PHAT I. Bright UV Stars in the Bulge of M31


Rosenfield + 22
2012 ApJ 755, 131 - 143




 アブストラクト 

 PHAT の過程で M31 バルジ 12'x6'.5 領域を F275W と F336W で撮った。 そこから約 4000 の古くて UV で明るい星を見つけた。パドヴァ進化経路と の比較からそれらを post-AGB, post-Early AGB, AGB-manque 星に分類した。 後2者はまとめて hot post horizntal branch = HP-HB 星と呼ばれる。 それらは AGB 進化には外層質量が不足した星で、RGB 星のマスロスが高い時 の高いヘリウムとα元素量を示すと思われる。  データからバルジの UV で明るい星は高温の極端水平枝星であるという 主張が支持される。しかし、UV で明るい星種族はバルジの UV 光の主役 ではない。というのは我々が検出したのは極端水平枝星の後継者のみであ るからである。計算に依れば、中心バルジ主系列星の数パーセントだけが HP-HB 期を経ることができる。そしてこの割合は中心距離に従って低下 する。また、高温の UV で明るい星の表面密度は低質量 X-線連星と同じ 密度変化を示す。



図1.左: Bressan12 による hot HB 星とその前駆星のモデル進化の位置。 黒線=通常の AGB 進化。 右:それらを M31 に置き、UVIS フィルターで観測した時の CMD. AGB 経路は F336W > 28 となり表示されない。P-AGB 経路は Vassiliadis, Wood (1994) から採った。

 1.イントロダクション 

 UV 超過=UVX 

 多くの 楕円銀河やバルジで 2000 A - ライマンリミット 912 A での フラックス超過が観測され UV 超過 =UVX と呼ばれる。一般にはその原因は コアヘリウム燃焼星(水平分枝星)と考えられている。これらの星は ZAHB から 離れ、以下の3経路のどれか、またはそのいくつかの結合を経過して白色矮星 となると考えられている。

 3つの経路 

(a) RGB で穏やかなマスロスを経験した星は HB の赤い側を離れ、AGB 期を経て post-AGB 星となる。

(b) RGB 期で中程度のマスロスを行った星は外層が小さく有効温度も高く、AGB の途中でそこから離れ、post-early AGB (PE-AGB) 星となる。

(c) RGB 期に外層の殆どを失った星は極端(青い)水平枝(EHB) 星となる。

これらの星は標準的な AGB 星より有効温度が高く、AGB-manque または post-EHB 星となる。Greggio-Renzini 1999, O7Connell 1999 のレビュー参照。
 HP-HB 星 

 図1にそれらの経路を示す。AGB-manque と PE-AGB 星はまとめて長寿命の hot post-HB 星で HP-HB 星と呼ばれる。 HP-HBs は EHB 星に比べ、 F336W で 2 - 4 mag 明るい。HP-HB 星は 100 - 1000 Lo で Teff= 15,000 - 20,000 K である。一方 HB 星は 30 Lo, 10,000 K である。HP-HB 星の 初期質量は 2 Mo 以下で、主系列寿命は 0.6 Gyr より長い。

 B98  

 Brown98 は M31 バルジの FOC/HST データを得た。そしてこれら UV で明るい 星の詳細な研究を行った。

 2.データ 




図2.左: M31 バルジの F336W(青)、F475W(緑)、F814W(赤) 合成カラー図。 黒点線部は解析から除いた。


図3.左;B98 データの UV CMD. 右:PHAT CMD.


図4.動径距離による CMD 変化. 実線=50 % 完全。


表1.測光観測




表2.動径変化

 3.解析 

 3.1. CMD 

 図5はバルジと円盤の CMD の比較である。右上、円盤のCMD と主系列星 経路は赤化を受けた主系列経路でうまく説明できる。しかし、バルジは 全く合わない。バルジ星が合うのは PE-AGB 星と AGB-manque 星の進化 経路である。それらは F336W = 23 より下で支配的となる。それは 図4にも現れていて、左端 R =23pcでは F336W = 2w3 以上が激減 しているのにその下では減っていない。 M > 0.6 Mo の明るい post-AGB 星(図の紫線線)の寄与も あり得るが進化が速いので無視できる。

図5.UV CMD. 左:バルジ。R=120 pc. 右:円盤。 R=6.5 kpc.
上:大質量星の MS 進化経路と比較。矢印=赤化ベクトル(Rv=5, 3)


 3.2.光度関数の動径変化 




図6.HP-HB 星の光度関数。色分けは図2と同じ。

 3.3.HP-HB 星と p-AGB 星の光度への寄与 




図7.UV 星の動径分布。左:表面輝度。黒=F275W. 赤=F336W. 右:F(HP-HB)/F(p-AGB) 比の動径変化。 HP-HB 星の光度関数。色分けは図2と同じ。

