Planetary Nebulae Near the Galactic Center
I. Method of Discovery and Preliminary Results


Pottasch, Bignell, Olling, Zijlstra
1988 AA 205, 248 - 256




 アブストラクト 

 PNe を探す方法= IRAS カラー+電波連続波 を述べる。この方法を |l| < 15 領域に適用した。新発見 36 PNe を含む結果の第一報告=天体の特性である。  新発見 PNe は一般的には既知星雲と同じであるが、発見方法により若い天体 にバイアスが掛かっている。新天体のかなりが OH/IRs と PNe の中間段階に ある。


 1.イントロダクション 

 PNe 距離不定性の問題 

 既知 PNe 数は 1000 を超える。それらは銀河系中心方向に集中する。距離 不定性のため、銀河系内の全 PNe 数はよく分からない。文献上で推定されて いる総数は既知数の 10 倍から 100 倍に渡っている。恒星進化を考える上で この数が不定なことは残念である。

 GC 方向のサンプル 

 銀河系中心付近の PNe は距離不定性の点で有用である。ただ残念なことに 強く変動の大きな星間減光のため、可視観測は難しい。PNe がいくつ見逃さ れているか推定しにくい。GC 付近で完全なサンプルを得るためには長波長 での観測が必要である。
 電波 PNe の検出 

 GC 領域の PNe 探査の最初は Westerbork WRT による観測 Wouterloot, Deckker 1979, Isaacman 1980, 1981a,b である。GC の周り 3 平方度が 21 cm で 1 $σ = 1 - 8 mJy 感度で観測され、119 天体が見つかった。 85 の弱い電波源中 69 個は銀河、25 は PNe であった。彼らはそこから GC の 300 pc 内に 300 PNe があると見積もった。そして、そこからさらに 銀河系全体では 21,000 PNe が存在すると推定した。ただ、問題は、

(i) HIIR との分別が困難。

(ii) 形状決定には分解能不足

(iii) 検出限界が変動し、検出完全度が決めにくい。

 IRAS による検出法 

 IRAS には減光の問題は存在しない。この論文はどうやって PNe 判定を 下すかを研究する。判定には IRAS カラーと並んで、電波観測が役に立つ。

 図1.様々なタイプ天体の IRAS 二色図 








図1.様々な既知天体の IRAS 二色図。PNe が他種天体と離れた領域を 占めていることが分かる。






図.常用風に回してひっくり返した。

 2.IRAS サーベイと PNe 探査 

 2.1. PNe 選択基準 

 発見 

 Gillett et al 1967 は PNe が強い FIR 源であることを発見した。 図1には文献から既知の IRAS 源のカラーをプロットした。

 重複 

 PNe は図上でまとまった集団を作っている。HIIRs との重複は 僅かであり、銀河は幾つかのセイファート銀河以外は重ならない。 星は別の集団を成し離れている。OH/IR 星は重なる。OH/IR 星の約 20 % は若い PNe と似た IRAS カラーを示す。
 カラー基準 

 図1から PNe 領域として、   F12/F25 ≤ 0.35   F25/F60 ≥ 0.3

この領域に入る天体は OH/IR 星以外に Parthasarathy, Pottasch (1986) が発見した K - B 型超巨星がある。彼らはそれらを PPNe と解釈した。 もう一つ YSO の約 15 % がこの領域に入る。post-AGBs と YSOs を 落とすには電波連続波の観測が有用である。







図2.PN カラーを持つ IRAS 天体の分布。(a): GC 付近の分布。(b): 強いフラックスの 3300 天体の分布。




図3.PN カラーを持つ天体の分布等高線、単位は 数/平方度

 2.2.将来の研究のために選んだ IRAS 源 



 緩い基準 

 3バンドで測光精度良好の天体は数が少ない。天体数を増やすために、 測光精度基準を緩めた。それは、

(i) F25 か F60 のどちらかが "positive measurement"

(ii) 上限値が PNe 領域に入る値。

(iii) F100 "positive detection" が F100 ≥ F60 なら、落とす。ただし、 "positive" F25 があり、それから銀河、 HIIR が否定される場合は別。

この緩い基準で候補天体数は相当増加した。同時に偽同定の混入もかなり 生じたであろう。

 2.2.1.空間分布 

 GC から 15° 以内にある IRAS PSC 天体の数は約 2000 である。図2に それらの空間分布を示す。銀河面への集中は明らかである。中心自体への集中 はそれほど強くはないが認められる。図3にはそれを、F25 が確実な約 1300 天体の等密度線で示した。



