The Galactic System as a Spiral Nebula


Oort, Kerr, Westerhout
1958 MN 118, 379 - 389




 アブストラクト 

 21 cm 観測から得られた腕の性質のレビュー   Ro = 8 kpc.


 1.イントロダクション 

 初期の研究 

 星雲に渦状構造が発見された直後、  Stephen Alexander 1852 AJ 2, 95 は "On the Origin of the Forms and Present Condition of Some of the Clusters of Stars and Several of the Nebulae" という論文で という論文で、我々の銀河にも渦状構造があるのではないかという意見を述べた。 17年後、 彼と Proctor は Hershels の作成した天の川の見かけの姿に渦状 構造の標を探した。これ等の研究に気付かず、 Easton 1900, 1913 は独立に 渦構造を探し、シグナス方向を渦の中心とした。これ等の研究が失敗に終わった のは星間減光を無視したためである。
 渦構造の発見 

 腕構造を最初に明らかにしたのは HIIRs を用いた Morgan, Sharpless, Osterbrock (1952) の研究である。そこでは図1に示すように、HIIRsが列をなしている姿が はっきりと見える。

 HI 21 cm  

 面白いことには正に丁度その時に、 HI 21 cm 観測が銀河面の体系的な観測を 開始しており、2年後にはより包括的な、銀河系全体の渦状構造を明らかに した。21 cm ラインは距離による分離を可能にする。しかし、距離の大きさま では分からない。





図1.Morgan, Shapley, Osterbrock 1952 の HIIR 配列

 2.回転運動 

 円運動の仮定 

 距離を求めるには、まずガスが円運動しているという仮定が 必要である。ただし円運動からのズレの可能性は常に念頭に置くべきである。 視線速度を距離に変換するには円運動速度 Θを銀河中心距離 R の関数 として知る必要がある。
 シュミットの回転曲線 

 太陽近傍での回転速度 &Thata;o と太陽の銀河中心距離 Ro を知るには 定数 A と B を知る必要がある。 B は遠方の星の距離と速度に関係し、 求めるのが難しい。Ro は RR Lyrae の分布から求めるが誤差がある。 図2にはシュミット 1956 が求めた回転曲線を示す。 R < 8.2 kpc の部分は Kwee, Muller, Westerhout 1954 の HI 21 cm データに基づいて いる。それらは lI = [328, 58] 21 cm データに基づいており、 図中の点で示されている。銀河中心の反対側のデータは Kerr, Hindman により、図中バツ印で示す。 





図2.シュミットの回転曲線 (1956, BAN 13, 15 -41)

 3.水素の分布 

 円盤からの距離 

 R < 8 kpc では HI の分布は円盤から 75 pc 内に貼りついている。しか し、R > 10 kpc では 600 - 800 pc まで円盤から離れるようになる。 図3を見よ。

 オリオン腕 

 円盤上の HI 分布を図4に示す。図は lI = [340, 220] は ライデン、[220, 316] はシドニーのデータによる。 HI 分布は不規則性が 大きいが幾つかの腕の存在が見て取れる。太陽はシグナスと lI = 340 方向を結ぶ腕の内側に位置する。反中心方向を通って腕がどう伸びている かは不確実であるがおそらくオリオンアソシエイションを通過するのだろう。 そのため、この腕全体はしばしばオリオン腕と呼ばれていた。
 ペルセウス腕 

  lI = [65, 130], R = 10.5 kpc 付近に目立つ腕がある。 これは、その腕の傍にある h and χ Persei アソシエイションにちなんで ペルセウス腕と呼ばれる。幅広のほぼ円形の HI 構造が lI = [340, 65], R = 9 - 12 kpc 付近に存在するが、これはペルセウス腕の 延長かも知れない。南半球側にはそれに対応する明るい外側腕は見えない。

 サジタリウス腕 

  R < 8 kpc では、 R = [6, 7] kpc でサジタリウス腕に出会う。 時計回りに辿ると、銀河中心に入って行くようである。lI = [200, 310] では構造の連続性が弱い。このため、また lI = [315, 340] では速度分解が悪いので、この腕を銀河中心をぐるっと回って 追跡することはまだできていない。



図4.HI 分布。

 円盤の外縁 

 円盤の外縁は R = 15 kpc 付近らしいが平均密度の低下が緩やかである。 腕断片が見つかる可能性もある。図5の lI = [340, 220] データ に基づく図はガス密度が全体として、中心距離によりどう変化していくかを 示す。ガス密度は R = 7 kpc にはっきりした極大を持つ。アンドロメダにも R = 11 kpc に類似のピークがある。

 銀河タイプ 

 腕の数とその間隔から銀河系はアンドロメダや M81 と似ているか少し晩期 型である。なので Sb でないか。腕は M 101 や M 33 より固まっているが、 Sb 銀河の NGC 4594 ほど広がってはいない。ガス量で見ると、 我々の銀河で 2 %, アンドロメダで 0.8 %, 一方 M33 では 4 % である。 これらから M 31 よりは晩期型である。

図5.銀河中心距離による HI 密度変化。点線= M31  


 4.膨張腕 

 腕位置 

 図4に定性的に描いた R = 3 kpc の腕は lI = [303, 331] にあり、接点が lI = 303 にある。

 視線速度 

 図6には視線速度の変化を示す。腕はサジタリウス A に対して吸収線として 見えるだろう。図6に吸収線は十字印で表されているが、輝線と一致する。 それは銀河中心と我々の中間にあり、回転に加え、53 km/s の膨張を示す。 したがってこの腕を 「 3 kpc 膨張腕」と名付ける。  このような特徴はここだけではない。lI = 327.7 (銀河中心) から 15° 以内では R = 2 - 3 kpc に系統的な速度のズレが見られる。

  


図6. 「3 kpc 膨張腕」の視線速度の銀経による変化。観測値は太陽運動を 補正している。  



図7.3.5 m 電波の分布。