Open Clusters as Laboratories for the AGB/SN Mass Transition


Nugueruela, Alomso-Santiago, Tabernero, Marco, Castro, Dorda
2017 MSAIt 88, 368 - 372




 アブストラクト 

 SN と WD の境界質量を探るため、年齢 30 - 100 Ma である程度大きい散開 星団の包括的研究を進めている。サンプル中で最も高齢の NGC 6067 には多数の の赤色巨星と二つのセファイドを含む。メタル量は太陽を超え、パドヴァモデル はブルーループは不安定帯まで達しないと予想している。  我々の星団のメタル量は広い範囲をカバーしている。しかし、モデルが予言 する強いメタル量効果は観測 CMD には見られなかった。スペクトル型の分布 は主に年齢で決まるらしい。我々のサンプルは全体で8星団中の 80 晩期型 巨星を含み、今後それらのパラメターを決定して行く。


 1.イントロダクション 



 セファイドになる年齢範囲 

 Ekstrom et al 2012 は回転ゼロと適当に高い回転度の星では、 5 - 9 Mo 星がセファイド不安定帯に到達することを示した。ただし、古いモデル (Schaller et al 1992) ではもっと高い質量、 12 Mo でこの現象が起きる。
 SN/WD 境界 

 現在のモデルでは、SN か WD で終わるかの境界は太陽メタルで 10 Mo と 高い。一方、観測 Smart 2015 からは境界はもっと低いが、議論には仮定が 多い。

 若い星団を調べるプログラム 

 そこで、若い 30 - 100 Myr 星団を調べるプログラムを開始した。 100 Myr より上では RGs を含む星団は多い Mermilliod et al. (2008) が、若い星団で赤色巨星を含むものは少ない。





図1.モデルフィットの例。観測星は NGC 2345 のターンオフ付近の星。 モデルは FASTWIND から。

 2.サンプル、観測と解析 

 若い星団 

 サンプルには最低5つの進化した星を含む星団という条件を課した。 年齢 30 - 100 Ma の星団ではターンオフ星が B3V - B5V である。すると 星団の進化した星と言うのは、A 型、F-G 型超巨星、セファイド、G-M 超巨星 または明るい巨星を指す。Messineo et al 2009

 星団質量 

 Messineo et al 2009 の SSP 計算に依ると、 50 Myr で進化の進んだ星 が5個あるには星団質量 2000 Mo が必要である。残念だが、この年齢帯に それほど大きな星団は知られていない。しかし、それより若く質量が > 10,000 Mo 星団が数個あるので、全銀河系内にはそのような星団が 必ずあるであろう。表1には今回対象とする星団のリストを示す。

 分光観測 

 これらの星団中の進化の進んだ星の高分散分光観測を行った。 解析には ATLAS と MARCS を用いた。ただし、二つのバークレイ星団は 暗すぎるので中間分解能観測を行った。青い星のモデルフィットには FASTWIND コード (Puls et al 2005) を使用した。

表1.進化の進んだ星を含む若い星団。星団パラメターは文献値。





図2.NGC 6067 の CMD. 二つのセファイドは名前がついている。 赤三角=赤色(超)巨星。黒線= Marigo et al 2008 等時線。等時線は このメタル量ではセファイド不安定帯に到達しない。

 3.結果 

 最終目標 

 最終的には若い星団を一様なスタイルで解析して SN/WD 境界に強い拘束を 与えたい。しかし、まだ計画が始まったばかりなので、現在の進化モデル との比較の段階である。

 NGC 6067  

 NGC 6067 は 50,000 Mo を越す [Fe/H] = +0.2 dex の大星団である。 年齢 90 Myr の二つのセファイドが存在するので、ブルーループは不安定帯 に達していなければいけない。しかし、 Marigo et al 2008 の Zo = 0.019 としたパドヴァ等時線ではそこに到達しない。最近の Zo = 0.015 を仮定した Parsec 等時線 (Bressan et al 2012) を使うと、ループはさらに低温側に 移る。
 回転? 

 Georgy et al 2013 は回転を入れると、 7 - 9 Mo 星がブルーループ上で 青色超巨星(A 型)として過ごす時間が延びることを見出した。しかし、表1を 見ると、これはありそうにない。実際、 30 - 60 Myr 星団中の A-型超巨星は 全て、主系列を離れた直後として理解できるもので、HR図の赤区域から戻って 来たと解釈できるものは存在しない。

 NGC 3105 と NGC 2345 

 NGC 3105 と NGC 2345 は [Fe/H] = -0.4 dex で、銀河系円盤の若い天体と しては低メタルである。それでも、NGC 3105 では M1Iab という晩期スペクトル 型の赤色超巨星が存在する。しかし、大部分の星は K0 - K2 である。

 年齢が駆動役 

 我々のデータは Mermilliod et al. (2008) が述べているように、銀河系星団中の進化した星のスペクトル型は 主に年齢で決まり、メタル量は副次的な役割を果たすだけらしい。 この結論は我々の観測プログラムが完成するとさらに明確になるだろう。