図4.赤外光度の分布。(a) 「近傍」PNe. 距離は Gathier et al 1986a,b と Mendez et al 1987 から。(b) GC 周囲の既知 PNe. (c) PN カラーの IRAS 源

 2.2.2.光度 

 既知 PNe と GC PNe の光度 

 図4 (c) は "selected" 1000 PNe の赤外光度分布である。(b) は l = [350, 10], b = [-5, 5] PNeを、距離 8 kpc と仮定して計算した赤外光度 の分布である。銀河系中心周りでは電波観測のあるものだけを含めた。明らかに前景星 と分かる星は抜いたが、まだ幾つかの混入は予想される。二つの光度分布はよく 似ているが、図4(c) の方は低光度 PNe に富んでいる。高光度側への広がりは 前景星の混入が残っているせいかも知れない。

 光度関数 

 低光度側の低下は多分検出感度の効果である。L = 100 Lo は 25 μm で 0.3 - 0.5 Jy に対応するが、これは大体 IRAS PSC の感度限界である。 b = [-2, 2] の銀河面近くでは S/N カットは 25 μm で 0.8 Jy であり、 これは 200 Lo に対応する。不完全性が始まるのは 300 Lo 辺りであろう から、(b) = GC 周辺の PNe の実際の数密度は 300 Lo 以下でも上昇しているのかも 知れない。(c) = 既知 PNe の低光度成分はもっと面倒で測光感度以外に発見自体が 困難になる。それを示すために、(a) には "nearby" PNe の光度関数を示した。 (a) と (c) を比べれば、銀河系中心付近の IRAS PNe から低光度成分が落ち ているのは明らかである。これは別の方向からも例証できる。 Kiman et al 1988 は GC 方向に 15 個の PNe を発見したが、それらの内 IRAS PSC にあったのは僅 かに 3 個であった。







表A.既知 PNe の VLA 観測






表1.新しく発見された PNe の VLA 観測






表2.新しく発見された PNe の Westerbork 観測

 3.電波観測 

 3.1. VLA 電波観測 

 電波による確認 

 赤外カラーで選ばれた PNe の確認には可視撮像が最も有用であるが、減光が 強くて不可能である。そこで、電波観測が浮上する。VLA による最初の 6 cm 観測は 1984 配置 A で行われた。位置精度は 1"、分解能は 3" である。 約 200 領域を感度 0.3 mJy で観測した。各方向の視野直径は 13' である。 2 mJy 以上の強度を持つ 250 天体が検出された。 さらに約同数の 1 - 2 mJy 天体が検出された。

 PNe の電波観測 

 これらのフィールドで既知 PNe が26個観測され、表A に示される。IRAS カラーで PNe 領域にある天体が 20 個電波で検出された。それら表1に示す。 最初の 16 個は IRAS 位置から 1' 以内 = IRAS 位置エラー にある。最後の 4 天体の位置は 1 ' 以上離れている。しかし、それが IRAS 天体である可能性 は高い。表の FFIRTOT は 10 - 100 μm の積分 光度である。IRE = FFIRTOT/F(Ly α) は Pottasch 1984 の p203 による。

 3.1. Westerbork 電波観測 

 これまでの観測 

 Wouterloot, Decker 1979 は 21 cm で 6 領域を感度 5 mLy で観測した。 その領域の一部は Isaacman 1981a により 6 cm 観測が行われた。我々は 彼らのリストからは IRAS 天体に対応するものとしては 1 天体 19W しか 見つけられなかった。

 Westerbork 観測 

 1986年に 86 天体の観測が行われた。位置精度は数秒角である。表2に その結果を示す。検出位置を ESO-SRCとPalomar 乾板で調べたが殆どの箇所に 可視天体は見当たらなかった。唯一の例外は No.4 で、直径 30" のほぼ円形の 淡い星雲が見える。

 近赤外観測 

 Whitelock は表1の近傍を 2.2 μm で観測し、多分対応天体と思われる 星を検出した。Menzies はそれらのスペクトルを撮り、Nos. 1, 4, 6 , 11 が 確かに PNe であることを確認した。




