Silicate Emisssion at 10 Microns in Variables on the AGB


Sloan, Price
1995 ApJ 451, 758 - 767




 アブストラクト

 シリケート10ミクロン放射の形は、ピーク位置が10ミクロンの古典的な細い シリケート放射帯から、ピーク位置が11ミクロンより先の太いはっきりしない 放射帯への系列を成す事を示す。この系列シリケイト放射帯の分類の基礎に用い、 AGB 変光星の IRAS LRS スペクトルに応用して、これまでの分類と対比した。 我々の結果は AGB 星が多重シェルを産み出しているか、O-リッチ星のスペクトルは 広い放射帯から細い放射帯へは進化しないことを示唆する。

 1.イントロ 

 1.1.LRS 2nグループ

n = 10 B, B = ln(F9.8/Fc), lnFc = 0.589 lnF7.9 - 0.411 lnF13.3

 1.2.Autoclasses 

 1.3.Little-Marenin, Little 分類 

O−richダスト天体の分類クラス
  Silicate       細い10μ帯
  Silicate+,++    11μ寄与で幅が広がる
  Broad        幅がさらに広がり、11μより長波長にピーク
  3成分        Silicate++ と似るが、13μ にも放射帯
  Sクラス      10.5-10.7μにピーク

連続光の決定
  当初は、F(8μm)とF(14μ)に合うBB
  ――>温度が低くなり過ぎる。14μのダスト放射を落とす。
  改良版は、BB(2500K)をF(8μ)に合わせる。 



 2.新分類システム 

 2.1.変光星サンプル 

 選択条件 
(1) LRS 
(2) F(12)>28Jy 
(3) AGB変光星(ミラ、SRa, SRb、Lb)
      Hoffmeister,Richter,Wenzel 1984)
     GCVSから選択。SRc,Lcは超巨星なので除外。 
      SRdはF,G,K型が多いので除外。
(4) C-, S- 星は除外。

 2.2.スペクトル 

 スペクトルは LRS データベースから採った。

 2.3.ダスト放射から恒星連続光を分離する。 

 LRS フラックスの補正 
 LRS スペクトルのフラックス強度較正の際には、標準星に使った αTau に関して黒体の仮定をしていた。しかし、その後 Engelke 1992 により、より良い近似式が提案され、また αTau には SiO の強い吸収が あり、 8 μm では 11 % に達することなどが判った。Cohen 1992 は 個々の LRS スペクトルを補正するファクターを用意した。われわれはこの ファクターを採用した。

 連続光有効温度 
 星の連続光有効温度を決めるのは、(1)波長帯毎に観測時期が異なりスペクトル タイプが M5 から M10 に動いたりする、(2)S/N が低い、などから困難。 そこで、全てのサンプルに共通温度 3240 K (M6 に対応)を適用した。

 Engelke関数 
 Engelke関数は次の式で決められる。

   Bν = Bν(Tb)
   Tb = 0.738Teff(1 + 79450/λTeff)0.182

ここに λ はミクロン単位である。この経験式は中間赤外の主要 吸収源である H- の効果を表現している。このオパシティは 波長と共に増大するので冷たい表面を見るようになるのである。

 SiO 吸収 
 SiO バンドは 5 つの裸の星, α Tau, β Peg, ρ Peg, V806 Cen, NU Pav, の補正 LRS 吸収プロファイルのメディアンを取って 決めた。

 連続スペクトル 
 図1は 3240 K Engelke関数に 15 % SiO 吸収を加えたスペクトルを示す。 この連続スペクトルを各 LRS の 7.67 - 8.58 μm に フィットした。 サンプルの大部分の星ではこの付近でのダスト放射の寄与は無視できる。

表1.AGB 変光星のサンプル


図1.点線= M6 星 Engelke 3240 K 関数。太い実線= SiO 吸収付き。 細線= NU Pav スペクトル


 設定温度の影響 
 設定温度を ±400K 振って試したが、ノイズエラー以下であった。

 SiO 吸収の効果 
SiO 吸収の効果を調べるため、なしの場合も試したが大部分では 結果に影響しなかった。 しかし、放射帯がはっきりしないケースではある程度のエラーが導入 される。



 2.4.分類手順 

 サンプルのふるい落とし 
 シリケイト放射がない、吸収帯などの星を落とすと,  537 星が残った。それらは表1に示した。

 フラックス 
 F10/F11 : 10 μm バンドの巾。
 F10/F12 : 10 μm バンドの肩。
図2を見るとこの二つに相関がある。フィットすると、

  F10/F12 = 1.32(F10/F11) 1.77

 Silicate Emission Index n 
 Silicate Emission Index n を次の式で定義する。

   n = 10(F11/F12) - 7.5

n は切り捨てで整数化される。F11/F12 = 0.57 - 2.22 なので、n = 1 - 8 となった。図3にはそれらの例を示す。


図3.各シリケイト放射指数に対するサンプルスペクトル。恒星 連続光は図1のモデルで差し引き済み。 Silicate Emission 1 (SE1) = 最も幅広。SE8 = 最も細い。SE が小さいほどスペクトルへのダスト 放射の寄与は小さい。

図2.シリケイトダスト系列。 F10/F12 対  F10/F11 をプロットした。実線=べき乗 フィット。破線=シリケイト放射の境界。点=黒体 T = 10,000, 3000, 1000, 300 K



