、半径 0.1 μm の球状グレインに対して計算された。

 ε の計算 

 ε の計算は Drain. Lee 1984 の手法で行った。それは

(1)実験室データと合う、候補物質の ε2(λ) を得る。

(2)ε1(λ) を下のクラマースクロニッヒ関係から得る

ε1(λ) = 1 + 2 P ∫ 2(x) dx
π 0 x2 - λ2


(3)Qext(λ) を計算する。

(4) ε2(λ) を修正して (1) に戻る。

  

 こうして得られた光学定数は地上鉱物や隕石鉱物の測定値と少し異なる。

図1.AGB 星ダストのオパシティ関数。


 2.2.SED 


図2.Z Cyg の SED

 AGB 星の観測から導いたオパシティ関数を用い、図2では様々な位相における LMOA 星 Z Cyg の ISO SWS SEDsをモデル SED でフィットした。 図3では HMOA OH127.8+0.0 の SWS+LWS 及び IRAS データを幾つかの 変光位相においてモデル SED でフィットした。詳細は、 Suh (2004a) を見よ。

 図4には Suh, Lee, Kim 2000 が集めた AGB 星 IRAS, K,Lデータ から作った赤外二色図を示す。504 O-リッチ星と 730 C-リッチ星が載っている が、O-リッチと C-リッチの明確な分離が印象的である。

図3.OH127.8+0.0 の色々な位相での SEDs


図4.AGB 星の赤外二色図。



図.

 2.3.AGB 星でのダスト形成 

 ダスト形成温度 

 以前は O-リッチ AGB 星に対して一定のダスト形成温度 1000 - 1500 K を仮定していた。Kozasa, Hasegawa, Seki 1984, Gail, Sedmayr 1999, Sogawa, Kozasa 1999 は星風が強い場合ダスト形成温度があがることを指摘し た。形成されたシリケイトダストは急速に放射冷却する。その温度は dM/dt = 4×10-5 Mo/yr で 900 K, 5×10-6 Mo/yr では 500 K である。
(すると、半径と共にガス温度が 下がって、形成温度でダストができる。そこでダスト温度が下がり、周りの ガスを冷やす。ガス温度はダスト形成層でガタンと落ちる。 凄い圧力差を 生むな。)

(HMOA の高温 Tc というのは、形成温度 を指すのか、冷却後の平衡温度を指すのか、どっちだろう? )


 ダスト蒸発温度 

 ダスト蒸発温度はよく分からないが、多分形成温度より高いだろう。

 2.4.結晶性ダスト 

 アニーリング 

 Fabian 2000 は非晶シリケイトを 1000 K でアニールすると、スモークで1日、 バルクでは数日で結晶化することを見出した。しかし、 1000 K 以下になると 結晶化は進まない。これが LMOA で結晶シリケイトが見つからない理由だろう。

 HMOA で起きる? 

 Suh 2002 は結晶シリケイトを 10 - 20 % 混ぜると、 HMOA の結晶性 スペクトルを再現することを見出した。


 3.星間ダスト 


図5.星間ダストのオパシティ関数 Qabs。

 3.1.銀河系星間減光曲線 

 グラファイトとシリケイト 

 Gehrz 1989 は AGB 星が星間ダストの 90 % を供給しているとした。 図5は星間空間の主要グレイン物質のオパシティ関数である。 AGB 星より小さな、半径 0.01 μm グレインに対して Qabs を計算した。 AMC (非晶炭素)は星間空間での結晶化によりグラファイト化し、 0.2175 μm 吸収帯を生み出す (Drain 2003)と考えられる。 シリケイトとグラファイトの比率はメタル量に依存する。Pei 1992 は 粒子数で、シリケイト 58 %, グラファイト 42 % とした。

 未同定赤外バンド (UIR) 

 UIR は PAH または PAH を含む小さいグレインに由来すると考えられる。 PAH は銀河内の水素化非晶質炭素の成分の一つであろう(Chiar et al 2000). PAH の炭素骨格はグラファイトシートの骨格と似ており、 PAH 分子も 0.2175 μm 遷移を示す(Draine 2003)

図6.HAEBE 星 HD163296 の SED

 3.2.YSO と隕石のダストグレイン 

 YSO 

 YSO のダスト外層は進化に連れて薄い円盤形状に変わっていく。 そのダスト組成は複雑で、形状と相まって SED 計算は困難である。

 ハービグ Ae/Be 星 

 ハービグ Ae/Be 星は 2 - 10 Mo の前主系列星である。SED フィットによる ダストのサイズ分布は 0.01 μm の小粒子が 1 μm の非常に大きな粒子 と混ざっている。おそらく、小さな粒子は星間空間中ででき、大きな粒子はそれらの 融合でできたのであろう。

 隕石 

 隕石中にはパイロキシンとオリビンが多い。Nagashima, Krot, Yurimoto 2004 は炭素質隕石中に 0.1 - 1 μm サイズの前太陽系起源のシリケイト グレインを発見した。


 4.結論