 4.天体特性 




図5.6 cm フラックス密度の分布。(a) 可視で見つかった既知 PNe. (b) こ の論文で見つかった PNe のフラックス密度。

 4.1.電波フラックスの分布 

 新発見の PNe と既知の PNe 電波観測を合わせて表 A とした。図5は 6 cm フラックス分布である。(a) は既知 PNe を示す。大きいフラックスは前景星かも 知れない。フラックス分布は 5 - 60 mJy に集中し、ピークは 17mJy である。 (b) は新発見 PNe であるが、フラックス分布は (a) と大きく異なり、 1 - 60 mJy の間にピークがない。違いの一部は星雲を探す際の選択効果であろう。

 4.2.IRE 

 図6:IRE 分布 

 図6(d) は比較用に集めた太陽近傍 PNe の IRE を示す。そこには Pottasch 1984 の表1にある PNe が全て含まれている。IRE 中間値は 2.5 で、PNe の約 90 % は IRE = 1 - 5 に分布する。一般に古い PNe の IRE は低い。図6(a) は Westerbork サンプル(表2)の IRE である。その IRE は全般に高く、 85 % が IRE > 5 で、 30 % は既知 PNe では見られないほど大きい。図6(b) は VLA サンプルであるが、 こちらの IRE も高目である。しかし Westerbroak ほどでない。捜索法の差、 Westerbroak サンプルは IRAS 点源から選ばれた、が IRE の違いを生んだのであろう。 図6(c) は既知 PNe で、 Gathier et al 1983 が測ったサンプルと表A サンプルを含む。 この二つのサンプルはほぼ同じ性格を有し、分布に差はない。(c) の中間値は 6 で明 らかに (d) = 近傍 PNe より高いが、新しい PNe より低い。



図6.IRE の分布。

 光学的厚み 

 注意しておくと、 IRE の計算は 6 cm で星雲が光学的に薄いという仮定で 計算された。通常の近傍 PNe は光学的に薄いことが知られている。しかし、 若い星雲, Hb 12, Vy 2-2, SwSt 1 などは小さく、高密度で光学的に厚い。 多分、新しい PNe には光学的に厚い星雲が含まれていて、それらの IRE は過大に 見積もられているのだろう。

 分布差の理由は? 

 仮に図6の分布差がリアルとするならば、

(i) 銀河中心付近の既知 PNe は近傍 PNe と違う性質を有する。 GC PNe は 若い。Isaacman 1981b は GC 付近の高密度ガスにより GC PNe は近傍 PNe より短時間でガスを剥ぎとられると論じた。その上、淡く広がった星雲は GC 付近では検出されにくい。

(ii) 新たに発見された PNe は既知 GC PNe よりさらに大きな IRE を示す。 それらは一層若い天体なのであろう。


 5.議論と結論 

 新 PNe の発見 

 IRAS カラーから選択して、さらに電波連続波で確認された天体はほぼ確実に PNe である。新発見 PNe の IRE 分布は既知 GC PNe より高い値にずれている。 また、それらの 6 cm フラックスは低い。さらに低い PNe が存在する可能性が ある。これらの差が生じる原因は主にサンプルの選択法の違いであろう。

 若い PNe ? 

 新発見 PNe の中に極めて若い天体が存在する可能性がある。パークスで新発見 高 IRE 天体の 11 個を OH 1612 MHz で観測した結果、少なくとも 4 個、多分 6 個で OH が検出された。これは濃い中性外層の存在を意味する。1987 年まで OH が検出された PN がたった一個であったことを考えると、この方法が若い PNe を効率よく探す良い手法であることが分かる。

 低連続電波の Pne の可能性 

 これまでの結果から PN カラーを持つ IRAS 天体の 15 - 20 % で連続電波が 検出可能= PNe と考えられる。すると、ではその他の天体は何か、という疑問が 生じる。電波強度が今回の検出限界 1 mJy より低い PNe はまだ存在するだろう。
 PNe 以外だと何? 

 この問題を考えるため、全天から PN カラーの天体を 1000 個選んだ。それ らの種類を調べた。約 60 % は未同定である。残りの 45 % は PN である。 10 % が OH/IR 星、25 % は他の種類の星、 10 % がセイファート銀河, 10 % が暗黒雲に付随する星である。他の星に分類される中には Parthasarathy, Pottasch (1986) が研究した星が含まれる。彼らはそれらの星は PPNe であると主張した。 しかしこのグループには T Tauri も入っている。したがって、このグループの 星が全て進化最終末期にあるわけではない。

 寿命 

 数の比が正確に決まると進化の各時期の寿命の決定ができる。しかしそのためには もっと多くの同定が必要である。

 総数 

 40 発見 PNe から推定すると銀河中心から 10° 以内に 3000 PNe が期待される。