Stencel, Mullan 1980 はMg II k 輝線輪郭から、HR 図上に "velocity dividing line" = VDL の位置を決定した。VDL の右上にある星は線輪郭が非対 称で、冷たいガス流出を示唆している。VDL 位置は水素燃焼殻が外側に進化して 平均分子量の不連続を通過する時期に一致する。 | 低質量星ではその結果進化経路に折れ曲がり("kink")が生じる。星団では光度関数の コブ(bump") として現れる。「折れ曲がり」または「コブ」の通過は冷たい星風発現と 関連があるらしい。 |
transition region line 低温度星の IUE スペクトル遷移領域輝線の観測から Linsky, Haisch (1979) は恒星の外層構造が HR 図上の 「分割線」で二分されることを見出した。 その分割が遷移領域輝線以外にも存在するか、その後多くの研究がなされた。 速度分割線 (velocity dividing line) Stencel, Mullan 1980 は IUE データから MgII の h, k 線を調べた。それ ぞれのラインは二つに割れている。S=短波長側ピーク強度、L=長波長側ピーク強度とした時、 太陽では S/L が1より大きい。しかし、多くの低温度星では S/L < 1 である。 右図には S/L が 1 を超すラインを速度分割線として示した。興味深いことにこのラインは Linsky, Haisch (1979) が発見した遷移領域輝線の「温度分割線」とほぼ重なる。(表示に Mbol と Mv の違いはあるが。) 星風が吹き始める これらの事実は、赤色巨星が VDL を越す際に、熱いコロナが消失し、冷たく 高密度の星風が吹き始めることを意味する。 |
![]() 図 Stencel, Mullan 1980 より。 |
2.図の改訂1980 年には h, k 線の巾と光度との関係を用いた。これは Wilson-Bappu 効果 (VaII H, K 線)の MgII 版である。しかしその後ヒッパルコス視差 が使えるようになった。図1はそれらを使った改訂版である。3.S/L の意味星風があると、青い光子ほど散乱される。従って S/L が1以下になるのである。 Robinson, Carpenter,Brown 1998 は SEL = Sobolev with Exact Integration を用いて、Mg, O, Fe の線プロファイルを再現した。K5III 星の α Tau (S/L=0.5), γ Dra (S/L=0.4) に対しては dM/dt = 10-11 Mo/yr 程度の値を得た。 |
![]() 図1.改訂版。 |
4.RGB のコブ (観測)コブ位置は年齢やメタル量に依存するので、フィールド星でバンプ等級を 決めることは困難である。それでも近傍星にコブが Mv = 1.1 - 1.6 付近に あるらしい。この等級範囲は上に述べた「分割線」と重なる。これから、「強い星風の発生は星がコブを通過することに関連する」 という推測が浮かび上がる。 5.RGB のコブ (理論)「コブ」起源の物理的説明は Salarisi, Cassisi, Weiss (2002) にある。 |
![]() 図2.M=1Mo, Z=0.02 星の進化。 |