 3.4.混入星の光度への寄与の可能性 




図8.混入実験の結果

 3.5.他の進化した星種族との比較 

 LMXB 

 図7を見ると HP-HB/p-AGB 比が中心に向かって増加することが分かる。 中心に向かって比率が増加するのは HP-BP 星だけではない。チャンドラ衛星 低質量X-線連星(LMXB) がバルジ中心付近で増加することを示した。Voss, Gilfanov 2007 はそれらが星密度の二乗に比例し、連星が力学過程で形成 されるからであるとした。

 PN 

 PN の分布は平坦で p-AGB と合わない。しかし PN カタログは不完全である。

図9.青(紫?)=PB-HB 星、赤=p-AGB 星と緑=LMXB の表面密度動径変化。 折れ曲がりの形がPB-HB と LMXB とで同じことに注意。


 3.6.星種族の寿命 

 Renzini, Buzzoni 1986 は、単一年齢メタル量の星集団に対し、
 Nj = 進化段階 j にある星の数
 tj = 寿命(yr)
 L = 総光度(Lo)
 B(t)= MS を離れる星の率 (star/Lo/yr)
とした時

 Nj = L B(t) tj

とした。

進化モデルから 10 Gyr 星では B(t) = 2.2 10-11 /Lo/yr, 図5にある進化で tHP-HB = 2 106 yr である。

 Np = 主系列を離れた星が全て HP-HB 経路を通るとした時の星数。
 No = 観測される HP-HB 星の数
とすると、f = No/Np = 主系列を離れた星の内 HP-HB になる星の割合は、

 f = NHP-HB/(L B(t) tHP-HB)

となる。輻射補正 BC などを考えると、

   f = 1.7 103 NHP-HB/L3.6

ここに、L3.6=(Lλ3.6Loλ3.6)Lo の意味らしい。定義が書いていない。結果を図10に示す。

図10.中心付近での種族変化。実線=HP-HB 経路を辿る MS 星の割合。 f は M31 中心に向けて増加する。平均としては、M31 最深部の MSTO の中で 3 % が HP-HB 星に進化する。バルジの外側部ではこの割合が 1 % にまで 低下する。注意すると、これらは分解された明るい HP-HB 星であり、より多く の低光度未分解の同じ種族の星が多数存在し、未分解 UV 放射の原因になっている だろう。」  


 4.議論 

 Brown98 を確認 

 今回の LF, CMD から Brown98 の主張= 「HP-HB 星が M31 バルジ内の UV で明るい星を生み出す主要進化経路である」が確認された。 しかし、 R = 15 - 120 pc 区間で調べた結果(図9)によれば、 UV で明るい星の 20 % は p-AGB 星として説明できる。

 数密度勾配 

 UV 源の数とタイプには明らかな動径勾配がある。 F275W, F336W ≥ 23 の暗い星で勾配が急なのは、バルジ中心に向かって HP-HB 星の数が急増 する結果であろう。これら暗い UV 星は分解 UV 源フラックスの 60 % を占め る。
 HP-HB 経路 

 図10に示すように、MS から離れる星の約 2 % が長寿命の HP-HB 経路を 辿って白色矮星へと進化する。残りの星は p-AGB となるが、寿命が短い。 ただし、検出された星からの総フラックスは F275W において全体の 2 % である。残りは暗い EHB ではないか?


 4.1.年齢勾配 

 年齢 UVX 関係 

 恒星集団が古くなると UVX は増加すると考えられている。それは MSTO 質量 が小さくなると外層質量が減少して HB 温度が上がるからである。UVX は楕円 銀河の年齢指標としても提案されている。

 バルジの年齢勾配 

 M31 バルジの年齢勾配を調べた結果、年齢勾配は見出されなかった。 どちらかというと正勾配=遠いところが古い、結果が得られている。これは HP-HB 勾配を説明するには逆センスである。

 連星 

 UVX の原因は HP-HB 星ではなく、連星かもしれない。時間が経つにつれ それらは UVX を生み出す。しかし、それなら全ての古い種族から UVX が 見出されるはずだが、そうではない。

 4.2.メタル量勾配 

 NGC 6791([Fe/H]=0.4, t = 8 Gyr)

 Kalirai07 は高メタル散開星団 NGC 6791([Fe/H]=0.4, t = 8 Gyr) の WD 質量が低いことを見出した。彼らはその原因が RGB 期のマスロスが 激しかったためと解釈した。この星団には非常に高温のヘリウム燃焼星が 多数存在し、HB 星の 30 % を占めている。それらは UVX の説明に十分 である。

 バルジ内のメタル量勾配 

 HP-HB 経路を辿る星の割合が低いのはバルジ内のメタル量勾配が原因かも 知れない。Saglia10 は M31 バルジで r = 100" で [Z/H] = 0.4 から  r が10倍になるごとに 0.2 低下することを見出した。メタル量分布の 高値テールの星から HP-HB 星が生まれるのかも知れない。

図11.青実線= GALEX カラー。破線=Lick-Index から決めたメタル量。 FUV-NUV カラーが極端に青くなる中心付近でメタル量が急増する。 このカラーとメタル量の逆相関は、メタル量勾配が UV 星の数密度変化を 駆動していることを示唆する。UV 星は中心 '5" = 300 pc 内に強く拘束 されている。