 2.5.ダスト放射コントラスト 

 低コントラストだと幅広 
 ダスト放射の高さを内挿連続光レベルとの比で表わす。図4には こうして得たダスト放射コントラストとF11/F12 の関係をプロットした。この図は幅広の放射帯は低コントラストに限定 されるが、細い放射帯は低コントラストも高コントラストもありである ことを示す。


図4.ダスト放射コントラスト対 F11/F12. コントラストが高いと細い。低い時は太い場合も細い場合もある。

 2.6.13 ミクロン放射の等値幅 

 等値幅の評価 
 13 ミクロン放射の等値幅を決めるため、 10.66 - 12.59 μm と 13.72 - 15.18 μm でスペクトルを多項式でフィットした。 13 μ 放射はこの多項式の 12.70 - 13.41 μm 間の超過として 定義する。表2はその結果である。



表2.シリケイト放射クラスの性質



 3.現在の分類スキームとの比較 

 3.1.LMLクラス 

 略

 3.2.LRS分類 

 誤った想定 
 LRS 分類は表4にあるようにシェルの対比に基づいている。 ダスト放射コントラストは LRS 21 から 29 へと一般には上がって行く。 しかし、内部の分散は大きい。その原因は IRAS Science Team が 13.3 μm で連続光を取るという方針を採用したためである。これは そこではダストからの寄与がないという誤った想定に基づいていた。

 LRS 1n 
 LRS 1n は誤解されている。 LRS 18 のみがダスト放射のない星である。 LRS 17 - 14 ではダストによる超過放射が乗っている。これは各サブクラス での [12-25] の広がりからも推定される。

 3.3.AutoClasses 


表4.LRS の性質のまとめ。



 4.議論 

 4.1.シリケイトダストに関連する放射帯 

 少なくとも4つのダスト成分が我々のサンプルに認められる。
 古典的シリケイト帯 
 10 μm の古典的シリケイト帯は非晶質シリケイトから生み出される。 Ossenkopf et al 1992 参照。

 結晶質シリケイト 
 オリビン結晶質シリケイトは SE4 - 6 または Silicate+, Silicate++ のように 10, 11 μm 放射成分を含むスペクトルの原因とする意見もある。

 幅広のバンド 
 幅広のバンド SE1 - 3 はアルミナ粒子に結び付けられている。しかし、 γ-Al2O3 のフィットは良くなかった。

 13 μm バンド 
 13 μm バンドはコランダム α-Al2O3 で説明されるかもしれないが、まだ証拠はない。

 4.2.シリケイトダスト系列 

 シリケイトダストの進化 
 Stencel et al 1990 は、幅広から細い放射帯への系列は、化学的及び 進化的系列であるとした。彼らは幅広放射はアルミナと結び付いており、 幅広から細身への系列がメーザー進化系列(Lewis 1989) と相関すること をその根拠にした。このシナリオでは、グレインはまず最初にアルミナから 形成される。その後、シリケイトがグレイン進化を支配するようになる。 出来たてのシリケイト物質は結晶質で、10, 11 μm の放射成分を示す。 シェルが広がると非晶質になり古典的なシリケイト帯となる。

 光学的深さの影響 
 Egan, Soan 1995 はダスト放射帯系列はダストシェルの光学的深さを 増加させて行き、自己吸収が現れる所まで並べれば再現できる事を指摘 した。この説では最も若いシェルが最も細い放射帯を示す。古いシェルは 厚く、自己吸収が放射帯を幅広に見せるだろう。この場合、太い放射帯は 赤い [12-25] と結び付くであろう。表2、3によると幅広の放射は青い カラーと相関する。これは幅が広くなる原因を全て自己吸収の結果とする のは無理である事を示す。



 4.3.Silicate Emission Indices とダストシェルの進化 

 我々の単純なシナリオ 
(1)グレインの進化は Stencel et al 1990 シナリオに従う。
(2)可視 AGB 星の光学的幾何学的に薄いシェルから OH/IR 星の厚いシェルへ。
(3)変光タイプは Lb - SRb - SRa - Mira へと進化。

この通りなら、不規則型変光星からミラ型星へと辿るに連れ、幅広スペクトル (SE1 - 3) が減って行き、細い(SE7 - 8) の割り合いが増えて行くだろう。 しかし、図7はそうではない事を示す。

 変光タイプと進化 
 Jura, Kleinmann 1992 の O-リッチ SR, Irregular 変光星研究によれば ミラ型星は基本振動で SR、特に周期 150 日以下のは、第1倍音モードで 振れている。それらの研究、及び Kerschbaum, Hron 1992 の SR 研究は 星が AGB を上がるに連れ、Irregukar から SR を 経て Mira 型へと進化し、 最終的には基本振動に落ち着くことを示す。
 表1を見ると、不規則型変光星の 67 % にのみダストシェルがある。 この割合は SRb では 80 %, SRa で 97 %, ミラで 99 % となる。変光タイプ の系列は正しいと信じられる。熱パルスによる逆転も一部にはあるだろ

 4.4. 分類の応用 

 5.まとめ 


図8.SE 指数とスペクトルクラスの間に相関はないことを示す。

 

図7 SE 指数の分布。




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




  

 


 


 
 


 


 




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